2020年1月31日金曜日

伊藤詩織『ブラックボックス』文藝春秋 2017.10 感想

伊藤詩織『ブラックボックス』文藝春秋 2017.10 感想


 アメリカ人の世界認識の狭さ 伊藤が訪れたカンザス州の高校の同級生は、日本が中国の一部だと考えていたり、日本にマクドナルドがあると知って、目を丸くして驚いたりしたという。そして彼らは州から一度も出たことがないのに、アメリカが一番だと考えていたという。伊藤はそのような閉塞した社会の中で、国際ニュースを貪欲に見たとのこと。
 「自由で民主主義のアメリカ」と言われてきたが、実は狭小な世界認識しか持っていない国民が多いのではないかと知り、これではアメリカ人は、世界をリードできる優秀な国民とは言えないのではないかと思った。029

 中村格・元警視庁刑事部長は、伊藤から、突然の逮捕不執行の理由と、警視庁捜査一課の捜査報告書に、伊藤と山口敬之が乗ったタクシーの運転手の、伊藤が「最寄りの駅で降ろしてください」と言っていたという証言が抜け落ちていることについて、聞かれようとすると、一目散に逃げ出してしまい、また、同じ内容の質問状にも未だに返事をしていないとのことだ。247
 彼は民主党が下野するとき、菅義偉に泣きついて、自らの地位に執着したとのこと。213

 また『週刊新潮』は普段は嫌韓や反中などの低俗な記事が多いが、伊藤の件では、たとえ性被害に関する刑法改正への伊藤の意図をそらしてしまったとはいえ、中村格が逮捕執行を直前に取りやめさせたことを中村本人の口から明らかにさせた点では、功績があった。212

 山口敬之は北村滋・内閣情報官にも日頃から相談しているようだ。「北村さま、週刊新潮より質問状が来ました。伊藤の件です」と、山口は、北村にメールすべきところを、誤って週刊新潮にメールを返送してしまって、このことがばれてしまった。214

 伊藤が司法記者クラブで記者会見をしようとしたら、伊藤周辺に不審な(妨害的な)行為225が見られ、また報道機関に対して「ひどいネタだ」と、侮辱的な、報道をやめさせようとする指令が、警察を含む政府サイドから出されたらしいのだが、そういう警察を含めた政府サイドのネットワークが存在するのだろう。これは映画『新聞記者』の中でも示唆されていたことだ。
224 知人のジャーナリスト「政府サイドが各メディアに対し、『あれは筋の悪いネタだから触れない方が良い』などと、報道自粛を勧めている。」
227 会見後、嫌がらせや脅し、批判のメールが殺到した。

 検察審査会も取り上げてくれず、「不起訴相当」なのだそうだ。002, 249

 日本のマスコミは今後も伊藤を採用してくれないのだろうか。230

 肉体的・精神的に支配されることに対する恐怖感。233
 スポーツは気分を爽快にしてくれる。229
 
 伊藤の執念はすごい。

 権力と警察や報道との癒着、恐ろしい。


2020.1.29


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