『行の訓育』土方恵治 モナス 昭和14年1939年10月
感想 2023年2月8日(水)
掛け声・スローガンに意味がない。それは信仰である。「八紘一宇」「真座」「真歩」「行」「黙祷」「皇居遥拝」「中心帰一」「億兆一心」「滅私奉公」「祖先を尊べ」「恩を忘れるな」「忠君愛国」「皇室を尊べ」「忠義」「国旗掲揚」「氏神参拝」「神仏礼拝」…
これらの掛け声がなぜ重要なのかについての説明が一切ない。アプリオリに既定の事実・真実とされている。それらが個人にどう関わるから重要なのだという説明が一切ない。信仰なのである。
感想 2022年11月10日(木)
彼らの論理は非論理であることが彼ら流の論理である。典型的な表現は人篇の4月の行事の初めに述べられた「四月の指導精神」347だったと振り返る。彼らの論理は情念である。
感想 2022年11月9日(水)
「修養団」について Wikiより
本書『行の訓育』は著者も触れているように突然成ったものではないようだ。本書末尾近くで「修養団」なるものについての言及503があるが、Wikiによれば、戦前では渋沢栄一、平沼騏一郎や右翼がこれに接近し、戦後では松下幸之助(顧問1976-1989)を始めとする日本の財閥企業(戦前から介入している)がこの団体の活動を企業活動の中に取り入れて社員教育を行い、経済的にも精神的にもこの団体を支援していた。また日本のボーイスカウトもこの修養団活動から生まれた。修養団はWikiに掲載された写真を見ると、現代でも立派な高層ビルを構えていて、内閣府が認定・支援している。修養団は慈善事業もやっている社会教育団体とされ、「公益財団法人修養団」2011.4.1--と称している。修養団は、企業家やそれを支援する自民党政府にとって、体制維持のための好都合な存在なのだろう。
Wiki「修養団」 を最初から再読してみると、
修養団は1906年明治39年2月11日に蓮沼門三によって創設された社会教育団体であり、蓮沼は日本主義による倫理の確立を目指した。(最初から反共だった)当初は青山師範学校(現・東京学芸大学)の学生運動「美化運動」として出発した。「総親和」「総努力」をスローガンに「白色(赤色ではない!)倫理運動」を展開し、大正デモクラシーに逆行する日本精神の普及を行った。
昭和初期には国家主義者から期待され、1937年昭和12年8月24日に閣議決定された国民精神総動員運動を民間の側から推進した。機関紙『向上』を発行した。
今日でも子ども自然体験キャンプ、海外の恵まれない子たちとの交流活動や、家庭教育、社会人教育を行っている。
二代目団長の平沼騏一郎は国政運営の指針として修養団の「総親和、総努力」を挙げた。初代後援会長は渋沢栄一だった。戦前から住友金属、日立製作所が支援し、修養団の教えを広めた。
蓮沼の三大主義 第一、瞑想・胆力・憤怒抑制、第二、偉人崇拝、第三、流汗・努力・同情
団員資格としての二つの誓願 第一、同胞愛と争いの根絶、第二、流汗・鍛錬
そして大正時代の入団案内にはさらに「皇国の進運に貢献」とある。
蓮沼の設立趣意書 「本日2/11神武天皇大業成就の目出たき日、邦家の前途を思い、殉国の覚悟を胸に秘めて…世のため人のため金あるものは金を出せ、国民が各自の物を出し合って協力することこそ、国家の発展も、社会の進歩も、世界人類の幸福もある。」
1909年、蓮沼は渋沢栄一から資金援助を受け、その後、政財界や教育界の有力者から後援を受けるようになった。1919年、住友財閥(小倉正恒)が援助。激化する労働争議に対抗するために小倉は住友製鋼所、住友伸鋼所(後の住友金属工業)、住友電線へ修養団の支部を拡大した。修養団は八幡製鉄、東京電機会社(現・東芝)にも導入された。1921年大正5年、支部175、団員6万6718人。師範学校、大学、工業事業場、市町村などにも支部を開設した。
1926年大正15年、代々木の現在の修養団の土地を宮内省御領地から無償貸与され、修養団会館を建設したが、同じころ田沢義鋪が明治神宮外苑に日本青年団を建設した。日本青年団は修養団活動を労働者や企業に広めるのに協力した。
1919年、「協調会」が「官民一致の民間機関」として、床次竹二郎・内務大臣、渋沢栄一、日本工業倶楽部によって設立された。「協調会」は労働争議の調停と労働者講習会を行って成果を上げた。協調会が修養団式の講習を行うことによって修養団活動が企業に浸透した。
昭和初期、国家社会主義、革新右翼、観念右翼が修養団に期待した。軍部も産業界も植民地統治者も期待した。修養団は1934年昭和9年9月、東京府委託満洲開拓団移民訓練所、満州国産業開発先遣隊員短期訓練事業、知識階級百日訓練道場などを行って国家に協力した。戦時中の団員数は600万人。
戦後GHQは修養団と報徳会の存続を認めた。修養団は国民道義、家庭教育、貯蓄推進、幹部勤労者啓発、勤労者啓発などの活動を活発に行ったが、企業内活動が中心で、一般人は対象にしなくなった。とはいえ、国や地方公共団体の社会教育運動を行った。
1974年4月に結成された「日本を守る会」に修養団は結成当初から参加した。
大正2年、蓮沼は小柴博に日本ボーイスカウト連盟の前身「東京少年団」を組織させた。
修養団は伊勢市に所有する「神都国民道場」で、企業の新入社員の愛社心を養成するために、皇大神宮前の五十鈴川での「みそぎ研修」を企業に提供している。堀幸雄『戦後の右翼勢力』は1982年4月20日付の毎日新聞を引用している。
「白装束、夜9時、ふんどし一枚、エイサ、エイサ、水温4度、「肩までつかれ」、合掌、明治天皇の和歌「こころを洗え」を全員が大声で唱える。…3泊4日、中山所長「自衛隊の体験入隊は規律が厳しいが魂が入らない。禅寺で座禅を組むのは魂があるが規律がない。ここではその両方がある。修業を通じて父母・祖先への思いを深めさせ、自分が生かされているという実感を体得させ、自己に内在するいのちを活性化させ、ひいてはやる気を起こさせますよ」
日立グループ、住友金属、宇部興産、三菱金属、トヨタ車体、東芝、三菱電機、松下電器産業などが継続的にこのような社員研修を行っている。(死んでも嫌だね)
土光敏夫が修養団をバックアップした。
感想 2022年11月9日(水)
憶測だが著者は関東のおそらく東京の小学校の教員だったかもしれない。友人として川崎の小学校教員(校長)を紹介している。川崎市向丘生活行学校長碓井正平の説(「教育勅語に垂示さるる指導精神」「斯道の尊敬(or尊厳)性(歴史性と世界性)」)を著者は最も賛成していると言う。453, 454
著者は本書以前に次の書物を公にし、その説が今回国民教育審議会で採用される472など、世間に知れ渡っていたらしい。『学校行事の綜合的生活経営』(東洋閣)
国民徴用令483(昭和14年1939年公布)というのも恐ろしい。ここで仕事をせよと今までの仕事を捨てて転勤を命じられるのだから。
感想 2022年11月8日(火)
「秋は哲学の季節だ。皆は哲学をせよ。」443と書いてある。ええと思っていたら、その哲学とは「青少年学徒に下し賜りたる勅語」(昭和14年1939.5.22)のことを言う。哲学とは「知を愛する」ことではなかったか。どうして上からの頭を抑えつける無思想容認の勅語を哲学と考えるのか、意味不明。
感想 2022年11月6日(日)
つまらない。これでこの種の本を読むのは止めよう。杉田水脈の論文、もしあるとすれば、を読んでいるようなものだ。権力に取り入られた者の、いい加減で、威圧的で、排他的な文章である。それが本書の売りなのだ。347--349
「前荒木貞夫文相」361と言っていて、本書が出版された時が昭和14年10月だから、それ以前に荒木貞夫が文相をやめている筈だ。確かに昭和14年8月30日に辞めている。
自己満足し、時には支離滅裂で意味不明な文章だが、本書の売りは排他的で強硬であるということである。それが権力に認められ、出版されたのかもしれない。
著者は都会380の小学校の教員405, 「土方先生…高一」429のようだ。
Wiki「荒木貞夫」によれば、
1938年(昭和13年)5月26日 - 1939年(昭和14年)8月30日まで第1次近衛内閣・平沼内閣の文相として国民の軍国化教育に邁進した。
1940年(昭和15年)1月20日 - 内閣参議( - 7月22日)
Wiki「内閣参議」によれば、
内閣参議(ないかくさんぎ)とは、1937年(昭和12年)から1943年(昭和18年)にかけて存在した日本の内閣の諮問機関。
近衛文麿が1937年(昭和12年)7月7日の盧溝橋事件から始まった日中戦争に関する政治方針を諮る目的で設立した。根拠法令は勅令「臨時内閣参議官制」で1937年(昭和12年)10月15日に公布し即日施行された。内閣参議は国務大臣待遇であり、設置にあたり宇垣一成、末次信正、町田忠治、池田成彬、荒木貞夫、安保清種、郷誠之助、秋田清、前田米蔵、松岡洋右の10名が任じられた。
参議の選任は勅命であり、この内閣参議から近衛内閣の閣僚となった者が多かった。そのため、補充が行われる事があり、久原房之助、林銑十郎、勝田主計、安達謙蔵、中島知久平、大谷光瑞(鏡如)らが追加されている。このように、近衛文麿の構想に基づく組織であったため(ただし、途中の平沼内閣・阿部内閣・米内内閣にも内閣参議が置かれている)、1941年(昭和16年)7月18日に第2次近衛内閣が総辞職した際に全参議が辞任したものの近衛の辞表預かりという形になった。その後東條内閣が成立した直後の10月22日に正式に辞表が受理された。以後は選任勅命もなく、事実上の休眠組織となった。
1943年(昭和18年)3月18日公布・施行の勅令「内閣顧問臨時設置制」によって形式的には内閣顧問に衣替えし、内閣参議は廃止された。
以上でWikiからの引用は終わり。
感想 「勉強」「物を大事に」「怠けるな」「辛抱強く」(修身283)、「仕事に励め、協同」「我が儘を言うな、忠実に」284、「癖直し」285、「至誠」「忍耐」「勇気」294、「整理・整頓」「我慢」「身なりを正す」「和やかな食事」「家庭的な和やかさ」「日本女性として純真な情操」「日本精神」「けがれを除く」「恩を忘れるな」「質実剛健」等々分かったようで意味の薄っぺらな言葉だ。上からの押し付け、徳目である。「父母に孝行、夫婦相和す」とかも同様。発展性や自発性がない。
「世界の大英主明治天皇の御遺徳を敬仰し昭代(太平の世)を追憶し、感奮興起、益々報功の誠を尽くし、皇猷(ユウ、謀る、道)を翼賛し奉り、国軍の進展を期する」274 「明治節」の「綜合生活機構」
「日の丸弁当」294、「礼儀作法」297、「物質にとらわれぬ」305、
「一点の私心なく、身命を惜しまざるもの」315 「桜田烈士、義士の討入」に関するコメント。
「早朝起床、冷水にて洗面、神仏礼拝、氏神参拝」320
「我が国体の世界に冠たること」302 「四方拝」に関して。
「義務をつくさず権利のみを主張したがる近代社会」323
感想 略号や説明のない用語を用いていることは、著者が教育関係者ではないかと思わせる。例えば、「関連素材」として「修、忠君愛国170」「国、神武天皇160」「理、さくら163」「読、ヘイタイ169」「地、印度164」などだが、それらはそれぞれ、修身科、国民科、理数科、読み方、地理科ではないか。読み方や地理科は国民学校制度の導入にともなって縮小された四科目から外される。
また「綜合生活機構160, 164, 171」は意味不明だが、当時の教育関係者ならすぐに分かるジャルゴンだろうと思われる。
感想 国民学校制度によって教科数が減った。何が減ったかというと、人文社会である。それが国語を含めて一つにまとめられ「国民科」となった。理数科は残った。実用的だからだろう。人文社会など理屈を言うやつはいらない、天皇さえ知っていればいいということだろう。つまり、従来の十数科目を四科目にした。国民科、理数科、体錬科、芸能科である。(ただし高等国民学校では実業科が加えられたが。)149
感想 著者は何者か。坊主か、教員か。禅宗008だとか法悦005とか自然法爾010とか、行や道とか仏教関係の用語を多用する。しかし坊主にしては学校の事情をよく知っている。坊主でかつ教員なのかもしれない。この坊主は神道と合流し、教育勅語的天皇中心主義の軍国主義総動員体制を謳歌する。そして自由主義、民主主義、共産主義など西洋的なものを頭からこっぴどく十分な理由もつけずに否定する。それでいて時々英語(「イクオールequalである」136、「コーヒー」288、「デスカツシヨン」312)を使うところがいやらしい。本書が出版された昭和14年1939年は、第一次近衛内閣の文相荒木貞夫が国家総動員体制1938を始め、国民学校1941案を唱え始めたころであり、著者はそのころの教育イデオローグである。荒木と縁があったのかもしれない。
感想 「行」とは仏教・禅宗の「行」らしい。「行」の繰り返しで少年・少女に天皇中心の軍人としての心構えを擦り込もうということのようだ。そのためには自由主義や民主主義、共産主義は邪魔ものだ。
「行」とは「悟りに到達するための修業」(精選版 日本国語大辞典)
感想 この本はこれまで読んだ本の中で一番ひどい。論理的でない。韻文的・感情的で、独善的感情の吐露。意味不明。僧侶みたいなことを言っているが、真偽は不明。教員ではないようだ。
「自然法爾(じねんほうに)の訓育あるところ道の文化の華を見得るのである。」010
*自然法爾とは仏教用語であり、真宗では「自力を捨てて如来の絶対他力に包まれ任せきった境界」をいう。「おのずからそれ自身の法則によってそうなっていること。」
自由主義、民主主義、共産主義(唯物主義)に対する反感を述べるのだが、その論証はない。
「本篇は自由主義、民主主義、唯物主義を打破し、皇運扶翼、億兆一心、没我顕真を三原理とする日本精神、皇道により、運転されつつある教育戦線の現地報告である。」002
これまで積み上げてきた教育学的蓄積を放棄するようだ。
「小学校の訓育にはあまりに『思想の雑音』が多い。まず校訓を見るがよい。何々教育学何々教育思潮等教育理念の景気不景気によって看板を種々に塗り替えられる。」007
「かくの如き『思想の雑音』によって育まれつつある子等には何ら生活理念もなく、また生活の理念を真実なるマコトの姿において見出そうとする態度も見受けられない。」007
「『常に何事をなすにも、君・神・師・親・長上の御為に総ての人と心を一にして、真剣になり切って作務する労働禅』が必要なのである。」012
感想 強引で時には意味不明な論理構成。天皇や神話の中の神を中心とする宗教に基き、排他的(自由や民主主義、唯物論、児童中心主義教育の否定)で自己中な自己満足に基づく圧政的な教育=軍隊教育。現代の暴力的な自己中民族主義的差別=ヘイト(場合によっては最近放火などの暴力を伴う)はこれに共通する。自己中で暴力的で非論理的である。今は極めて危険な状況にある。
031 異様な奉安殿礼拝
038 「鎮魂」 039 前平沼総理大臣閣下を顧問とする修養団が用いているという「道のひかり」第六章「明魂」の朗唱
040 「道のひかり」「心の力」「昭和国民読本」「明治天皇御製謹解」や新聞・雑誌の記事などを教員は職員修養として輪番に読んだ。
049 「挨拶」 児童中心主義教育の批判。
053 「理屈ではない。行だ。実践だ。」
054 「真歩」 愛馬の歌、愛国行進曲などに合わせて行進する。
057 『道』への修練 「形であってはならぬ。理論であってはならぬ。『道』であらねばならぬ。」
要旨
序
001 本書は教育理論の書ではなく、教育戦線第一線における血腥い現地報告の手記である。(理論と手記とどう違うのか、ごまかしがある。)「我謹み畏みて陛下のオホミタカラ(子ども)の教育聖戦に殉ぜん」と歓呼の声に送られてから幾年月!大陸や欧州の敵を破ることは簡単だが、味方の陣営に異常あり。(スパイがいるということなのだろう)教育戦線や思想戦をどう撃破すべきか。
002 天篇は自由主義、民主主義、唯物論を打破し、皇運扶翼、億兆一心、没我顕真を三原理とする日本精神・皇道によって運転されつつある教育戦線における現地報告(現場報告)である。学校道場、生活行学校、心身鍛錬学校、興亜学校などの学校経営に新出発をしようとしている日満支の校長、主席訓導に御一読を願えれば望外の光栄である。
地篇は国民学校案実践に向けた革新教育家諸賢に捧げるものである。これは明後年(再来年、1941年)度から実施されることになっている国民学校案実践上の緊要問題である、行事の教科課程の中への系統化・組織化を、学年別・月別に試験(試案)したものであり、実践に向けた一先駆・捨て石である。
003 人篇は陛下の大ミタカラを訓え育て奉る毎日の聖業報告である。特に自然、行事、社会事業のもつ、生命の見方や実践方法の、禅的・修養団的―日本固有の、行即道の上に立つ点に留意され、興亜教育の明日へのヒントとなれば欣快である。
この報告の素材を提供してくれた向丘生活行学校長の碓井正平氏の義侠に感謝する。
昭和14年1939年9月21日
序篇 生活行による訓育一新
1 旧訓育の不徹底とその清算
一、「賽の河原」訓育の清算
003 (現代の教育(者)は)心理学における方法転移、態度転移、新形式陶冶などが真実であると信じつつ、修身徳目の分析的研究や行事の教育的研究が進むにつれ、益々多元の(多数の)変転を繰り返しつつある。これは訓練の根底に共通する血脈――マコトの生活態度を以てマコトの生活を実践すること――に徹せず、訓練を徳目の実践であると考えた末梢的・小児科的訓練における矛盾と撞着と不徹底とに終始あえぎつつある断末魔の症状である。
金剛無量素(禅宗か)の訓練世界に向かう反省と思索と同行とを法悦*したい。(金剛無量や法悦など仏教的・禅宗的な匂がする)
*法悦 仏法を聞いて喜ぶ。
二、「仏造って魂入れず」訓育の清算
005 真の訓育は実践の技術的訓練でも、強制されて行うものでもない。全身全霊のマコトの心境態度の練磨である。日の本の国に生まれて我が身の無上なる幸せを感じ、山川草木諸物一切仏性ありとして一枚の紙屑をも生かそうとするなど、心の躍動を見る心境・態度・心構えを訓育することが今の教育では無視されている。
三、「売笑婦的」訓育の清算
006 「売笑婦的」訓育とは児童の気分を極度に尊重して気分本位の訓育に堕する、自由主義、民主主義――赤の思想に根ざす訓育であり、それは恰も売笑婦が甲の客、乙の客、丙の客とそれぞれの機嫌をとって自己の生計の資を得んとするが如き態のものである。(「売笑婦的」とは感情的で非論理的なひどい批判の仕方だ。)そこには「青少年学徒に(下し)賜りたる勅語」の中に見られる気節も節操もない。(どういうことか)この訓育は所定めずにさ迷う根無し草を作りつつある。(変化を否定するのか)
売笑婦的訓育は形式的実行だけを追い、真実の意志的自覚を目覚ます鍛錬を欠き、その自覚への動機を与える力もない。
自覚とは何か。それは「我を空しくして自ら覚る」(自覚)における「みずから」を「おのずから」に転回させることである。そしてこの「おのずから」は単なる自然ではなく、「論理を通過した自然」、即ち「究極の自然」(宗教的)であり、「おのずから」を付ける必要のない「覚そのもの」である。「覚そのもの」は「既に体験を通して得たもの」であり、「得即徳」である。この自覚への訓育がないところに「道」としての訓育はない。
感想 自己中。宗教的非論理性。自由主義・民主主義・共産主義に対する批判も「売笑婦的」などと口汚く、非論理的で、根拠を示さない。
感想 2023年3月4日(土) 欧米の教育法を読みもしないで、天皇中心主義をアプリオリに善ととらえ、欧米批判をするための材料をあちこちから探してくる。自己中とはそんなもの。今の政治にも当てはまる。
筆者は欧米の教育法を「先生が生徒に対して甘い」と捉えて「売笑婦的」と評したのだろうが、品がなく差別的だ。誰もすき好んで売笑婦などやってはいない。家が貧しいからやっているのだ。欧米の生徒中心の教育法は、昭和7年に書かれた『現代教育教授思潮大観』が触れていたように、生徒自らが学習しようとする自発性を重視するものであり、その成果は個人個人が自己主張し、民衆一人一人が民主主義を形成して行く風土を欧米にもたらしたのではないか。その点、長いものにまかれろ式の日本人の民族性とは大いに異なる結果となったのではないか。
感想 2023年3月4日(土) その2 私は当初筆者が欧米の教育法について知ったうえで、それを「売笑婦的」と批判したものと考えていた。つまり、生徒中心主義的な教育では教師が生徒に阿ることになるという意味で、それを批判したものと考えていた。しかし、再読してみると、筆者は「売笑婦的」という言葉の意味を、その言葉の最も軽蔑的な意味で使っていることが分かった。つまり、教師が生徒を自らの身銭のための手段と考えている。そして、この「売笑婦的」という侮蔑的言葉は、欧米の教育法ばかりでなく、それと同類と見なされる自由主義、民主主義、共産主義(筆者は「共産主義」とは言わずに「アカの思想」と侮蔑的にいう)もこき下ろすための言葉であったということに気づいた。読みもせず、知りもしないで、欧米の教育法や自由主義、民主主義、「アカの思想」をくさしているのだ。筆者の論理は全く取るに足りない自己中そのものである。
四、「思想の雑言」訓育の清算
007 小学校の校訓は教育学や教育思潮が変化するたびに変化する場合もあれば、数世紀以前の(校訓の)看板を掲げている学校もある。それらは「思想の雑音」の表現である。(思い切った断定的な言い方だ。なぜ雑音なのかの理由は示さない)
「思想の雑音」の下で教育された子供には生活の理念がなく、「真実なるマコト」を発見しようともせず、変化に流されつつ自己保身を願ってばかりいる。
2 新訓育の方向
一、「生涯受用不尽」の訓育
008 (禅宗の援用)岡山曹源寺の禅僧・儀山和尚は、小僧が風呂を薄めるのに使った後に余った僅かの水を庭に捨てるのを見て、「道の修業を志す者は大切な水の生命を生かさなければならない。地面に水があると歩くのに邪魔だし、雨がなく水を乞い求めている草木にその水をやれ。そうすれば草木も水もお前の仕事もみんなが生き結ぶ聖なる行となる」と諭した。
この水の生命に諭され、これを生涯の指導原理として名も滴水と称し、「曹源一滴、七十余年、受用不尽、蓋地蓋天」*という一句の偈(げ)を残した高僧の生活訓練過程を今の教育も学ばねばならない。 一滴の水の原理を生涯受け用いて一切の生活原理として尽きない道の訓育を樹立しなければならない。(なぜそんなに宗教にこだわるのか)
*「曹源」は曹源寺から。
*偈(げ)は経典の中の詩句形式の部分。四句から成るものが多い。
二、「自然法爾」の訓育
010 茶道の境地とは、心も技術も霊肉一体となり、無理や不自然さやみっともなさがない。人が茶碗か茶碗が人かの境地において茶を飲む。これは即ち茶道の妙境に入ったと言える。
この茶道の境地のように、「自然即規範、自由即統制、個人即全体の訓育」(なぜ茶道の境地では自然が規範と等しいのか)が望ましい。単なる知識や技術だけではだめだ。ありふれた基本的生活を「自然で価値的な自然法爾」にすることが望まれる。この自然法爾*の訓育は「道の文化」をもたらす。
*自然法爾(じねんほうに)とは仏語で、真宗では自力を捨てて如来の絶対他力につつまれ、任せきった境界。このことから筆者が言うところの「道」が仏教によるものであることが分かる。
三、「不許例外」の訓育
011 例外を許すと訓育は結実しない。一度訓練が徹底されれば、永劫に魂と身体の習慣となり、忘れようとしても忘れられなくなる。
四、「国是即校是即級是即生活是」の訓育
012 新訓育は日本精神を生活の基本的事象に於いて修練しなければならない。そこに「思想の雑音」が入ってはいけない。国と共に進み発展する訓育でなければ真事ではない。(なぜ)「八紘一宇」や、「民族を無彊に蕃(し)く(増やす)」*という国是の実践には、大日本帝国の実践道である教育勅語の「中心帰一の原理」=忠孝、「全和産霊の原理」*=億兆一心、「没我顕真の原理」=誠心などが必要である。(なぜ)「常に何事をなすにも、君・神・師・親・長上の御ために、総ての人と心とを一にして、真剣になり切って作務する労働禅」が必要である。それには「青少年学徒に(下し)賜りたる勅語」の中の「思索を精にする」「識見を高める」「気節を尚ぶ」ことが手綱となる。以上の国是・実践道が教室、校庭、家庭、部落などの至るところに常に翻るところに「日に進み日に新たなる」大東亜建設の営みがある。
*「蕃」は「しげく」とも読み、「茂る」の意味がある。
*「産霊」は「むすび」と読む。
感想 筆者は労働を禅と考えている。
五、「活殺自在」の訓育
013 「不許例外」の訓育は「活殺自在」の訓育と矛盾しない。臨機応変に思索を進めて欲しい。興亜を建設しつつある将兵の作戦も、興亜の礎石を固めつつある外交官の戦いも、興亜の訓育に「活殺自在」の創造を求めている。(ご都合主義)
*筆者は「活殺自在」を「臨機応変」という意味で用いている。
3 生活行による訓育の指導原理
一、主観的指導原理
――肚に結ぶ一Hの訓育――
014 「行」とは「霊肉一体となって全身全霊を以て行う真剣な自然即価値の作務」である。(観念的)換言すれば、「頭と胸と手足とを肚に統一する訓練」である。その頭Headとは知であり、技術に即して誤りのない「自然即価値の真理」であり、胸Hartママとは「没我至純の心情」であり、手足Handとは「真理に即した水も漏らさぬ細心の技術」を言う。(分かったようで分からない神がかった表現)
015 この頭・胸・手足の三つをハラ(肚、Hara)の一Hに統一する訓練が、行の訓育形態の主観的方面である。(言葉遊び)頭に偏すれば主知主義の訓育に陥り、胸に偏すれば感情主義の訓育に陥り、手足に偏すれば技術本位の唯物主義の訓育に陥る。西洋の訓育はこれらのいずれかであった。三Hのいずれも生かし、肚に結ぶ訓育が「行の訓育」であり、それは学習、作務、日常の基本などのすべてをこの肚に統一する行によって行われる。
行とはその体験を通して「内在の霊を呼覚し」、「永遠の生命・無限の力に連なる自己の生命を掘り出すこと」であり、今までとは違った精神的動向を生み出すことであると大倉邦彦*氏は述べられている。
この行には二つの方向がある。一つは特別な環境や与えられた条件の下で静かに行ずる静的行である。例えば、神仏礼拝、鎮魂帰神、禊祓*、座禅、念仏などである。これらの静的行は、これから大いに活躍し活殺自在の大見識の下で行われ日本魂本来の面目を打ち出すための修業である。
もう一つは日常の動いている生活や仕事を、上述の静的行の「精神即宗教的な行」として行おうとする動的行(生活行)である。
*「禊」(みそぎ)は川原などで身を洗い浄め穢れを落とすこと。「祓」は「はらい」
016 この二つの行は車の両輪のように、「日本人としての正しい人生観」を内に確立させてくれる。 「己を捨てて君国のために日常の仕事を行じつつ行く」ことは最も手近な奉公の道である。だから「生活を行にまで」と叫ぶのである。
*Wiki「大倉邦彦」によれば、
大倉邦彦(明治15年1882.4.9—昭和46年1971.7.24)実業家、教育者。大倉精神文化研究所を創設。東洋大学学長。修養団評議員、聖徳太子奉賛会評議員、大政翼賛会や大日本産業報国会での要職。「日本の教育界・思想界の乱れを憂えた。」
二、客観的指導原理
――八紘一宇の肚に常住する―― 上述の根本原理は「八紘一宇の肚」に常住しなければならない。
1 今(時)の絶対具体性に立脚し、過去将来無始無終に続いて結ぶ我の心境態度において一切の生活行を行ずること。
2 茲(場所)の絶対具体性に立脚し、東西南北四方上下八紘一宇全世界に続いて結ぶ我の心境態度において一切の生活行を行ずること。
3 一切万事の生活を、中心に帰一し、億兆一心・没我顕真を以て、皇運扶翼の大業を完成する作務とすること。
017 つまり歴史性と世界性の交点に立って皇運扶翼の大業を肚で行ずることである。そしてその自覚によって我のなしつつあることに力強さがあり責任も生ずるのである。
感想 恐ろしい。全ての日本人は天皇のために四六時中日本を中心とする世界制覇(八紘一宇)のために尽くせ、それが行の訓育の狙いだと言っている。よくここまで思い上がったものだ。
4 生活行の同志同行
一、求道修業への志向
生活行の訓育で最も肝要なことは自ら進んで道を求めようとする道心である。「道心があれば一塊の土くれも有難い経文となり、無言の聖典・宝典となる。」(すでに信仰の域である)
古の日本の教育や禅堂の生活希求者に対して、まず道心があるかどうかを調べてから入門を許した。修行者は求められる心を養い、指導する側の我々導師は自らを補いつつ求道者に道心を与え、(修行者に)同行することが必要な前提である。
二、師児一体の同行
018 師は教えるよりも行じて示し、叱るよりも自らの内なる心を省みるべきである。
019 教師も児童も「吾は日本人として不完全であるが、我皇祖神の日子・日女(ひめ)として神の子である。止むことなく行ずれば、「マコト」の体現者である神(ミコト)の境地に達し、日本人としての本性を発揮することができるだろう」という大きな信念に立って生活を「開現」してゆかなければならない。
これに反して「個人主義的妄想」によって「己を暗くし」、「自由主義的分裂」によって「魂の分裂・弱化を招き」、さらには「唯物主義的機械化的生活」によって「魂の偉大さをなみし(ないがしろにし)」、個人としては「不安焦愴して安住できない暗い日々を送り」、国民としては「安逸放縦な現状維持の徒となり」、国家の弥栄を弥栄に遂行することがなくなることを警戒しなければならない。(意味不明)
教師も児童も入学準備や職業準備などの功利的な学校教育を清算し、「皇国文化百年の建設発展に霊肉一致のマコトを捧げる」基本的修練こそ、教育一新の目標である。(マコトか)
三、修理固成の日本的修行
生活行の訓育は修理固成の「日本的」修業である。修理固成とは、古事記国土創成の条に、
「是に天つ神諸々の命以ちて、伊邪那岐命・伊邪那美命二柱の神に、是のただよへる国を修理〇り*固め成せと詔ちて、天詔矛を賜いて事依さし賜ひき」
*〇は一字脱落。「修」も「理」も「おさめる」と読む。
とある。「修理固成」とは「生み修め、生み理(おさ)め、生み固める」ことであり、本居宣長はそれを「生み成す」と言った。「修理固成」は日本民族が生々発展する原理を示す。御二神による国土の経営も、天照大神の御鴻業も、神武天皇の御東征も、今事変(日中戦争)も、皆「修理固成」である。(対外侵略が日本民族の発展か)そして我の内なる道の築きもまた「修理固成」によってなされる。
この「修理固成」は現実の事実であり、「コト」「コトワリ」「コトワザ」である。「修理固」は「コト」→「コトワリ」→「コトワザ」であり、「成せ」は「コトワザ」から再び高次な「コト」=マコトへ還元することである。(理由は?言葉遊び)日本的修練には満足がなく、行ずれば行ずるほど我が身の不完全さや不甲斐なさを感じ、ここで再び「修理固成」の行を行い、こうして螺旋的な発展をなしつつある無終の行である(となる)。
法演禅師は門下の覚老に問うた。「釈迦弥勒又是他奴也、他是何誰」と。覚老は即座に「胡張三、黒李四」と答えた。法演はこれを是とし、翌日また同じ質問をした。覚老が何気なく昨日と同じ回答をしたところ、法演は大喝し「昨是今不是」と叱責し、遂に覚老に「釈迦も弥勒も共に他人になるのではなく、己自身を主とするものである」と答えさせた。(意味不明)
革新興亜の訓育は「修理固成」を信念しつつある生活行者によって大東亜を現出することである。興亜の生活行者になろうとする若い師児に次の言葉を贈る。「何くそ!よし、必ずやってみせるぞ!」
感想 支那事変が修理固成つまり日本民族が生々発展するという原理に基づくというのだが、それは狂信である。
感想 2023年3月3日(金) 筆者の論理構成は、古事記や古い仏教文献や茶道などと、現代の帝国主義的政治情勢やその教育への要請とを敢えて結びつけようとするのだが、それはなんとなく分かったような気分にはさせるが、やはり無理があるのではないか。結論が決まっているのだ。つまり、筆者の目指す教育とは、現在の天皇制軍国主義・帝国主義的政策を、命を捧げて推進する子供の育成であり、その推論を導くための故事の援用なのである。そこにはやはり無理がある。故事の意味自体があいまいで両義的で判然とせず、どうにでも理解・解釈できるのである。それと筆者は「肚」(はら)に独特で重要な意味を見出そうとしている。肚と心とを結びつけようとするのだが、これも曖昧である。
天篇 一日の生活行
1 登校
一、指導精神
1 総親和の旗風目指して
025 大東亜建設、八紘一宇の暁鐘が高らかに鳴り響く。「今日之を為さずんば、何れの日にか為すべき。汝の子孫をして徒に苦しますのみ」(現在の自民党の軍備増強の言説と似ている。)
興亜国民の門出――登校――自由主義思想に基づく自分勝手な登校は先ず清算さるべきだ。右の家、左の家、前の友、後の友、後の幼子、早きが遅きを、年長者が年少者を、互いに誘い合ってゆく姿。ここに全体主義生活行の光は輝き始める。日本精神の三原理億兆一心の(自由主義撲滅の)思想戦の始まり――
ここに根ざす成長が、よき部落の公民をそして国防婦人を生むのであると思うとうれしい。
感想 登校班が自分勝手な自由主義を清算し、良き公民と国防婦人を生むという。狂気だね。
2 区長の中心に帰一
026 日本国の三形態、日本教育の三原理は、中心帰一、億兆一心、没我顕真の真理である。この三原理中特に中心帰一の原理は日本国にとって善美な「実態」である。全体主義思想戦は中心を奉護することによって展開される。児童の最高学年中から選ばれた区長・副区長を中心に仰いで行動を共にすることは、中心帰一の真理を行ずる第一歩の実践形態である。優しく親切な兄姉としての区長――これに仕える弟妹の素直さ!(これは)家族主義教育の実体でもある。
感想 文句を言わずについて来い。恐ろしい。
3 物心の生命を生かす
日本精神は生かすことである。生命の本質を認知してそれを躍動させることである。(非論理的)自由主義思想による個の動作を重んじる自分自分の登校は分裂的な種々の弊害を生んだ。――遅刻、道草、石投げ、果物盗み、弱い者いじめ、自動車の後を追う等々。これらはその一小部分に過ぎない。
区長を中心としての統制主義的登校は、朝の時間を生かし、人を生かし、物を活かし、共生に栄え合ってゆく。
二、生活行規格 (これは実施上のポイントを示したマニュアル「規格」である。)
順序 |
行 |
行法 |
行精神 |
備考 |
一 |
登校挨拶 |
1「いって参ります」元気で朗らかに父母へ挨拶 |
1皇運扶翼の中心理念に向かって。いざなの意気込もて 2新東亜建設に門立つ出征軍人の心境にて |
自転車の登校を禁ず |
二 |
部落集合 |
1隣近所誘い合って、仲良く 2定刻に遅れぬよう |
1隣近所心を一にして聖戦に参加の意気込み、億兆一心の姿勢 |
1雨天は集合せず 2時計係を定める |
三 |
持物調べ |
1高学年役員児童は、下学年の学用具、手拭等の調べをする 2忘れ物をした者は取りに行く |
1親御のつもりで、忘れ物はないかどうか。(遠い子供には大きな子が取りに行ってやる親切さ |
集まった子供から順次に行う |
四 |
歩行 |
1人員点呼、出席調査の後下学年より二列に並んで左側通行 2体操時に習った正常歩で 3乗り物や道草に心して |
1万里の波濤を開拓するの意気込みにて行進すること 2眼と眼、心と心とを交わしつつ、すべてをいかしつつ |
1正副区長指揮による 2学年別指導者を決定 |
五 |
奉安殿礼拝 |
1歩行の隊形に奉安殿前に整列 2「最敬礼」区長の指揮により、一同恭しく最敬礼 3「解れ」にて各教室に入る |
1「両陛下の弥栄を寿ぎ奉り、 2今日一日総力をもって皇運扶翼の御ために邁進いたします」の覚悟をこめて |
区長指揮 |
027 「登校挨拶」の中の「いざなの意気込み」とは何か。
三、生活道場実践公開
1 登校挨拶
登校への門出は新東亜建設の聖業に門立つ皇軍の出征と同じ心境である。学校は(軍人としての)人生修業の道場である。「我皇軍扶翼の御ために立たん。いざな」の意気込みこそ、日本小学生のあるべき登校の門出の姿である。「いって参ります」(という姿の中に)元気さ、朗らかさを「見るがよい。」(元気さ朗らかさを示せ)誰の頭からも「学校へ勉強を教わりに行くのだ」とか「偉くなるために学校へ行くのだ」というような自由主義的・個人主義的思想はいつの間にか抜けている。嬉しい限りだ。
2 部落集合
029 日陰の坂道を背負って(何を)来る六年の女の子、小さな一年生の後から注意深く付き添って来る高等科の男は、一人でも多く、いや全部の者を聖戦に参加させよとする億兆一心の横の全体主義である。自転車で(人より)先に突っ走るような個人主義者は部落にはいない。
氏神を集合所とする部落、倶楽部・公会堂・出荷場などを集合所とする部落、――いずれも当該部落の自治役員によって定められた、個(個々の家から)の距離と学校への距離との統合された場所である。
高学年の児童の中から時計係が2名決められている。集合所の近くの家の時計によって自分たちの生活を規律的に律する。出発時刻の間近になっても兄弟が見えないとき、高学年の担任者がその子供の家に迎えに行く。
3 持ち物調べ
子供たちの忘れ物がないか、高学年の担任児童が調べる。修身、読方、算術、手拭、宿題など――これらは聖戦に参加するための唯一の貴重な武器である。それを忘れさせては陛下に相すまぬと親御の心で調べる兄・姉の心は、朝日に輝く。(神のようにまばゆい)遠い子どもの忘れ物は兄姉(役の)の子等が取りに行ってやる。
030 持ち物調べを済ませてから出発の合図を待つまでの間は、落書き・喧嘩・いたずらなどが多い時であるが、兄姉の子等は幼い子の復習・予習の難解点を指導し、面白い読書・話・遊びなどを指導する。こうして物や人や時が生かされ、日本精神の姿が表されるのである。
やがて時計係が報ずる出発の合図となり、区長が部落の子等を神殿に(あるいは庭に)整列させて出発する。
4 歩行
一年生を先頭に二列になって学校へ向かう。各学年の横には高学年から選ばれた学年別指導者がついて(お目付としての)面倒を見る。眼と眼、心と心とを交わして「無言の正常歩」で行進する。学校で習った正常歩の「実体」がこのような生活の中に適用されてこそ「全体国民性陶冶の綜合教育」があり得る。
時にはまた部落によっては、愛国行進曲や愛馬の歌などが歩調に合わせて唱えられる。部落の子等の心は「万里の波濤を開拓する」意気にいや燃えに燃えている。
031 左側通行、信号の見方、道草などが知識としての理解でなく、具体的な物それ自身において培われてゆく。
5 奉安殿礼拝
学校の門に近づくと子等の心は引き締まる。校門にかかった時、「歩調とれ」と区長が号令をかける。皆は「歩行の隊形」に奉安殿の前に整列する。区長が「気を付け」「前へ倣え」をさせ、厳粛な場を生み出す。
区長による「最敬礼」の指揮によって全児がうやうやしく御影に頭を下げる。一年(生)の全身にも「両陛下の弥栄を寿ぎ奉り、今日一日総力を以て皇運扶翼の御ために邁進いたします」という「日本人的国家生命」が脈々と流れている。この気持ちやこの血が流れていなければ嘘だ。今までの日本の教育はこうした心的態度を培わず、ただ形や知識を押し売りしていたに過ぎないと私は思う。
礼拝が済むと「解れ」の合図で各教室に分かれて入る。区長はその日の記録を日誌に記入し、部落担任の指導をいただく。
032 日誌(記入例)
昭和 十四年五月 十日 水曜日 (晴) |
集合状態 |
持物検査 |
集合所生活 |
歩行生活 |
|
一、お天気が良いので定刻よりも早く集まった者が多かった 二、尋一山田茂が泣いていたので連れて来た(係吉田音吉) 三、集合しなかった人 五男 石川金治 |
一、時間割はよくしてあった 二、三年井田よしは手拭を忘れたので取りにやった |
一、今朝は皆割合に早く集まって来たので、お宮の庭を掃いた |
一、三四年の人で列から離れる者が、二、三人いた。一年生はよく並んで歩いた。手本にしたい |
||
御指導 |
朝、お宮の除草をしたことはうれしいことです |
反省 |
三、四年の学年指導者は明日は特にしっかりやること |
||
記入上の注意
1 集合状態 定刻に対してどれほど時間が生かされていたか。近所隣同志がどれほど総親和になっていたか。集合をしなかったり、自転車で行ったりする自由主義的色彩のある者は誰々だったかなどを記入する。
2 持ち物調査 忘れ物は何か。それをどう面倒を見たかを記入する。
3 集合所での生活 面倒を見る兄・姉の指導の態度はどうであったか。どれほど時間・人・物が生かされたかを記入する。
4 歩行生活 皆がどれほど中心に帰一していたか。区長や役員の言うことがどれだけ守れたか。区長・役員は中心としての「光彩」をどれだけ発揮したか。そして左側通行や道草等も記入する。
5 反省 全体を通して特に反省の必要がある事項や、区長が全児童に向かって行った指示事項などを記入する。
2 朝の修養
一、指導精神
1 生活学校から道場学校へ
034 「知識学校から生活学校へ」という掛け声はいつしか前時代の遺物となり、今は「生活学校から道場学校へ」という掛け声に置き換えられた。
口では道場学校が唱えられているが、その組織機構の実際はそれほど革新されていない。これから組織形態の一つを述べよう。
2 自発活動としての場
035 朝の修養は始業前の行であるから、できるだけ自発的にやらせる必要がある。この朝の修養を「皇道扶翼の御ために役立つために」なすものであるという心境態度が肝要である。この心境態度が培養できれば、自発的に行われ、責任感も起こってくる。ただ技術の末に走らず、一にも、二にも、三にも心構えが重要である。
皇国の一員としての我であり我が学校であるという中心信念がなければ、朝の修養は成り立たない。
3 創造的な革新的生活形態
子供の生活姿態を心理学的に見ると三つのタイプに分類できる。与えられたつとめを果たさず却ってそれを破壊する破壊性の子供、与えられた仕事をそのまま義務としてやり通す現状維持的な子供、与えられたつとめの意義精神を生かし、それを形式から内容的に構成・創造してゆく創造的で革新的な子供。修養のできた子どもとは第三の創造性のある革新的な子供の型をさす。朝の修養で望む指導精神はここにある。
二、生活行規格
順序 |
行 |
行法 |
行精神 |
備考 |
一 |
修学 |
奉安殿礼拝解散後、静かに教室に入る。入り口で軽く礼 2先に見えている級友に「お早うございます」 3静かに道具を机の中に入れて、仕事に取り掛かる |
1静粛を旨とし、他の人の妨害にならぬよう十分意を払うこと 2我よりも劣る者の手を引いて共に聖戦に参加し奉るの心境態度 |
1導師は予め修学予定を掲示しておく――最後に真の自学に達するよう訓練づける 2低学年は外遊させるのがよいだろう |
二 |
鎮魂 |
1第一鈴で修学を終わり、級長が導師となって壇上に坐す 2一同瞑目(数息観二十まで) 3導師「道のひかり」の合図で一同朗唱 4朗唱が終わって「礼」 |
1心にわだかまる悪魔を一斉に吐き出してしまう 2鎮魂を以て修学に突入するという心構え |
1蓮沼門三著「道のひかり」第六章「明魂」を朗唱させる 2この間職員は職員修養の時間を設け、同様の修養を行う |
三 |
修祓 |
1朗唱が終わり第二鈴を待つ間に、小用や朝礼への身支度をする |
1身なりを整え、真の自己に帰り、大君の御前師の君の前に、いつく*心境態度 |
1羽織着用の場合は脱いできちんとたたんで腰掛の上に置く |
*いつく(齋く) 汚れを忌み清浄にして神に仕える。
*数息観 座禅を組んで静かに自分の息を勘定する修養の方法。安楽の法門。
*蓮沼門三1882--1980は修養団を設立した社会教育家。
三、生活道場実践公開
1 修学(授業前の自習のようだ)
037 奉安殿での部落別礼拝後に教室(道場)に入る。下駄箱からは男子は両手を握って静かに教室に向かう。女子は両手をみぞおちに組む。教室の後ろの入り口から静かに会釈して入り、兄弟たちに心から朗らかに修学の継続を波立たせないように挨拶する。「お早うございます」の声は友の修学を元気づける。
教室の背面黒板に修学予定表が掲げられている。修学上道に迷う者はこれを手引とし、修学が進んでいる子供は自分から創造して生活の愉悦三昧に耽っている。そういう子供が我より劣るものの手を引きともに聖戦に参加せんとしている。ここには劣っている者をますます陥れ、得意然とした昔の功利主義や自由主義の思想の蔭さえ見られない。
038 道場学校における生活の組織は知識・技術を単位とする方便主義ではないから、子供を始業前に校庭で遊ばせるべきか、それとも教室で自習させるべきかという論議は無駄である。(始業前の修学は)子供の身体を害し、体位向上の点からよくないのでないかという危惧の念が従来の知識偏重の書物学校で起こるのも道理であるが、道場学校では生活機構の中にその危惧を解消するための施設を持っている。朝の修学は始業後の修学の土台となる。それに反して朝の運動は疲労させる。これは実験済みである。
2 鎮魂
第一鈴が鳴り響くころ、級の子供のほとんど全部がそろう。いよいよこれから「総親和の聖業」が開展されるが、(その前に)先ず聖業を全うするために「鎮魂」が行われる。これは心にわだかまる悪魔の凡てを一度に吐き出し、「明魂」を以て修学に突入するための生活譜である。
039 第一鈴を合図に修学がやみ、級長が全児の導師となって壇上に坐す。一同瞑目。数息観(丹田(へそより少し下。ここに力を入れると健康と勇気を得られると言われる)で呼吸し、それを丹田で数える)二十まで。やがて導師が「道のひかり」という合図をすると、級児は一斉に「道のひかり」第六章「明魂」を朗唱する。これは「総親和、総努力」をモットーとする、前平沼総理大臣閣下*を顧問とする修養団で用いられている。学校よりも社会――工場、寺院――が(「道のひかり」が民衆教化のために採用されたのが)先である。小学教師、中等教師、大学教師が最も時代遅れだ。革新日本の道場学校は庶民階級からと言える。
*平沼騏一郎1867—1952か。平沼の総理大臣就任期間は1939.1.5-1939.8.30であり、本書の発行が1939年10月10日であるからつじつまが合う。
「道のひかり」第六章「明魂」
月歪(ゆが)むにあらず波騒ぐなり。止水(しすい)に映(うつ)る月を見よ。波立つ心に映つる万象は真(まこと)の相(すがた)をあらはさず。目暗むにあらず雲かかるなり。雲去ればまた輝く。暗き魂を通して眺むる世界は暗黒なり。静かなる心には、一本一草も仏の姿を現はし、明るき魂には、行雲(こううん)流水も神の妙工(みわざ)を啓示(しめ)すなり。悟れる者の生活には、怨もなく呪もなく、凡てを感謝し常に喜び絶えず祈る。花は情(こころ)なく開けども、月は心無く照せども、涙に仰げば月も泣き、笑ひて見れば花も微笑む。迷へる者よ。父を怨むな兄を呪ふな、妻を責むるな、子を罵るな。人を審判(さば)く眼(まなこ)を転じて己が魂を凝視(みつ)めよ。一切の怨一切の呪は、己が暗き魂の中にぞ芽生ゆる。朝(あした)に祈りて罪を悔い、夕に祷りて穢(けがれ)を潔めよ。かくて本性に帰り明魂を現はし、愛と汗との行者となりて光の中を歩む時、明るき世界は其の脚下より展開せられむ。(心情次第で世界が変わるという宗教的見解。)
040 学級の子等が各自の道場でこの朝の修養をなしているとき、導師である職員も、職員室に集まって、職員修養をやる。その資料として用いるものは「道の光」「心の力」「昭和国民読本*」「明治天皇御製謹解」その他時局的な新聞記事、雑誌記事などで、これを輪番に読む。全校がこの雰囲気に包まれた時、何とも言えない聖なる喜びに溢れ、ここに不思議な霊魂の躍動も見られる。職員修養の時は使丁も学校職員の一員として参加し奉る。
*徳富猪一郎『昭和国民読本』東京日日新聞 302頁 昭和14年2月11日発行 日本の古本屋 610円 送料350円~
目次
第一 明治時代
第二 大正・昭和時代
第三 精神的武装
第四 日本学
第五 日本学の源流 付録 信長の尊王と飾会の恢復
第六 日本学と徳川時代
第七 日本学と明治時代(一)
第八 日本学と明治時代(二)
3 修祓
041 トイレ(小用)や身支度などをして心身を修め祓い、第二鈴の朝礼時の合図を静かに待つ。
感想 「道の光」の朗唱は学校よりも先に、修養団の影響を受けた寺院や労働界ですでに始まっていたようだ。修養団の影響力は恐ろしい。「道の光」の作者は一体誰だ。Wikiには宗教団体らしいものが作成したビデオが掲載されているが、「道の光」それ自体の説明文書は見当たらない。
3 校庭朝礼
一、指導精神
1 帰依神師の行
「朝礼の生活機構を見ただけでその学校の教育精神が伺われる」と言われるほど、朝礼は意義深い行である。日本精神に基づく道場学校での朝礼は「帰一の行」の実践場である。
042 神武天皇は創業に当たり皇祖をお祀りし、ここからすべての政治が出発した。だから(現代の)教育も帰依神、帰依現人神、帰依師の行道から出発しなければならない。大神宮礼拝は帰依神の行であり、奉安殿礼拝は帰依現人神へ帰一する行であり、師児の挨拶は帰依師の行である。
帰依神師の心境態度が学校教育の出発点である。この指導精神があるところに朝礼の厳粛や紀律も生ずる。厳粛や規律は帰依神師の行導(道)の技術である。従来の学校訓練ではこの本質的意義を忘れ、ただ厳粛に規律正しくあれと強調する訓練があまりにも多くはなかったか。心的態度の訓練が行われていれば、技術は自然とついてくる。教育は末梢的な遊戯ではなく、本質的なものの陶冶である。
2 生活戦線への総勢揃
皇軍扶翼の生活戦線への総勢揃は、朝礼行のあるべき姿態である。聖戦に参加し奉る門出の誓いを見よ。その一言一句は没我顕真の文字である。
043 国旗掲揚と天皇陛下万歳はいずれも皇国運の隆昌を願う、具体的で最高最初のものである。ラジオ体操も皇国運扶翼の聖業へ参加するための体位向上策である。生活訓話も総勢揃のよい親心として(児童は)厚く(これを)受け(入れ)以て聖戦に門立つ。
生活戦線への総勢揃(をこのよう)に解するとき、億兆一心・没我顕真の他の日本精神原理も自然に脈打ってくる。これは大石良雄が主君の仇吉良上野介を打ち破ろうとして勢ぞろいしたことと同じであり、暴支膺懲に出で立つ皇軍の勢ぞろいがその現代的意義である。
3 ことあげせぬ無言の行
朝礼は子供たちに小言を言う場ではない。朝礼が小言や言伝(伝言)を言う場になっている現状は嘆かわしい。
朝礼を前述のような修養の場とするためにはできるだけ無言がよい。教師も児童も規格を心得ていて無言で行ずるのである。この雰囲気の教育的意義は大きい。
044 ことあげしない朝礼、眼と眼、心と心とが内意を理解して伝え合う朝礼行でなければならない。この境地に達しない間は何回も同一のことをその時その場で繰り返すべきである。「明日はしっかりやりましょう」で済ますのでは極めて効果が薄い。
二、生活行規格
一 集合 家順に廊下に整列、羽織を脱ぎ、運動靴を履く。男子は両手を握り、女子は手を胸に組む。縦横の人と歩調を整える。(生かし合って歩く)目当てを決めて真っすぐに歩く。両足をぴったりつけて歩く。(胆大細心=大胆で細心の注意を払う)級長・家長が導師となって指揮する。
二 整列 級長が導師となって自分の級の者を整列させる。指揮者が壇上で総指揮(体操主任訓導)。目と目で心を伝え合う。静粛・規律。静中動あり。
045 三 挨拶 導師が壇上に立って一歩前に出た時、児童は間髪を入れず「お願いいたします」と斉唱する。「お早うございます」「今日一日宜しくお導き下さい」の心情で。
四 大神宮礼拝 先導師に倣って、二礼(中心帰一の日本精神)、二拍子(億兆一心の日本精神)、一拝(没我顕真の日本精神)
五 誓願 大神宮に対し先導師が誓願し、全師児は合掌する。全身全霊で丹田から発声。「我は護国の柱となる」の心意気で。
六 三誓の鐘 鐘を合図に合掌の姿勢で「皇運扶翼・億兆一心・至誠一貫」を三誓。全児がそろって丹田から宣誓する。
七 国旗掲揚 三誓の鐘が終わると黙令で国旗に向かい、国歌を奏吹し、国旗掲揚に一同が注目する。日の丸の中心に全校の赤心を融化する。弥栄を念願し、厳粛に行う。
046 八 御影礼拝 先導師に倣って黙念しつつ御影礼拝。
九 天皇陛下万歳 先導師が壇上で「天皇陛下万歳」と発声し、全師児が唱和する。丹田から発声し、指先までが伸びる。皇国の弥栄を象徴し、命懸けで発声する。
十 ラジオ体操 指揮者の合図で開始。洋服のボタンをはずす。皇運扶翼に役立つ身体の練磨を自覚・自証しながら。
十一 生活訓話 時に応じて行う。目の位置、足の位置(に注意)。真聴、真学、教えを受け答えるという行。
十二 真歩 指揮者の号令で敬礼。ラジオの行進曲に合わせて昇降口前まで正常歩行進。昇降口前で止まり、整頓。戦場に向かう溌剌たる歩き方、「千万人と雖も我行かん」の意気込みで。
十三 入室 昇降口から室内歩行の作法で入室。腹で歩く。腹の溌剌さ。
三、生活道場実践公開(二、生活行規格の解説)
1 集合
047 児童は「家」順に「家長」を導師として教室から廊下に出る。(学校の)児童は数軒の「家」(団)に分けられ、各「家」に「家長」を定めている。「家」は学習、掃除、作業など、すべての分団的活動の単位である。「家」の名称(「家名」)として、日本精神の本質的精神を表す言葉を用いている。例えば、忠・孝・和・信・恭・倹・愛などの教育勅語の精神を表す言葉である。
歩き方は一歩一歩、かかとから先に地面につけて重々しく歩み歩くが、それ自身が行である。縦横の人と共に歩調を整えて歩くが、それは横の全体主義であり、目当てを定めて歩く中心帰一の歩き方である。歩く行為の中に「目的体」があり、思想がある。
2 整列
048 級長は学級の導師であり、(「家」が上下関係の団とすれば、「級」は同一学年の団かも)その級の児童を先導し、整列させる。子等は級長の中心に帰一する。体と体、心と心とで無言の教育が行われる。先ず身を整える。
各学級の整列が終わると、壇上の指導者が全学級を整頓させる。受け持ち(の教員)は壇の線に一直線に並び、自分の学級の整頓に責任を持つ。無駄話、わき見など自由主義や赤の温床じみた行いは絶対にさせてはならない。静中動有の状態を醸し出さねばならない。
感想 昭和10年代に「日本人」を記紀信仰・八紘一宇の小世界に埋没させたのは、明治初期から大正のころまで欧米の学問を吸収してきた人たちの変節ではなく、もとからあった「日本主義」集団による、欧化に対する反撃だったのかもしれない。
3 挨拶
全校の整頓が終わった時、先導師(校長または上席訓導)がやおら壇上に立つ。全児の眼はヒトラー総統を仰ぐナチスのそれ以上に輝き渡る。先導師が「約束の一歩」を前に出すと、全児は間髪を入れず「お願いいたします」と謹みながら敬礼する。(従来の)指揮者による「気を付け、礼」による他律的挨拶は形式に堕しやすい。そこには師に対する感謝の気持ちや帰依師の行動などは到底見られない。しかしこの道場学校では師に帰一する心境態度が必要である。「お早うございます」「今日一日宜しく御導き願います」という感謝の心情を吐露せずにどうして教育か。書物学校や知識学校は児童をあまりに尊敬し過ぎ、児童から出発し過ぎた。また生活学校の教師は児童と同一の程度に自らを引き下げた。しかしいずれも「真の教育姿態」を見出すことは難しかった。それに対して道場学校の教師は児童の上に位する師である。友達でもなければ、相手でもない。求道者である子等の「よき先導者」であるのだ。先導者に感謝・帰一しないでどこに教育の実績があるか。
4 大神宮礼拝
049 師への帰一行が済むと、先導氏は全師児を皇祖神に帰一させるように先導する。二礼(最敬礼)、二拍子、一拝(最敬礼)の行である。最初の二礼は中心帰一を意味する。自己の全身全霊を皇祖神に帰一し奉る行である。我の頭、我の手、我の足などはない。それは皇祖神から預かった頭、足、手…である。二拍子は横の全体主義を意味する横の総ての人々と相結ぶ億兆一心の行である。最後の一拝は没我顕真を意味する。恭しくお仕え申すという意味である。
この中心帰一、億兆一心、没我顕真は「日本精神教育道」の三原理である。
5 誓願
050 「教育は技術にあらず、心境態度にあり。」今日一日総力を以て陛下の御名代(みょうだい、代理)として聖業に邁進しよう、我は護国の柱となろう。この意気なくして教育の実体をつかもうとすることは無謀であると言っても過言ではないだろう。
先導師は全身全霊、がっちり丹田から、次の誓願を行う。
誓願
謹んで皇国の発展を祝し奉り、皇軍の武運長久を祈り奉る。
我らは今日一日総力・総親和を以て、陛下の御名代として、オホミタカラ(大御宝=臣民)の教育に任じ奉り、八紘一宇の聖業成就に邁進せんことを謹んで神明に誓う。
仰ぎ冀(こいねがわ)くは神明哀れみを垂れてこの行道を成就せしめ給え。
全師児は合掌の姿勢にて「我護国の柱たらん」の心意気に燃えている。道場学校は導師の熱魂によって運転されてゆく。(道場学校は)職業的で売笑婦的なボーフラ的教員によっては決して決して走り得ぬ国策自動車だ。「教師よ、熱涙の一滴を与えよ。」聖業成就のために。
6 三誓の鐘
051 (先)導師の誓願が終わるや間髪を入れず、ゴーンと第一誓の鐘が鳴り、それに合わせて全児の誓「皇―運―扶―翼」、続いて第二誓の鐘、「億―兆―一―心」そして第三誓の鐘「至―誠―一―貫」。これは子等のあるべき行道の三原理・三姿態である。これは昔日蓮上人が「我護国の柱たらん」と願って南無法蓮華経を絶叫したのと全く同一の心境である。子等は丹田から全霊の力を以て神明に誓う。この誓が今日一日彼らの生活に流れて、「うるおいのある行の場」が展開されてゆく。
7 国旗掲揚
052 三誓の鐘が終わると全師児は黙令の中に国旗掲揚柱の方向に向き変える。ことあげせずに黙令の間に動作が行われることは道場学校の特色である。
朝の静かな空気を破って国歌・君が代の奏吹が始まる。紅の日の丸が陽光を浴びてするすると上ってゆく。全師児の体は、体中という体、どこからどこまでも、日の丸の中心に融化する。皇国弥栄の象徴を一場に画き出すのはこの時である。
北支・南支の戦場で凱歌をあげて日の丸を高く掲げる皇軍の映画に自ずと万歳の躍動を見るが、(これは)その心情と何ら異なるところがない。日本の偉さ・強さ(の原因)は中心があることである。中心に各々が結びつき、離れ離れの分裂をしていないことである。その中心がいつの世までも不変で若々しく厳としていることである。日の丸を仰ぐ子等の心は朝日だ、神だ、真実だ。(そこには)偽りがない。
8 御影礼拝
国旗掲揚が終わると先導師の最敬礼に倣って全師児が御影を礼拝する。帰依現人神の中心帰一行である。誰もの心情が大神宮礼拝と全く同一の信念に置かれる。
9 天皇陛下万歳
053 御影礼拝が済むと、先導師(校長または上席訓導)の音頭で「天皇陛下万歳」を三唱する。先導師の万歳の声は太く深く澄んで天空に響く。それは丹田から発声する命懸けの万歳であり、真に皇国の弥栄を願う象徴である。
全師児が和する三唱の声は東の山を動かし、南の谷に万雷を落とす。腕が伸び、指が伸びる。形式的な万歳は国家を亡ぼす。「天皇陛下万歳」は国民の精神力の緊張・弛緩を試験する唯一のテスト問題である。それは理屈ではなく、行であり、実践である。愛国の熱誠はこの万歳の声に宿る。もし形式だけをなすのならば、「天皇陛下万歳」を口ずさむだけでも汚らしい。心の真実を望む。
10 ラジオ体操
洋服の児童はボタンを外す。第一・第二体操を各一回ずつ機械的に筋肉運動をやるのではない。いちいち運動の持つ目的を自覚しながら身体の練磨をなすのである。運動を証自証しながら行う心境態度は、皇運扶翼に役立つ身体の練磨だけであり、余念はない。無駄な手足や胴体の動きは少しもない。――(ここで)日本の骨格、日本の筋肉、日本の神経が陶冶される。
11 生活訓話
054 世界の動きや学校の動き、部落の生活などその時々に応じたテーマを選ぶのだが、それらのいずれもが皇運扶翼、億兆一心、没我顕真の日本精神のふるいにかけられる。生活訓話は思想戦である。赤い血を以てカムフォラージュされている赤い血を洗い流す仕事だ。(意味不明。「赤」で共産主義を指しているのかも。)小言ではない。訓練だ。(意味不明)勿れ主義ではなく、根本の生活態度を生む思想啓培である。筍で言えば地下茎の啓培である。
12 真歩
「愛馬の歌」や「愛国行進曲」などの行進曲に合わせて、昇降口前まで「正常歩行進」が行われる。一定の目当てを定めて縦横の人々と結びついてゆく億兆一心の歩き方である。戦場に向かう溌剌とした歩き方である。「千万人と言えども我はゆかん」の意気に満ち満ちて、歩武(あゆみ)堂々と行進する。体が伸び伸びと、頭の水がこぼれないように、大地を踏みしめて一、二、一、二。
13入室
このまま教室に入ると子等の精神をあまりに波立ててしまうから、心静めのために昇降口から教室までは室内歩行の作法によって歩く。男子は両手を握って両側に、女子は両手を組んでみぞ落ちにつけ、腹で歩く。腹の溌剌さ。家長は家族が全員揃うまで待っていて、揃ったら教室へ進む。ここでは廊下をかける足音や話し声が耳に入らない。
感想 なぜこのような国粋主義的運動に欧米の進歩的な考え方が破れ去ってしまったのか。共産党がコミンテルン戦術を止めて人民戦線戦術に作戦変更して団結しても、力にならなかったのか。それよりも自己中愛国の方に人々の心はなびいてしまったのか。そのことは現在、中国を敵視して武力増強を望む人が50%もいることと共通していないか。
4 道場朝礼
一、指導精神
1 「相」の基本的教練
056 日本精神の教育では、皇運扶翼の中心帰一を「体」とし、億兆一心・物心一体行を「用」とし、没我顕真を「相」とする。この「体」、「用」、「相」の三原理は教育原理であるとともに、教育方法論、教材論などあらゆるものの原理である。
修身教育に「孝行」という課がある。皇運扶翼のために、忠孝の対象であった父母に対して孝を尽くすのであり、その心境態度は没我でなければならない。肩をたたいたり、お使いに行ったり、水汲みをしたりなどの方法・技術つまり「用」は、人や年齢によって異なるが、心境態度の「相」は常に同一である。孝行における「相」、算術問題を解決するときの「相」、掃除作業での「相」…は全て同一である。学校における訓練の根本はこの「相」を教練化することでなければならない。方法や技術だけにとらわれる「用」の訓練は従来のものであり、百態千様であるからなかなか徹底しない。「相」を訓練するための最もよい場は道場朝礼であり、坐ることである。(道場とは畳敷きの柔道場みたいな場所のようだ。そしてそこでまた朝礼をやるみたいだ)
2 生活の観・考・行・証信
(道場朝礼は)座す、立つ、歩く、手足を動かす、教えを受け答えるなどありふれた人生の基本的生活行を、皇運扶翼、億兆一心、没我清明という日本精神によって行じ来り行じ行く基本行であるとともに、その過程で人生や生活の観方、考え方、行い方を練って信の境地に達せしめる。
057 生活や人生を、観・考・行・証信の生命活動の過程に従って考察する態度・訓練をすることは、あらゆるものの理解の根柢として重要な位置を占める。(意味不明)
道場朝礼ではこの生活過程の基本的なものを修練して行く。
3 「道」への修練
基本的生活行は「道」になるように訓練づけられるべきだ。形や理論ではだめで、「道」でなければならない。「道」へ達するための修練には次の三段階がある。
第一段階――これは心理主義の過程であり、児童が欲するままの方法技術で行動させる。最低なものである。
第二段階――これは論理主義の過程であり、あるべき理念に向かって方法や技術を強いる。この過程では強固な意志を必要とする。この過程で終われば型で終わってしまう。
058 第三段階――訓練は「型」ではなく、「道」である。「型」を通り越した時初めて「道」の境地に入る。茶の飲み方を例にとれば、渇きを覚えてがぶ飲みするのは心理的過程である。茶の型によってぎこちなく飲むのは論理的過程である。この型を過ぎた時、真に自由な「道」に達する。
新しい時代の作法は「道」でなければならない。この「道」への基礎訓練の場が道場朝礼である。自由主義教育はがぶ飲み教育であり、統制主義教育は型飲み教育である。いずれも「道」になっていない。
二、生活行規格
一 真立 教室から家順に廊下に出で立つ。女子は手を胸に組み、男子は手を握る。体の重心を丹田に落とし、心身を生かして整える。以下の一切の行はこの姿勢で行う。この廊下が皇国や大東亜や地球の一点であり、この一点を貫いて「立場を固める。」それを「外なる全体主義」という。これは心と体を統一した「生命の全体主義」である。各学級の受け持ち教師は先導師となって学級の先頭に立つ。
二 真歩 縦横の人とともに歩調を整えて生かし合って歩く。目当てを決めて真っすぐに歩く。両足をぴたりとつけて歩く。これは「人生の国民的行路」を歩く第一歩である。胆大細心に歩く。
三 入室 道場の後ろの入り口から入室する。畳の継ぎ目を踏まないで一歩一歩重々しく歩く。神がいます部屋に入る懼畏(くい)の心境で入る。
四 真座 中心に合掌して坐す。丹田に心身を統一する。神から座をいただく精神で行う。
五 座礼 打鐘を合図に最敬座礼。
六 真立礼拝 立って、二礼二拍子一拝。
七 誓願 先導師が誓願し、全師児は合掌する。050参照
八 朗詠 誓願後間髪を入れずに合掌の姿勢で朗詠。
九 真座 足の親指を軽く合わせる。耳たぶと肩とが一直線に、鼻の腔と臍(へそ)とが向き合う。手を軽く組み、目は半眼で鼻の頭を見る。数息観三十までを一回乃至三回行う。環境に和して同ぜず、徒に環境に制約されず、環境を制する。世界中の人々の看視の中で正々堂々と心を練る。(意味不明)
十 提唱 真聴、真学真答。教えを有難く受け答える。
十一 気合 提唱が終わると打鐘を合図に起立。手を握り「エイツ」「エイツ」の気合と共に手を上から下に十回つく。心身に根ざす悪魔の全てを追い払い、霊力を以て聖業に至心に参加し奉る心構えで行う。
十二 座礼 真立、退場、真歩。打鐘を合図に合掌して神を正面に向いて立つ。
三、生活道場実践公開
1 真立
061 朝の修養034が終わり子等は暫しの憩いをとる。すると間もなく第二鈴が鳴り、各教室の行者(児童)たちは家順に整然と無言で廊下に出る。
「落付」とは「落ちるべきところに落ちて付くこと」である。(言葉遊び)日本精神の「落ち着き」は「腹へ落ちる」ことである。西洋の教育は三Hの教育、つまりhead(頭)、hurt(ママ、心臓)、hand(手)(による教育)である。日本の教育は三Hを腹(hara)に綜合統一する一Hの教育である。西洋の教育にはharaがない。生命がない。日本の教育では腹に落ち着かした姿勢・心境で一切の行が行われる。
062 学校の廊下は皇国土の一点であり、大東亜の一点でもあり、地球の一点でもある。(廊下での整列は)地球の一点を貫いて立場を固める横の全体主義である。またそれは父母、祖父母、…皇祖崇(神)、天照大神に連なるとともに将来の無限の子孫とも結び連なる縦の全体主義でもある。この横と縦の外の全体主義のムスビ(連結点)に立つ我のあり方は、「心身を統一する生命の全体主義」である。
これを把握するためには八紘一宇の実体をつかむことである。八紘一宇を遠視的ではなく近視的に見ることを知らない人がいる。(「近視的に」とは日常生活においてということか)
2 真歩
子等の精神が「全体主義」になった時に「真歩」に移行する。この「全体主義」という心的態度ができないうちに歩き出すと野獣の戯れにしかならない。「真歩」は自分ひとりで歩くことではなく、先ず目当てを決めて真っすぐ歩き、縦横の人と歩調を整え、生かし合って歩く。これこそ億兆一心、総親和の構えである。
両足を浮き立たせず、ぴったりと(足を床に)つけて歩く、胆大でしかも細心な歩き方である。これは実に「人生の国民的行路」を歩む最初の第一歩である。
3 入室
063 道場の中央に皇祖神の御姿を象徴する御鏡が斎(いつ)き祀ってある。その前の御簾(すだれ)は荘厳さを増し、注蓮(しめ飾り)を張り巡らす。真歩の行が道場まで来ると、子等は道場の後口から室に入る。畳の継ぎ目を踏まず、一歩一歩と重々しく神います室に入る。懼畏、厳なる景。自ずと心襟を正させる。自分らの位置に行くと止まって心の整頓をする。
4 真座
中心の皇祖神に合掌し、前の者から順次に座して行く。この合掌は神から「座をいただく」ことを意味する合掌である。我らはいつもこの座をいただくという気持ちを忘れたくない。我らの社会的地位や職業上の地位などすべてが神や君からいただいた地位であり、この上なく尊いからである。そしてこのような心情の基本的教練は、この真座の第一歩でなされる。
座り方も自然でしかも作法に合する規格のある道(どう)としてのものでなければならない。
5 座礼
064 全児が真座すると先導師(校長)の傍らに坐す侍導師が「ゴーン――」と鐘を打つ。それを合図に全師児は中心(の鏡)に対して「最敬座礼」を行う。それは神に恭しく仕え奉るという心境である。後ろから見ていると実に美しい。一人の自由主義者もなく、総てが中心帰一のために、億兆一心となっている。真厳なるものの極致は美である。真と美とは同一規範である。
6 真立礼拝
座礼が済むと一同は落ち着いて立ち、先導師に倣って二礼二拍手一拝の、中心帰一、億兆一心、没我顕真の行を行う。これは校庭における朝礼と全く同一である。
7 誓願
065 真立の姿勢で先導師が誓願し(校庭での朝礼と同じ)、全師児は合掌する。全身全霊不退転の意気を以て行ずる。
英米仏の三国干渉何者ぞ。ソ連の赤魔何者ぞ。我に確固段々乎たる思想戦の構えあり。教育道場は大和思想を培養する温床である。信念の人間を、弾力のある興亜日本人を輩出する教師の構えを道場一杯に満たさねばならない。仇や愚で誓願をやるのではない。気狂いじみた真似をやっているのではない。(よく自覚している)止むに止まれぬ大和魂の発露である。(まさに狂気)
8 朗詠
先導師の誓願が終わるとその姿勢で間髪を入れず全師児の朗詠が始まる。これは神に奉告する若き子等の全霊を発動させる内なる声である。
066 (一)中心帰一の誓願歌 明治天皇御製
なすことの無くて終らば世に長き
よはひを保つかひやなからん
(二)億兆一心の誓願歌 明治天皇御製
もろともにたすけかはしてむつびあふ
友ぞ世にたつ力なるべき
(三)至誠一貫の誓願歌 明治天皇御製
まごころをこめて習ひし業のみは
年を経れども忘れざりけり
9 真座(座禅か。4も真座)
067 朗詠が済むと神に敬礼し、真座に戻る。足の親指を軽く合わせる。深く合わせてはいけない。(難しい)重心を丹田に落とし、心身の統一を図る。耳たぶと肩とが一直線に、鼻の腔と臍(へそ)とが向かい合う姿勢をとる。手は軽く組み、眼は半眼に開く。どうしても心が落ち着かない者は眼を閉じてしまうのがよい。こうして「体の全体主義的統制」がなされる。次に深呼吸を三回、引き続いて細くて深い複式呼吸を30回続ける。(これを「数息観」という)数息観30までを一回ないし三回繰り返すと大抵心の落ち着きができ、心身の全体的統制ができる。
導師は拍子木をもって姿勢の悪い子や心の構えのできていない子を「指導」する。「教えられる」子は合掌して有難く教えを受ける。この教えを有難く受ける心境態度を培うことが教育の最も大切な出発点である。自由主義教育時代ではこの点が最も欠けていた。徒に児童の心理に迎合していた。
真座の目的は心身の形式的統制をはかることではない。鳥の声が耳を誘い、自動車が眼を誘い、風が皮膚を誘う。――何が誘おうとも決して分裂的動作を許さない。地下の興亜思想の線が鋭い注射をするからである。足がしびれれば、それを切り捨ててしまう。――この決心。豆腐を石にする生活智と不動の精神とを生み出させなければならない。
068 環境の総てに和して同ぜず。徒に境に制せられず、吾よく境を制すの態度である。
神います(この)室という地球の一点に坐し、世界中の人の看視の中で、正々堂々と、こと言い、こと動かし、こと受けるという行の錬成である。
私どもは一日一回でいいから真実の吾に帰り、吾の姿を飽くほど凝視してみたい。この瞬間が大東亜建設のプロペラを回転させるエンジンの爆音が聞こえる時である。
工場地帯や都会地の子等にはぜひ座らせて、汽笛の音を、煙突の煙を、電車の響きを…断たせてやりたいものである。
感想 禅宗的で、神がかり的で、主観的な境地を真実と誤解しているのでは。そして自らを世界の中心と考えている誇大妄想
10 提唱(訓話か)
069 子等の心が落ち着いた時、その姿勢、その心境で、「提唱」を受け答える行である。提唱は智的な生活訓練や概念的な生活の反省ではいけない。「心琴に触れる修養の泉」、「地下茎を伝わって流れる霊泉」でなければならない。以下に二、三の例を示す。
<喜怒哀楽の本当なもの>
呼吸が細く深く自然に腹にこたえて、胸と腹とが自然に帰ると、頭も本当にスナホな働きをし、スナホな心になる。体と心とが全く一つになり、体の機関も心の色々な働きもみな本当に正しい働きをし合い結び合う。
この時のヨロコビも、イカリも、タノシミも、自分勝手な我ママも、心にありがちなものとは異なり、神のカナシミ、神のイカリ、神のヨロコビ、神のタノシミに通う。
「鳥は泣けども涙なし、日蓮は泣かねども涙ひまなし」と語る日蓮上人の哀しみは、国を思い、世の中の人々のことを思い、一日も早く救ってやりたいのに…という大きな哀しみである。
070 それにも係らず、この日蓮上人を龍ノ口(銅製や鉄製の龍の頭の形をした水の吐き出し口)で切ってしまえとの幕府の命令。日蓮は首の座(打ち首にされるときに坐る座)に赴く途中、八幡様に向かって「弓矢八幡はこの国の守り神、鎮め神、『立正安国』のために身を捨てて日夜努める国の柱の日蓮が、今首の座に引かれて行くのを知らるるか。もし八幡様に霊顕があるならば、その武力を現わされよ。」日蓮は訴えるが如く、叱(しっ)するが如く「大きな怒り」に燃えつくした。それは神をも叱する大きな怒りであった。
私のための喜怒哀楽はそのままケガレであり、罪である。しかし全体のための喜怒哀楽はそのまま神の心である。
果せるかな日蓮を切る者は切ることができない。刀は折れ、雷鳴が轟く。一方将軍にも霊夢がある。将軍家からの助命の便と、首の座からの異変の便とが行き合い、いずれも助命にホットする。偉大なるかな、「修養」の力。
感想 非文法的な文章を散見する。あえてそうして厳かで神聖な感じを添えようとしたのか。勘ぐりすぎか。
<泥中の蓮>(現象の下に隠れた命の世界)
小さな子は蓮の花がきれいだとつまんで玩具にしたがるが、あなたはそれに反して蓮の花がいつまでも咲いていて欲しいと願う。心が磨けている人はさらに(蓮の花の中に)奥深い蓮の命を見る。
071 蓮は「汚い」泥の中から美しく神々しい姿を現す。釈迦をはじめ心を鍛えた人はいつもそう見ていた。
秋になると向丘の柿を取って食べたいが、心が磨かれた人は柿の真実を見る。柿は毎年花を咲かせ、実をつけるが、心が磨かれた人はそこに自然の神秘さや偉大さを見る。その時こそ真の人間になった時である。(植物などの)命の世界は我々の命とも通う。それは水道の鉄管と同じである。飲み口が異なるだけである。飲み口だけを見ていたのではだめで、地下水を見なければならない。金では買えない世界を見なければならない。蓮の花の命は金では買えない。
大生命の世界を見つめよ。自分はこれだけの人間だと自分から進んで金になる人がいる。蓮の花を見よ。命の世界は金では買えない。自分の心を磨け。凝念(思いを凝らす)、真座である。
072 <楠木正成>
楠木正成は湊川の戦いを前にして「明日の戦いは勝って帰ることができるかどうか分からない。どんな考え(腹)で行ったらよいか」と師に尋ねた。師は「敵の頭を取ろうとせず、自分の頭を切り捨てろ」と言った。正成が「それはどういうことか」と尋ねると、師は「敵の首を切ろうとする者は、生きる、死ぬ、勝つ、負けるなどの考えを捨てるのがよい。頭ではなく腹だ。作った知恵ではなく、与えられた知恵だ。観自在(迷いの執着から解放され、事物が正しく見える境地)の知恵だ。何にもこだわりのない知恵だ」と答えた。
073 正成はまだ分からず再度質問すると、師は「こらー」と大喝一声し怒鳴りつけた。正成は背に一杯汗をかいた。師は言った「そこだ。今の君には何のわだかまりもない。」古歌に曰く、
『切り結ぶ 剣の下は地獄なり 飛び込んでみよう 極楽もあり』
真剣になれる者は幸せだ。一番字の下手な者は一番字が上手になれる。行儀が最も悪い人は最も多く行儀がよくなれる可能性がある。
<ゴミの捨て場所>
ある小僧がお寺に弟子入りし、和尚は毎朝の庭掃除を言いつけた。和尚は「きれいによく掃除ができた。ところで塵芥(じんかい)はどこに捨てたかね」と尋ねた。小僧は「裏の藪に捨てました」と答えた。和尚は「庭はきれいになったが、裏の藪はさぞ汚くなったろうなあ」と言って不満のようだった。同じことが三日続いた。そこで小僧は塵芥をうまく始末すべく、塵芥の中の木の屑や木の葉は台所の釜に下に、瓦のかけらや砂利は軒下の雨だれに、残った小砂利はそこらに掃きつけた。和尚は「ああ本当にきれいな掃除ができた」と言って入門第一の試験を通してやった。(大倉邦彦016『勤労教育の理論と方法』三省堂1938)
<生かす、生きる>
岡山に曹源寺という池田候の菩提寺がある。そこに儀山和尚という禅僧がいて多くの弟子を養成していた。その許に後の名を滴水という小僧が入門した。或る時儀山和尚が風呂に入り熱かったのでこの小僧を呼んで水をうめるように命じた。小僧は水をうめ、ちょうどいい加減だというので桶の底に残った僅かの水を地面に撒き散らした。すると儀山和尚は大喝一声「馬鹿野郎」と怒鳴りつけた。小僧は驚いて訳を尋ねた。儀山和尚は「そんなところに水を撒き散らしては水の生命を殺す。近頃雨がなくて草木があえいでいる。その根に水をかけてやれば草木も生きるし、水も生きる。これを両生きというのだ」と諭した。小僧はこれを生涯の指導原理として名を滴水と称し、後に高僧碩徳(せきとく)となった。(大倉邦彦『勤労教育の理論と方法』)
076 以上が提唱の一例である。提唱を受ける態度は真摯でありがたさに満ちていなければならない。馬の耳に念仏ではいけない。
11 気合
提唱が終わり、侍導師の打鐘を合図に一同が起立する。手を固く握り、エイエイの気合を入れて両手を一度に下につく。「心身に根ざす悪魔の全てを追い払い、霊力を以て聖業に至心(まごころ)に参加し奉る」という心構えで、これを十回続ける。
真座の静を気合の動に移すのである。行は静と動と二方面で修練する。一方に傾くときは正常な行道にならない。
12 座礼、真立、退場、真歩
気合が終わると静かに座し、打鐘を合図に修業感謝の挨拶を神になす。合掌して神を正面に向き、入室行に準じて退場する。
077 この心境この心構えで朝の修業が開始される。
この行は子等を僧侶にするためではない。子等に真実の誠の道を見つめさせ、それに向かって一切の生活を行わせるためである。(これはこの項が寺の行を前提にしていることを示している。)
5 食事行
一、指導精神
1 天地自然一切の加護に感謝(神話と食事との結合)
077 一粒のお米をどなたがお与えくださったか、そしてそのお米をどなたがおつくり申したか。この二つをよくよく考えてみなければならない。
我が国は建国の昔から農業を立国の大本となされ、国是とされている。殊に天照大神は衣食に大御心をおかけになり、天孫瓊瓊杵尊を高天原からこの日本国土にお降しになり、日本国民の常食として米の種をお授けになった。
078 皇祖の神勅
是物者則 顕見蒼生可 食而活之也
我高天原 聞食斎庭穂 亦為皇孫 可授者也
これすなわち うつしきあほいとぐさの くらいていくべきものなり
わがたかまがはらに きこしめす ゆにはのほを またすめみまのために さずくべきものなり
即ち「この穀物は日本国民の常に食して生くべきものである。我が高天原で食している稲の穂を日本国民のために皇孫瓊瓊杵尊に授けよう」という御意である。この天(が)降し給える一粒の米が本になって今日の楽土を築くに至った。
私どもはこの一粒のお米をお与えくだされた皇祖大神の御恩沢に感謝するとともに、「今年も豊穣であれよ」とお祈り遊ばす(新年祭)歴代天皇の御聖慮に対して、衷心から感謝の誠をいたさねばならない。さらに暑い夏の日、汗水流してお働きになります父母や社会の人々の労苦や、梅雨、日照りなどをお与え給う自然一切の神々に感謝の誠をささげなければならない。
079 一粒の米にも神、天皇、父母、そして幾万人の社会の人々の汗の姿が結晶していることを思う時、ゆめ無駄にはできないが、それとともに「我如何になすべきか」を考えずにもいられない。実にこの感謝と発奮が食事行全体を貫く指導精神である。
二、生活行規格
一 洗手 家順に洗手。清水で身を清めて神の供物をいただく心境。先手場がない学校ではバケツで水を汲んでくる。
二 お膳立 新聞を四つ折りにして膳とし、その上に弁当を置く。各自の湯茶碗に係がお湯をつぐ。一切無言で、新聞紙の音さえ心せよ。これは感謝への導入である。お湯係に感謝の礼を捧げる。係は学級生活団の係である。
三 食前の感謝 膳立てが終わると、導師が食前の感謝を謹唱。児童は合掌し、瞑目し、謹聴する。天地、自然、神仏、一切の人々の加護に感謝。皇運扶翼の御為の食事である。
080 四 食事 食前の感謝が終わって開眼し、「いただきます」で箸を取り、静かに食事をする。有難くかみしめ、心の糧とする。よそ見、雑談、小用などに注意する。レコードをかけ気持ちをさわやかにする。(意外)
五 御製朗唱 全児の食事が終わると、導師が御製を謹詠する。(天皇の)御意を拝察する。感謝発奮に浸る。午後の聖業にすがすがしく参加する心意気で。
六 食後の感謝 合掌して「ごちそうさまでした。」天地、自然、神仏、一切の人々にお礼。
三、生活道場実践公開
1 洗手
食事開始のラッパを合図に、各級は家長引率の下に団体行動で規律正しく洗手場に向かう。清水で午前の垢を洗い清め、神の供物を頂戴する準備工作をなすのである。先を争わず、まごまごせず、紳士的に行う。食事はややもすると動物的・野獣的本能を顕して我先にと規律を乱しがちだが、道場学校ではそのような演劇を見ないのが愉快だ。子供は皆ハンカチ、手拭を持っている。幼い者は胸に下げ、年増は洋服のポケットに入れるか腰に下げている。礼なくして食すべからず。
2 お膳立
081 弁当は新聞紙に包んで持ってくることになっている。その新聞紙を四つ折りにしてお膳にする。横長にしてその上に弁当箱を載せる。清潔な布巾に包まれた茶碗を机の上に出しておく。食事係の当番児童がお湯をついでまわる。いただいた子は友への親切心に軽く頭を下げて感謝心を表す。
動作は皆行であり、道である。一切が無言で進行する。新聞紙を四つ折りにする音さえ心してなされる敬虔さである。
お膳立てができた子等は静かに次の「食前の感謝」を待つ。子等の心が落ち着いてくる。生理的に見てもよい食事行である。
3 食前の感謝(瞑目)
082 食事行は師児同行で行う。子供だけ勝手に食事をさせ、師は職員室で食事をとるような自由主義思想横行の智的学校はもう今どきないはずだ。(恐喝)理論においてでなく、実際において。(意味不明)
お膳立てが終わると、導師が小声でしかも力のこもった腹声で食前の感謝を唱える。児童は瞑目・合掌し、天地、自然、神仏、一切の人々の加護に感謝する。この有難さから躍奮を醸し出す。
<食前の感謝> 低学年
一、天地の神様、世の方々、ありがとうございます。
二、静かに、落ち着いていただきます。
三、決して好き嫌いをいたしません。
四、ご飯をいただきましたら、一心にお勉強をいたします。
<食前の感謝> 高学年
083 一、天地の神々世の人々の御恩徳によってこの食物を頂けることを感謝いたします。
二、私の徳行は足らないのに、この食物を頂くことを過分に思います。
三、うまいからと言ってむさぼらず、まずいからと言って厭う心を起こしません。
四、この食物は私どもの心身を癒す良薬と心得ていただきます。
五、この食物は皇運扶翼の道を成就するためにいただくことを誓います。
この食物の感謝は、時に級長に、あるいは全級全児童に謹唱させることもある。教師が唱えると否とに関わらず、感謝心を培えばそれでよい。
4 食事
食前の感謝が終わると、子等は眼を開き、「いただきます」と言って箸をとる。一切れの香物、一粒の豆、何もかも、つつましやかにかみしめて、「心のよき糧」とする。
084 食事中に心をさわやかにする静かなレコードをかける。和やかさが満ちる。道場学校は決して堅苦しい禅臭いものだけではない。「近代的文化」も多分に漂う古今東西の粋を集めた「綜合的美の殿堂」である。
食事中の注意事項は、よそ見、雑談(雑談もさせないのか)、小用(生理現象も禁止か)である。これらは食事作法上当然なすべからざることである。
5 御製謹詠
全児の食事が済むと、導師は『玉の御声』(明治天皇の和歌)を二回謹詠し、全児がこれに和する。
この『玉の御声』は明治天皇の御製を一日一首、教育勅語の臣民のなすべき道の順序に組み立て、日々修養を積んで聖旨に沿おうとするものである。
謹詠の済んだ後で(導師は)和歌の聖旨を恭しく謹話する。以下は『玉の御声』である。
085 一日 国体の精華 「さざれ石の巌とならむ末までも 五十鈴の川の水はにごらじ」
二日 克く忠に 「國をおもふみちにふたつはなかりけり 軍の場にたつもたたぬも」
三日 父母に孝に 「たらちねの親につかへてまめなるが 人のまことの始なりけり」
086 四日 兄弟に友に 「ならびたつたけはひとしく見えながら このかみは猶このかみにして」
*「このかみ」(兄・首・氏上) 第一子、長男、長女。
五日 夫婦相和し 「人みなのえらびしうへにえらびたる 玉にもきずのある世なりけり」
六日 朋友相信じ 「みな人のちからあはせて庭のおもに きづきあげたる雪のしら山」
087 七日 恭倹己を持し 「なかなかに色こそよけれつくろはぬ しづが垣根の朝顔のはな」
*「恭倹」 人に対して恭しく、自分自身は慎み深いこと。
八日 博愛衆に及ほし 「よもの海みなはらからと思ふ世に など波風のたちさわぐらむ」
九日 学を修め 「いちはやく進まむよりも怠るな まなびの道にたてるわらはべ」
088 十日 業を習ひ 「まごころをこめてならひし業のみは 年を経れどもわすれざりけり」
十一日 知能を啓発し 「開けゆくときにいよいよ仰がれぬ 聖の御代のたかきをしへは」
そうですかね。
十二日 徳器と成就し 「あさみどり澄みわたりたる大空の 広きをおのが心ともがな」
089 十三日 公益を広め世務を開き 「よの中はたかきいやしきほどほどに 身を尽くすこそつとめなりけれ」
十四日 国憲を重し国法に遵ひ 「さだめたる国のおきてはいにしへの 聖の君のみこえなりけり」
そうですかね。
十五日 義勇公に奉じ 「事しあらば火にも水にもいりなむと 思ふがやがてやまとだましひ」
090 十六日 国体の精華 「神代よりうけし寶をまもりにて 治め来にけり日のもとつ国」
以下左側は二度目
十七日 克く忠に 「こころざす方こそかはれ国を思ふ 民の誠はひとつなるらむ」
十八日 父母に孝に 「たらちねのみおやの教あらたまの 年ふるままに身にぞしみける」
091 十九日 兄弟に友に 「小山田の畔のほそ道細けれど ゆづりあひてぞしづは通へる」
*「しづ(ず)」賤 私、自称。
二十日 夫婦相和し 「なよたけはすなほならなむうつせみの 世にぬけいでむ力ありとも」
*「なよたけ」(弱竹) 女竹(めだけ)の別称。妻のことらしい。女性蔑視の和歌。
二十一日 朋友相信じ 「もろともにたすけかはしてむつびあふ 友ぞ世にたつ力なるべき」
092 二十二日 恭倹己を持し 「おもふこと思ふがままになれりとも 身を慎まむことな忘れそ」
二十三日 博愛衆に及ほし 「暑しともいはれざりけりにえかへる 水田にたてるしづを思へば」
二十四日 学を修め 「物学ぶ道にたつ子よおこたりに まされる仇はなしとしらなむ」
093 二十五日 業を習ひ 「ひらかずばいかで光のあらはれむ こがね花さく山はありとも」
二十六日 知能を啓発し 「年々にひらけゆく世のをしへ草 身のほどほどに摘ませてしがな」
二十七日 徳器を成就し 「やすくしてなし得がたきは世の中の 人のひとたるおこなひにして」
094 二十八日 公益を広め世務を開き 「おのが身はかへりみずして人のため 尽すぞひとの務めなりける」
二十九日 国憲を重(ん)し(じ)国法に遵ひ 「世はいかに開けゆくともいにしへの 国のおきてはたがへざらなむ」
三十日 義勇公に奉じ 「敷島のやまと心をみがけ人 いま世の中に事はなくとも」
095 『玉の御声』は低学年ではどうかと思う。生活の中の感動的な話を、導師が行ったり子供にさせたりするのがよい。
6 食後の感謝
『玉の御声』の謹話が済むと、間もなく「食事終わり」の鐘が鳴る。これを合図に合掌して食後の感謝の瞑目をし、「ごちそうさまでした」という感謝の辞を以て静かに行を終える。子等は皆有難い糧を満たし、勇躍午後の聖業に参加し奉るべく校庭に出て行く。(食後も体操か)
6 総動員体操(これが昼休みの行事か)
一、指導精神
1 国民精神総動員姿勢
五月の陽光燦として輝く晴の二十二日*(に)、校旗が薫風にはためき剣光が若緑に映える興亜青少年学徒の晴の御親閲式(が行われたが)、畏くも此の日(に)陛下より賜りたる興亜若人の金箇玉条*。それを思い、これを思うとき、只々有難さに涙のこぼれる(の)を知るのみ。
*1939年昭和14年5月22日昭和天皇が荒木貞夫文相に「青少年学徒に(下し)賜りたる勅語」366を与えた日である。本書発行が昭和14年10月10日だから、その5か月前のことである。
*金科玉条 金科と玉条。極めて大切な法律。
096 国家は躍如として前進又前進。昨日よりは今日、今日よりは明日と、現状は刻一刻と「打破」され、「革新」の層へ「革新」の層へと「統制」を強くしている。少年少女を青年訓練所(学校)の殻の中で教養しなければならない時代が行き過ぎようとしているから恐ろしい。(意味不明。勉強するどころか軍人となって出かける時代になりつつあることを、「恐ろしい」と言っているのか。)
総動員体操は全校全児使丁すべての人的資源を総動員して同時に同事を履行する国策的指導精神を根幹として運転されてゆくものである。これは小学校機構における「革新層」として有力なものである。
2 体錬科の内容目的として
私は数年前綜合教育の提唱に先立ち健康科の必要を力説し、その内容を体操以外の遠足、遊び、登山、行進などの総て(で)体の動員を以て組織し、鉄のような身体の練磨を目的とした。今回国民学校案が作成され、その一科として体錬科をみるに至ったことは、私の主張を裏書きするものとして喜びに堪えない。
097 昼休みの生活を体錬科の一内容一目的として構成しようとすることが私の立場である。従来の教育では休むことの指導があまりに無関心にされていた。そしてそれはあまりに自由主義的に彩色されていた。子供は休み時間を手を打って喜んだ。しかしそれは徒に子供を自由主義に導くものでしかなかった。
休み時間を体錬科の一内容一目的とするとき、そこには統制的で組織的な味のある機構を必要とする。この意味で設定されたのが総動員体操である。
二、生活行規格
一 集合 振鈴を合図に運動場の自由な位置に真立する。自らが全体を見て自らの位置を機敏に自覚して決定する。体操に準ずる身軽な服装。
二 足踏 レコードに合わせて各自がその場で足踏みをする。手を横や前に上げて間隔を取る。号令がなくても適確機敏に所作する態度を訓練する。
098 三 ラジオ体操 導師が壇上に立ち、レコードに合わせて体操を開始する。目の位置、気力、力の抜き差し(抜き出すことと差し込むこと)に留意。型と心の融合。(意味不明)当日の全校指導当番が導師となる。100
四 挙股歩 体操終了後、レコードに歩調を合わせて壇の前に、朝礼時の体形に、行進・集合する。各自の位置から中心に帰一する、動員召集の形。友を生かしつつ、自分から自分の進路を発見する。
五 愛国行進曲合唱 朝礼時の体形に集合を終えたとき、ラジオの音頭によって愛国行進曲を一回合唱する。全校が一糸乱れぬ一つの歩調となる。声の総動員体制である。
六 行進 軍歌に合わせて行進し、正常歩で(意味不明)運動場を大きく回る。全児が大きな円になったときに止まる。億兆一心足の総動員体制である。広さ、大きさ、眼から入る精神総動員である。(意味不明)受け持ち教師は担任学級の先頭に立つ。
七 愛国舞踊 愛国行進曲のレコードに合わせて愛国舞踊を一同が演ずる。国の弥栄を象徴する喜悦の踊である。
八 駈歩 舞踊が終わり、レコードに合わせて正常歩行進をする。引き続き駈歩を行い、前の級から朝礼壇上の前に集合し、整頓する。軍馬がいななく戦線をかけ廻る心構えで勇躍する日本精神の行動姿態であり、体操の生活化である。
099 九 腹式呼吸 全師児が集合し、両手を組み、自由に呼吸する。五回行う。腹式呼吸の位置の認定に注意する。(意味不明)導師(は)全校当番者(が担当する)
一〇 感謝 腹式呼吸が終わり、瞑目して感謝の合掌をする。天地、自然、神仏など一切に感謝する。
一一 敬礼・解散 導師の合図によって敬礼し、解散する。秩序正しく恭しく行ずる。
三、生活道場実践公開
1 集合
食事行を終えると子等は校庭に出て10分間それぞれの遊戯を行う。総動員体操開始の振鈴が鳴り、子等は現在いる位置で自己の位置を決定する。自己が全体を見て機敏に自己の位置決定を行う。いつまでも動いている子は自決性がない。
どの子も教室を出る時余計な上着を腰掛けの上にきちんと折りたたみ始末して来ているからすがすがしい。夜具を着けて運動するような非常識で見識のない子供はいない。(威圧的)
2 足踏
100 レコードが指図し、足踏が始まる。自由な乱れた位置でおのおのの足が音に統一されて美しい。自由の統制とでも言うべきか。自然の姿において統制の美に映じているところが奥ゆかしい。
3 ラジオ体操
その日の全校指導当番責務者が壇上に立って全児を指導する。レコードに合わせて第一、第二を各一回ずつ、あるいは第一だけを二回、第二だけを二回行うこともある。
教師の姿が群れる児童の所々に見えて美しい。自由主義的思想を持つ統制力のない子は、師の眼を盗んで「ボーフラの踊り」を始める。危険だ。赤の温床になりはしないか。しかしその子は導師の手によって更生の道へ直ちに戻る。ここに教育があり得る。(教育の誤解)ラジオ体操は他律から自律へ導く最も良い機会である。
101 目の位置、気力、力の抜き差しに特に留意しなければならない。日々の務めはとかく形に流れて生命を失いやすい。そこに息吹を与えるものは導師の真実である。ラジオ体操が生命体操を失っては意義がない。型と心とが融合してこそ真にその効果を具現する。
4 挙股歩
体操が終了すると、レコードに歩調を合わせて挙股行進が行われる。東から西から、前から後ろから、それぞれの位置から召集動員されて朝礼壇の前に行進する。「彼も祖国のために勇躍中心に帰し馳せ参ずるか。我も劣るまい。いざ。」自ら自分の進路を発見し、そのコースにおいて友を殺さず、生かし合って進んで行く、日本精神の総動員行進である。
壇の前に集合すると足踏みをしながら整頓する。
5 愛国行進曲合唱
「見よ東海の空明けて」東亜の黎明だ。「脚下(自分がよって立つ基盤)」にそれ(東亜の黎明)を見る。教えられたものや、遠くの方にあるもの(西洋)は皆嘘であり、「事切れた(死んだ)」ものである。事切れぬものだけが真の命を持つ。真なるものはそのままミコト(神や天皇)である。日本精神はいつも脚下に真なるものを見る。八紘一宇も精神総動員も脚下の真実だ。
102 声が動員される。一年生の金切り声、高等科のドラ声が、中心の音(導師の声か)に帰一して美を織りなす。「断固と守れこの正義」力の総動員体制だ。少年少女の真実は強い。(この光景は)「青少年学徒に下し賜える御勅語」を脚下に具現するかと思われてうれしい。
愛国行進曲歌詞
1.
見よ東海の 空あけて
旭日(きょくじつ)高く 輝けば
天地の正気(せいき) 溌剌(はつらつ)と
希望は躍る 大八洲(おおやしま)
おお晴朗の 朝雲に
聳(そび)ゆる富士の 姿こそ
金甌無欠(きんおうむけつ) 揺るぎなき
わが日本の 誇りなれ
2.
起(た)て一系の 大君(おおきみ)を
光と永久(とわ)に 戴きて
臣民我等 皆共に
御稜威(みいつ)に副(そ)はむ 大使命
往け八紘(はっこう)を 宇(いえ)となし
四海(しかい)の人を 導きて
正しき平和 うち建てむ
理想は花と 咲き薫(かお)る
3.
いま幾度(いくたび)か 我が上に
試練の嵐 哮(たけ)るとも
断固と守れ その正義
進まん道は 一つのみ
ああ悠遠(ゆうえん)の 神代(かみよ)より
轟(とどろ)く歩調 うけつぎて
大行進の 往く彼方
皇国つねに 栄(さかえ)あれ
歌詞の意味
「東海」とは、日本の異称。東海の君子の国。
「旭日(きょくじつ)」とは、朝日のこと。
「正気(せいき)」とは、正しい気性、意気のこと。 天地の間に広がり、森羅万象・万物の根源となる気のこと。
中国南宋の忠臣・文天祥(ぶん てんしょう/1236-1283)が詠んだ『正気の歌』(せいきのうた)に基づく。藤田東湖や吉田松陰らも影響を受けた。
「大八洲(おおやしま)」とは、日本の古称。国生み神話に由来する国名。
「金甌無欠(きんおうむけつ)」の「金甌(きんおう)」とは、黄金の瓶(かめ)のこと。「無欠(むけつ)」とは、欠け損じたところが無いこと。物事が完全で欠点がないたとえであり、特に安泰で堅固な国家や天子の位を意味する。
「一系の大君(おおきみ)」とは、万世一系の天皇のこと。
「八紘(はっこう)を宇(いえ)となし」とは、「八紘一宇」(はっこういちう)、すなわち「天下を一つの家のようにすること」を意味する。
『愛国行進曲』は、1937年(昭和12年)に作曲された戦時国民歌謡。歌詞は公募作品を元に審査員の北原白秋や島崎藤村らが補作した。
作曲は、『軍艦行進曲(軍艦マーチ)』を手掛けた元海軍軍楽隊長の瀬戸口藤吉(せとぐち とうきち/1868-1941)。
出典 世界の民謡・童話 https://www.worldfolksong.com/songbook/japan/aikoku-march.html
6 行進(行進についての説明というよりも、夢遊病者の白日夢のような詩である)
声の総動員に続いて足の総動員が始まる。行進ラッパのレコードに合わせて最左翼の列から行進が行われる。頭が起きている。手が大きく振れている。正常歩の生活行進である。箱の中の正常歩ではない。生きた真実の正常歩だ。それが運動場一杯に大きな楕円を画く。運動場の隅々までが生かされ、総動員されている。物心総動員の体制である。広さ、大きさ、眼から入る総動員の陶冶力は大きい。何千何百の全校児童が二列(四列)になって歩くとき、中の一人は僕なるぞ、中の一人は君なるぞ。国民精神総動員の大任を果たしつつある我を見つめる時、限りない喜びがあふれてくる。革新日本の教育には大きさや広さがなければならない。狭く小さな柵の中のもがきは過去の遺物に過ぎない。大東亜の天地を、いや全世界を絵舞台として闊歩する日本人を作らねばならぬ。近視眼的な教育は葬り去ることだ。
7 愛国舞踊
103 楕円が「正しく」構成された時レコードが止み、間髪を入れず、行進が全休する。それは耳が総動員されている証拠である。その大舞台で愛国舞踊がなされる。これは愛国行進曲の動的表現である。男も幼い子も踊る。これは大空の清き中に国の弥栄を象徴する世紀の踊りである。
全校生徒が一体となって踊るとき、億兆一心、没我顕真の日本教育原理が躍如として輝き渡る。これは動の総動員である。静座が静の動員なら、これは動の動員である。
8 駈歩
愛国行進曲の二番まで舞踊が行われ、三番の歌詞に合わせて大行進に移る。最初は正常歩の歩き方であるが、引き続き駈歩となり、前の列から朝礼壇前に集合する。勇躍又勇躍、軍馬いななき、戦線をかけ廻る心境・態度である。
9 腹式呼吸
104 全児が朝礼壇の前に集合すると、導師の合図で腹式呼吸を開始する。両手を腹にとり、丹田より呼吸する。それを5回くらいやる。動を静め、愈々強く落ち着く訓練である。戦線の塵や埃を洗い浄める。
10 感謝
腹式呼吸を終えると感謝の合掌姿勢をとる。全師児が瞑目し、天地、自然、神仏など、一切の加護に感謝の誠を致す。凱旋将兵が靖国の御社に額ずく心境態度である。(死は感謝の対象か)
日本の教育には必ず反省と感謝がある。大正・昭和初期における欧米模倣の教育には感謝も反省もなく、ただ功利だけがあった。宣誓に始まり感謝に終わることが日本教育のあるべき姿態である。
11 敬礼・解散
感謝心に満ちて心身が真に統一された時、敬礼を最後に解散し、午後の聖業への準備工作をする。小用に行き、渇きをいやし、憩うなどである。
7 掃除行
一、指導精神
1 清掃無垢なる心情
105 神います修養道場、御真影を奉安し奉る聖域、校舎、校庭、共に聖なる場の清掃をなすのであり、決して我らの教室や運動場を清掃するのではない。聖場の清掃をさせていただくのであり、吾自らが奉仕するのである。この思想は皇道の思想であり、この行の根本精神は直(なお)く明き心である。功利を全く除外し、清浄無垢なる心情である。
106 内に清浄無垢なる心境を持てばこそ、他の不浄を清浄化せんとする心も起こる。この精神、この行相は明らかに日本精神の特徴美である八紘一宇、広く四海を遍照し給う天照大神のご精神そのものの現われに外ならない。鏡の如く曇りなき心、先ず誰もがこの心境になり切ることから始まる。
2 宗教的行としての勤労作業
アルバイト(労働)としての学校Schuleでの掃除作業は生産を目的とし、より清浄に掃除され、結果の清掃度で掃除作業の評価をした。もちろん結果としての清浄は望まれるべきであるが、これだけを重視すると功利主義、唯物主義に堕し、自由主義思想を醸成する。結果主義は功利主義であり、赤の思想である。結果の清浄を願うのなら使丁を多数雇って掃除させればよく、わざわざ幼い児童の身体的労作を求めなくともよい。
校舎や校庭が不浄だからきれいにするのではない。聖域を掃き清めること、つまり行ずることによって、自己の人格を修練して行くのである。宗教的行として行ずるのであり、単なる勤労が目的ではない。
107 宗教的行としての勤労作業の中でも掃除作業は最も根幹的であり、他の勤労作業の原拠である。
3 勤労作業の本質
勤労作業の本質は人、場所、時の三要素が無駄なく生かされていることである。誰が何時どこを掃除するのかを明確にしなければならない。いつもすべての人が働いていることが肝心である。人員が多からず少なからず、仕事の分量と時間に照らして配当人員を無駄なく配当する必要がある。心境態度の訓練によるだけで効果を収めることは困難である。綿密に練った掃除計画のなかでだけ「黙動」が成立する。徒に騒ぐな黙ってやれといっても無理である。人員過剰なら無駄話をする余裕が出て来る。
二、生活行規格(教室内大掃除)
108 一 勢揃 振鈴を合図に校庭に集合。当番長(家長)が整頓させる。大石良雄が仇を討つときの心境である。
男子は後鉢巻(鉢巻を頭の後ろで結ぶ)で、洋服は上着を脱ぎ、和服は着物をまくる。マスクをする。
女子は手拭をかぶる。(防空服に準じた)作業ズボンをはく。たすき掛けしてマスクを着用。
二 誓願 校長が壇上に立ち、玄関に奉祀してある大神宮に向かって掃除行の誓願をなし、全児童は合掌する。大君の御域を有難く掃除させていただくという心境である。
三 作業目標指示 衛生主任が掃除の作業目標を指示する。児童はそれを有難く傾聴する。
四 作業場へ 掃除開始の打鼓(ドーン、ドーンと十数回連打)を合図に各作業場に向かう。当番長が指揮する。勇躍征途につく心境である。
五 整列 第一班から第五班までを一組とし、各組に組長を置く。組長の指揮の下に廊下に各班ごと並ぶ。組長が「礼」と号令をかける。組長が掃除の力点を明示する。「礼」で開始する。各自は自己のなすべき務めを自覚する。掃除の力点は衛生主任が指示した事を具体化したものである。
六 はたきかけとガラス窓の清掃 窓を開ける。
第五班の二名がはたきかけをする。教室の前方から左右に窓をはたき、後に向かう。上から下に。機敏に。
ガラス拭きは第一班から第四班までが当たる。特に汚れているものから拭く。上から下に。隅やさんの埃に注意。はたきかけが終わると同時にやめる。教室内の塵やほこりを外に出す。落ち着いて無言で機敏に行う。一枚のガラスも国家の財宝であるから破損しないように心静かに生かすように努める。破損しているガラスは掃除の終わりに繕う。
第一班の三名は南窓東寄の三枚。
第二班の三名は南窓西寄の一(三枚では)。
第三班の三名は廊下内側東寄三枚。
第四班の三名は廊下外側西寄三枚。
第五班の三名中二名ははたきかけ。一名は水汲、黒板拭き、啖壺など。
(これだと廊下内側西寄三枚と外側東寄三枚の分担がないのでは)
110 七 床板の清掃
掃き掃除は第五班の二名が当たる。教室の前方から後方に。ゴミが飛ばないように箒の先を止める。板と板との間、隅に注意する。
机運びは第一班から第四班までが担当し、机の蓋の上に腰かけを倒して載せ、落ちないようにやや傾けて二人で後方に運ぶ。掃くにつれてだんだんに運ぶ。
水汲みは第五班の一名が担当し、大雑巾を置いてその上にバケツを置く。適宜に水を取り替える。
雑巾がけ 掃き終わると同時に各班が板の眼に沿って拭く。雑巾は適当に振り出す。(湯水につけて振って汚れを落とす)(116頁参照)
箒は「円く使って四角に」掃く。掃除道具にも机腰掛にも生命がある。物を大切にする。せかず静粛に。責任を果たし、「機関説」にならないように協調する。
分担
(第一班から第四班までの)各班から、机運びに二名、腰掛載せに一名を当てる。
第五班は、はたき係を二名、水汲み係を一名出す。
机運びと腰掛載せの分担は、第一班が第一列を、第二班が第二列を、第三班が第三列を、第四班が第四列を担当する。
第五班は廊下を掃いて拭く。
(疑問解消 各班は三名で構成されていて116、掃き掃除と机運びが済んでから、雑巾による拭き掃除を行う。)
八 整頓
111 各班二名が机を運び、一名は机を整頓する。机の上を拭く。各班は担当の窓やカーテンを閉める。第五班が用具の後始末をする。念には念を入れて後の締めくくりをしっかりやる。全体から見た美を考える。
九 査閲
掃除終了の振鈴により廊下に並んで待つ。全教師が各組に分かれて査閲をする。組長が「気を付け、礼」の号令をかける。
反省(児童)
第一班 ガラス窓の指導。
第二班 教室の整理整頓。
第三班 机の中の整理整頓。
第四班 戸締りカーテン。
第五班 身体検査。
作業状態、清潔度、身支度、用具等について教師が講評する。
組長が「気を付け、礼」の号令をかける。
(教師が)指導区域全体に関する講評をする。
欠点を見出そうとせず、美点の発見をし、欠点は愛を以て指導し匡正する親心が必要。
児童にとってこれは教えを有難く恭しく聞き答える行である。
査閲中は一切無言たるべきこと。査閲区域は時折変える。
10 敬礼
112 導師の「解れ」(意味不明)の指令によって敬礼する。児童は「ありがとうございました」の感謝心を持つべきである。
11 洗手
順序正しく落ち着いて汚れた手を洗い浄める。組長が指揮する。
12 掃除査閲記録簿に記入し反省する
反省事項や講評事項等を掃除査閲記録簿に記入し、受け持ち教師の指導を受ける。
ありがたく長く心に銘ずる意味を込めて丁寧に書き記す。
備考
一、階段、廊下、物置、昇降口、便所等の掃除も教室掃除に準じて行う。
二、普通掃除の場合は一~四、九の講評、十二を省略する。
三、掃除時間は、普通掃除は25分、大掃除は40分とする。
四、大掃除は毎週土曜日に行うものとする。
三、生活道場実践公開
1 勢揃
113 作業開始の振鈴が鳴り響く。男子は後鉢巻の出で立ちものすごく、長いズボンはまくり、洋服の上着は脱ぎ去って腰掛の上にきちんとたたまれ、和服の子供は裾をまくって甲斐甲斐しい身装である。女子は全て手拭をかぶり、防空演習の時に使用するモンペに類する作業ズボンをはき、たすき掛けの男勝りの出で立ちである。誰の口もマスクで覆われ、赤化の思想はどこからも入るべき余地がない。
寒い氷の冬も、暑い水の夏も、常に変わらず素足で作業する。これは児童だけに強いるのではなく、教師も先ず範を垂れて児童に行ぜしめる。教師は監督者ではない。求道者のよき導師である。導師だからこそ同行でなければならない。百の説法よりも、一つの権力よりも、ただ同行あるのみ。大石良雄が主君の仇吉良上野介を討つ心境と何の変わりがあろう。滅私奉公の一念あるのみ。
2 誓願
114 校長やおら壇上に立ち、玄関正面に奉祀してある皇祖神に誓願をする。校長が正面を向くと全師児は直ちに合掌の姿勢を取る。「天も落ち、地も裂けよ」とばかりに校長が全身全霊丹田から発声する。
誓 願 大君の聖域を掃除させていただきますことを、ありがたく感謝いたします。 私共は終始一貫真心を以てやり通しますことを誓います。 |
心境態度陶冶の実なくして掃除をさせることは有害である。徒に掃除を嫌わせることになるからである。総て教育は(1)心境態度陶冶、(2)思想見識啓培、(3)技術修練の三方面を綜合関連の中で目標とするのでなければ、不具な教育になる。
3 作業目標指示
115 誓願が済むと校長は壇上から降り、衛生主任が代わって壇上に立ち、掃除作業の目標と当日の力点を指示する。
全校が一つの統一した力点に向かって運転されてゆくことは極めて必要なことである。衛生主任が行う目標の指示は、次の教育的見地から選ばれたものである。
(1)掃除の作業状態についての指示
(2)清潔・整頓方面についての指示
衛生主任は大掃除系統案と環境の偶発的事象によってその目標を選択決定する。子等は有難く傾聴していなければならない。
4 作業場へ
「ドーン、ドーン、ドーン、…」掃除開始の打鼓が打ち続いて鳴る。当番長は組員を引率して正常歩で定められた作業場へ向かう。勇躍征途につく心境である。「ドーン」という太鼓の音が腹にこたえ、霊気がそのたびに漲る。
5 整列
116 一組の掃除人員は総計15人で、これを第一班から第五班まで、各班3人ずつに編成されている。各班に班長を置く。作業場に着くと組長の指揮で各班ごとに第一班から第五班の順で整列する。組長が「礼」と号令をかけ、一同が礼をする。ついで組長は当番員に該教室の掃除の力点を明示する。この掃除の力点は、衛生主任が全体に指示があったものや、その教室に特に必要なことを明示する。
各員は自己の務めを自覚して一層奮励努力する。盲目的行動ではない。
6 はたきかけ・ガラス窓の清掃
先ず教室の全部の窓・回転窓が全部開放される。それぞれ定められた窓をいち早く開け放つ。
117 第五班の二人が教室の中央上から左右に分かれて順次窓を後方にはたいてゆく。その間に第一班から第四班迄の12名の児童が受け持ちのガラス窓を拭き始める。特に汚れているものからきれいなものへと拭く。すべて上から下へ行ぜられる。この作業も道になると簡単なことになる。
仕事は全て無言で機敏になされる。一枚のガラスも国家の財宝と思えばこそ、破損しないように心静かに生かされる。破損しているものは掃除の終わりに繕い、生きられるだけ生かすことに務める。
物心総動員は掛け声ではない。こんなところにその実態が伺われる。
はたきがけが済むと同時にガラス拭きも中止し、床板の掃除に取り掛かる。
7 床板の清掃
第一に掃き掃除をする。第五班でこれまではたきをかけていた二名が、今度は箒で上座から下座に向かって「円やかにかつ隅々まで四角に」掃く。ゴミが飛ばないように箒の先を止める。ゴミがたまりやすい板と板との間の溝は特によく掃きとる。
118 第一班から第四班までの者は各列(四列らしい)の机を運ぶ。各班の一人が腰掛を机の上に逆に載せ、他の二人が運ぶ。一個の腰掛、一つの机にも生命がある。「日本精神は生かすことである。」(自己中的発想)日本精神の原理に基づく掃除行は相互に生かすことである。一人で運んで足を痛めたり、腰掛を落として腰を痛めたり、床を傷つけたりしない。掃き集められたごみも生かされる。大きな紙屑は炭俵の中に入れて紙屑として売って国防献金にされ、他のごみはゴミ捨て場で農業の肥料にする。
こうしているとき第五班の中の一人はバケツに水を汲んでくる。机が運び終わると雑巾がけをする。板の目に沿って拭きぬぐう。雑巾の一つの面を何回も使わないで、ゴミを拭(ぬぐ)い去ってよく振り出す。第五班の一名は二個のバケツを代わる代わる取り換える。この間に第五班の残りの二名は廊下を拭き、雑巾がけをする。
119 仕事はこのように分業によって少しの隙もなく運転されてゆくが、決して「機関説」に陥らない。いつも他と協調してゆくことを忘れない。
もし仲間がかりそめにも遊び怠けていれば、他の者が制裁する。反省し謝罪するまで責める。これが皇道主義社会における自治である。デモクラシー社会における自治にはこれがない。(自己中)自由は統制である。統制されるものと統制するものとが同じ自分達であるところに日本自治の特質がある。(自己中)
8 整頓
床の雑巾がけが終わると各班とも二名が机を元の位置に運ぶ。他の一名はそれを整頓し、清潔な水で机の表面を拭く。第五班は水を捨て、ごみを捨て、花の水を取り替え、用具の後始末をし、教室内の整備をする。第一班から第四班までは受け持ちの窓の鍵をかけ、カーテンを閉める。
120 整頓は念には念を入れて行う。いつも全体から見て美なる部分の位置を決定してかかる。(意味不明)この作業訓練が非常に重要である。
9 査閲
掃除終了の鐘に引き続いて査閲の鐘がなる。各員は最初並んだように廊下に静かに並び、査閲の導師を待つ。
導師が見えると組長が「気を付け、礼」と元気に謹厳に号令をかける。皆の子が不動の姿勢で真面目である。
組長が「各班反省」と号令をかけ、第一班の班長から順次第五班の班長迄、掃除の相互反省を述べる。反省の指導点は以下の通り割り当てられている。
第一班 ガラス窓の清掃
第二班 教室の整理整頓
第三班 机の中の整理整頓
第四班 戸締りとカーテン
第五班 身体検査(爪、掃除服装、髪等)
児童の反省が済むと、教師が作業状態、清潔整頓度、身支度、用具等の全般について講評する。その日の掃除の力点は最も念入りに指導する。教師は決して掃除結果の欠点を見出すことに努力してはならない。努めて美点を発見するように心がけるべきである。万一欠点があれば、愛を以て救い導く親心を持たねばならない。
児童には教えを恭しく聞き答える従順さがなければならない。
10 敬礼、洗手
121 査閲が済むと各自は順序正しく手を洗う。掃除の後で洗手する習慣をつけてやることは極めて必要なことである。普段衛生や健康を重んじても、掃除後の洗手に留意しなければ、子供に訓練の抜け道を示すようなものである。笑止である。
11 査閲記録と反省
児童相互の反省や導師の講評事項を査閲簿に書き止め、「修養」の手引とする。
一学期に一回査閲簿を通して「掃除成績優秀賞」を学級に授与する。これを授与された学級は次の学期中教室に掲げて誇りとする。
122 掃除査閲記録簿サンプル
昭和 年 月 日 天候 組長
学校と学級の掃除の力点
査閲の先生と各班と組長による掃除の反省
8 修行当番(一般児童の指導者としての週番長(一週でなく二週単位)の訓練のようなものらしい129)
一、指導精神
1 修行の指導意識を明瞭にして
123 僧侶が仏陀になるために修行することには長い歴史がある。最近青年団や青年学校、工場等の指導者階級の革新層を動員して長い日月修行させ、この行を終えた者が社会での新人として活躍している。
教育は社会に追従すべきでないが、移り行く社会と共にあるべきでもある。(論理的に未成熟)人間育成を価値目標とする小学校で修行は必要であるが、その実際を発見できないでいる。私はこのような機構を試験する任に置かれている。
124 自由主義思想を背景とした自治組織機構では、相互指導当番、看護当番、週番等の名称の下に、生徒を学校の自治活動に参加させているが、友達の生活を良い方向に導くという美名のもとに、実際はあら探しをやっている。当番児童のために役立つ人生修行というよりもむしろ警官的である。
人生のつとめに対する態度を培っておくことは、興亜の今日において肝要である。人生のつとめを修行させるために設けられたものが、この修行当番である。他を導くということ以上に、我と我が身を修行するという指導意識を明らかにしなければならない。
2 日本家族制度の指導精神で
私は学校を協同社会体としてでなく、日本的家族制度の団体と見る。日本固有の総合的家族制度における、親は子を愛し、子は親を敬し、兄弟姉妹相信ずる愛敬信を以て、一貫した生活組織の指導精神とする。この精神なくして他の友を注意するとき、修行は破滅する。
3 日本学的生活目標の信念に目覚めて
125 修行の一切は脚下の事実から始まる。平凡に見える脚下の行道にも常に崇高な日本学的生活目標が存在する。この目標に向かって生きることを信念化しない修行はあり得ない。修行は虚勢ではない。勇躍させることでなければならない。(いいわけか)その源泉は日本学的生活目標である。日本学的生活目標とは、
(一)八紘一宇の日本思想の滋養
(二)中心帰一、億兆一心、没我顕真の日本生活態度の錬成
(三)大東亜建設の聖業成就のための日本生活技術の修練
以上の生活目標の鏡を通して生活を観じ、生活を考え、生活を行じ、生活を証信する。(057,144参照)
二、生活行規格
126 一 修行始
誓願
・道場に定座
・修行当番についての指導精神を訓辞
・宣誓
・修行の腕章を腕につけてもらう
大死一番日本学的生活目標に向かって突入するというやむにやまれぬ大和魂を発露する。
修行児童全員が道場に参集する。(初日に行う)
二 朝のつとめ
校庭清掃 奉安殿の御域を初めに掃き奉り、その後に校庭、裏庭、前横の道路を清掃する。
「何事の宿るは知らねども」ただひたすらに行の尊さ清々しさに引かれて行う。
登校直後に着手する。男女の区域を定めておく。
窓の開閉 各受け持ちの教室や廊下を巡視し、窓の開閉を指導する。(高学年には指示し、低学年には開けてやる。)
死せる空気を浄化し、陛下のミコとしての幼い同胞の健康を思う。
各児の受け持ち区域を一定しておく。
神前奉仕 大神宮前に整列し、二礼二拍手一拝、献灯。榊の水を換え、敬礼する。
自己の総てを神にお任せ申して働きます大安心の精神で。
修行当番の児童全員がそろって奉仕する。献灯や榊(の水交換)は交替で行う。
127 玄関接待 玄関に侍り、先生や来客に挨拶し、履物や持ち物を始末する。
礼儀正しく、愛嬌を振りまいて、動作は静かに、細かく行う。
女子だけが修行する。休み時間も交替で勤務する。
茶の饗応 先生や来客に茶を饗応する。茶道の礼儀を生活の中で学習させる。女子だけが修行する。
御影奉護 奉安殿前に左右一名ずつ銃を持って奉護し奉る。命がけでお守り申し上げる。男子だけが修行する。休み時間も交替で勤務する。
三 休み時間のつとめ
兄弟の生活を生かす 内外遊は出来ているか(意味不明)、廊下の歩行は良いか、喧嘩をしていないか、悪戯をしていないか、良いことをしているのは誰か。
悪を探し出すよりも善を見つけることに務める。悪は自らの徳が至らないせいだと思って励む。
校舎の内外を適当に分かれて勤務する。
物の本質生命を生かす 廃物を更生し、破損個所を修理する。
生かすことの日本精神に目覚め、物心を総動員する。
印刷作業 教師の印刷物の御用聞きをし、印刷作業をする。
自己修養と職業指導とを目指す。男女ともに修行する
128 帰りのつとめ
教室戸締りの巡視 受け持ち区域の戸締り、カーテンの開閉等を巡視する。
大君の財物をお守りあがめる気持ちで行う。
修行日誌 その日一日の行道を記入し、先生に見ていただき、敬礼して帰る。
偽らずありのままの言葉で書きとどめる。
五 修行終わり
独参(導師による個別指導141) 修行最終日に訓育室で行う。修行当番中の感想煩悶等について導師の指導を乞う。
我が身の及ばざるを自認し、ますます精進する態度。
修行座談 修行当番一同が道場に集まり、感想を発表し、導師が提唱(事に先立って意義を説き示す)する。
ありのままをありのままの姿で発表する。
感謝 感謝の礼をする。当番長が感謝の辞を述べ、他の児童は合掌する。
皇国運発展のための大事業に参加することができ大安心で父母の家に帰る心境である。
次番者に引き継ぐ。
三、生活道場実践公開
1 誓願
129 最上級学年の男女各10名ずつが修行当番の任に当たり、期間は15日である。
修行初めの日に幼い修道者は神を祀る道場に定座し、「今日からは学校へ字を覚えに行くのではなく、修行に行くのだ」という革新日本学校の観念を新たにする。
定座10分。導師が修行についての指導精神や生活目標を細々と説く。真学真聴する善男女の胸奥には、いつか「大死一番、日本学的生活目標に向かって突撃するのだ」との烈々燃えるが如きやむに止まれぬ大和魂が湧出するのを覚える。(勝手に他人の内心を決めつけないで欲しい)
組長が真立し次の宣誓を行う。
宣誓 一、私どもは今日より二週間、皇運扶翼の御ために真実を以て脚下の行道を修行致します。 二、私どもは(親子兄弟姉妹間の124)愛敬信の日本学的精神を以て兄弟姉妹の生活を生かしとおします。 三、私どもは質実剛健、以て物の本質生命を生かし通します。 |
130 他の修行児は合掌の態において心からなる誓いの言葉を捧げる。
誓いが済むと、導師は神から三宝(仏・法・僧の三宝のことか)に載せてある修行の腕章(赤白の布)をいただき、それを修行児一人ずつに謹んで与える。導師は神の御名代として子等に授ける。腕章の白は心の純白潔白、白色倫理運動を表し、赤は(共産党ではなく)赤誠燃えるが如き大和魂の発露、皇道主義運動を表す。(ご都合主義)
自らの心が弛み勝ちになったと感じる時、この腕章によって自省自奮する。
一同は師からいただいた腕章を左腕につけ、神前に額づき、無言の決意をほのめかす。無敵皇国海軍の沈黙の英姿のように、また富獄が泰然として厳たるが如く決意する。修行の初めにこの心境態度が醸成されない子等は次の機会を待つより他にない。
2 校庭清掃
131 宿直の師が洗面のすがすがしい顔を朝の窓辺にのぞかせるころ、修行の男女が校庭に現れる。
「何事の宿るは知らねども」ただひたすらに行の尊さと清々しさに引かれて、奉安殿の御域が先ず初めに清掃される。
人気のない朝の庭の隅々が、心の線を引いてきれいに掃き清められ、気持ちがよい。黒土にしるす箒の細く正しい目の跡は、修行の心の直さや統べさを象徴してうれしい。(独裁者)
誰の命令によってやるのでもない。(ウソ)登校した者から、自分がやり出す。損得で考えられない問題である。
他の兄弟姉妹が登校する頃にはすっかり掃き清められる。皆はこうした美しい聖園の黒い土と緑の空気とを思う存分に呼吸して、朝の心身をのぼる朝日のようにさわやかにすることができる。
3 窓の開閉
132 校庭の清掃が済むと、各受け持ちの教室・廊下を巡視し、窓の開閉を指導する。陛下の御子としての幼い同胞の健康を思い、死んでいた室内の空気を浄化する。自分の手でできない一年生の教室や特別室の窓等は修行当番が開ける。高学年の教室廊下は各学級の係がやることになっているので、もし開けてないならば、その係に忠告し、真の親切さを表す。
4 神前奉仕
学校の玄関の正面奥の高御座に奉祀してある大神宮に対して毎朝奉仕させる。(本音)神国日本の児童として帰依神(へ)の帰一行を奉仕させる。
平常の行は前述の生活行規格の通りに略式で行うが、毎月1日と15日の二回は次のように厳格に神前奉仕させる。この時は修行児全員が早朝登校することになっている。
次第
一、整列 大神宮前に男女各二列横隊に整列
133 二、敬礼
三、御榊奉供 御榊は修行当番が山からとってくる。
四、献灯
五、御清水奉饌(水を供えることらしい)
六、二礼二拍子一拝
七、誓願
八、誓願歌朗詠
九、敬礼
十、撤饌
十一、敬礼
献灯や御榊奉供等は交代で奉仕させる。この神前奉仕はやがて日本国民として家長としての資格を得てその地位に定まった時に必ず行うべき日本独自の生活行である。この神前奉仕が実に神武大帝の創業から始まっていることを記憶しなければならない。
5 玄関接待
134 女子修行者の生活実践である。他の朝のつとめを果たしてから玄関に侍り、登校する先生や来客に対して接待をする。
朝来てみると上履きがきちんと並べてある。師の姿が見えるといと丁寧に「お早うございます」と朝の挨拶をする。純な乙女の心に迎えられては、心が天真になることを知らず知らずに覚える。「先生お持物を持ちましょう」と帽子や外被をかけ、手荷物を職員室に運ぶ。他の子どもが靴を始末する。その動作が静かで細かい。
将来の良き主婦を勉強するために、玄関接待の子供は必ず玄関に生花をしておく定めになっている。時には朝顔の鉢植えや金魚鉢が飾られていてうれしい。
このような生活錬成の学校が、新しい道場学校の一コマである。小学校は花嫁学校であり、軍隊学校でなければならない。
6 茶の饗応
135 導師や来客が登校されるとお茶の饗応をする。つぎ方、持ち方、出し方など総て茶道に合する方法でやらねばならない。家事の生活学習が展開される。
修行の子等は一様に口をそろえて日誌に書いている。「私は学校でお茶を出す御稽古をしたので、家にお客様があった時、お茶を出すのが恥ずかしくなくなりました」これは偽りない誰もの告白である。(茶道という礼儀・規範自体を先験的に当然視した屈辱的な同調の強制ではないか。)
7 御影奉護
御影奉安殿前の左右に一名ずつ奉仕する。一日交代である。もちろん休み時間の勤務である。
剣つき銃を持って、いかなる場合があろうとも死守せんとの決意に燃えている。登校の師や部落の登校する団体が御影礼拝に見えるたびに、不動の姿勢をとる。
大神に帰依する最上級の奉仕行である。これは興亜日本の小学校において必ず実施されるべき重要な行である思う。徒に軍隊の模倣をするのではなく、日本の守りという本質的意味から考えてこれは必要なことであると信ずる。
8 兄弟の生活を生かす
休み時間に校舎内外に分かれて兄弟生活の「自治」に任ずる。
内外遊はよく守られているか。(意味不明)
廊下の歩行は生かされているか。(「…はよいか。」127)
喧嘩をしている者はいないか。
悪戯をしている者はいないか。
誰がどんな良いことをしているか。
兄弟姉妹の生活を生かすことは、自己の生活を生かすこととイクオールである。より多く生かしたものが、より多く自己を生かしたことになる。
悪を探し出すのではない、善を見つけることに務めるのである。
この修行において「我大君の、導師の、御名代として、兄弟姉妹の生活を生かさん」という根本信念がなくてはならぬ。こんなことをやっていては大君が、導師が、御心配なさるだろう。このようなことをすれば大君が、導師が、お喜びになるだろうとの親心を以て、兄弟自治の任に当たらねばならない。そうすれば「(他人の)悪は自分の徳が至らないためだ」と思って倍々励むのである。
9 物の本質生命を生かす
137 修行は物心総動員運動の一実践形態である。人を生かすとともに物の本質生命を生かすことに務める。
廊下に落ちている紙くずを拾って生かす。
汚い教室の掃除をしてやる。
笠掛の壊れを修理する。
箒の紐の取れているのを直す。
壁の落ちたところを修繕する。
垣根の壊れをつくろう。
掲示板のはがれていた図画をとめる。
138 子等の日誌にはもっと多くの偉大な行績が記されている。
気の付く人間をつくることだ。紙くずを踏んでも知らぬが仏、眼を何十度回転して行き過ぎるような高等動物を作りたくない。生かすことの日本精神に目覚めて物心総動員運動に参加する国家的人間を欲している。
大工もいらない。左官もいらない。植木屋もいらない。それでいて手工が向上し、家事裁縫が向上する。
教室のカーテンが壊れている。その中で立派な布で以て本裁の裁ち方を習っても、それは死んだ遊びに過ぎない。学校で裁縫が課せられるのは、立派なお膳立てされたものだけを繕うことができるようにするためではない。生きた生活の破れを如何にして観て、如何にして繕うかを学ぶことである。裁縫も手工も何もかももっと街頭に進出しなければ、作業教育も労作教育もない。
10 印刷作業
139 休み時間や放課後に教師の印刷物の御用聞きをして印刷作業に任ずる。これは自己の人格修養と職業指導とを目標としている。書く、刷る、綴じるなど、皆子等の手によってなされる。
11 教室の戸締りの巡視
これは(学校)帰りの努めである。受け持ちの教室や廊下を巡視し、窓の戸締りやカーテンの開閉等を調べる。大君の財宝を守りあがめることの現われである。この習慣のおかげで(子等が)家庭人になった時、自家の戸締りや火の気を心配し、火災や盗難等の「人騒がせ」をしなくて済む。
12 修行日誌
一人一冊持っている。一日の行道が終わった時、その日一日の生活をありのままに反省し、ありのままの言葉で真実を書き記す。記入後は必ず導師の下に持参して指導を願う。軍隊手帳に比すべき大切なものである。
その内容は次の通りである。
140 昭和 年 月 日 曜日( )
朝礼訓話
受持訓話
兄弟の生活を生かす
物の生命を生かす
所感
指導
13 独参
141 修行が終わる日に訓育室に一人ずつ呼ばれ、修行当番中の感想や煩悶等を師に告白し、指導を仰ぐ。これは個別修身の最も良い機会となる。子等が真に師のふところに抱かれ、魂と魂とが直流を起こす。師の心が子に、子の心が師に(伝わり、)美しい人生の火花が散る。
(導師は)師といういかめしい肩書から逃れ、しかも真に道を教えていただく有難い人と崇められ、子等は皆我が身の及ばない点を自認して、ますます精進するという心境でいっぱいになる。
14 修行座談
独参が終わると当番児一同は道場に集まり、修行生活について相互に座談する。感話の発表である。ありのままをありのままに発表する。
導師は子等の益々の精進を祈って、提唱のはなむけを捧げる。
15 感謝
142 修行座談に引き続き感謝の礼を行う。当番長は「皇国運発展のための大事業に参加でき、大安心で父母の家に帰ろう」という心境で感謝の辞を述べる。他児はその間合掌の姿勢をとる。
感謝が終わると次番者に引継ぎし、15日間の修行を終える。修行終了後も修行中の心境態度で生活することは言うまでもない。
9 終礼
一、指導精神
1 感謝、大安心の心境
始業始めにおける朝礼は、その精神や形式は多少異なるが、どの学校でも実施している。しかし一日の生活行を無事に為し終えたときの終わりの礼は、ほとんどの学校で行っていない。
143 道場学校では終業の際に、今日一日無事に奉公することができたことを神明に感謝し、一切を神明に任せ、大安心で父母のいます家に帰る。これは神明の加護に対する感謝の礼であり、「人事を尽くして天命を俟つ」という心境態度である。
一日中指導を受けながら帰りがけに「さよなら」も一つせずに帰る子等の浅ましさを思うにつけ、教育の無力さを思う。「教育は感謝に始まり、感謝に終わる」と私は断言したい。ある有名な実業家が将来の日本の教育は、ラジオ活動を通して一度に何千人もの児童を教育する大量生産教育であろうと言っているが、これほど実利本位の教育はない。「知る」教育で足りるか。「わかる」教育ではそんな方法は最も愚であると言わねばならない。心の奥の琴線に触れてこそ真の共鳴があり得る。
2 証・信の段階
終礼は一日の生活行を「証自証」し、それを「信なるもの」にする段階である。教授段階における「志観考行証」の「証」の段階である。*
144 一日の生活行を反省し、その悪かった点を今日に更め、その善かった点を明日に引き継ぐことによって、日々の生活が新たになり、人生の絶えざる向上発展がある。
*「証自証分」とは、法相宗の「唯識大意」が説くところの、「心」(しん)と「心所」(しんじょ)の四つの局面、つまり「四分」の一つである。「四分」とは「相分」(客観的側面)、「見分」(主観的側面)、「自証分」(対象を認識していると自覚する側面)、そしてこの「証自証分」(「自証分」の働きをさらに自覚する側面) Wiki「四分」より。
*これと関係があるかどうか分からないが、親鸞の主著に『顕浄土真実教行証文類』がある。藤原智「真宗教学史の転轍点」より。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kyogyoshinsho/2/0/2_45/_pdf/-char/ja
二、生活行規格
一 真座 (授業)最終時(時限)の終了後、その教室で真座する。呼吸を深く整え、数息観を20まで一回やる。導師は受け持ちの教師が行う。
二 反省 瞑想しながら今日一日の生活の反省を「自証」する。今日の失敗は明日の向上と心得て行ずる。
三 終行の感謝 全児が合掌する。級長または全児が終行の感謝を唱える。感謝と大安心の心に満ちる。
三、生活道場実践公開
145 1 真座 その日の最終の授業が終わると、その教室で直ちに真座し、数息観を20まで一回行う。呼吸を深くして落ち着きに入る。
2 反省 続いて瞑目し、その間に今日一日の生活行について実践の跡を深く細かに反省する。今日の失敗は明日へのよき向上と心得て入念に反省を行う。
3 終行の感謝 反省を終えると全児は合掌し、終行の感謝を唱える。時には級長やその他の者が代表で唱え、他児は合掌している場合もある。
次に終行の感謝(文)を掲げる。
146 終行の感謝(低学年)
私たちはナカヨク 一心ニ天皇陛下ノ 御タメニ オ勉強出来マシタコトヲ謹ンデオ礼申シ上ゲマス。 サア仲ヨクオ家ヘ帰リマセウ。 |
終行の感謝(高学年)
吾等ハ全員一体、私ヲ滅シテ皇運扶翼ノ道ノ今日学ブベキコトヲ学ビ了レリ、茲ニ虔ミテ神明ニ感謝奉告シ一切ヲ神明ニ任セ奉リ、大安心ヲ以テ父母ノ家ニ帰ラン |
感想 筆者は薬師寺や興福寺に関係していた人ではなかろうか。というのは筆者が薬師寺や興福寺が大元となっていた法相宗の用語「証自証」を本文の中で用いているからだ。143
地篇 国民学校案の全体行事体系
1 国民学校案と行事教育
149 国民学校案は教育審議会の答申案とその経過報告書を資料として理解することができる。国民学校の趣旨については、その答申案の中の次のことから明確に知ることができる。
1 教育を全般に亘りて皇国の道に帰一せしめ、その修練を重んじ、各教科の分離を避けて知識の統合を図り、その具体化につとむること
2 訓練を重んずると共に、教授の振作、体位の向上、情操の醇化などに力を用い、大国民を造る(よう)に力めること
次に、教化案の改革として、従来の十数科目を国民科、理数科、体錬科、芸能科の四科目に統合し(高等国民学校は実業科を加える)、国民精神の徹底、科学精神の涵養、心身の鍛錬、技能及び情操の陶冶を行い、職業に関する基礎的教養を施し、究極においてこれらを全体として国民錬成の一途に帰一すべきこととしている。
150 次にこれらの教科の運用上における注意すべきこととして次の諸点が考慮されている。
1 初等国民学校の第一学年、第二学年においては、周到な監督の下に、全部または一部の綜合教授をなすことを認め、原則としては分科教授をとっていること。(分科教授を原則とするが、綜合教授も認めるということか)
2 各教科を通じて東亜及び世界、国防、郷土に関する教材に「意を用い」、教育を具体的な国民生活に即させるとともに、「皇国の歴史的使命」を理解させ、大国民としての素地を培養するように力め、特に高等国民学校では、公民教科を重んじて公民としての須要な教養を得させ、かつ卒業後の実生活を顧慮して職業指導に十分留意すべきこと。
3 教科以外の祝祭儀式その他各種の学校行事の教育的意義を重視してこれを組織化して教育体系内に取り入れ、その訓育的効果の発揚に十分留意すべきこと。
この第三項は行事がいかに国民学校案で重要な地位を占めるかを語っている。そしてその点で私が「学校行事の綜合的生活経営」(東洋閣)472において論述したことがそのまま採用されていてうれしく感じる。
2 指導精神
一、目的への信条
151 国家的国民行事、社会的行事、自然等の持つ生命を、綜合的、体験的、生活的過程で児童の生命に融化させ、以て日本国民精神の涵養をはかると共に、皇民生活様式の修練をはかる。
二、方法への信条
1 視覚、聴覚、触覚等の全体機能を用いて生活させ、児童の生命姿態に合わせること。
152 2 切り離された正課外の行事教育(として)ではなく、行事そのものを一週間乃至数日間の学習生活題目として、綜合的・全体的に取り扱うこと。
3 その素材として強力な補充素材や正課素材を取り入れ、陶冶材の組織化、統一化、単純化をはかるように組織立てること。
4 直観、理解、表現を経た、実践にまでの生活陶冶であること。
三、経営への信条
1 教育時間割を適宜変更し、運転を自然的にすること。
2 環境統制に重点を置き、環境は常に児童と教師の手によって清新されつつあること。
3 生活結果は児童又は教師の手によって一括整理の上、生活記録として保管しておくこと。
3 各月の全体行事体系
始業式・入学式
153 指標 学校が人生修業の道場であることを知らせ、人生修業者としての第一課乃至第六課の生活訓練を行う。綜合的生活機構。
入学学年(新入生)
1 家庭生活 神棚に礼拝し、お赤飯で祝う。
2 入学受付 受持と配当児童、学級旗の掲示、組章の贈与。
3 入学式 奉安殿前または講堂で行う。
イ、開式の辞 ロ、君が代 ハ、奉安殿礼拝 ニ、学校長挨拶 ホ、受持訓導紹介 へ、在校生歓迎の辞 ト、一学年主任挨拶 チ、閉会の辞
4 入学奉告祭 郷土の氏神様へ。
5 父兄、児童、受持の話し合い。教室で。
6 校舎内外の巡視。
7 学校児童としての第一課の生活訓練を行う。
8 入学記念樹の植培 梅、松、桜など。
9 入学記念写真撮影
生活統制 動物、花、絵画、学級経営要綱、尋常一年児童(旧)の図画や書方の掲示。
関連素材 修身教科書の中の「ガッコウ」
中学年
1 家庭生活 神棚礼拝、氏神参拝。
2 始業次 講堂または校庭で。
イ、開式の辞(学校長) ロ、御真影奉安殿礼拝 ハ、一同挨拶 校長が壇上に起立し、職員は一列に児童の前に整列する。 ニ、学校長訓話 ホ、唱歌 金剛石* へ、閉式の辞
3 新教室で、呼名、新学年への希望、学年初めの注意。
4 宣誓式 各自の本学年間の希望や決心などを白紙に墨書させ、それを神棚や(二宮)尊徳翁の銅像へ供え奉る。
5 配当教室内外の大掃除
環境 級訓、偉人肖像画、絵画、花、掲示教育。
関連素材 (2)修身「二年生」、(3)修身「私たちの学校」
*唱歌「金剛石・水は器」は「新訂尋常小学唱歌第五学年用」の2番目にある。昭憲皇太后(明治天皇后)の作詩で、作曲は奥好義(1857-1933)。この教科書の1番目にある「みがかずば」も昭憲皇太后の作詞とされ、歌詞は、
「みがかずば 玉もかがみも なにかせん まなびの道も かくこそありけれ」
金剛石・水は器 「新訂尋常小学唱歌(第五学年用)」昭和7.12 昭憲皇太后
作詞 奥 好義 作曲
金剛石
金剛石(こんがうせき)もみがかずば、
珠(たま)のひかりはそはざらむ。
人もまなびて後にこそ、
まことの徳はあらはるれ。
時計の針のたえまなく
めぐるが如く、ときのまの
日かげをしみて励みなば、
如何なる業(わざ)かならざらむ。
水は器
水はうつはにしたがひて、
そのさまざまになりぬなり。
人はまじはる友により、
よきにあしきにうつるなり。
おのれにまさるよき友を
えらびもとめて、もろ共に
こころの駒にむちうちて、
まなびの道にすすめかし。
https://plaza.rakuten.co.jp/showsky/diary/201205130000/より
高学年
1 家庭生活 神棚礼拝、氏神参拝。
2 始業式 講堂または校庭で、中学年の場合に準じて行う。
3 新教室で、呼名、新学年への希望、学年初めの注意を与える。
4 宣誓式 イ、凝念 3分間本学年の希望や決心等を考えさせる。 ロ、それを白紙に墨書させる。 ハ、神棚または尊徳翁銅像等へ奉る。 ニ、その前で明治天皇御製を拝誦
「おこたらず学びおほせて いにしへの人にはぢざる人とならなむ」
5 配当教室内外の大掃除。
6 教室整美への補助作業。
環境 級訓、偉人肖像画、絵画、花、掲示教育。
関連素材 なし
神武天皇祭(4月3日。神武天皇が崩御した日とされる。350頁の学校行事一覧表には見当たらないが、この日は休日扱いだからのようだ。)
156 指標 天祖(神武天皇)の大業を弘め、万世不朽の大基を定め給うた大御神霊の大御前に額づく反省・憶念の御祭儀を通して、日本国に生活することの喜びを思わせるとともに、遠く三千年の昔を思い、神武天皇の御偉業に対して感謝の念を持たせる。(総合的生活機構)
低学年
躍動
1 前日の終業後、明日は学校が休みであることを知らせる。
157 2 父母への教育資料を配布する。(学校を通して家庭教育をしている)
体験
1 早朝起床。自分で寝巻を始末する。
2 冷水で洗面し、身なりを正す。
3 神棚と仏壇に礼拝。
4 和やかな食事。母より今日のいわれを聞く。(躍動2の父母への教育資料と連関か)
5 仲良しの遊び。
6 今日のことを絵や絵日記に書く。
開展
1 翌日絵や絵日記によって前日の生活を反省する。
2 よくできたのを掲示・陳列する。
生活統制
環境 神武天皇御像(掲示)
158 中学年
躍動
1 生活暦によって4月3日が旗日であることを知らせる。
2 掲示学習によってこの旗日が神武天皇祭であること、そしてそれがどういう意味であるかを知らせる。
3 当日の生活について相談会を開く。(意味不明)
体験
1 国家日の生活 早朝起床、寝具の始末、歯磨、洗面、服装整美、神仏礼拝、朝食。
2 早朝神社参拝 朝食後神社境内に集合する。一同は整列して参拝し、神武天皇の講話を聴く。
3 家庭作業 今日の日記を書く。
開展
1 補充文(4年)と神武天皇(3年)の読方を学修する。
2 当日反省会を開く。
環境 神武天皇御像、掲示教育
関連素材 (3年生の)読(方)「神武天皇」
高学年
躍動
1 行事欄によって4月3日が神武天皇祭であることを知らせる。
2 黒板掲示によって神武天皇祭の内容に入る。
3 国史の「神武天皇」によって内容を探求する。
体験
1 国家日の生活 中学年で述べられていることの外に、国旗掲揚を自分の手で行う。
2 神武天皇祭挙式
イ、氏神境内に集合整列 ロ、挙式の辞 ハ、唱歌 君が代 ニ、神武天皇御陵遥拝 ホ、記念日訓話 へ、児童研究発表 ト、閉式の辞
3 帰途、国旗の出ていない家に立ち寄って掲げるよう注意を喚起する。(家庭生活干渉)
開展
160 1 家庭で行事関連の読物を読む。明日読後の感想発表会を開催する。
環境 神武天皇御像、国史の系図による掲示教育、児童研究物の陳列
関連素材 (5年生の)国(史)「神武天皇」
花祭
指標 世界的救世主である釈迦との共生によって霊的気分と宗教心を培う。(綜合的生活機構)
低学年
躍動
1 生活暦によって花祭を知らせる。
2 家庭作業 手を水で洗い、草花を採集し、束ねて水につけておく。
体験
1 掲示学習による読方「生活」。
161 2 各自が持参した草花について話し合い、見せ合う。草花に仏性があるという釈迦の教え(を知らせる)。
3 釈迦への「お願い」を用紙に書く。
4 草花とお願い書きを持ってお寺に行く。
5 お寺での生活
イ、整列 ロ、お釈迦様に敬礼 ハ、お坊さんの話を聞く ニ、お坊さんに「良い子になれるように」お経を読んでいただく ホ、お花と願書を上げて甘茶をかける。 へ、花祭の歌を歌う。 ト、敬礼 チ、仲良くお家に帰る
6 お家での生活
イ、行事学習用の印刷物をやる ロ、お家の仏さまのお話を聞く。 ハ、絵日記を書く
開展
1 行事学習用印刷物を調べる。
2 絵日記を見せ合う。
中学年
162 躍動
1 生活暦によって花祭を知らせる。
2 花祭を中心とした「生活相談会」を開く。
体験
1 掲示学習によって読方を学習する。
2 郷土の寺院に行って花祭の生活を体験する。
3 花祭生活の記録を綴る。
4 各種の草花を採集し、観察研究させる。
5 花の絵画を作成させ、教室に掲示して飾る。
開展
1 釈迦誕生奉祝桜花会を開く。
イ、綴方を朗読する。 劇、舞踊、唱歌等(を行う)。
生活統制
環境 各種草花によって教室を美化する。掲示教育。
関連素材 (4)理科「さくら」
高学年
躍動
1 生活暦によって花祭を知らせる。
体験
1 国史の「仏教」の項によって釈迦の人物を知らせる。
2 地理の「インド」によって釈迦の環境を理解させる。
3 読方の「釈迦」によってその人格を知らせる。
4 花祭の生活体験をさせる。
5 綴方によって花祭の生活を描写させる。
開展
1 郷土にある寺院の宗派や住職などを調査させ、それに関連して自家の宗派も調査させる。
2 それをグラフにして表示する。
(生活統制)
環境 児童による釈迦研究物を掲示教育する。国史年表(を利用する)。
関連素材 (5)国語「仏教」 (6)地理「インド」 (6)読方「釈迦」
天長節
指標 聖寿無窮を奉祝し、臣民の赤誠を表させる。天皇陛下の御事を教え、忠君の念を養い、天皇に対する皇民生活の訓練を行う。(綜合的生活機構)
低学年
躍動
1 奉安殿を拝観せしめ、感激の念を起こさせる。
2 生活暦によって天長節を知らせる。
体験
1 日の丸の旗を作成し、教室の天長節化をはかる。
2 天長節に関する補充読物の指導。
165 3 修身において天皇陛下の御事を知らせる。
4 天長節の儀式作法の練習をなす。
5 天長節当日の家庭生活指導 イ、神棚礼拝 ロ、宮城遥拝 ハ、赤飯
6 天長節の儀式に参列させる。
開展
1 旗日の景色(思想画)を描かせる。
2 天長節当日に感動したことを綴ってみる。
3 「天長節週間」の反省をする。
生活統制
〇環境 教室の天長節化
〇関連素材 (1)修身「テンチャウセツ」 (1)読方「アサヒ」、「ヒノマル」 (2)修身「天皇陛下」
中学年
166 躍動
1 生活暦によって4月29日が天長節であることを知らせる。
2 掲示学習によって天長節が何であるかを研究させる。
体験
1 修身によって天皇陛下の御徳を知らせ、感涙せしむ。
2 皇室国家日における皇民生活訓練を行う。
3 儀式作法の練習(講堂または式場にて)
4 天長節当日の家庭生活および天長節儀式における生活体験。
5 当日の新聞切り抜きをなさしめ、「皇室御帳」を作成させる。
開展
1 正素材または補充文によって天長節生活の綜合的整頓を行う。
〇環境 掲示教育、皇室御帳
〇関連素材 (3)修身「国旗」 (3)読方「天長節」 (4)修身「祝日」、「大祭日」
高学年
躍動
1 生活暦によって4月29日が天長節であることを知らせる。
2 天長節週間中の「生活相談会」を開き、生活項目・内容を決定させる。(意味不明)
体験
1 修身によって我が皇室国家の特質について研究する。
2 国史「今上天皇」によって縦から見た皇室の研究をさせる。
3 儀式作法の練習をなす。
4 天長節当日における「国家日」の生活体験及び儀式への参加。
開展
1 儀式終了後、天長節祝賀敬老会を開催する。(自治団を主体として営為すること)
〇環境 掲示教育、児童の研究物や蒐集物の掲示・展覧。
〇関連素材 (5)修身「我が国」 (6)修身「国運の発展」 (6)国語「今上天皇」
靖国神社祭
168 指標 身命を賭して赤誠の誠をいたせし護国の神に対して感激せしめるとともに、その生活を現在の自己に生かし、自己を護国の「鬼」と化する奮闘的皇国民の生活訓練を行う。(綜合的生活機構)
低学年
躍動
1 生活暦により4月25日からの靖国神社臨時大祭について知らせる。
体験
1 掲示学習によって靖国神社の内容を知らせる。
2 修身の「チュウギ(忠義)」を取り扱う。
3 行事読物「18名刺し殺した二勇士の話」*をしてやる。
4 忠魂碑に参拝させる。
169 開展
1 読方「ヘイタイ(兵隊)」と補充文を取り扱う。
生活統制
〇環境 靖国神社絵画。掲示教育。
〇関連素材 (3)修身「チュウギ(忠義)」 (1)読方「ヘイタイ(兵隊)」 (2)修身「チュウギ(忠義)」
*「空閑大隊長:武人の鑑」 https://dl.ndl.go.jp>info:ndljp>pid/1717905/66?tocOpened=1に出ているようだ。
中学年
躍動
1 生活暦により4月25日からの靖国神社臨時大祭を知らせる。
体験
1 掲示学習により靖国神社の内容を知らせる。
2 修身「忠君愛国」「靖国神社」を取り扱う。
3 行事読物「逢ひたくなったら靖国神社に来たれ」*を読ませる。
4 忠魂碑参拝及び忠魂碑リレー。
170 開展
1 映画「父に逢ひたくば」*を鑑賞する。
生活統制
〇環境 靖国神社絵画、掲示教育
〇関連素材 (3)修身「忠君愛国」 (4)修身「靖国神社」
*ネットにはない。
高学年
躍動
1 新聞学習により4月25日からの靖国神社大祭を知らせる。25日(招魂祭)、26日27日(臨時大祭)、28日(直会)、29日以降(春季例祭)
体験
1 掲示学習により靖国神社大祭の内容を知らせる。
2 修身によって皇国民の生活訓練を行う。
3 郷土の合祀者調査をさせる。
4 夜間または早朝に忠魂碑を参拝させる。
171 5 「父に会いたくば」の原文を取り扱う。
開展
1 郷土の合祀者についてその徳行や経歴等を整理し、郷土靖国史を編纂させる。
〇環境 児童の蒐集物・研究物の掲示・展覧。掲示教育。
〇関連素材 (5)修身「忠義」 (6)修身「忠君愛国」
端午の節句
指標 端午の節句という国民的伝統行事を通して、日本国民性の一つである尚武精神を養成し、併せて身体練磨をなす。尚武精神は単に好戦を意味するのではなく、正義感に基く民族協和を目指す皇道精神である。(こじつけ)(綜合的生活機構)
低学年
躍動
1 5月の初めに校庭に鯉のぼりを掲揚する。
172 2 教室または講堂に武者人形を備え付ける。
体験
1 端午の節句のお話をする。
2 図画「鯉のぼりの風景」
3 前日に「かぶと取り」用の「かぶと」を製作する。
4 尚武遊びの「かぶと取り」を実演する。
5 綱引や徒歩競争の数量的取り扱い。(意味不明。数学の勉強をするということか)
6 国語「ハシレ、ハシレ」を学習する。
開展
1 今日の「端午会」のお話をお母さんたちにしてあげる。
2 行事学習用の印刷物をやる。
3 絵日記に今日のことを書く。
生活統制
〇環境 校庭の鯉のぼり、室内の武者人形、掲示教育。
〇関連素材 (1)修身「ゲンキヨク(元気よく)」 国語「ハシレ」 算数「名数の数え方」(名数とは、「…本」や「…円」など、単位の名称や助数詞を付けた数) (2)修身「カラダヲヂョウブニ(体を丈夫に)」
173 中学年
躍動
1 5月の初めに校庭に鯉のぼりを立てる。
2 行事暦による指導。掲示教育。
3 尚武に関する武器類の蒐集。家庭学習。
4 鯉のぼりや菖蒲で教室を装飾する。前日に手工する。
体験
1 (3)読方「鯉のぼり」や補充教材等で読方学習をする。
2 図画「校庭の鯉のぼり」を直ちに成績順に掲げる。
3 組別に大凧を作る。共同作業。
4 「尚武発表会」児童・教師。
174 5 凧あげ大会 整列、凧揚開始、「運動旗」授与式。
開展
1 帰宅して今日の様子を親に話して聞かせる。
2 「仲良し日記」に記録。
〇環境 低学年の外に武器類の蒐集陳列。
〇関連素材 (3)読方「鯉のぼり」
高学年
躍動
1 校庭に幟(のぼり)、吹き流し、鯉などを立てる。
2 「行事暦」の作成。「端午会」の風景や説明などを書いておく。
3 装飾 紙製の鯉のぼりや菖蒲などで教室を装飾させる。
4 掲示板に尚武に関する絵画、文字、研究発表などを掲げておく。
5 研究物陳列棚に児童の集めた武器や児童が製作した武器類を陳列しておく。
体験
175 1 「尚武発表会」 児童発表、教師の話、「尚武弁当」の会食。
2 組別大相撲
3 活動写真の見学(いきなり映画)
4 行事読物「ちまきの話」を取り扱う。
開展
1 綴り方によって「端午会」の記録をつくり、一括して保存しておく。
〇環境 中学年に準ずる。
遠足(これは不思議とあまり軍国調でない)
指標 遠足を行って強健な精神を養い、共同精神の涵養をはかり、交通機関の知識や交通道徳等の指導をする。(綜合的生活機構)
低学年
躍動
176 1 遠足地の絵画(を見せる。)または場所を知らせておく。
体験
1 テルテルボウズを作る。 イ、人形つくり ロ、人形まつり ハ、テルテルボウズの歌。
2 遠足前の諸注意 イ、天候、時間、持物、服装 ロ、道路作法 ハ、乗車・降車の作法
3 遠足の実施
4 交通機関について イ、昔の交通機関と今の交通機関 ロ、電車の研究(時間、賃銭(料金か)、人数、構成要素等)
5 遠足地についての理解
開展
1 電車、人数、キャラメル、卵などを題材とした数量生活。
2 遠足の絵画的表現
177 生活統制
〇環境 前年度の遠足生活記録や遠足地の絵画・写真等。
〇関連素材 (1)「アシタハエンソク」 (2)修身「エンソク」
中学年
躍動
1 前年度の遠足生活記録の研究から遠足生活の第一歩を踏み出させる。
体験
1 遠足に要する持物や電車賃等の数量生活をさせる。
2 遠足旅行について諸注意を与える。
3 遠足の実施
4 交通機関の研究
5 遠足地の理解
開展
178 1 遠足地の絵画表現、文章表現
2 遠足生活についての反省会を開く
生活統制
〇低学年に準ずる。
〇関連素材 (3)読方「遠足」 (4)修身「規律」
高学年
躍動
1 遠足についての「生活相談会」を開く。
2 遠足の実施。
3 遠足地の理解
4 遠足生活を記録する。自治分担による作業。
開展
1 遠足生活記録の展覧と鑑賞、反省会。
179 生活統制
〇環境 低中学年に準ず。
〇関連素材 (5)なし (6)読方「遠足」
楠公祭
指標 大楠公の生活を追体験させ、昭和の御代に適合した皇国魂を涵養する。(綜合的生活機構)
低学年
躍動
1 生活暦によって5月25日の楠公祭を知らせる。
体験
1 楠公の写真・絵画を掲示し、楠公とはどんな人なのかを知らせる。
2 行事読物「多聞丸」*「内外教育童話人の巻」を扱う。
*多聞丸は楠木正成の幼名。
180 3 楠公を祀る湊川神社に対して遥拝。
4 行事学習印刷物を家庭学習としてやらせる。
生活統制
〇環境 楠公肖像画
〇関連素材 (1)修身「チュウギ」 (2)修身「チュウギ」
中学年
躍動
1 前日に生活暦によって明日の楠公祭を知らせる。
2 楠公祭を中心として「生活相談会」を開く。
体験
1 楠公祭に参列させる。 イ、開式の辞 ロ、国歌合唱 ハ、湊川神社遥拝 ニ、黙祷三分間 ホ、講話 へ、楠公の歌* ト、閉会の辞
2 楠公中心学習 イ、書方「大楠公」「楠木正成」 ロ、図画「菊水の紋」 ハ、藁人形の作成 手工。
181 3 中学年国史への取り扱い指導。
開展
1 読方(3)「千早城」、(4)補充文を学習する。
〇環境 楠公肖像画
〇関連素材 (3)読方「千早城」
高学年
躍動
1 生活暦により5月25日の楠公祭を知らせる。
体験
1 国史「楠木正成」によって楠公祭の由来を明らかにする。
2 修身(5)「忠義」、(6)「忠孝」によって楠公の精神を了解させる。
3 楠公祭に参列させる。中学年に準ずる。
4 楠公を偲ぶ会「楠公会」の催し イ、開会の辞 ロ、楠公肖像に敬礼 ハ、児童研究発表 ニ、唱歌・劇等。 ホ、教師の講話 へ、級歌 ト、閉会の辞
182 5 楠公弔合戦 紅白二組に分かれ、四人一組の騎馬戦。陣中内の菊水の旗を占領しようとする。
開展
1 楠公絵巻物の作成
2 活動写真または講話
〇関連素材 (5)国語「楠木正成」、修身「忠義」 (6)修身「忠孝」
*楠公の歌 歌詞(某ネットサイトより)
一.
青葉茂れる桜井の
里のわたりの夕まぐれ
木(こ)の下陰(したかげ)に駒とめて
世の行く末をつくづくと
忍ぶ鎧の袖の上(え)に
散るは涙かはた露か
二.
正成涙を打ち払い
我子(わがこ)正行呼び寄せて
父は兵庫へ赴かん
彼方(かなた)の浦にて討死(うちじに)せん
汝(いまし)はここまで来(きつ)れども
とくとく帰れ故郷へ
三.
父上いかにのたもうも
見捨てまつりてわれ一人
いかで帰らん帰られん
この正行は年こそは
未だ若けれ諸共(もろとも)に
御供(おんとも)仕えん死出の旅
四.
汝をここより帰さんは
わが私(わたくし)の為ならず
己れ討死為さんには
世は尊氏の儘(まま)ならん
早く生い立ち大君(おおきみ)に
仕えまつれよ国の為め
五.
この一刀(ひとふり)は往(いに)し年
君の賜いし物なるぞ
この世の別れの形見にと
汝にこれを贈りてん
行けよ正行故郷へ
老いたる母の待ちまさん
六.
共に見送り見返りて
別れを惜む折りからに
復(また)も降り来る五月雨(さみだれ)の
空に聞こゆる時鳥(ほととぎす)
誰れか哀(あわれ)と聞かざらん
あわれ血に泣くその声を
足利尊氏を湊川で迎え撃った楠木正成 息子への最後の教え
「青葉茂れる桜井の」が歌い出しの『桜井の訣別』(さくらいのけつべつ)は、明治32年(1899年)に発表された日本の唱歌。作詞:落合直文、作曲:奥山朝恭。
歌詞では、鎌倉時代末期の名武将・楠木正成(くすのき
まさしげ)とその息子・正行(まさつら)にまつわる伝承「桜井の別れ」が描写されている。
写真:桜井の別れで知られる桜井駅跡(大阪府島本町/出典:山崎観光案内所)
鎌倉幕府滅亡後、後醍醐天皇は建武の新政を開始し、朝廷政治の復権を図ったが、不満を抱いた足利尊氏が離反し戦となった。
天皇方の武将・楠木正成はこれを迎え撃ったが、迫りくる10万の大軍に死を覚悟し、桜井の駅(現:大阪府三島郡島本町桜井1丁目)で息子に今生の別れを告げた。これが有名な「桜井の別れ」の場面である。
海軍記念日(東郷平八郎が率いる連合艦隊が、バルチック艦隊を壊滅させた日1905年明治38年5月27日)
指標 日本の地理的事情と我が海軍の忠勇とを知らせ、東洋のリーダーとしての国民的自覚をなさしむ。(綜合的生活機構)
低学年
躍動
1 日本地図を示し、日本の国の形、海と陸、海国であること等を知らせる。
183 2 掲示学習によって海軍記念日を知らせる。
体験
1 修身によって日本海海戦のお話をする。
2 東郷(平八郎)さんの国語的取り扱いをする。
3 軍艦、飛行機、大砲等の数え方を練習し、それを題材とした数量生活をさせる。
4 忠魂碑参拝
5 戦争の図絵を描かせる。
6 仲良しのお話をする。(意味不明)
開展
1 (1)国語「ヒカウキ」、(2)国語「ヒカウキ」補充文を取り扱う。
生活統制
〇環境 Z旗*の作成。東郷元帥肖像。軍艦の絵画。
〇関連素材 (1)修身「ケンカスルナ」、国語「ヒカウキ」 (2)修身「チュウギ」、読方「海軍のにいさん」
*Z旗は日露戦争の時に使われた。Zがアルファベットの最終文字であることから、「この戦いに敗れたら後はない」という決戦の士気高揚を目的として用いられた。一般には国際信号旗で、Zの文字を示す信号。)
184 中学年
躍動
1 生活暦により5月27日の海軍記念日を知らせる。
2 掲示学習により海軍記念日の何たるかを理解させる。
体験
1 (3)修身「忠君愛国」、(4)修身「忠君愛国」補充文により、生活訓練を行う。
2 (3)国語「東郷元帥」、(4)国語「廣瀬中佐」*を取り扱う。
3 忠魂碑参拝。二組か三組に分かれて郷土や隣村の忠魂碑巡りをする。
4 戦死者墓参
5 海軍記念日講話 郷土海軍軍人
開展
1 海軍に関する活動写真見学。
〇環境 東郷元帥御写真、筆跡、その他の関係物。Z旗の掲揚。
〇関連素材 (3)修身「忠君愛国」、読本「東郷元帥」 (4)読本「廣瀬中佐」(読本と国語は同じものか)
*廣瀬武夫。日露戦争で戦死し、軍神と見なされた。沈没しかけた船の中を部下を捜しに行っても見つからず、帰りに敵弾に撃たれて死んだ。
高学年
躍動
1 新聞学習により27日の海軍記念日を知らせる。
体験
1 国史「明治三十七八年戦役」を取り扱い、海軍記念日の内容を与える。
2 修身により軍縮問題を取り扱う。(意味不明)
3 日露戦争絵巻の作成
4 郷土における日露戦争従軍調べ。
5 忠魂碑調べ。忠魂碑の全文字。
6 行事体育 運動会、マラソン大会、剣道大会等。
7 一夜鍛錬会の開催。
開展
186 1 (5)国語「軍艦生活の朝」、(6)国語「我は海の子」を取り扱う。
〇環境 中学年に準ずる。
〇関連素材 (5)修身「忠義」「挙国一致」、読方「軍艦生活の朝」、(6)修身「忠君愛国」、読方「我は海の子」、国(史)「明治三十七八年戦役」
齲歯予防デー
指標 口腔衛生観念を培養して口腔衛生訓練を行うことが本行事の目的である。衛生観念にとどまらず訓練に及び、その習慣化を図るよう努めねばならない。
低学年
躍動
1 歯の直観 イ、相互に見合う。 ロ、身体検査結果を通して各自の歯の健康度を調査する。
体験
187 1 歯の発生 イ、乳歯 ロ、永久歯
2 歯の役目 イ、歯の仕事 ロ、簡単な消化器系統の話
3 歯の衛生保健 イ、歯磨 ロ、食物に注意
4 歯磨教練
開展
1 歯ブラシ、コップ等を題材とした教育生活。
2 虫歯デーの国語的取り扱い。
3 虫歯退治ポスター作成。
生活統制
〇環境 掲示教育、虫歯掛図
〇関連素材 (1)修身「タベモノ」 (2)修身「カラダヲヂャウブニ」、読方「むしば」
中学年
躍動
188 1 生活暦によって6月4日の齲歯予防デーを知らせる。
2 各自が歯を直観する。 イ、相互に友人の歯を描かせる。 ロ、それを身体検査結果と対照させ、研究・自認させる。
体験
1 衛生教授 イ、歯牙の交換と歯列 交換の時期、交換の状態、乳歯の齲蝕による永久歯の出齦(ゴン、歯茎)障害と歯列の不正。歯列矯正の時期、歯牙の定期的検査と手当。
ロ、歯の磨き方と歯ブラシの取り扱いについて
2 歯磨教練の実施。
開展
1 ポスターの製作と掲示。
2 部落行事による街頭宣伝。
〇環境 掲示教育、歯牙交換説明図、歯列の正不正対象図、学級学校齲歯統計図。
189 高学年
躍動
1 生活暦による齲歯予防週間の認知。
2 自治会によって週間行事の決定。
体験
1 第一日 口腔衛生講演会 イ、朝会時に学校長が訓辞 ロ、第一時に全校で口腔衛生について訓話。
2 第二日 歯磨訓練、含嗽(がんそう、うがい)教練。
3 第三日 口腔衛生思想宣伝に関する標語、図画、綴り方、書き方等の児童作品の募集。優秀品を校内外に掲示。展覧会の開催。
4 第四日(当日) 口腔衛生マークの佩用(はいよう、身に着ける)、口腔衛生映画会、講話、歯牙健康児童の表彰。
5 第五日 虫歯の自己診断、咀嚼訓練。
6 第六日 各種綜合訓練(含嗽、歯磨、咀嚼)
190 開展
1 第七日 反省日、一週間の生活を反省する。
時の記念日
指標 時計についての知識を与え、時間観念の養成を図り、その観念を出発点として、時の厳守、時の尊重等の時間的規律生活の訓練を行う。併せて上古時代での時間的生活に対する努力を理解させ、それへ感謝させる。(綜合的生活機構)
低学年
躍動
1 会社・工場・寺院での汽笛・打鐘調べ。何時だろうという疑問から出発する。
2 時計の役目。
体験
1 時間観念の養成 イ、朝会時や学級で訓話する。 ロ、行事学習印刷物等による。
191 2 時間的生活訓練 イ、早寝早起きの生活訓練 ロ、朝会時集合に速く正しく。 ハ、授業終始時刻の厳守。 ニ、本気で勉強 ホ、登校や帰宅の途次に道草しないように(無駄は無駄か。)
開展
1 時計の製作 数字や針等の書き入れ。
2 時計調べ 自分の家の時計の形を描かせてそれを展覧する。
3 時計の国語的・数量的取り扱いをなす。
生活統制
〇関連素材 (1)修身「キマリヨク」、国語「ガツカウオツカヒ」 (2)読方「とけい」
中学年
躍動
1 生活暦により6月10日の時の記念日を知らせる。
2 掲示教育によりそれが何であるかを理解させる。
192 体験
1 生活の実践的訓練 イ、起床就寝時刻を一定にする。 ロ、授業の終始時刻の厳守 ハ、朝会時の整列の速さ ニ、掃除当番作業の時間的考慮
2 記念日の生活指導 イ、標語・ポスターの作成と貼り方指導 ロ、時計の模型製作 ハ、時計の歌。
開展
1 生活調査 起床・勉強・就寝等について調査する。
〇関連素材 (4)修身「規律」、読方「振子時計」
高学年
躍動
1 時の記念日講話 時計の文化史、(時計の)種類・変遷等の知的方面の講話。
193 2 時間尊重標語・ポスターの製作と掲示宣伝 学校・社会への宣伝。
3 生活時間調査とグラフ作成 イ、就寝時間数 ロ、起床中の時間数 ハ、作業時間数 ニ、勉強時間数 ホ、運動時間数 へ、その他の時間数
4 時間励行会 一定の時刻に学校に集合させる。
開展
1 理科による時計振子を取り扱う
2 読方「小さきねぢ」を取り扱う。
〇関連素材 (5)読方「小さなねぢ」、理科「振子と時計」
梅雨
指標 梅雨の特殊現象を知らせ、それが国民生活に及ぼす影響について研究させ、併せて梅雨時の生活訓練について指導する。(綜合的生活機構)
194 低学年
躍動
1 毎日の天候観察 イ、天候について(雨、晴、曇等) ロ、天候図の作成指導
体験
1 梅雨の現象と国民生活について イ、田植の観察 ロ、梅雨と米
2 梅雨時の適正な指導 室内遊びの積極的な指導。禁止よりも奨励する。
3 梅雨時の保健生活指導。――食物、衣服。
開展
1 梅雨時の国語的扱い。
2 梅雨時の友人への作法。(意味不明)
3 梅雨時の絵画的表現。
生活統制
〇環境 お湯の用意。換気への心構え。
〇関連素材 (1)修身「タベモノ」「トモダチ」 国語「デンワ」「カヘル」「デンデンムシ」 (2)修身「カラダヲキレイニ」
195 中学年
躍動
1 分団に分かれて毎日の天候を観察させ、それを天候図に表現させる。
体験
1 梅雨についての理科的指導――原因、影響等。
2 国民生活と梅雨との関係について。――米のできるまでの研究。
3 梅雨時の保健衛生指導。――物の腐敗と清潔・整頓。
4 休み時間の指導――感話発表、絵画発表、朗読大会等の発表学習、及び児童文庫の活用。
開展
1 梅雨中の生活発表会と反省会。
2 それを記録して生活録を作成する。
〇環境 低学年と同じ。
〇関連素材 (3)修身「せいとん」、読方「田植」 (4)読方「苗代の頃」、理科「風と雨」
196 高学年
躍動
1 入梅についての共同研究の分担の相談会。
体験
1 入梅の意味についての研究。
2 梅雨の原因についての科学的研究。
3 梅雨時の衛生について
4 降雨量の測定
5 梅雨時の気持(綴方)
6 梅雨時の生活観照。
7 梅雨時の出欠席の状態。以上の項目を分団作業として研究させる。
197 開展
1 以上の結果の研究発表大会。
2 その指導と整理
〇環境 低中学年に準ずる外、低学年児童の世話をする。
〇関連素材 (5)修身「衛生」、読方「晴間」 (6)理科「衛生」
衛生週間(保健)
指標 梅雨と関連して梅雨明けの保健指導と暑さに対する保健指導を行う。(綜合生活機構)
低学年
躍動
1 暑さの認知――どのくらい暑くなったか。
体験
198 1 暑さを防ぐにはどうするか。 イ、帽子 ロ、カーテン ハ、着物 ニ、飲物 ホ、スダレ へ、ウチワ等
2 それらについて研究する。(話し合い)
3 暑い時の遊び――場所、遊び方、後始末。
4 暑い時の勉強 場所、時間。
5 暑い時の保健衛生 飲物、食物、その他。
開展
1 暑さを防ぐものの絵画的表現
2 帽子・うちわ等を題材とした数量生活。
生活統制
〇関連素材 (1)修身「タベモノ」、国語「スズシイカゼ」「メダカ」「シャボンダマ」
中学年
躍動
199 1 暑さの認知 どのくらい暑くなったか。毎日寒暖計で記録するように指導する。
体験
1 暑さの原因を研究する。地球と太陽との関係について。
2 暑さを防ぐものを調べ、その取扱い精神(感謝の念)を指導する。
3 暑い時の遊びと勉強の指導。
4 暑さの保健衛生 飲物、食物、池沼での水泳について。
開展
1 毎日測定する温度のグラフ化。
2 太陽高度の測定。
3 日の出・日の入りの時刻・方角を調べる。
4 昼夜の長さの研究。
生活統制
〇夏至と関連づけて一元的に取り扱う。
200 高学年
躍動
1 梅雨明けの暑さの認知を出発点として、衛生週間行事の自主的決定をさせる。
体験
1 第一日 家庭作業日 イ、つめきり、かみあらい、せんたく、本そろえ ロ、学級誌または印刷物による家庭での衛生指導 ハ、貧困児に対する無料理髪。爪の長い児童や、虱が寄生している女児への始末と保護者の指導 ニ、ハエ・ネズミの駆除
2 第二日 自覚日 校医および受持の衛生訓話。
3 第三日 身体検査日 校医による健康診断。
4 第四日 生活検査日 机、もちもの、下駄箱、爪、頭髪、鼻紙、手拭を調べる。
5 第五日 特別大掃除日
6 第六日 衛生展覧会 父兄招待
開展
201 1 第七日 週間反省日 自治会の形式で行う。
七夕祭
指標 自然の神秘や偉大性に接させ、祈りや信頼という宗教的情操を陶冶し、物質文化のために中傷している昭和時代に潤いを与えるとともに、祈りの生活に技芸を願い乞はさせ、技術生活の進歩をはからせる。(綜合生活機構)(意味不明)
低学年
1 星の観察 イ、星の数 ロ、星の形 ハ、星と地球
体験
1 七夕星のおはなし イ、(七夕星が)ある場所 ロ、伝説
2 短冊づくり 図画や手工の時間を利用する。文字を書く場合は祈りをささげる。
3 星祭 イ、短冊を笹につけさせる ロ、運動場の清浄な場所に立てる。 ハ、その前に○○棚を設け、野菜や手芸品を供える。 ニ、おはなし、お祈り、唱歌
202 開展
1 七夕の国語的取り扱いをする。
2 数量的に取り扱う。
3 8日に笹を川や海に流すか、焼くかする。
生活統制
〇環境 掲示教育、七夕笹竹
〇関連素材 (1)算術「七夕」、読方「ホシ」
中学年
躍動
1 生活暦によって7月7日の七夕祭を知らせる。
2 七夕祭が何であるかを掲示教育によって知らせる。
3 星の観察 織女(ひめ)星や牽牛星の位置や観方を指導する。
体験
203 1 短冊作成作業 前日の図画や手工の時間に行う。
2 星祭 イ、一同敬礼 ロ、始めの言葉 ハ、七夕様のおはなし ニ、一同お祈り ホ、唱歌や星に関する劇や舞踊 へ、終わりの言葉 ト、一同敬礼
開展
1 野口雨情作「天の川」の国語的扱い。
2 童謡の作成 七夕祭として印刷し家庭に配布する。
〇環境 掲示教育、校庭で星祭の準備をする。(低学年に準ずる)
高学年
躍動
1 生活暦によって7月7日の七夕祭を知らせる。
2 七夕祭の行事について「自治相談会」を開催し、その具体案を作らせる。
体験
1 星祭 夜間 イ、一同敬礼 ロ、校長挨拶 ハ、お供え物(女子総代) ニ、お願い(あらかじめ各自に作らせておいてそれを男代表がまとめて捧げる。) ホ、星座のお話(教師) へ、一同黙祷(1分間) ト、唱歌合唱(星に関するもの) チ、終わりの言葉(副校長) リ、敬礼
204 2 星座研究会(引き続き) イ、七夕星の位置を研究する。 ロ、七夕の由来 ハ、七夕に関する童話・読物等の発表。
開展
1 発表結果を七夕文集として一括整理する。
〇関連素材 (5)読方「星の話」
日章旗(国旗記念日)*
*本書では国旗記念日を7月11日としている388が、ネットではそれは見当たらず、1月27日と主張する者(国旗協会)がいる。(それによれば)1870年明治3年1月27日に日の丸を国旗とする太政官布告の商船規則によって国旗のデザインとその規格が示され、それは新暦では2月27日となるとのことである。
指標 日章旗を敬仰させることにより、日章旗の持つ意味の重大さと我が国家の向かうべき点とを知らせ、兼ねて、純正潔白で愛熱的な国民精神の涵養し日章旗尊重の念を養うことに努める。(綜合生活機構)
205 低学年
躍動
1 朝会時における日章旗掲揚の厳粛さから出発する。
2 日章旗の研究 イ、形 ロ、色彩 ハ、名称について
体験
1 記念日学習 イ、朝会…国旗掲揚 ロ、修身…国旗への作法 ハ、読方…行事学習印刷物 ニ、図画…日の丸のある景色 ホ、唱歌…白地に赤く へ、手工…国旗つくり
開展
1 教室を国旗で整美し、国旗誕生祝賀会を開催
生活統制
〇環境 教室入り口に国旗を掲揚
〇関連素材 (1)読方「ヒノマル」
中学年
206 躍動
1 朝会時における日章旗掲揚の厳守さから出発する。
体験
1 修身で国旗の由来や国旗作法を取り扱う。
2 掲示教育板(に掲げられた)行事(に関する)読物等によって読方(の授業)を行う。
3 「日本の国旗、日の丸の旗」の書方の練習を行う。
4 綴方で「国旗」の文を作らせる。
5 図画で国旗のある風景を画かせ、それを掲示する。
開展
1 奉祝誕生会 イ、7月11日の国旗誕生日に、7月生まれの児童の誕生祝賀会を開く。 ロ、同児に「日の丸マーク」をつける。
〇環境 教室の入り口に国旗を掲げ、背面に世界各国の国旗を画く。
〇関連素材 (3)修身「国旗」、(4)修身「祝日」「大祭日」
高学年
207 躍動
1 生活暦により7月11日の国旗誕生日を知らせる。
2 自治会により週間生活の具体的立案をさせる。
体験
1 日章旗の歴史的研究を行わせる。
2 日章旗と外国旗について。
3 日章旗に国民作法要領の実践訓練。(意味不明)
4 国語(4)「国旗」を取り扱い、補充文(5)を取り扱う。
5 国旗掲揚の歌の練習。(拙著『学校行事の綜合的生活経営』150, 472を参照されたい。)
開展
1 早天太陽崇拝 登校前一定の場所(山頂、海岸)に集合し、日の出を拝させる。
2 国旗献納 古新聞や空き瓶などを売って、学校用の国旗を作成する。
208 3 国旗清浄作業 各戸の国旗を清潔にする。
〇関連素材 (6)読方「国旗」、(5)算術「国旗教材」
盂蘭盆(陰暦7月15日、仏事)
指標 祖先を祭り、祖先から受けた深い恩を思い浮かべてこれに謝する機会であるとともに、自己の内心を反省してよい将来の建設のための機会とさせる。(宗教的)(綜合生活機構)
低学年
躍動
1 仏壇の礼拝という生活から本題材に入る。
2 訓話または童話から祖先崇拝の観念を養成する。
体験
1 家庭生活の指導 イ、祖先がいらっしゃるのだから身なりと心を正す。 ロ、お母さんたちが忙しいのだから迷惑をかけない。 ハ、お仏壇にお線香をあげる。 ニ、お小遣いをいただいたら無駄遣いをしない。 ホ、御馳走がで(き)るので食物に注意。
209 2 お墓参り イ、お花、水、線香等をあげる。 ロ、お墓の石の数を数えてみる。
開展
1 綴方、図画、修身によって盂蘭盆生活の整理・反省を行う。
生活統制
〇環境 掲示教育
〇関連素材 (1)修身「オヤヲ大セツニ」「オヤノイヒツケヲマモレ」、読方「シタキリスズメ」 (2)修身「ソセンヲタットベ」
中学年
躍動
1 掲示学習や生活暦によって盂蘭盆を知らせる。
2 仏壇の意味・内容を知らせる。
体験
1 祖先への作法を指導し、お盆のお話をする。(仏教が宗教心の刷り込みに大いに関与していることが分かる。)
210 2 仏壇の掃除と墓参り、おむかえ火、みたままつり、おくり火等、直接児童に生活させる。
3 祖先調べ 位牌によって戒名、死亡年月日を調査させる。
4 孝行日誌 「父母のためにこんなことをした」
週間中記録。
開展
1 生活体験の発表会を催し、盂蘭盆生活の指導と整理をする。
〇環境 掲示教育
〇関連素材 なし
高学年
躍動
1 生活暦により盂蘭盆の生活を認知させる。
2 家庭生活について「自治相談会」を開く。
体験
1 霊棚つくり 家庭作業として行わせる。(父母の補助)
2 墓地の掃除 学校付近にある寺院の墓地掃除を行わせる。
211 3 道路掃除 校外生活団を中心として「精霊様のいらっしゃる道路」の掃除をさせる。
4 祖先調べ 戒名、両親、墓石などによって調査する。(俗名、法名、死亡年月日、人柄など)
開展
1 生活検討会 盂蘭盆の家庭生活について反省自治会を開く。
2 その記録を一括して生活録とする。
〇環境 同上
〇関連素材 (5)修身「孝行」
水(海水浴)
指標 水の特性を知らせ、それによる人格修養と水に処する皇民の生活訓練を行う。(綜合生活機構)(大げさ。)
低学年
躍動
212 1 井戸や水道あるいは池や海などの水に直接接させ、これらの水がどこから来るのかについて疑問を持たせる。
体験
1 水はどこから来るのか、そしてどこへ行くのかについて話し合う。
2 水の性質をみ合う イ、清くきれいな姿 ロ、形が変わる(実験して見せる) ハ、清濁併せ呑む広い心
3 水の用途について話し合う。 イ、人間の飲料 ロ、草木の糧 ハ、水力電気
4 水の大害とそれに処する方法。
開展
1 水を国語の授業で取り扱う。
2 水泳に関して数量的に取り扱う。
生活統制
〇関連素材 (1)算術「海水浴」、修身「ナツヤスミ」、国語「夕立」「ヒゴヒ」「ハコニハ」、読方「キンギョ」
213 中学年
躍動
1 井戸水や水道水を直観させ、水の成因研究の動機とさせる。
体験
1 理科(4)「水蒸気、氷、風と雨」によって水の成因を研究させる。
2 読方(3)「水の旅」「大川」、(4)「夕立」を学習させ、一層徹底させる。
3 共同実験観察によって水の特性(清らかさ、形が変わること、清濁併せ呑むこと)を知らせる。
4 人生と水について共同研究 イ、有利なこと(飲料、灌漑、発電) ロ、有害なこと(大水(これに処する態度の訓練))
開展
214 1 水が有難かった生活経験を綴らせる。
2 水のある景色を画かせる。
〇関連素材 (3)読方「水の旅」、「大川」(4)読方「夕立」、理科「水蒸気、氷、風と雨」
高学年
躍動
1 七月の生活環境を凝視し、「水」という生活題目を決定させ、「水」の研究に入る。
体験
1 水の直観 イ、降る雨 ロ、川 ハ、海
2 水の科学的研究 イ、色 ロ、形 ハ、目方 ニ、成分
3 水の偉大性を接触する。 イ、清らかさ ロ、心を映す水のまこと ハ、形を変えて善処する態度 ニ、清濁併せ呑む気持
4 水の働きと水害に処する態度
開展
215 1 「水は方向の器に従う」歌の表現
2 水と日本の国民性についての研究
〇関連素材 (5)理科「海」、(6)読方「我は海の子」「遠泳」、理科「流水の働き」
夏休みの生活書
低学年
ヨイコ ノ ナツヤスミ(以下低学年の部分の原文はカタカナで書かれている。)
1 良い子は毎朝神様仏様を拝む子
2 良い子は早寝早起きする子
3 良い子は歯磨・ラジオ体操する子
4 良い子は涼しいうちにお勉強する子
5 良い子は「はい、はい」言いつけの守れる子
6 良い子は飲物・食べ物に気をつける子
216 7 良い子は涼しいところで仲良く遊べる子
8 良い子は〇日と×日に学校へ行く子
中学年
夏休みのまもり
一、決まり正しく自分のことは自分で。
1 早寝早起き、歯を磨く。
2 神仏を拝む
二、体に気をつける
1 ラジオ体操を毎日やる
2 食物、飲物に気をつける
3 暑いところで遊ばない。水に注意する。
4 寝冷えをしない。腹巻をする。
三、お勉強
217 1涼しい場所で毎日忘れずに
四、お手伝い
1 水まき、お使い、子守りなどをする。
五、その他
1 無駄づかいをしない
2 八月×日、××日には○○時までに学校に来る。
高学年
私の夏休み
1 朝 時に起きて、夜 時までに寝る。
2 勉強する時( 時 分から 時 分まで)
3 お家のお手伝い( )
4 手紙を出す日と人( 日 )
5 休み中に行く所( )
218 6 休み中の私のお小遣い予算( )
7 休み中のくせ直し( )
8 休み中のお仕事
イ、〇〇〇〇( 日始め 日終わる)
ロ、××××( 日始め 日終わる)
●
●
●
●
感想 自由時間であるはずの夏休みをこれだけ縛ったら、独創的なものは何も生まれず、型にはまった小さな人間しかできないだろう。
夏休新生活行課題
219 低学年
1 絵日記 絵と文とを書かせる。普通ノートで差支えない。
2 孝行日記 その日にした父母への孝行録。一日一行くらいでよい。(つまらない。ありきたり)
3 一日一善日記 休暇中の全部に対して一日一善を指摘しておき、それが実行できたら〇、できない場合は×をつけさせる。
4 草花集め 「面白い」草花を集めさせ、本の間か重いものの下に置くかして、標本をつくる。
5 五十音継続書取 毎日一回半紙に清書。最後に一つに綴る。
6 家の中のものしらべ 読方の作業として、自家の物品名を書かせる。
7 遊び調べ その日にした遊びの名前とお友達の名前を書かせておく。
中学年
1 夏休み日記 一冊にまとめる。
2 文集 詩集、童話集、作文集(表紙も考案・作成させる)
220 3 画集 写生集、漫画集、図案集などを作成させる。
4 皇室関係録 新聞雑誌にある皇室関係の記事や御写真を切り抜かせて、台帳に張り付けておく。(取扱いに注意)
5 動植物採集 珍しい動植物や貝類を採集させる。
6 毛筆千字書集 なるべく異なった文字を半紙に書かせる。
7 教育勅語「謹写」 硬筆で謹写させる。
8 部落地図作成 自分の家や学校を中心とした郷土地図を作成させる。
高学年
1 教育勅語毛筆謹写
2 自叙伝作成 生まれてから現在までの自叙伝を書かせる。父母に聞く。自己のよき発展を期する。
3 偉人画集 図画紙に偉人の肖像画を画かせ、それに簡単な説明を書いておく。
4 文集 詩集、俳句集、和歌集、旅行記集を書かせる。日記の形式でもよい。
221 5 朝顔栽培 鉢植の朝顔を一個ずつ栽培させ、朝顔品評会を開く。
6 郷土調査 郷土の産業、職業、人口、名所、旧跡、人物、河川等を調査させる。
7 その他 地理、年表、手芸等の作業をさせる。
第一回召集日(学校単位)
低学年
一、全校朝会に参列。
1 暑いがへこたれない。
2 お話をよく聞く。
二、教室または樹下で、
1 呼名と返事
2 休み中の生活について話し合う。
3 夏季学習帳やその他の仕事について指導する。
222 三、お話会
1 「行事教育」の中の「児童召集日に読み聞かすお話」をしてやる。楽な姿勢で。お土産話のような内容がよい。
四、次回の召集日について再指導。
1 日時の再認。
2 (休暇中の)生活内容について再認。
五、仲良く友達と家庭へ。
中学年
一、全校朝会に参列。
二、呼名と返事。
三、休み中の生活について話し合う。
四、(休暇中の)学習、養護、訓練についての反省、指導。
五、納涼、かくし芸大会。
223 1 休暇になる前に予告しておく。
2 休暇中に考えておく。
3 一人一人順次演出。
4 あまり硬くならずに面白く愉快にやること。
六、次回召集日について再指導。
1 日時の再認。
2 生活内容の吟味考察。
七、教室掃除後下校。
高学年
一、全校朝会に参列。
二、休暇中の反省座談会。
1 学習、身体、その他について話し合う。
三、朝顔品評会
224 1 事務的生活 イ、各児が鉢植朝顔一個を毎日家庭で育成する。 ロ、栽培日記の記録
2 当日の生活 イ、講堂または廊下等に(朝顔を)並べさせる。 ロ、栽培日誌と朝顔の実物の両者の成績で品評する。
3 整理 イ、品評の結果、成績優秀なものに賞状を授ける。
4 写真撮影
四、掃除後下校
第二回召集日(学年単位)
低学年
生活手紙展覧会
躍動
1 第一回召集日の際に(その)仕事内容を話しておく。
2 休み中に自分の生活について書いた手紙や画を用意しておく。
225 体験
1 生活手紙を教室に掲示する。
2 皆でそれを読み合う。
3 各自にその説明をさせる。
4 先生の生活手紙も掲示する。
開展
1 学校が始まるまで教室に飾っておくのではなく、友人に自分の手紙をやる。
2 それをもらった人は9月の始めにその人に返す生活手紙の返事を持ってくる。
中学年
郊外遠足会
躍動
1 休暇前に目的地を定めておく。
体験
226 1 早朝涼しい中を出発する。
2 野原、河原、山、海等、自然の景色を見させて、その中に浸らせる。
開展
1 その場所や往復路の草花、昆虫、石などを採集する。
2 採集物の展覧会。
高学年
五種競技会
躍動
1 休暇前に五種競技の種目を決定しておく。(走り高跳び、走り幅跳び、百メートルリレー、球技等)
2 休暇中の早起き会378の際に(その種目を)独習させる。
体験
1 部落単位で競演する。誰もが一度は出演すること。
227 2 役係など全部を自治的に行わせる。
開展
1 得点が最高の部落に優勝旗(児童作成)を授ける。
2 優勝旗を先頭にして部落に帰る。
震災記念日
指標 第一は不慮の災禍にあった横死者への冥福、第二は、その冥福を根柢として湧き出る忍苦の精神の涵養と勇奮の気の養成、第三は災害防止。(綜合生活機構)
低学年
躍動
1 怖いものごっこ 最も怖いものを一つあげさせる。
2 各児が発表した怖いものを統計にとり、グラフ化する。
228 体験
1 地震はどうして起こるのか、その原因を説明する。
2 日本は地震国であることを知らせる。
3 大正12年9月1日の大震災の様子を話す。
4 横死者に追悼の意を表させる。
開展
1 非常時における心構えについて訓話する。
2 避難訓練を実施する。
生活統制
〇環境 地震の災害を示す図、避難の動態図。
〇関連素材 (1)修身「キマリヨク」
中学年
躍動
1 地震にあった経験を発表させる。揺れ方、その時の自分、結果。
229 2 地震についての生活態度を研究する。
体験
1 地震の原因 科学的に(説明する。)
2 地震の歴史 児童の既有知識の発表に補説する。大正12年9月1日の震災の模様を話す。
3 震災における心構えの構成 イ、三年修身「ものごとにあわてるな」、四年修身「沈着」を取り扱う。 ロ、三年読方「東郷元帥」*に発展する。
開展
1 避難訓練実施。
2 反省記録の作成と指導。
〇環境 大正12年大震災統計図、避難ポスター「静かに急げ」
〇関連素材 (3)修身「ものごとにあわてるな」、読方「東郷元帥」、(4)修身「沈着」
*東郷元帥 Wikiによれば、東郷平八郎は日清・日露両戦争で活躍し、「陸の大山(巌)、海の東郷」と称され、国民の尊敬を集めた。
高学年
230 躍動
1 日本の家と西洋の家との構造上の差異を研究する。
2 日本の土質的、地理的研究。
躍動
1 大正大震火災の模様について イ、罹災者総数340万4898人 ロ、死者9万1344人 ハ、行方不明1万3275人 ニ、重軽傷者5万2074人 ホ、物的損害価格約50億
2 追悼法会の開催 イ、一同整列(午前11時半) ロ、開式の辞 ハ、一同敬礼 ニ、追悼の辞(学校長) ホ、黙祷(午前11時58分45秒、サイレンまたは鐘を打ち鳴らす) へ、一同敬礼 ホ、閉式の辞
開展
1 非常時避難訓練 イ、警報の判定と遵奉 ロ、窓の開閉、所持品の処理 ハ、教室出口の位置と順序 ニ、集合場所 ホ、家庭への連絡
231 〇環境 同上の外、地震分布図
〇関連素材 (6)理科「火山」「地層」
夏休み生活観照会(反省会)
指標 長い夏休み中の生活を反省させ、相互に生活を観照させ、二学期の良いスタートに資する。(綜合生活機構)
低学年
躍動
1 夏休み中の珍しかったことや面白かったこと、悔しかったことの比べっこをしましょう。
体験
1 夏止みの生活の思い出画を画き、その裏にその画に関するコメントを書かせる。孝行生活、健康生活、学習・作業生活、交友生活など。
2 学校(での夏休み中の)生活観照会 イ、思い出画を発表させ、友人の生活と自分の生活とを比較観照させる。 ロ、よくなったところ、いけなかったところ。休暇前のプランと比較して。
232 3 夏休み創作品展覧会 イ、創作品を掲示・展覧する。 ロ、創作の苦心談を発表させる。 ハ、合評
開展
1 夏休み中の生活全般について「良い構成」をさせる。(意味不明)
2 観照会や展覧会の態度についての生活訓練をする。(意味不明)
生活統制
〇環境 夏休み創作品の陳列・掲示
中学年
躍動
1 夏休み中の生活を反省しよう。
2 生活反省の場面を共同決定する。(意味不明)
体験
1 生活反省会 イ、各児の生活を相互に発表させる。 ロ、発表された生活について合評する。 ハ、良い生活は学級全体の(模範的)生活面として取り上げる。
233 2 創作品展覧会 イ、創作品の展覧方法について協議する。 ロ、決定した方法に基いて展覧する。 ハ、観照しながら創作の苦心談を聞く。 ニ、創作品について合評させる。
3 黒ん坊大会 イ、裸になって並ぶ。 ロ、黒さの順に等級を決める。 ハ、その黒さを生んだ生活を発表させる。
開展
1 夏休み生活の全般についいて、良かったことやいけなかったことを綴っておく。
2 (夏休み中の)生活(状況)の優秀者に賞状を授ける。
〇環境 同上
高学年
躍動
1 九月初めの学級自治会で夏休み中の生活観照会について相談する。
234 2 仕事の内容、係、役の決定。(意味不明)
体験
1 (夏休み中の)生活の反省 イ、各児に反省文を書かせる。 ロ、夏休み生活図絵を描かせる。 ハ、以上二項目について相互に合評し合う。
2 創作品展覧会 イ、各児または各分団を単位として陳列させる。 ロ、学級内から審査児童を定め、審査採点させる。 ハ、最高得点者に賞状を授ける。
開展
1 家庭報によって父兄の観覧を誘う。
2 父兄からも優秀作品の投票をしてもらう。
〇環境 同上
乃木祭(435頁には9/9, 9/13, 9,15と三つあるが、そのうちの9/13(自害した日)。235頁に9/13と明記されている。)
235 指標 乃木大将夫妻の高潔な人格を敬仰し、その誠忠と貞淑に感激させ、武士道的精神と日本婦道との修養に努めさせることを指標とする。(綜合生活機構)
低学年
躍動
1 生活暦によって9月13日の乃木祭を知らせる。
2 乃木大将について既有知識を発表させる。
体験
1 掲示学習によって乃木祭の内容を読み取らせる。
2 教室の正面に乃木大将の御写真を掲げ、その遺徳を敬仰させる。
3 大将夫妻の逸話や功績を聞かせる。
4 毎朝「暑いときは寒いと思え、寒い時は暑いと思え」を斉唱させる。
5 乃木祭に参列させる。
開展
236 1 書き方「アツイトキハサムイトオモヘ、サムイトキハアツイトオモヘ」
2 がまんくらべ 勉強中に先生に注意されたら×、褒められたら〇をつけておく。
生活統制
〇環境 教室正面に乃木大将の御写真(掲示教育)
〇関連素材 (1)(2)修身「チュウギ」
中学年
躍動
1 生活暦によって9月13日の乃木祭を知らせる。
2 環境統制によって学習気分の誘発をはかる。
体験
1 乃木祭に参列 イ、祭りを始める言葉 ロ、降神 ハ、供餞(ぐせん、きょうせん) ニ、玉串拝礼 ホ、乃木大将を祭る言葉 へ、昇神 ト、祭りを終わる言葉
2 修身によって乃木大将の誠忠を語る。
237 3 書き方「誠忠の神乃木将軍」を練習、清書。
4 綴り方 乃木将軍に関する感想文を書かせ、それを綴る。
開展
1 嫌いなもの直し イ、食物調査をし、嫌いなもの調べをする。 ロ、それが好きになるよう、家庭と協力して訓練する。
〇環境 (教室)正面(乃木大将の御写真)、後面(乃木大将参考物の陳列棚を設備)、その他(単行本や雑誌を用意し、自由閲覧)
〇関連素材 乃木大将の幼年時代
高学年
躍動
1 生活暦によって9月13日の乃木祭を知らせる。
2 学級自治会によって週間中の行事相談を行う。(意味不明)
体験
1 全校が乃木祭に参列する。(中学年参照)
238 2 修身で乃木大将の誠忠を題材にして取り扱う。(6)修身「清廉」
3 国史「明治三十七八年戦役」(日露戦争)を研究。
4 読方「水師営の会見」*(旧読本)の朗読。
5 書方「爾霊山、王師百万」*の詩、または「うつし世を、出でまして」*の歌を謹書。
開展
1 研究発表会 イ、乃木大将に関する事項、感想、自己反省等の発表 ロ、唱歌、蓄音機の演奏。
〇環境 正面(乃木大将の御写真とその両側に児童による書「誠忠」「貞淑」の額)、背面(表現成績物、書籍等)
〇関連素材 (6)修身「清廉」、国史「三十七八年戦役」
*「水師営」 乃木希典とそれに降伏したロシア軍司令官ステッセルとの会見が行われ、旅順軍港攻防戦の停戦条約が締結された1905.1地名。「水師営」はもともと普通名詞であり、清朝各地の北洋水師(艦隊)隊員の駐屯地を指す。
*「爾霊山、王師百万」 爾霊山は二〇三高地のことで、乃木が爾霊山(にれいざん)と命名した。王師とは皇軍。
乃木希典「誰しも皆この地を仰ぎ見る時、嗚呼(ああ)爾(なんじ)の霊の山と、等しく仰ぎ慰めるであろう。」
*「うつし世を、出でまして」 「うつし世」とは現世。
月祭・観月会
感想 月でも宗教心育成のために利用している。
指標 物質文明流行の時代に大自然の姿を思うままに讃美し、それに親しませ、進んでその信仰にまで発展させ、霊性を喚起する(綜合生活機構)
239 低学年
躍動
1 生活暦や掲示資料によって「十五夜様」を知らせる。
2 家庭生活の指導 学校から帰ったらススキを取りに行き、それを学校に持ってくる。他家の団子を盗まない。
体験
1 月祭・観月会 イ、午後5時半学校へ集合。 ロ、山の上や河岸、海岸など月見に適した場所で挙行。 ハ、祭壇(周囲に青竹、注連(しめ)縄を張る。壇上にススキ、団子、クリ、芋、柿、ブドウ等の季節の物を供える) ニ、祭次第(初めの言葉、お月様へお辞儀、お月様のおはなし、お月様の歌、終わりの言葉) ホ、月の自由鑑賞
開展
1 十五夜の絵画表現、童謡表現、話し方表現。
240 2 読方 (1)「オツキサマ」、(2)「月と雲」を朗読。
生活統制
〇関連素材 (1)読方「オツキサマ」、(2)読方「月と雲」
中学年
躍動
1 9月1日から30日まで月の研究をさせる。毎晩観察(天気、月の形、気の付いたこと)
2 月の観察表によって十五夜様を知る。
体験
1 十五夜様の相談会を開く。(意味不明)
2 月祭・観月会 イ、山の上、河岸、海岸で観月会 ロ、月の上がる時に黙祷、それに続いてハーモニカ吹奏 ハ、月が出終わったら月に関する教師の話 ニ、和歌、俳句の即吟 ホ、月にさよならをして解散。
241 開展
1 月祭の整理 和歌、俳句、童謡などを一冊に綴って保存する。表紙、目次、挿絵等を児童の作業で作成。
2 月の観察結果を十月初めに整理して研究発表会を開く。
生活統制
〇環境 掲示学習
〇関連素材 (4)読方「お月見」
高学年
躍動
1 生活暦によって十五夜を知らせる。
2 係に十五夜生活の立案をさせる。
体験
1 十五夜に関する行事の文化史的研究 (月見の風習は)陰暦の8月15日(に行われるが)、観月の本家である支那の第五十五代文徳帝の頃(日本に)移入された。古人の月に対する詩歌等。
242 2 月の科学的研究 地球との距離38万4400キロ、月の表面など。
3 月祭、観月会 低中学年に準じて挙行する。
開展
1 十五夜当日の整理 イ、観月会における即吟資料の清書 ロ、観月会の模様を記録する。 ハ、観月会の模様を絵画表現にする。 ニ、表紙や挿絵などの作成。 ホ、十五夜に関する児童の研究物の整理 へ、我が家の十五夜に関する作文
〇環境 月の表面を示す図、天体図
〇関連素材 (6)読方「暦の話」「月光の曲」
秋季皇霊祭(秋分の日9/23)
指標 彼岸を中心として行われる国民的生活を観照させることにより、国民的情操の陶冶をはかり、特に惟神(神ながら)の大道である報恩反始(始めにかえる。祖先を顧みて敬う)の精神を養い、行を行わせる。
低学年
243 躍動
1 カレンダー学習によって秋季皇霊祭の旗日を知らせる。
2 掲示学習によりそれがどういう日であるかを知らせる。
体験
1 早朝に起床し、自分で寝巻の始末をする。
2 冷水で洗面し、身なりを正す。
3 神棚と仏壇に礼拝する。
4 和やかな食事(母から今日のいわれを聞く)
5 お家の祖先のお話を聞き、それを絵日記に書く。
開展
1 翌日絵日記を中心に、当日の反省会を開く。
2 彼岸の期間中に墓参する。(墓参の)心構えと動作を訓練する。
3 級友の中の死亡者の墓に参拝する。
244 生活統制
〇環境 掲示教育
〇関連素材 (2)修身「ソセンヲタツトベ」「トシヨリ ヲ ウヤマヘ」
中学年
躍動
1 生活暦によって9月23日の旗日を知らせる。
2 掲示教育によって、この旗日が秋季皇霊祭であること、及びそれがどういう意味であるかを知らせる。
3 当日の生活について相談会を開く。
体験
1 国家日の生活をする。 早朝起床、寝具の始末、歯磨、洗面、服装整美、神仏礼拝、朝食
2 父母と共にお家の墓参りに行く。その心構えと動作の訓練。
3 級友の中の死亡者の墓参も行う。
245 開展
1 彼岸の期間中に孝行日誌をつけさせ、終わりの日にその反省会を開く。
2 祖先奉仕の生活を今後どうなすべきかについて論文を書かせる。
〇環境 掲示教育
〇関連素材 (4)修身「祝日」「大祭日」
高学年
躍動
1 行事暦によって秋のお彼岸を知らせる。
体験
1 修身によって彼岸の文化史的・道徳的取り扱いを行う。
2 理科によって秋分の科学的考察を行い、それと文化史的内容とを関連づける。
3 当日は「国家日の生活」をさせる。
4 慰霊祭を執行する。 イ、講堂の適当な場所に祭壇を設ける。 ロ、一同入場、敬礼、降神、献饌、慰霊の辞、玉串拝礼、昇神、撤饌(神前の供えものを下げること。献饌に対する。)、敬礼、一同退場
246 開展
1 自治団を中心として彼岸の期間中に寺院の墓地の清掃をさせる。 放課後または登校前。
2 祖先の命日の調査。 命日には必ず仏壇に線香をあげるように訓練する。
3 亡友の墓参。
〇関連素材 (5)理科「秋分」、(6)修身「祖先と家」
防空演習
指標 世界の大勢とこれに対処するための近代国防の大要とを知らせ、併せて防空訓練を行い、国防観念の養成をはかる。(綜合生活機構)
低学年
躍動
1 飛行機のお調べをいたしませう。
体験
247 1 飛行機はどんな働きをするか。旅客用、航空郵便用、軍用。
2 今までの戦争とこれからの戦争との違い。
3 飛行機はどのように戦争をするか。
4 防毒方法と防毒具の名称。
5 防空演習時の家庭生活訓練。
開展
1 防毒面の模型を手工で作らせる。
2 図画で飛行機の画を描かせる。
3 防空演習当日の生活文を書かせる。
生活統制
〇環境 防毒面模型、近代科学戦の図。
〇関連素材 (1)修身「人に迷惑をかけるな」「キマリヨク」「忠義」、読方「飛行機」、(2)修身「工夫」「規則に従え」「忠義」
中学年
248 躍動
1 戦争の武器にはどんなものがあるか。
2 飛行機は戦時においてどんな作務をなすか。
体験
1 支那事変と世界の大勢、日本のとるべき道。(これはインパクトが大きかったのではないか)
2 近代戦と防空。国防観念の養成。
3 防空法の大略、防空演習時の生活訓練。
4 防毒面のつけ方の練習。
開展
1 防毒面の作成。手工。
2 防空演習絵巻の作成。
〇環境 防毒面模型、近代科学戦の図、列国飛行機数統計。
〇関連素材 (3)修身「ものごとにあわてるな」「規則を守れ」「忠君愛国」、(4)修身「沈着」
249 高学年
躍動
1 現時世界の大勢と軍備状態。
2 近代国防の大要について説明。
体験
1 防空演習の内容説明。
2 家庭における防空生活訓練。
3 防空演習実施(学校単位) イ、警報訓練 ロ、防毒・消火訓練 ハ、救護訓練 ニ、交通整理訓練
4 防毒具のつけ方練習
5 燈火管制用電燈覆いの作成 手芸。
開展
1 防空演習の生活の反省。
250 2 防空展覧会の開催 自治団を中心として実施。
〇環境 各種展覧物
〇関連素材 (5)修身「挙国一致」「勇気」、読方「飛行機の発明」「空の旅」、(6)修身「忠君愛国」
運動会
指標 身体の均斉な発達を遂げさせるとともに真のスポーツ精神を涵養し、霊肉一致の人間美を醸成する。(綜合生活機構)
低学年
躍動
1 遊び「運動会ごっこ」を想起して運動会の内容を考える。
体験
1 読方(1)「ハシレ」、(2)「カケツコ」を取り扱い、運動会の気分を横溢させる。
2 修身(1)「キマリヨク」、(2)「体を丈夫に」「規則に従え」によって運動会の目的とそのやり方を知らせる。
251 3 当日の生活指導 イ、持物に名前を書く。 ロ、観方の指導。(指定された)場所を離れないこと。 ハ、やり方の指導。決まりよく正々堂々と。
開展
1 運動会の様子を絵と文に書かせる。
2 運動会生活の反省。 イ、生活態度 ロ、面白かったもの ハ、賞を取った人は誰か。
生活統制
〇環境 日々(の)生活の(を)運動会編制(にする。)
〇関連素材 (1)修身「キマリヨク」、読方「ハシレ」、(2)修身「体を丈夫に」「規則に従え」、読方「カケツコ」
中学年
躍動
1 生活暦によって運動会を知らせる。
252 2 運動会までの日数を題材にした算術生活の指導。
体験
1 修身「身体」「健康」によって運動会の目的を指導する。
2 当日の生活について協議会を開催する。 イ、持物 ロ、観ているときの態度 ハ、競技をやるときの態度はどうあるべきか。
3 当日の生活を実演する。協議事項の遵守。
開展
1 運動会生活の反省 イ、協議会事項によって反省する。 ロ、他校の運動会と比較する。
2 来学年度への伏線的指導。「よき運動会」と題する反省録を作成し、来学年への生活を構意する。
〇環境 同上(低学年)
〇関連素材 (3)修身「健康」、(4)修身「身体」
高学年
躍動
1 健康増進について協議会を開く。
体験
1 世界各国の人々と日本人との身体の比較。
2 水陸競技記録の比較。
3 国民体育の向上についての具体的方案を決定。
4 運動会の真の目的を認知する。
5 運動会当日 イ、上学年としての規律的・奉仕的生活。 ロ、運動精神の体得
開展
1 オリンピック大会東京開催*について、我らは如何になすべきかについての生活訓練。
*昭和15年1940年紀元2600年に東京でのオリンピック開催が予定されていたが、日中戦争1937と軍部の反対で、1938年昭和13年7月15日開催権を返上した。本書の出版は1939年昭和14年であり、整合性は如何。開催を返上したことについての我々のとるべき態度ということか。
2 運動会の反省
〇環境 同上
〇関連素材 なし
お祭り 神社
254 指標 我が国神社の由来を明らかにし、祭りの本義を解明し、神社への皇民作法様式の訓練をなす。(綜合生活機構)
低学年
躍動
1 お祭りについての過去の生活を想起させる。学級で話し合う。
体験
1 自分たちの氏神*様は何神社であるか。
*氏神 村氏神、鎮守、産土神(うぶすながみ)など、村落共同体が共通の守護神として祀る神。あるいはそれを祀った神社。
2 私たちはどんな時に氏神様にお参りするか。
3 修身によって「氏神様」を取り扱う。
4 お祭りの生活指導 イ、お祭りは何時か。 ロ、神社参拝の作法はどうするか。(実地練習) ハ、お祭り当日の生活 着物、お金、食物。
255 開展
1 お祭りの様子を絵と文に書く。
2 お祭り当日の生活の反省 イ、お小遣いはどれだけ、何に使ったか ロ、参拝はできたか。
生活統制
〇環境 掲示
〇関連素材 (2)修身「氏神様」
中学年
躍動
1 秋の実りを直観させ、氏神様の御神徳を感知させる。
体験
1 自分たちの氏神様は何神社であるか。
2 氏神様の縁起(由来・伝説)や御祭神について神主様に尋ねる。
3 読方「祭りに招く」「村祭」の指導をし、生活の拡充を図る。
256 4 綴り方「祭りに招く」(というタイトルの)文を作成させる。
5 修身(の授業の一環として)、神社参拝の作法について実践指導。(協議会による)(地域でやったのか)
開展
1 祭の様子を文に書かせる。
2 祭の生活について反省会を開く。
3 今後の神社参拝についての生活を構成する。
生活統制
〇環境 プリント(神社のいわれ)
〇関連素材 (3)修身「皇大神宮」、読方「祭に招く」「村祭」
高学年
躍動
1 秋の実りを直観させ、氏神様の御神徳を感知させる。
体験
257 1 氏神様の縁起や御祭神について研究。
2 祭の本義について 孝心を致す。
3 祭政一致について 「能く神を祭らんとせば先ず能く政を施すべし」
4 わが国人の崇祖・敬神について文化史的研究。
5 社頭の杉と参拝の心得 イ、杉=直木(スギ)=直なり ロ、祭る人の心 汚れなく正直なること
開展
1 勅語「我カ皇祖皇宗国を肇ムルコト宏遠ニ徳ヲ樹ツルコト深厚ナリ」の謹解。
2 我が国の神社調べ。
〇環境 注連(しめ)、提灯、掲示
〇関連素材 (5)修身「我が国」、(6)修身「祖先と家」、読方「出雲神社」
戊申詔書*御下賜記念日
*第二次桂太郎内閣の平田東助内務大臣が起草し、1908年10月13日に渙発され、14日発布された。国民道徳を作興し、個人主義・快楽主義・社会主義を戒める。本文259頁、445頁では10月13日とある。
258 指標 日支の戦雲はいよいよ急にして、国家がますます多難である時に当たり、勤倹産を治め、華を去り、実につき、自彊息まざる(自ら努め励んで休まない。努力して怠らない)の精神を児童に十分植え付ける。(綜合生活機構)
低学年
躍動
1 生活暦によって戊申詔書御下賜記念日を認知させる。
2 週間の始めに一週間の生活の予定を立てる。
体験
1 戊申詔書をお下しになった頃の日本の話をしてやる。
2 毎日の生活(に関しての)申し合わせ イ、遅刻する者が一人もいないように ロ、勉強時間中に脇見や手のいたずら、無駄話などをせずに本気でやる ハ、休み時間中に教室内で遊んでいない(何をするのか) ニ、お家に帰ったら、勉強を忘れずにやる ホ、無駄遣いをしない。
開展
1 日の丸貯金 手工の時間に袋を作成する。(日の丸の図案)
259 2 我慢会 凝念(思いを凝らすこと)15分間(我慢のしくら)
3 我慢遠足
生活統制
〇環境 週目標(本気で勉強、無駄遣いをしない)
〇関連素材 (1)修身「勉強」「物を大事に」、(2)修身「怠けるな」「辛抱強く」
中学年
躍動
1 カレンダー学習によって戊申詔書御下賜記念日を認知させる。
2 一週間の生活予定を話し合う。
体験
1 掲示学習を中心として訓話に入る。
2 10月13日当日の全校記念式に参列する。
3 戊申詔書の要点を把握させる。素読(意味を考えずに音読する)教育。
260 4 週間中の誓い。「私は仕事に励みます」「私は無駄遣いしません」「私はどんな苦しみでもやりとおします」
開展
1 勤勉日誌。実行目標に照らして。
2 日の丸貯金。ボール紙で貯金箱を作る。
3 落とし物や短い鉛筆で週間中に勉強する。物の生命を知らせる。
4 奉仕作業。校庭や道路で行う。
5 週間の終わりに反省座談会を開催する。
〇週目標 質素、勤勉
〇関連素材 (3)修身「仕事に励め」「協同」、(4)修身「我が儘を言うな」「忠実に」
高学年
躍動
1 週間生活自治会 イ、私たちの学校でどんなことが無駄か、どんな点を倹約すべきか。 ロ、私たちはいつどんなことを怠けているか。 ハ、この一週間に特別施設として何をやるか。
261 体験
1 詔書拝誦会 毎朝始業直後。素読教育(を)謹解する。
2 記念式へ参列 低学年に模範的態度を示す。
3 物質の生命を調査する。鉛筆、帳面、消しゴム等学用品の生命を実験的に調査し、有難さを感得させる。
4 ポスターの製作と掲示。図画、手工に関連。
5 日の丸遠足。梅干し弁当を持参。
6 奉仕作業 神社の掃除
開展
1 国史「明治三十七八年戦役」
2 修身「戊申詔書」
262 〇週目標 質素、勤勉
〇関連素材 (6)国史「明治三十七八年戦役」、修身「勤勉」、(5)修身「勤労」
神嘗祭(神嘗祭は10月17日、天皇が新穀で作った神酒と神饌(供え物、飯)を伊勢神宮に奉る。新嘗祭は11月23日、天皇が新穀を神に供えて自分も食べる。新年祭は2月17日、天皇が豊穣と安穏を祈願する。)
指標 皇祖大神の神霊に対して感謝の意を表させるとともに、国家の安全を祈り給う陛下の聖慮に対して感謝させ、忠君愛国の志操を養成する。米のありがたさを感じさせることは、天照大神、陛下、社会人への感激の涙を注ぐことである。
低学年
躍動
1 カレンダー学習によって10月17日の旗日を認知させる。
体験
1 掲示教育によって旗日が神嘗祭であること、またそれがどんな日であるかを研究させる。
263 2 修身によって以上の趣旨を説き聞かす。
3 当日の生活 国家日の生活訓練。 イ、早朝起床 ロ、清らかな水で口を漱ぎ、顔を洗う。 ハ、衣服を整え、神棚仏壇を拝し、氏神に参詣する。
開展
1 稲の取り入れについての研究 イ、鎌で稲を刈る。 ロ、稲を干す。 ハ、稲こき機で稲をこく。 ニ、むしろでもみを干す。 ホ、もみすり臼でもみをする。 へ、玄米にして俵につめる。
2 以上の絵画的表現。用具の名称。
3 取入れの状況を見学させる。
生活統制
〇環境 掲示、稲の取り入れ用具の図。
〇関連素材 修身「タベモノ」「物を大事に」
中学年
躍動
264 1 生活暦によって10月17日の神嘗祭を知らせる。
体験
1 神嘗祭についてのいわれを話し、我らは如何になすべきかという生活欲を起こさせる。
2 当日の生活相談会 イ、早朝起床、寝具の始末 ロ、清らかな清水で口を注ぎ、顔を洗う。 ハ、衣服を整美してから、神棚・仏壇へ礼拝 ニ、国旗を自分の手で立てる。門内から見て右の門柱に立てる。 ホ、食事。一粒の米がどのようにしてできたのかを考えながら。
開展
1 神嘗祭の感想を綴り方にまとめる。
2 神嘗祭の生活の反省会を開く。
3 新嘗祭との生活関連を話す。
〇環境 掲示
〇関連素材 (3)修身「国旗」、読方「天の岩屋」「参宮だより」「田植」「天孫」「稲刈」、(4)読方「苗代の頃」
256 高学年
躍動
1 生活暦によって10月17日の神嘗祭を認知させる。
2 2月17日の新年祭を再認知をさせる。
体験
1 国史「天照大神」を取り扱う。
2 神嘗祭を文化史的に取り扱う。
3 皇祖の神勅の読みと書き方。
是物者則顕見蒼生可食而活之也 成高天原聞食齋庭穂亦為皇孫可授者也
日本書記巻第一(神代上)第五段(一書11)「是の物は顕見(うつ)しき蒼生(あおひとくさ、この世に生を営む人民)が食べて活きるべきものである。」/「之を食らい活く可し。」「顕見蒼生」(うつしきあおひとぐさ、青人草)とは民衆、人間の意。
本分と全く同じでないようだが、某サイトによれば、「吾が高天原に所御す斎庭の穂を以て、亦吾が児に御せまつるべし」
4 食事の作法(翌日) イ、梅干し一個が入った、皇国旗を標徴する「日の丸弁当」を持参。 ロ、清潔係がバケツに水を用意し、各自が手を洗う。 ハ、新聞紙を四つ折りにして、それを膳にし、その上に弁当箱を置く。 ニ、食前の誓い。一同合掌する。 ホ、教師「おあがりなさい。」一同箸を両手に持ち、頭を下げて「いただきます」 へ、食事係が各自の家のお湯を配る。(意味不明) ト、日の丸弁当の話。
266 開展
1 研究発表会 優秀者に賞状を与える。 イ、苗代、田植(せわしい農繁期、害虫、入梅) ロ、除草、施肥(暑い、水の不足) ハ、開花時(二百十日、すずめ、いなご) ニ、取り入れ(今週の観察)→一粒の米
報徳会 10月20日
指標 日本が生んだ世界的な農聖二宮尊徳翁の人格を敬仰させ、報徳精神――至誠、勤勉、分度*、推譲*――の体得と、報徳生活様式の訓練とを図る。(綜合生活機構)
*分度 二宮尊徳が創始した仕法(仕方)上の用語。平均収入から支出の限度を定めた。
*推譲 他人を推して自らは譲ること。
低学年
躍動
1 二宮尊徳翁の銅像の観察。(事象事物の直接経験)
体験
1 修身で「二宮金次郎の勤倹力行」を取り扱う。
267 2 行事読物「二宮先生」を読ませる。
3 素読教育「この秋は雨か嵐か知れねども、おのがつとめの草をとるかな」
4 綴り方「二宮先生」
5 書き方「二宮先生」
6 図画「金次郎さんの思想画」
7 手工「金次郎さんのお仕事の場面」 貼り紙細工。
開展
1 敬仰 報徳祭、登校・退校時の挨拶、銅像付近での遊び。
2 孝行 お手伝い、お使い、子守り、仲良し。
3 勤労 お勉強、机の中の掃除
4 兄弟仲良し
生活統制
268 〇環境 尊徳翁写真、絵巻物、報徳貯金箱
〇関連素材 (1)修身「親を大切に」、(2)修身「孝行」
中学年
躍動
1 掲示学習によって10月20日の報徳祭を認知させる。
体験
1 記念日学習 イ、報徳祭に参加(朝会時を利用) ロ、第一時 修身。報徳訓話。 ハ、第二時読方。行事読物による。 ニ、第三時 書き方。「至誠、勤労、分度、推譲」 ホ、第四時 図画。尊徳翁銅像の写生。 へ、第五時 大掃除。教室内外の清掃。
開展
1 報徳貯金 古新聞、雑誌、空き瓶、倹約、労務などによる貯金。
2 孝行日誌 週間中につけさせる。
3 報徳作業 部落別に登校前に銅像付近を清掃させる。
269 〇環境 低学年に準ずる。
〇関連素材 (3)修身「孝行」「仕事に励め」「学問」、(4)修身「孝行」「兄弟」
高学年
躍動
1 自治会を中心にして報徳生活の生活内容を決定させる。
体験
1 週間中報徳訓の朗唱(第一時始業直後)
2 記念日学習 イ、朝会時を利用して報徳祭を執行 ロ、第一時 修身。報徳訓の講義と報徳訓話。 ハ、第二時 読方「尊徳の生きている覚悟」――武者小路実篤氏著「二宮尊徳」 ニ、第三時 書き方。報徳訓の清書 ホ、第四時 図画。尊徳絵巻物語。
開展
1 尊徳研究発表会――週間中に尊徳についての研究事項・感想等の発表座談会を行う。
〇環境 教室正面(尊徳翁肖像画)、背面黒板・掲示板(尊徳翁関連の図画、書き方、綴り方の作品)、陳列棚(草鞋(わらじ)、菜種、行灯(あんどん))
270 〇関連素材 (5)修身「孝行」「兄弟」「勤労」「勉学」、(6)修身「忠孝」
教育勅語御下賜記念日 10月30日
指標 教育勅語を御下賜下されました明治大帝の聖恩に感激させるとともに、この聖典を身に体し、聖旨の具現に向かって生活させることを陶冶の指標とする。(綜合生活機構)
低学年
躍動
1 お勅語奉読会に参列させ、聖恩無窮の雰囲気に浸らせる。
体験
1 修身によって勅語御下賜について訓話する。
2 「克く忠に、克く孝に」を謹書させる。
271 3 今まで習った修身の本の中で、お勅語にかなう人を捜す。
4 勅語に対する礼儀作法の指導をする。
開展
1 勅語奉読会の礼儀作法について反省 イ、廊下の歩行はどうだったか ロ、きまりよく早く席につけたか ハ、出入り口での作法はどうだったか ニ、お話を聞くときの態度はどうだったか ホ、お勅語拝聴の作法は
2 私たちがお勅語に適う生活をするにはどうするのがよいのか。自分の本分を尽くす。
生活統制
〇環境 掲示
〇関連素材 (1)修身「天長節」「忠義」「ヨイ子供」、(2)修身「天皇陛下」「忠義」「良い子供」
中学年
躍動
272 1 お勅語奉読会に参列させ、聖恩の無窮に感激させる。
体験
1 修身によってお勅語の精神を謹話する。
2 勅語謹写 神棚礼拝。硬筆で毎朝一枚ずつ、一週間継続する。
3 勅語拝誦会 修身時の始業直後に、全学年を通して行う。
4 勅語精神体得者を調べる
あるところ 読方や修身の「学年、第何課、題目」
なまえ 勅語体得者の名前
行い その人のやった行いのアウトライン
まとめ お勅語の徳目を書く。「忠義」「孝行」「兄弟」「仲良し」など。
開展
1 お勅語の精神に適う生活の構成
273 2 勅語生活習慣の反省
〇環境 掲示、修身書、読本(尋一より)
〇関連素材 (3)修身「忠君愛国」「よい日本人」、(4)修身「明治天皇」「天長節」「よい日本人」
高学年
躍動
1 生活暦によって10月30日の教育勅語の御下賜記念日を認知させる。
体験
1 国史「明治天皇」によって天皇の御治世を研究させる。
2 修身「教育勅語」によって内容の探求をさせる。
3 自治会を中心として次の実践をさせる。 イ、勅語謹写修行。早朝氏神参拝、毛筆で謹写。 ロ、勅語拝誦会――道場または作法室にて。 ハ、勅語暦の作成――勅語の徳目を月別に配当し、絵画、和歌、御製、修行者の美談を入れ、12か月分作成する。
開展
274 1 徳行者の表彰 級の中の模範的善行者の調査と表彰(当日)
2 郷土の徳行者の調査。徳行録の編纂。
〇環境 掲示
〇関連素材 (5)修身「天長節」「忠義」「徳行」、(6)修身「教育勅語」、国史「明治天皇」
明治節(明治天皇の誕生日11月3日)
指標 世界の大英主明治天皇の御遺徳を敬仰し、昭代(めでたい世)を追慕し、感奮興起、益々報功の誠を尽くし、皇猷(こうゆう、天皇が国を治める計画)を翼賛し奉り、国軍の進展を期する。(綜合生活機構)
低学年
躍動
1 カレンダー学習によって11月3日の旗日を認知させる。
体験
1 掲示学習によって旗日が明治節であることやそれがどんな日であるかを研究させる。
275 2 修身によって以上の趣旨を読み聞かす。
3 君が代の唱歌を練習する。
4 式場の作法・制練(精錬、よく練習すること)の徹底。
5 当日の生活 国家日の生活訓練。 イ、早朝起床 ロ、冷水にて洗面 ハ、容儀の整美 ニ、神仏礼拝 ホ、氏神参拝
開展
1 明治節の思想画。
2 菊花の切り取りと写生。
3 明治節の式場での生活態度の反省。
生活統制
〇環境 掲示。菊花陳列。
〇関連素材 (1)修身「忠義」、(2)修身「忠義」「天皇陛下」
中学年
躍動
276 1 生活暦によって11月3日の明治節を認知させる。
体験
1 修身 明治節の意義を闡明し、明治大帝の御治績や御威徳について訓話する。
2 読方 明治天皇の御治績や御威徳をプリントにして与える。
3 聞き方 行事読物などを教材として読み聞かせ、それによって得た点を記録させる。
4 体操 身長、体重、胸囲、走力、跳力などを調査してそれをグラフ化し、算術学習に関連させる。
5 明治節の儀式や菊の花の画を描かせる。
6 書き方 明治天皇の御製を書かせる。
7 唱歌 明治節の式歌を練習する。
開展
1 御製奉誦会 週間中に毎朝始業直後に明治天皇の御製を奉誦する。
〇環境 明治天皇御製集や明治神宮絵葉書などを用意する。
〇関連素材 修身「祝日」「大祭日」、(3)修身「国旗」
277 高学年
躍動
1 自治会を中心にして週間の生活計画をつくる。
体験
1 御製齊誦 週間中の第一時の始業直後に奉誦する。
もろともに たすけかはしてむつびあう
友ぞ 世にたつ 力なるべき
2 御聖徳の研究集 雑誌、新聞、単行本、お話などによって御聖徳を研究させ、それを綴って御聖徳集にする。
3 御一代の御年譜を作成する。
4 御一代絵巻の作成 時代順に共同作業で作成する。
5 国運発展のグラフを作成する。地理科、算術科と関連して、貿易進展グラフや版図の増大図を描写させる。
278 開展
1 菊花大会 明治節の式後に開催する。
〇環境 中学年の他、参考書籍。
〇関連素材 (5)修身「明治節」、(6)国語「明治天皇の御製」、図画「明治天皇」
菊の花
指標 一年間の花で有終の美をなす菊の花の清くて気高いさまを賞美させるとともに、菊に関する国民的情操の陶冶を図る。(綜合生活機構)
低学年
躍動
1 咲き誇る菊花の美を直観させる。
体験
279 1 どうしてこんなに美しい花が咲いたのかについて疑問を持たせる。
2 家庭における菊づくりに関する苦心談。お父さんたちがどのようにして栽培なされたかを発表させる。
3 菊の花の色について研究させる。
4 菊の花についての字を読ませる。(意味不明)
5 菊の唱歌を練習する。
6 菊の花の絵を描かせる。
7 算術「菊の花」の個所を取り扱う。
開展
1 菊花大会 菊花を観賞しながら踊りを行わせる。
生活統制
〇環境 菊の花をたくさん陳列する。
〇関連素材 (1)算術「菊の花」
中学年
280 躍動
1 咲き誇る菊花の美を直観させ、それがどうして生まれたのかを考えさせる。
体験
1 栽培に関する苦心談を発表させる。
2 菊の理科に関する方面を取り扱い、研究する。
3 菊の童謡をつくらせる。
4 菊人形を作成させ、展覧会を開催する。
5 菊の補充文を読方で取り扱う。
開展
1 菊の栽培法について指導する。
2 菊花を持って病院を慰問させる。
〇環境 菊の花をたくさん展示する。
〇関連素材 (4)理科「菊」
高学年
281 躍動
1 自然界の直観 芭蕉は折れ、蓮は敗れ、百花皆しぼんでしまったときに、独りその殿軍(後軍、しんがりの軍隊)をなす菊の美を観させる。
体験
1 菊に関する故事 イ、皇宮の御紋章であること ロ、菊の御作(後鳥羽上皇は親(みずか)ら(菊を)鍛え(栽培)させ給うた。) ハ、南朝の忠臣楠木正成の菊水の旗章 ニ、菊花には延齢の効果がある。
2 菊の持つ国民的情操 菊は四君(菊、竹、梅、松)の一つ。美しくしかも清く、操がある。
開展
1 菊花品評会 児童が栽培した菊の品評会を開催する。
2 病院慰問と花道の教授。
〇環境 菊の鉢植
〇関連素材 (5)国史「楠木正成」
国民精神作興の詔書御下賜記念日(1923年11月10日、普選運動や社会主義運動などが起こる中で、人心を引き締めるねらいがあった。)
282 指標 大正天皇の御高徳に対する感謝と、詔書の精神の体得およびその実践を培うことを本行事の目的とする。(綜合生活機構)
低学年
躍動
1 生活暦によって精神作興詔書記念日を認知させる。
2 週間の始めに一週間の生活の予定を立てる。
体験
1 この詔書をお下しになった頃の日本の様子を話してやる。
2 週目標である「我慢」を毎朝五回ずつ心唱させる。
3 週間施設 イ、克己日 勉強中、遊戯中、作業中のすべてに渡って克己の精神をもって押し通す。 ロ、口無、足無日…無駄口、陰口を聞かぬ。廊下を走らない。 ハ、剛健遠足 ひもじさとだるさとに耐えることのできる修練をする。 ニ、詔書奉読式 11月10日
開展
283 1 日の丸貯金 手工の時間に貯金袋を作成する。日の丸の図案。
生活統制
〇環境 週目標「ガマン」「がまん」
〇関連素材 (2)修身「勉強」「物を大事に」、(2)修身「怠けるな」「辛抱強く」
中学年
躍動
1 カレンダー学習によって精神作興詔書御下賜記念日を認知させる。
2 一週間の生活の予定を話し合う。
体験
1 掲示学習を中心として訓話に入る。
2 10日同様に記念式に参列。(10日以外にも記念式があったのか。)
3 詔書の要点を把握させる。素読教育。
4 週間目標「克己勤勉」
284 5 週間施設 イ、作業日 教室の整頓、校庭の清掃と作業園の手入れ。 ロ、早朝に神社参拝 登校前に神社を参拝する。 ハ、貯金日
開展
1 関連学習 イ、修身 詔書についての訓話 ロ、読方 掲示教育または補充文 ハ、書方 週目標 ニ、体育 遠足に変更
〇週目標「克己勤勉」
〇関連素材 (3)修身「仕事に励め」「協同」、(4)修身「我が儘を言うな」「忠実に」
高学年
躍動
1 週間生活(自治会) イ、克己週間についての特別施設について話し合う。
体験
1 週目標の心唱「克己勤勉、質実剛健」
2 週間ポスターの作成と掲示。
285 3 早天(夜明け)に太陽を遥拝する。 イ、山上や海岸に集合 ロ、太陽遥拝 ハ、御製朗唱
4 詔書奉読式 イ、詔書奉読 ロ、訓話 ハ、黙想 ニ、誓い ホ、多摩陵(大正天皇陵)遥拝
5 剛健遠足 日の丸弁当持参。
6 奉仕作業 神社、校庭、教具。
7 学級清浄会 くせ直しの会。
開展
1 修身 詔書の御精神について
2 読方 補充文・行事読物
3 書方 週目標
4 体操 遠足
5 算術 欧州大戦時から震災後に至る産業経済方面の、統計による生活算術。
〇週目標「克己勤勉、質実剛健」
〇関連素材 (6)修身「勤勉」、(5)修身「勤労」
新嘗祭(11月23日、天皇がその年の新穀を神に供え、自らも食する儀)
286 指標 神恩と天恩のお恵みに対する感謝と、陛下の五穀豊穣・国土安穏を祈念し給うた大御心に対する感謝を求め、それを出発点として、「我如何に生くべきか」を自己決定させることに努める。(綜合生活機構)
各学年とも神嘗祭に倣い、その発展的営為の姿態を望むこと。ここでは詳案は重複するので避け、食事の作法系統案だけを述べる。
低学年
1 食事の前に必ず手を洗う。
2 姿勢を正して食事をとる。
3 食事の始めと終わりの挨拶を忘れぬこと。
4 箸は必ず右手で持つこと。(ぎっちょも右手か)
5 よく噛んで食べる。わき見や大声での話などはいけない。
287 6 好き嫌いをしない。
7 終わったら口を漱ぐことを忘れない。
生活統制
〇環境 掲示、稲の取り入れ用具図
〇関連素材 修身「タベモノ」「物を大事に」
中学年
1 食事前に手を洗い、鼻をかみ、用便を足しておく。
2 姿勢を正していただく。
3 始めと終わりの挨拶を忘れない。
4 落ち着いてよく噛んで食べる。
5 頬張りながらお話などしない。
6 食物の好き嫌いをしない。
7 膳のよそを見まわしたり、下品な話等をしない。
8 食事中座をたたない。
288 9 食器を丁寧に取り扱う。
10 食後は必ず口を漱ぐ。
〇環境 掲示
〇関連素材 (3)修身「国旗」、読方「天の岩屋」「参宮だより」「田植」「天孫」「稲刈」、(4)読方「苗代の頃」
高学年
1 食物の中に異物のあった時(の対処法)
2 歯に食物の詰まった時。
3 茶碗や急須に茶が詰まったとき。
4 茶やコーヒー等の進め方と飲み方。
5 菓子や果物等の進め方と食べ方。
6 日本料理の食事作法
7 西洋料理の食事作法
生活統制
289 2月17日、新年祭 穀物の豊穣を神に祈るお祭り。
10月17日、神嘗祭 初穂を皇祖大神宮に供え、豊年を謝し、神恩に報い奉るお祭り。
11月23日、新嘗祭 新年祭の御恩に報い奉る祭典。
防火デー
指標 火が人類に及ぼす影響を研究し、火への感謝と防火思想の養成に努める。(綜合生活機構)
低学年
躍動
1 寒さへの関心。どの位寒いか。
2 寒さを防ぐにはどんな方法があるか。
体験
1 燃料にはどんなものがあるか、名前を上げさせる。
290 2 火の用途にはどんなものがあるか。
3 火にあたる時の注意事項について話し合う。
4 火事の時の心構えはどんなのがよいか。
開展
1 火災における避難訓練の実施。落ち着き、規律。
生活統制
〇環境 ポスター、標語。
〇関連素材 (1)修身「人に迷惑をかけるな」
中学年
躍動
1 マッチは誰が発明したのか。
体験
1 マッチの歴史から火の発展過程を知らせる。
2 理科「火」において、科学的取り扱いをする。
291 3 読方「火事」(三年)によってその内容を読み取らせ、火災への心構えを指導する。
4 ポスター、標語と図案の案出。
開展
1 火災に対する避難訓練の実施。
〇環境 半鐘の見分けを示す図。
〇関連素材 (3)読方「火事」、修身「物事にあわてるな」、(4)理科「火」、修身「沈着」
高学年
躍動
1 寒さと保温との関係について認識させる。
体験
1 国語読方によって火の歴史や用途を知らせる。
2 火に対する感謝の念を養うとともに、防火思想を涵養する。修身。
3 消火・防火の大略について説明する。
292 4 防火思想宣伝のためのポスターや図案を作成・掲示する。
開展
1 火災保険や火災に対する法律関係の大略について説明する。
2 消防組織について。
3 火災における消火・避難訓練の実施。
〇環境 火の発明順序
〇関連素材 (6)読方「人と火」、理科「熱の移り方」
義士会(12月14日)
指標 (赤穂)義士の終始一貫した君への誠心・臣節と、それを達成させるべくあらゆる忍苦をなした過程とに目標を定めることが必要である。義士の忍苦と誠心とは、いつの世でも必要欠くべからざるものである。(綜合生活機構)
低学年
躍動
293 1 生活暦の算術によって12月14日の義士会を認知させる。
体験
1 掲示教育によって義士会がどんな日であるかを知らせる。
2 四十七士の話し方・聞き方をさせる。 イ、大石主税(大石良雄の子、小学生全集) ロ、手鞠の遊――大石良雄(高橋喜藤治氏*)(意味不明)
*ネットで検索してみると、高橋喜藤治1882年--、「実践読方教育」昭和9年、「綴方の心理学」昭和9年、「佐久間大尉」1930年7月、「教案中心算術教授の実際案」、「小学児童学習の友」(戦前の教科書で、源義家、新井白石、太閤秀吉、豊臣秀吉などを扱う)
以上のことから高橋喜藤治は歴史教育者だったようだ。その意味で大石良雄を扱った教科書を出版していたらしい。
また忠臣蔵と関連して「悪魔の手鞠歌」というのがある。
3 行事学習用印刷物を与えて、国語生活(生活を通した学習)をさせる。
4 強行遠足 義士精神の直接体験として、寒中強行遠足を行う。騒がず、元気で。
開展
1 強行遠足の絵日記を書かせる。
2 絵日記を中心に反省会を開く。
生活統制
〇環境 四十七士討入の図
〇関連素材 (1)修身「忠義」、(2)修身「忠義」、読方「大江山」*
*「大江山の酒天童子」や「化物大江山」などは、丹波大江山の酒顛童子退治伝説を題材に、食材が人物に扮して戦うという伝説のようだ。また大石良雄らは討入の前にそばを食べたそうだ。
294 中学年
躍動
1 四十七士忠臣蔵等の言葉をもとにして、生活経験を発表させ、整理する。
体験
1 四十七士の低学年国史を行事読物によって行う。四十七士――内外教育童話(真淵冷佑氏*)
*ネットによれば、真淵冷佑—1941、『お伽文学』大正6年、7年などとあり、児童文学者のようだ。
2 修身によって義士精神の訓話をする。
3 書方『至誠』『忍耐』『勇気』などの生活目標を心書(心で感じるありのままの感情を筆を通じて自由に表現)する。
4 義士会を開催する。義士銘銘(各自)伝、劇化、朗読等。
5 長距離遠足――日の丸弁当持参。忍苦に耐える。
開展
1 生活目標を毎日朗唱する。
2 長距離遠足や義士会の感想文を書かせて整理する。
295 〇環境 生活目標『至誠』『忍耐』『勇気』、義士に関する絵画、参考資料。
〇関連素材 (3)修身「恩を忘れるな」「勇気」「忠君愛国」
高学年
躍動
1 生活暦の作成から12月14日の義士会を認知させる。
体験
1 国史「大石良雄」によって義士精神を取り扱い、文化史的研究をさせる。
2 義士会 イ、自治団主催の「義士を偲ぶ会」 ロ、児童の研究発表 ハ、教師講話 ニ、琵琶、浪曲、講談、劇化
3 剣道大会 夜間に校庭で(頭にせんべい)
*ネットによれば、吉良上野介のせんべいが売られているとのこと。
4 試胆会 暗い室、便所、お墓等を利用して試胆会を実施する。
開展
1 書方『万山重からず君恩重し、一髪軽からず我が命軽し』
296 2 義士会の整理(文と絵)
〇環境 生活目標、参考物、研究物
〇関連素材 (5)修身「忍耐」、(3)図画「大石良雄」、修身「忠君愛国」
着物(礼儀作法が狙いのようだ)
指標 寒さを防ぐ保健上の根本問題である着物について研究し、衣服を文化史的に取り扱うとともに、礼儀作法についても指導する。(綜合生活機構)
低学年
躍動
1 寒さを防ぐものにはどんなものがあるか。
体験
1 着物は何から作られているか。材料の研究。
2 着物をどなたが縫ってくださるか。母への感謝。
297 3 どんな着物があるか。
開展
1 着物は何枚くらい着ているのが衛生上から見てよいかを研究する。
2 衣服についての礼儀作法。
生活統制
〇環境 着物の正しい着方を示す礼儀作法。
〇関連素材 (1)修身「物を大事に」「始末よく」「お父さん」「お母さん」、(2)修身「体をきれいに」「恩を忘れるな」
中学年
躍動
1 寒さと正月(礼儀作法の習得のためか)とから着物の研究をさせる。
体験
1 着物にはどんな種類があるか。
2 着物の原料は何か。またそれはどこ(どの国)から来るか。
297 3 その国々とどんな気持ちで交わる必要があるか。
4 着物はどなたが縫ってくださるか。母へのありがたさを感じさせる。
開展
1 衣服作法について 虚栄に流れぬこと。質素。
〇環境 同上のほか、着物の種類を区別する掛図。
〇関連素材 (4)修身「我が儘を言うな」
高学年
躍動
1 着物について研究するに際して相談会を開く。
体験
1 衣服を文化史的に取り扱う。衣服の変遷。
2 衣服の材料 原料を供給する国々との交際について。
3 労働と着物との関係について。
299 4 理想的衣服の創案と価格について。
開展
1 衣服作法について
「正其衣冠尊其胆視潜心以居対越上帝――敬齊箴。」*
*ネットによれば、孔子の「論語 堯日第二十 2 子張問於孔子章」の言葉。「君子正其衣冠、尊其胆視、…」の意味は、「君子は其の衣冠を正しくし、其の瞻視(せんし、目つき。瞻は「見る」の意)を尊くす。」
〇環境 同上
〇関連素材 (9)理科「衛生」
大正天皇祭(12月25日、誕生日ではなく、死亡日)
指標 大正天皇の御徳を敬仰してその御遺業を奉讃し、大正天皇への感激と国民的自覚とを促すことを目的とする。(綜合生活機構)
躍動
1 生活暦によって12月25日の旗日を知らせる。
体験
1 掲示教育によって旗日が大正天皇祭であることと、それがどんな日であるかを知らせる。
300 2 修身によって天皇の御徳を謹話する。
3 当日の生活 家庭で国家日の生活をさせる。 イ、早朝起床 ロ、容儀を調える ハ、神仏礼拝 ニ、多摩陵参拝
開展
1 絵日記に大正天皇祭当日のことを書いて整理する。
生活統制
〇環境 国旗のある街や村。
〇関連素材 (1)修身「忠義」、(2)修身「忠義」
中学年
躍動
1 生活暦によって12月25日の旗日を知らせる。
体験
1 この旗日は何であるかを暦によって発見させる。
2 大正天皇の御事蹟や御恩徳について講話する。
301 3 当日の生活について話し合う。国家日の生活――低学年に準ずる。
開展
1 天皇御製の拝誦会
国のためにたふれし人の家人は
いかにこの世を過すなるらむ
抜きがたきとりて抜かんと捨てし身を
慕ふ妻子やいかに悲しき
〇環境 国旗、多摩の地図。
〇関連素材 (3)修身「国旗」、(4)修身「祝日」「大祭日」
高学年
躍動
1 日本大祭日についての研究。
体験
1 大正天皇祭について イ、今上陛下の御父君であらせられる ロ、大正十五年十二月二十五日午前一時二十五分、葉山御用邸にて崩御遊ばさる。48歳。 ハ、多摩の御陵にお参り。
302 2 国史「大正天皇」によって御治世中の御徳を慕い奉る。
3 修身によって一層天皇への感激を深くさせる。
4 当日の生活――国家日の生活様式による。
開展
1 日誌に大正天皇祭当日の感想を書く。
〇環境 中学年に準ずる。
〇関連素材 (5)修身「忠義」、(6)「大正天皇」
四方拝(1月1日)
指標 天地四方の神々を礼拝させ、敬虔な霊的気分に浸らせて敬神の念を養い、我が国体が世界に冠たることや皇祚の無窮を思いつつ一年の良いスタートを切らせる。(綜合生活機構)
303 低学年
躍動
1 「もういくつ寝るとお正月」 正月への心情を醸し出す。
2 12月中に、四方拝当日の生活の予定について話し合う。
体験
1 早朝起床。寝具の始末。
2 若(冷)水で心身を清める。
3 家庭奉祀の神仏礼拝。今年度の覚悟を天地神明に誓う。
4 父母に「おめでとうございます」と挨拶する。
5 ニコニコ顔でお餅をいただく。
6 元日の式に参列。式中の作法。(中学年参照)
開展
1 はねつき、たこあげ、すごろく。
304 2 絵日記に記録してから休む。
生活統制
〇環境 国旗、正月の飾物
〇関連素材 (1)修身「お正月」、読物「お正月」、(2)修身「天皇陛下」、読物「郵便」
中学年
躍動
1 読方(3)「たこ」や(4)「福寿草」によって正月の学習生活に入る。
2 修身(3)「皇大神宮」や(4)「皇室を尊べ」によって正月の作法の研究をさせる。
体験
1 元日の生活 低学年に準ずる。国旗掲揚や氏神参拝をさせる。
2 四方拝式中の生活態度 イ、天地四方の神々に帰一し奉るという心境。 ロ、一つ年をとったことへの自覚を持たせる。
開展
305 1 お年始回り 精神を生かして物質にとらわれないように指導する。
2 かるた大会。自製の合同作。
〇環境 同上
〇関連素材 (3)修身「皇大神宮」、読方「たこ」、(4)修身「皇室を尊べ」、読方「福寿草」
高学年
躍動
1 自治会を中心として、正月のお話をし、計画を立てさせる。
体験
1 元日の生活 低中学年に準ずる。
2 初詣 イ、学級内の有志や家庭を単位として実行。 ロ、明治天皇や伊勢神宮、その他郷土の神社仏閣に参拝。 ハ、皇国の発展と皇軍の武運長久を祈願するとともに自己の計を(神に)誓う。
開展
306 1 お年始まわり 中学年に準ずる。
2 はねつき、たこあげ、すごろく。自製のものまたは合作のもの。
〇環境 同上
〇関連素材 (6)読方「国旗」
入営
指標 入営の光栄を観取させ、皇国精神を涵養し、皇国軍組織の大要を指導する。世界情勢の認識も深める。(綜合生活機構)
低学年
躍動
1 志向 入営の絵画を提示し、学習動機を喚起する。
体験
1 観察 イ、入営の生活経験を発表させ、話し合う。 ロ、今年入営する兵隊さんを調べる。
307 2 考究 イ、兵隊さんはどこへ行くのだろう。 ロ、海軍、陸軍、空軍の別。 ハ、我が軍の勇ましい働き。支那事変の話。 ニ、読方「兄さんの入営」を研究する。
開展
1 行証(ぎょうしょう。仏語。修業と悟り) イ、入営の生活画 ロ、兵士となるのに大切な身体の育成。
生活統制
〇入営の絵画
〇関連素材 (1)修身「忠義」、読方「ヘイタイ」、(2)修身「忠義」「兄さんの入営」
中学年
躍動
1 志向 級の中で(家族の)入営者を調べる。
体験
1 観察 イ、兵士に関する既有観念の整理。
2 考究 イ、兵隊さんになるには ロ、兵の種類と見分け方 ハ、兵営生活の大要 ニ、支那事変における皇軍の活躍 ホ、読方(3)「軍旗」「東郷元帥」*(4)「兵営だより」「大演習」「廣瀬中佐」*
*東郷元帥 東郷平八郎1848—1934 は海軍軍人。日清戦争で「浪速」艦長。日露戦争で連合艦隊司令長官。「陸の大山、海の東郷」と呼ばれた。癌のため86歳で死亡。国葬。
*廣瀬中佐 1868—1904.3.27(日露戦争中のロシアの旅順で死亡)部下を捜しに行った帰りに撃たれて死亡。軍神。
308 開展
1 行証 イ、皇軍の精神について修身で取り扱う。 ロ、少年団訓練
〇環境 兵種の見分け方に関する図
〇関連素材 (3)修身「忠君愛国」、読方「軍旗」「東郷元帥」、(4)修身「皇室を尊べ」、読方「兵営だより」「大演習」
高学年
躍動
1 志向 世界の国で一番強いのはどこか。(ここまで主観的に言わせるのか)
体験
1 観察 イ、強さの標準は何か。 思想、兵力、経済。
2 考究 イ、日本の兵力についての大要 ロ、軍組織の大要 ハ、世界の兵力についての大要 ニ、修身「国民の務」、国史「明治天皇」によって、我が国の兵役について綜合して扱う。
309 開展
1 行証 イ、郷土の入営兵はどの師団の管下にあるか ロ、出征軍人への慰問文や慰問画を作成する。
〇関連素材 (5)修身「挙国一致」、読方「橘中佐」*「軍艦生活の朝」、(6)修身「国民の務」「憲法」、国史「明治天皇」
*橘中佐は日露戦争で戦死した。橘周太。1865-1904.8.31 遼陽の戦いで戦死。軍神。
正月
指標 正月のもつ「生命」を観得させ、弥栄の生活意識を涵養し、その実践・行進を指導する。(綜合生活機構)
低学年
躍動
1 志向 「お餅をいくつ食べたか、いくつになったのか」などと問い、興味性の原理を用いる。
310 体験
1 観察 イ、お正月の飾り物(松、注連飾(しめかざり)、床の間) ロ、お祝い(お屠蘇(とそ)、お雑煮、年賀廻り、万歳、獅子舞) ハ、遊び(カルタ、スゴロク、タコ)
2 考究 イ、観察事項を通して、それが持つ意味を発見させる。 ロ、読方や修身と比較して、綜合的生活を指導する。
開展
1 行証(修業と悟り307) イ、絵日記や図画によって生活を発表・整理する。 ロ、「覚悟」を指導する。作法を反省させる。
生活統制
〇環境 書初め、年賀状
〇関連素材 (1)修身「お正月」、(2)修身「祖先を尊べ」「氏神様」「恩を忘れるな」
中学年
躍動
1 志向 算術で本年度の生活暦を作成させる。(一月分では)正月の行事内容に触れる。
311 体験
1 観察 イ、正月の生活を発表し合う。 ロ、合評して一つにまとめる。
2 考究 イ、正月の景物(風景)や行事について文化史的に指導する。 ロ、読方や修身と比較させて、綜合的生活を指導する。
開展
1 行証 イ、絵巻物の作成(出征兵士慰問を兼ねて) ロ、年玉貯金の励行と出征兵士慰問
〇環境 書初め、年賀状、絵巻物
〇関連素材 (1)(これは(3)の間違いか)修身「皇大神宮」、読方「たこ」、(ここに(4)が入るのでは)修身「皇室を尊べ」、読方「福寿草」
高学年
躍動
1 志向 正月休みの反省会を開き、その中心指標を見つめさせる。
体験
312 1 観察 イ、行事表によって行事を観察させる。(四方拝、元始祭*、新年宴会、七草、消防出初式等) ロ、飾り物、生活の発表
*元始祭は宮中の祭祀。1908年に大祭に編入され、1927年に祭日・祝日とされた。新暦1月3日、天皇が宮中三殿で主宰する親祭で、皇位の元始を祝う。1870年1月3日、八神、天神地祇、歴代の皇霊を鎮祭したのが始まり。名称は古事記の序「元始綿邈(めんばく、「邈」は遠いの意)」から取ったとされる。
2 考究 イ、上記事項の相互研究 ロ、研究事項の発表とデスカッション学習
開展
1 行証 イ、一月の訓練目標の設定 ロ、実践への誓い
〇環境 正月の景物、関係図書
〇関連素材 (6)国語「国旗」
雪
指標 雪の降る景色を観察させ、美的指導や理科的指導を行うとともに、穢土(えど)を浄土に化すという倫理的指導も行う。
低学年
躍動
1 志向 雪が降っている校庭や窓辺に位置させる。
313 体験
1 観察 降りしきる雪や積もった雪の美を観察させ、思ったままを発表させる。(方法も任意)
2 考究 イ、雪はどこから降って来るのか ロ、降った雪はその後どうなるのか ハ、読方(1)「雪、雪よ、降れ降れ」を取り扱う ニ、算術「雪」の学習
開展
1 行証(修業と悟り307) イ、修身の勉強によって寒さに負けないように指導する ロ、雪が降った日の遊びの指導 ハ、雪だるまやウサギの作製
生活統制
〇環境 雪の景色
〇関連素材 (1)修身「勉強」、読方「雪」「雪よ降れ降れ」、算術「雪」
中学年
躍動
314 1 志向 寒さの認知 寒暖計の数値をグラフに記入する。
体験
1 観察 イ、温度表の観察 ロ、降った雪の観察学習と問題の発見。(科学、道徳、審美)
2 考究 イ、科学的研究 理科「氷」と連関 ロ、審美的研究 読方「雪の夜」「スキー」と連関 ハ、道徳的研究 私心のない潔白の雪
開展
1 行証 イ、雪合戦、スキー 雪がもつ生命 ロ、雪解け道の生活態度 下駄箱、下学年への思いやり
〇環境 雪の景色、寒暖計
〇関連素材 (3)読方「雪の夜」、(4)読方「スキー」、理科「氷」
高学年
躍動
1 志向 寒さの認知 寒暖計の数値をグラフに記入
315 体験
1 観察 「冬に入り、木が枯れ、草が萎(しぼ)み、満月が蕭条(しょうじょう、ものさびしい)たるの時、雪が降り、枯れ木が花をつけ、山川が形容を改める」その姿を直観する。
2 考究 イ、道徳的意味の発見 観察から、穢土を化して浄土となす。
ロ、文化史的取り扱い
初雪の見参 群臣の参内 豊年の吉兆(民間) 桜田烈士(井伊直弼を暗殺した人たちのほどんどが死んだ。)、義士の討入 一点の私心なく、身命を惜しまざるもの
ハ、俳句、和歌の鑑賞
開展
1 行証 イ、俳句・和歌の作成 ロ、雪中行軍
天神様(梅)(2月25日)
指標 廉潔にして操守あり、能く寒苦に耐え、しかも芳香を発する梅の精神を体得させ、菅公の誠忠を偲び、菅公の生活を追体験させる。(綜合生活機構)
316 低学年
躍動
1 天神様はどなたをお祀り申した社であるか。
体験
1 梅の好きな管公の話。低学年国史絵ばなし。
2 自分の郷土における天神様調べと参拝 文字がうまくなるように。
3 読方(1)「ウグイス」、(2)補充文を取り扱う。
4 修身「勉強」「忠義」による統整。
開展
1 一週間の天神行 毎朝一枚ずつ書き方。読書「梅の花、天神様」 夜明けに天神様に奉納。
生活統制
317 〇環境 梅の花
〇関連素材 (1)修身「勉強」「忠義」、読方「ウグイス」、(2)修身「忠義」「怠けるな」
中学年
躍動
1 郷土の神社調べ
体験
1 学校付近の神社と祭神
2 家に祀ってある神様 日本の神と西洋の神
3 菅公の人柄と我らの学ぶべき点
4 菅公祭の催し 天神様のある地では神社で、ないところでは講堂または校庭で。
開展
1 関連学習 読方(3)「梅」、(4)「補充文」、修身「勉強」「学問による統整」
318 2 神社作法 敬礼、前を通る時の生活態度
3 梅の木の栽培 一人一本ずつ。卒業の際に家庭に移植する。
〇環境 梅の花、掲示教育
〇関連素材 (3)読方「梅」、修身「学問」、(4)修身「勉強」「皇室を尊べ」
高学年
躍動
1 行事暦によって2月25日の天神祭を認知させる。
体験
1 国史「菅原道真」によって菅公の偉大な人格を感じさせる。
2 菅公の愛した梅のもつ日本的精神や内容の研究
「幹鉄骨の如くにして頗る気節と風致とに富む。」「花は雪の如くにして清香馥郁(ふくいく)」「能く寒気に耐えて百花に魁(かい)す(さきがける、第一)」
3 菅公祭の開催 天神様で奉納学芸祭を催す。書き方の展覧とお祭り。
開展
319 1 梅干しの用途と製法
2 神社の清掃作業 日曜日ごとに。
3 梅の花の日本花道を指導する。
〇環境 菅公の生活環境図表
〇関連素材 (5)国史「菅原道真」、修身「勉学」、(6)修身「勤勉」
紀元節
指標 我が国体が深遠にして優秀なることを知らせ、愛国精神の高調をはかる。(綜合生活機構)
低学年
躍動
1 カレンダー学習によって2月11日の旗日を認知させる。
体験
320 1 掲示教育によって、この旗日が紀元節であることを知らせる。
2 修身によって紀元節の訓話をする。
3 儀式・作法の練習 心身を清め、衣服を整美し、式についての諸注意を行う。
4 国旗への作法 朝立てて夕方にしまう。玉と旗とをつけて立てる。大切にする。
5 当日は国家日の生活をする。 早朝起床、冷水で洗面、神仏礼拝、氏神参拝
開展
1 関連学習 修身「神武天皇」、読方「補充文」、唱歌「君が代」、書き方「金のトビ」(金のトビをかたどった金鵄勲章が軍人に授与された)
生活統制
〇環境 掲示教育
〇関連素材 (1)修身「忠義」、(2)修身「紀元節」
中学年
1 生活暦によって2月11日の紀元節を知らせる。
体験
321 1 修身の補充文「紀元節」によって、紀元節の由来と国民の(戦争する)覚悟について話す。
2 当日の生活訓練 低学年に準ずる。
3 金鵄勲章について話す。 イ、明治23年2月11日に紀元節の日が作られた。 ロ、功一級から功七級まで、勲功のある(武功抜群の)軍人に授与された。 ハ、金の鵄(とび、とんび)がついている。
4 郷土の金鵄勲章授与者を調べる。
開展
1 建国祭の行列に参加させる。
2 読方「神武天皇」を取り扱う。
〇環境 掲示教育、金鵄勲章の模型
〇関連素材 (3)修身「国旗」「忠君愛国」、読方「神武天皇」、(4)修身「紀元節」
高学年
躍動
1 日本四大節(新年節、紀元節、天長節、明治節11/3)について研究させる。
322 体験
1 国史「神武天皇」によって紀元節のいわれを研究させる。
2 日本と世界各国の国体の差異について。
3 紀元節の文化史的研究
イ、明治5年11月15日、太政官布告第342号で、紀元制定の御報告祭が制定され、
ロ、明治6年1月29日、皇霊殿で祭典を執行したことを嚆矢とする。
ハ、明治6年3月7日、正院布告第91号によって紀元節と称した。
ニ、(明治)7年の暦から2月11日を紀元節とした。
ホ、昭和2年から、賢所、皇霊殿、神殿の宮中三殿で祭典を挙行した。
へ、大正15年、建国祭を行った。
開展
1 支那事変に見る日本精神 神武天皇即位の詔勅と東征の詔勅を取り扱う。
〇環境 掲示教育、各国の国体を図示する。
〇関連素材 (3)国史「神武天皇」
針供養(鉛筆供養)2月8日
323 指標 「万物総て仏性あり」と言われる。日ごろよく働きよく役立ってくれる針に対して感謝の誠をいたし、さらに針仕事が上達するよう祈願することが極めて有益である。義務を尽くさず権利だけを主張したがる近代社会において殊に本行事は必要である。これを行うことによって、綿密、整理、整頓、質素、倹約等の道徳的訓練もなされる。(綜合生活機構)
低学年
躍動
1 落とし物の鉛筆を子どもに見せる。
体験
1 捨てられて顧みられない鉛筆の姿とノートの文字とを比べさせ、鉛筆への感激を覚えさせる。
2 鉛筆使用上の訓練を行う。修身「物を大事に」
3 鉛筆供養の相談会を開く。
324 4 鉛筆供養の実施
開展
1 「私の鉛筆」という題で綴り方を作らせる。
2 鉛筆の値段を調べ、算術をする。
生活統制
〇環境 万霊塔(万霊を供養する塔)、掲示教育
〇関連素材 (1)修身「物を大事に」
中学年
躍動
1 一本の鉛筆ができるまでにはどんな人の努力を要するか。
体験
1 鉛筆のできるまでの過程を話してやる。
2 一本の鉛筆にはどのくらいの生命力があるか。今年になってから何本使ったか。
3 鉛筆供養の相談会 自治会による。
325 4 鉛筆供養の実施
開展
1 今日から鉛筆の生命調査を始める。一本の鉛筆が何日使えるか。
〇環境 万霊塔、掲示教育
〇関連素材 (3)修身「恩を忘れるな」
高学年
躍動
1 2月8日の針供養を生活暦によって知る。
体験
1 針供養
イ、祭壇の設置 講堂に祭壇を設置し、祭壇に、豆腐に刺した折針や錆びた針等。こんにゃくや小豆などを供える。
ロ、祭式順序 敬礼、祭式の辞、照明、感謝の辞、針に関する訓話、一同敬礼、式を閉じる言葉。
ハ、針埋め(匿(かく)す)式 蘇鉄の木のそばに埋葬する。蘇鉄がない場合は万霊塔やその他のそばに埋葬する。
2 廃物利用技芸展覧会
326 開展
1 万霊塔または埋葬場に対して毎朝交代で水やお花をあげる。
〇環境 各種針の見本、掲示教育
〇関連素材 (5)修身「倹約」
節分
指標 健康でまめな身体を育むことを神仏に祈り、「心の悪疫・悪鬼」をも追い払う、則ち、旧年越の日に当たり、一年中の穢れを除き、新しく清くまめな心を打ち立てることを主眼とし、この行事を通して「国民精神」を涵養し、更に季節に関する観念の養成にも資する。(綜合生活機構)
低学年
躍動
1 二月の生活暦を作成することにより、豆まきを知らせる。
体験
327 1 年越祭、豆まき、厄払いのお話をする。
2 豆まき 学級内から年男を選んで豆を撒かせる。
3 心の鬼を追い払う。 自分の欠点や直したいことを浄書し、それをまめにうつして四辻に置いて来させる。
4 お家で行う豆まきの行事を観察してくる。
開展
1 手工 鬼の面や福の面を作る。
2 算術 字入りの年金グラフ。(意味不明)
3 読方 (2)「豆まき」、(1)補充文
生活統制
〇環境 豆まきの行事を掲示する。
〇関連素材 (1)修身「お父さん、お母さん、兄弟」、(2)読方「豆まき」
中学年
328 躍動
1 暦の「節分」や「立春」に目をつけさせ、疑問を持たせる。
体験
1 節分の意義 季節の分かれ目、つまり冬と春との分かれ目である。昔は季節の変わり目を全て節分と言った。
2 豆まきの行事 健康な身体と日本精神の獲得。「山中の鬼を破るは易く、心中の鬼を破るは難し」
3 節分に用いる品物を調べる。
イ、ザル 鬼がザルの目を数える間に夜が明ける。
ロ、柊(ひいらぎ)は椿、榎(えのき)、楸(ひさぎ)とともに命の木である。
開展
1 手工 豆まきの場面 ボール紙細工。共同制作。
〇環境 掲示教育
〇関連素材 (4)理科「春分」
高学年
躍動
329 1 新聞や電車内の広告などで節分を知らせる。
体験
1 節分を文化史的に取り扱う。 追儺(だ、おにやらい、文武天皇の慶雲2年、疫病や飢饉が起こり、僧行基が追儺式を行おうと奏上し、翌年3年12月3日、追儺式を挙行した。)
2 節分の物事について。 イ、豆――魔滅 ロ、イワシ、ひいらぎ(聞鼻、かぐはな*)という悪魔を追い払うため。
*聞鼻、嗅鼻(かぐはな)は、地獄の閻魔大王に亡者の行状を報告する鬼。
3 豆まき 家庭の行をよく観察させ、「国民行」としての様式を訓練させる。
開展
1 心の鬼を追い払ったことについての反省会を開催。
〇環境 掲示教育
〇関連素材 (5)国史「聖武天皇」、理科「冬至」、(6)読方「暦の話」
満洲帝国成立記念日(3月1日)
指標 友邦満洲国の理解を深めるとともに、満州国の平和発展に協力し、東洋平和の実を挙げることを行事の主眼とする。(綜合生活機構)
330 低学年
躍動
1 生活絵暦によって3月1日の満洲記念日を認知させる。
2 行事掲示板によってその日の内容を知らせる。
体験
1 朝会時の全校訓話によって満洲(国)成立についての話をする。
2 学校で満洲についての簡単な話をする。
3 満洲国旗の製作 イ、満洲国旗を示す ロ、国旗の内容(意味)について説明 ハ、画く作業 ニ、画いた国旗を装飾する。
開展
1 祝賀誕生会を開催する。3月の誕生者の祝賀も兼ねる。
生活統制
331 〇環境 日満両国旗、満州国地図。
〇関連素材 (1)修身「兄弟」、(2)修身「兄弟仲良く」
中学年
躍動
1 3月の生活暦作成の算術によって3月1日の満洲帝政記念日を認知させる。
2 掲示教育によってその内容を理解させる。
体験
1 朝会時の全校訓話に参列する。
2 学級に於いて満洲国の成立・沿革について訓話する。
3 満洲国旗の意味を指導する。
4 蘭を栽培する。 イ、日満一徳一心*の教育施設として、蘭の栽培を計画させる。 ロ、開花時に品評会を行い、鑑賞会を開催し、(蘭の花を)満州国に送る。
*一徳一心とは大勢の人が共通の利益のために心を一つにして団結すること。
開展
332 1 祝賀誕生会 3月生まれの誕生会を開催。
〇環境 満州国の地図、祝賀会場に日満両国旗を掲飾。
〇関連素材 (3)修身「協同」、(4)修身「兄弟」、「国歌」
高学年
躍動
1 自治会によって一徳一心の計画を立てる。
体験
1 満州国成立の歴史について
イ、昭和6年9月18日、満州事変勃発
ロ、昭和7年3月1日、満州国成立
ハ、昭和7年3月9日、建国式挙行。元清朝の溥儀が執政となる。
ニ、昭和7年9月15日、満州国承認。
ホ、昭和8年3月27日、国際連盟脱退。
へ、昭和9年3月1日、帝政実施。
2 満洲国の地理の研究 イ、満洲(国)地理の大要 ロ、日満一徳一心の真意を認識する。
3 現時の国際情勢と満州国の地位。
333 開展
1 満州国児童との成績交換
〇環境 満州国(に関する)各種絵画、産業統計等。
〇関連素材 (5)修身「兄弟」、(6)地理「満州」
雛祭
指標 家庭的雰囲気の中で「日本女性として」純真な情操陶冶をなす。(綜合生活機構)
低学年
躍動
1 「もういくつ寝るとお節句」 算術を実生活に当てはめて行う。
体験
1 雛祭りの生活体験を発表させる。
2 空き箱や机で雛壇をつくる。
334 3 折り紙や切り抜きで雛をつくる。
4 自分たちが作った雛様の前で童話、唱歌、踊りなどの小学芸会を開く。
5 希望する女子をお雛様にして各位置につけ、他の児童に供物を供えさせ、童話や唱歌を雛様になった子供に(対して)順番に歌わせる。
開展
1 補充文(1)「雛祭り」、(2)「雛祭り」の読方学習をする。
2 絵日記によって雛祭りを整理する。
生活統制
〇環境 掲示教育、菱餅などの供物。
〇関連素材 (2)読方「雛祭り」
中学年
躍動
1 生活暦による雛祭りの認知。
体験
335 1 雛の製作。葉書雛。
2 飾り方 上段に内裏雛、次段に官女、五人囃、随臣の順。供物は桃酒、菱餅、菓子等。
3 雛祭り 学級または同学年の女子が同学年の男子を招待する。祭の順序は、入場、敬礼、供物(代表児童)、祭辞(代表児童)、雛祭りの唱歌、敬礼。
4 雛祭りの終了後、お話、歌、手品等の余興を家庭的和やかさの中で行う。
開展
1 綴り方によって雛祭生活の統整をする。
〇環境 低学年に準ずる。
〇関連素材 (3)書き方「雛祭り」「桃」「白酒」
高学年
躍動
1 お節句について研究する。
336 体験
1 五節句 人日(じんじつ、1月1日)、上己(じょうし、3月3日)、端午(5月5日)、七夕(7月7日)、重陽(ちょうよう、9月9日、陽数の極であるところの9が重なる)
2 ひなの名義 イ、小さくて可愛らしい――雛形人形。 ロ、雛は鳥の子で、「ひ」と鳴くから、「ヒヨコヒナ」と言う。 ハ、雛鳥、雛鶴の誉め言葉。(意味不明) ニ、少彦名(すくなびこな、少名毘古那神)の幼の御名の略。(意味不明)
3 雛祭りの歴史――最初は雛様遊びの紙人形だったが、それが人間に変わって災厄を引き受けるという宗教と合体して今日に至る。
4 3月3日の供物――草餅、白酒(桃の赤に対する、赤と白とで日と月を祭る)、桃((桃の木は)燃実(もゆみ)でかつ陽木で、陰気を払う霊木)、はまぐり(幾万あっても己自身の蓋でなければ合わない。貞操を意味する。)
337 陸軍記念日(1905年3月10日、日露戦争の奉天戦で勝利したことを記念し、1906年1月に制定された。)
指標 祖先の忠勇に感謝させるとともに、今後国家を守護すべき忠勇愛国精神を鼓舞する。(綜合生活機構)
低学年
躍動
1 行事暦によって3月10日の陸軍日を知らせる。
体験
1 陸軍記念日のお話。修身と聞き方。
2 戦争の絵図を作成する。図画と綴り方。
3 模擬奉天戦。体操と遊戯。
4 忠魂碑に対して敬礼。
開展
338 1 3月10日にした遊びの調査。学校でした遊びとお家でした遊びを調べる。
2 出征兵に慰問の手紙を書いて送る。
生活統制
〇環境 大山大将や乃木大将等の御写真、日本地理。
〇関連素材 (1)修身「忠義」、読方「桃太郎」(鬼退治)、(2)修身「忠義」
*大山大将 大山巌1842—1916、陸軍軍人、薩摩出身。
中学年
躍動
1 生活暦によって3月10日の陸軍日を知らせる。
体験
1 掲示教育によって記念日の内容を知らせる。
2 日露大戦の絵ばなし。修身の時間を利用する。
3 忠魂碑への敬礼。祖先の殉国者に対して感謝・感激させる。
4 綴り方「日本の兵隊」
339 5 手工の「日露戦争」の紙芝居を製作し、実演する。
開展
1 郷土の戦死者の墓参行事 日の丸弁当持参、線香やお花をあげる。
2 記念帳の作製 陸軍記念日の実施記録や綴り方の作品などを一括して記念帳を作成し、整理保存する。
〇環境 写真、絵葉書、絵画
〇関連素材 (3)修身「忠君愛国」、読方「東郷元帥」*、(6)読方「乃木大将の幼年時代」
*東郷平八郎が率いる連合艦隊は、1905年明治38年5月27日、バルチック艦隊を壊滅させた。
高学年
躍動
1 (陸軍)記念日を中心として記念日学習の生活計画を立てる。
体験
1 実戦談 日露戦役従軍戦士を郷土の中に求め、その労をねぎらう。
2 児童の研究発表 イ、日露戦争に関するもの ロ、陸軍に関する各種研究
340 開展
1 郷土殉国祭 殉国者の調査、墓の掃除、参拝。
2 夜間行事 氏神、寺院その他精神力の陶冶と身体練磨に適する場所。
〇参考 満洲軍総司令官 大山元帥
総参謀長 児玉大将
最右翼 鴨緑江軍 川村大将
右翼 第一軍 黒木大将
中央 第四軍 野津大将
左翼 第二軍 奥 大将
最左翼 第三軍 乃木大将
春季皇霊祭(春分の日)
指標 彼岸(春分の日)を中心として行われる国民的生活を観照させることにより、国民的情操の陶冶を図り、特に惟神(かんながら)の大道である報恩の精神を養い、行ぜしめる。(綜合生活機構)
341 低学年
躍動
1 カレンダー学習によって旗日を知らせる。
2 掲示学習によってそれがどういう日かを知らせ、研究の第一歩とする。
体験
1 当日の生活――国家日の訓練。 イ、早朝起床、自分の寝巻の始末、 ロ、冷水で洗面、身なりを正す。 ハ、神棚、仏壇に礼拝。 ニ、和やかな食事。父母から今日のいわれを聞く。――(その前に)父兄の教育が必要である。 ホ、(父母から)お家の祖先のお話を聞き、それを絵日記に書いておく。
開展
1 翌日絵日記を中心として当日の生活の反省会を開く。
342 2 彼岸中に墓参に行く。――心構えと動作の訓練。
生活統制
〇環境 掲示教育
〇関連素材 (2)修身「祖先を尊べ」「年寄りを敬え」
中学年
躍動
1 生活暦によって春季皇霊祭を知らせる。
2 掲示学習によってその内容を理解させる。
体験
1 国家日の生活――早朝起床、寝具の始末、歯磨、洗面、服装整美、朝食。
2 父母と共にお家の墓参りに行く。
3 級友中の死亡者の墓参りも行う。
開展
1 彼岸中に孝行日誌をつけさせ、終わりの日にその反省会を開く。
343 2 祖先奉仕の生活を今後どうすべきかについて論文を書く。
〇環境 掲示教育
〇関連素材 修身「祝日」「大祭日」
高学年
躍動
1 行事暦によって春の彼岸を知らせる。
体験
1 修身によって彼岸を文化史的・道徳的に扱う。
2 理科で春分の科学的考察を行うと共に、それと文化史的内容とを関連づける。
3 当日、国家日の生活をさせる。
4 彼岸中に、亡くなった級友の慰霊祭を行う。 イ、講堂や校庭に祭壇を設ける。 ロ、一同入場、敬礼、降神、献餞(饌)、慰霊の辞、玉串礼拝、昇神、撤饌、敬礼、一同退場。
開展
344 1 自治団を中心として墓地の清掃――放課後または登校前。
2 先祖の命日の調査。
3 学校内に慰霊塔をつくるがよい。
〇関連素材 (6)修身「祖先と家」
人篇 各月の生活行
347 1 四月の生活行
一、四月の指導精神
感想 2023年1月19日(木) 自分の物や学校の物などない、全ては天皇の物だ。アジアにおける侵略戦争のために命を天皇に捧げよと憚りなく言う図々しさ。そして自由主義の思想を抱く者を討伐すべき匪賊と見なす極めて挑発的な文章である。悲しいかな、これがほんのちょっと前の日本人だったのだね。
1 若さの生活行進譜
莞爾(かんじ、にっこり微笑んでいる)と咲き揃う大和桜、大宇宙を小さしと叫ぶ小鳥――四月の空は晴れ渡り、富嶽(ふがく、富士山)は霊姿を四界に誇る。路傍の石を蹴り上げて萌え出る強き大和草。――ランドセルの背にも国策代用品(品質劣化か)の新入生――四月の新学期はアジアの黎明と共に明け始める。総てが若さだ。四月の生活行はアジアの若さから!
『大東亜建設の聖業に謹(つつし)んで参加し奉る』のだ。『アジア人のアジア化は吾らの手によって』――世界遍照の皇国はこれと共に進む。学校・学級経営の進軍譜!
四月こそ皇国百年の国是(国全体が是と認めた施政方針)を脳裏に刻明し、それを学校の訓育方針と解し、自己の生活是として把握しなければならない。国是即学校是即生活是でなければならない。この三つが等号で結合されることである。ここに国策躬行(身で行う。実践)の日本生活行の特徴が輝きいずる。
348 2 生命奉還の帰依君神師
世界遍照の大国是を実現する進軍譜の調べは、生命奉還である。教育は、皇祖神に帰一する帰依神、大君(天皇)に帰一する帰依現人神、師(先生)に帰一する帰依師という随順の精神から始まる。自己の生命を帰依君神師にすることができて初めて教育道があり得る。
明治の御維新は大政奉還と版籍奉還とから成立した。昭和維新は生命奉還と経済奉還とから成立する。――これは、私一人の考えではなく、国論を試みる幾多の「国士」の言であり、その実践形態において昭和維新が展開されている現実的具体である真実の証拠である。(文章の乱れ)
入学の始めや学期の初めである四月は、素直に師の命令に順ずる態度の陶冶が極めて必要である。自分の命は陛下からお預かり申している大切な生命であると信ずればこそ、体位の向上もあり、心身の鍛錬もあり、戦地での戦死は大君に(生命を)奉還し奉る最後の厳粛な事実の場である。
349 3 経済奉還の物心総動員
私の学校、私の教科書、…このような物意識を捨てさせることだ。私の物、誰々の物、そんな物は一つもないはずだ。何もかも皆陛下の大御宝である。それを恭しくもお預かり申しているに過ぎない。
いかにそれをお預かり申すべきか。――全ての物を生かし通さねばならない日本精神の姿が窺われて面白い。それと同時に大君や国家の必要に応じて、何時如何なる場所でも奉還し奉る用意がされてくる。
以上四月の指導精神として挙げたものは、生活行一切に通ずる大動脈であるから、各月の実践でも脈打たせなければならないのだが、殊に四月は然りである。
『支那匪賊の討伐は易く、内地匪賊――国内自由主義思想生活者――の討伐は難し』大死一番、教育戦線の華と散るという覚悟を要する。
350 二、四月の生活行機構
生活是 八紘一宇
生活行相
・中心帰一 全体と部分との本質を凝視し、一切の対立・分離を神・君・親・師・長上に生かし結ぶ。
・億兆一心 中心と全体とに照らして、一切の存在事実(コト)をマコトの意義・価値に生かし結ぶ。(意味不明)
・滅私奉公 中心と全体のために、私を滅した本来の真面目を発揮して(自分の)持ち場を固める部分の没我顕真活動
*以下、生活題目、生活素材、素材精神、運動施設、備考の順に述べられている。元は表になっていた。「九月の生活行機構」435の表を参照されたい。
・学年始(生活題目)
一、始業式(生活素材) 1八紘一宇の大理想を認知する 2生命奉還・経済奉還の姿勢を練磨する(素材精神)。挙式・訓話(運転施設)。1日、5日(備考)
二、入学式 1入営精神の体得 2帰依師の随順精神の培養。挙式・訓話。1日、5日
三、役員選挙 1新日本の公民訓練 2人物徴用の精神に目覚めて 訓話・選挙。上旬
・花祭
一、花祭 1釈迦精神の体得 2世界偏照の気力練磨。 花祭会。8日
二、観桜会 1自然美を愛する日本精神の体得。 観桜会。 上旬
三、鳥類愛護デー 1「山川草木之皆仏性」という仏思想の涵養。 訓話。 12日
・身体検査
一、身体検査 1体位向上の国家的意義の自覚。 訓話・検査。 中旬
二、種痘 1科学思想の涵養 2体位向上の国家的意義の自覚。 訓話・種痘。 中旬
三、結核予防デー 1体位向上の国家的意義の自覚。 訓話・日光消毒 27日
・天長節
一、天長節 1中心帰一思想、生命奉還の誓い。 挙式・訓話。 29日
二、靖国神社祭 1護国英霊への感謝感激 2生命奉還の誓い。 訓話・遥拝。 30日
351 三、四月の生活行実践
(一)学年始の生活訓練
(1)始業式 誓いを立てる始業式を行うべきである。子供は「八紘一宇」の聖業成就のために課程を学ぶのである。この大理想を把握させることが始業式の目的である。
先ず身を統制してから心を統制すべきである。道場や神前での始業式が望ましい。八紘一宇の聖業成就のために、生命奉還と経済奉還とを肚に統一し、明日からの修行に精進させる。知識を修得するのではなく、行を修得するのである。児童を東亜建設の若き戦士にすることである。
(2)入学式 陛下の大みたから(子ども)をお預かり申すための入学式である。場の構成に最善を尽くすべきである。白紙の新入生には第一印象が重大な意義を持つ。幼い3歳児は朝の父の神棚での奉祀行を見て、何心無く手を合わせて拍子を打つ。行の教育における力は大である。人の子の師として恥じない言語態度を行ずる師の君が尊く見える。
352 学校は聖なる道場である。師は尊厳な最高な人格者である。この観念を、いや信念を、若い子等にそれとはなしに醸成される場で与えることが最重要である。帰依師の随順性があるところにだけ教育は存在しうる。それは権力や物力で生み出されない。師の内なる光と熱とによってだけ湧出される。
今日教師は絶大な責任を感じる。父母が安心の信を以てその子を教師に託す。教師はその用意と決意を持つべきである。教師には身をもって陛下の赤子を育み奉る鉄の信念がなければならない。
(3)役員選挙
自由主義や民主思想に胚胎する選挙を今の時代に行うことは危険である。学級は「共同社会体」ではなく、親子(関係のように)統制された「兄弟自治団」であり、日本の家庭の延長であり、日本国家形態の源泉である。
353 級長は教師の精神に基づいて「学級家」を統率する家長である。級長「選定」について、以下の規格を必要とする。
一、級長たるべき資格 小学校令第一条が要求する日本人格を最大量具有する者であること。
(1)強固な生活信念 皇国土に生まれたことのありがたさへの感謝心を持ち、常に至誠一貫、中心帰一の方向性の中で、没我献身して学級・学校・皇国土の弥栄を信念しつつある者。
(2)健康度の大なること イ、身体強健で病気欠席の心配のない者。 ロ、遅刻、早退、事故欠等の少ない者。
(3)人格者であること イ、志操堅固 ロ、誠実(真面目) ハ、勤勉 ニ、協調性に富む ホ、親切 へ、従順で師命遵守 ト、統率力(指導的才幹) チ、人柄良好 (こんな人はいない)
354 (4)学業優秀 学業に専心努力し、その成績が優秀で、他児のリーダーたり得る者。
二、級長の決定
(1)以上の規格に基く「選挙」の結果を基とし、
(2)職員会議の議決を経て、
(3)学校長がこれを任命する。
三、級長「選挙」の生活において人生哲学を体得させる。
(1)志、観、考、行、証、信の生活段階による態度の陶冶。*
*証056、行証(ぎょうしょう。仏語。修業と悟り)307
(2)新日本の公民訓練(「選挙」観、「選挙」方法等)
級長や副級長の他に選ばれるべき学級役員は、学校の職員分担と軌を一にしているが、それは組織運転上から妥当である。
355 (1)修養係 職員機構の訓練係に相当し、言語・動作その他人格の修養上に関する計画や実施の任に当たる。意志が強固で修養方面で努力している児童を選任するのがよい。
(2)学用具係 教具・学習具の準備や後始末など、学習進行上の原動力となる係である。職員機構の教授係に相当する。各教科に趣味をもつ児童を多方面的に選んでおくと便利である。
(3)学芸係 図画、手工、書方、綴方などの成績品の掲示や陳列、新聞切り抜きなど社会各方面の掲示教育など、学級宣伝者である。芸能科方面で趣味のある者、あるいは文学的趣味に長じている者が適任である。
(4)養生係 「学級家」の清潔、整頓、運動など、養護・衛生・体育方面に関する係であり、よく気の付く子、まめに働く子が適任である。
356 (5)修繕係 学校機構の校具係に相当し、カーテン、壁、腰掛、垣根、ノートなど物的修繕の任に当たる。手工・裁縫等、芸能科に趣味をもつ児童が適任である。
(6)会計係 授業料、遠足費、共同購入会計など学級会計事務を取り扱う。算術や珠算に趣味を持つ緻密で事務家肌の児童が適任である。
以上の選定は、彼らの自治の建前から選挙も必要であるかもしれないが、(ここで筆者ははっきりとそうは言っていない。非文になっている。)現在の日本国家の情勢や将来の国家の状態から見ると、教師と正副級長が相談してそれぞれを選任し、各々にその位置を定めることによって、人物「徴用」の精神に目覚めさせる必要がある。わがままは許してはいけない。仕事や係をやらせていただいて誠に有難いという感謝心を以てその任に当たらせるという全体主義的な意味や精神を十分納得させなければならない。(任命の押し付けを甘受せよ)
感想 2023年1月22日(日) 昨日読んだ部分についてだが、役員選挙で、級長(・副級長)は命令で決定し、他の役員も担任と級長・副級長が相談して指名するという。1925年の普通選挙の精神と矛盾することをここでは推奨している。
(二)花祭中心の生活訓練
(1)花祭
「昔も昔も三千年、花咲き匂う春八日
響き渡った一声は、天にも地にも我一人
立派な国に生まれ出で富も位もありながら
一人お城を抜け出でて山に籠りし十二年
円い世界の真中で、教の門を打ち開き
乾ける人に施した甘露の水は限りなし
幾年たっても変わらずに咲いたままなる法の花
きれいな一つを胸にさし、我等も負けずに励みましょう」
358 大慈大悲の世界遍照の原理を平易に説いた大聖釈迦の精神を体得させ、この地上を刻一刻浄化しようとする気力と実践を培うことが花祭会の指導精神である。
幼手に捧げる一枝の花にも愛の甘露は温みて尊い生命となる。甘茶や甘酒を飲ませてやるがよい。
(2)観桜会 親自然のいい機会である。パッと咲きパッと潔く散る桜花の大和男子性を彼ら児童の生命に触れさせるがよい。俳句会、和歌会、詩会などを通して綴り方の生活学習ができる。自然の持つ生命をつかませるのによい。自然(桜)は四月の温みが来れば必ず咲き、その美をあらわす。花は紅、柳は緑。子等のそれぞれが持つ個性(オリジナル)を発現させる一つの動機とさせる。
(3)鳥類愛護デー
359 「山川草木之皆仏性あり」という花祭における仏の精神、つまり(仏の)大慈大悲(が)皆のものに愛の甘露を降り注ぐという精神を涵養する。ホトケ心になるとは我が心の不自由がホドケル(言葉遊び)ことである。これを解脱ともいう。我が心のシバリをホドケることができた人を仏という。仏とは釈迦御一人を指すだけでなく、また死んだ我らの祖先の多くを指すものでもなく、現在に生きつつある子等自身の中にホトケを生み出させるのである。
(三)身体検査中心の生活訓練
(1)身体検査 身体検査の目的は、面倒な統計を算出するためでも、算術の作業化を図るためでもなく、近代日本の武力戦に役立ちうる錬成された身体の必要に迫られているからである。病気の治療個所の早期発見と学校教育への指針のためである。身長が昨年より小さくなっていたり、体重が軽くなっていたりする奇怪な現象の出現は夢にもあってはならない。
360 検査終了後はそれに基づいた学級や学校の経営が行われなければならない。
(2)種痘 科学の父ジェンナーの偉大な人格に対して敬虔な念を傾けさせるとともに、科学振興の現代的意義を納得できるように(教員が児童に)述べるのがよい。
(3)結核予防デー 亡国病を撲滅せよ。恐ろしい病だ。患者のそばにも行けない。肺結核の家の子弟を仲間外れにしてしまう。そういう非科学的な人間を見逃してはならない。科学の力を信じさせ、その予防に努めさせ、その治療に精力を傾倒させるがよい。衛生講話とともに日光消毒をさせるべきだ。痰やつばの始末にも心すべきである。
(四)国家日における生活訓練
(1)天長節 中心帰一と生命奉還の誓いをさせ、その実践行道を透徹させるためには天長節はこよなき機会である。儀式は最上級の厳粛さを保って行われるべきである。まばたき一つ、咳払い一つにも心を払わねばならない。鍛錬教育の最も良い機会である。現代日本で欠けているものは鍛錬教育である。
361 荒木貞夫前文相は武道研究会員に対する講演の中で次のように強調された。
「教育の根本を忘れるな。何を目標とするのか。強制的・権力的ではない創造鍛錬の教育である。日本の教育は世界中の苦しみを一人で背負っていく教育である。苦しませる教育は人や自己をつくる。奮闘努力の観念基礎が、日本の学問の本質である。人が神になるまで奮闘することである。それには自らが苦しみを見つけて自らに与えるのがよい。使って太くせよ。教えない教えを悟らせるのだ。天賦に向かって障害を打破することが我々の任務である。
日本の理想を見つめよ。何が日本の理想かを知らない者が多い。日本の理想は全体主義や共産主義、民主主義以外のものでなければならないのに、うっかりするとこれらのどれかにぐらついている。日本の理想の実現のためには武力が必要だ。精神力、経済力、文化力などあらゆる力を総合した武力である。」
362 天長の佳節に当たって以上の荒木前文相の精神を説き聞かせ、儀式の中に行ぜさせるがよい。
(2)靖国神社祭 父に会いたくば靖国神社に来たれ。護国の英霊に対して感謝感激の誠をいたし、併せて生命奉還の誓いを襟を正してなさしめるがよい。
靖国神社遥拝、護国神社への参拝等もその地の状況に応じて行い、目的とするところの生命奉還の実を十二分に上げるよう心掛けねばならない。
2 五月の生活行
一、五月の指導精神
1 なりきることの生活禅
生命奉還と経済奉還という四月の生活理念は、相当に根強く植え付けられてきたと思う。頭の訓練や知識としての把握を行に実践させることが五月の生活行の一大目標である。あれもよい、これもよい、この方がよいなどという生活一般の道徳知は一年生でも知っているが、高等科の生徒でさえできない生活が多い。頭が進めば進むほど行がそれに伴わない反比例的関係を生む。中学卒業生のふらふらを見よ。大学卒業生の高等ルンペンを見よ。頭では知りすぎていても、いざと言った場合にそれになり切ることができない。恥ずかしい、誰かが何か言うだろう、みっともない、いやだ、面倒だ、つまらない――いつしかこんな赤の思想にかせていて、なかなかその労作の中に自分を没入して物心一如のなり切ることができない。日本の軍隊が強いのは、仕事の中になり切ることから始めるからである。なり切ることとは自分の生命をその物に一切打ち任すことである。修養団生活*や道場生活、禅堂生活など、全て人間育成の教育は、なり切ることから始まる。禅生活とはなり切ることである。農夫が田打ちに自我を集中して余念なく働く、学生が勉強に余念なく勤める。本が生徒か、生徒が本か。禅はいたるところにあり、いたるところで要求される。生活禅は五月の根本是である。
364 2 青少年学徒に賜りたる詔勅精神の体得
昭和14年1939年5月22日、全国青少年学徒に賜りたる御勅語の精神を体得させることは、日本全国のすべての学校において必要な五月の生活行の根本精神である。教育勅語が日本全国民の道であるとすれば、これは日本学徒の日常生活の中に生かして行くべき聖訓である。
単に5月22日の記念日に奉読式を挙行すること以上に、日常百般の生活事象の中で勅語の御聖旨を体得させるように訓練することが極めて必要である。
そしてその実践において必要なことは、前述の通り、なり切ることの生活訓練である。なり切ることによって「気節を尚び、廉恥を重んずる」ことも可能であり、思索を精にし、「識見を長ずる」こともできるのである。
青少年学徒に下し賜りたる勅語
国本(国家の基本)に培い、国力を養い、以て国家隆昌の気運を永世に維持せんとする任は極めて重く、その道は甚だ遠い。而してその任は実に繋(かか)りて汝等青少年学徒の双肩にあり。汝等は気節を尚び、廉恥を重んじ、古今の史実に稽(かんが)え、中外の事勢に鑒(かんが)み、その識見を長じ、執るところ中を失わず(中庸)、嚮(むか)う所正を謬らず、各その本分を恪守し、文を修め、武を練り、質実剛健の気風を振励し、以て負荷の大任を全くすることを期せよ。
昭和14年5月22日
感想 勅語の文体の特徴
・漢文調を基本とし、「てにをは」をできるだけ使わない。
・普段使わない特異な漢字を使用。記紀の漢文からの借用か。
・偉ぶって見下した文体。
366 二、五月の生活行機構
(生活是と生活行相とは4月と同じ。以下4月と同様に、生活題目、生活素材、素材精神、運転施設、備考(実施日)の順で説明されている。)
生活題目 節句
生活素材 一、鯉のぼり 二、若葉 三、武者人形
素材精神 1若さの突進、絶えざる向上・進歩 2武力戦への総構え、体位向上、武士道精神の涵養
運転施設 鯉のぼりの掲揚、端午会
備考 1日~5日
生活題目 学制頒布
生活素材 一、学制令 二、学校
素材精神 1明治天皇の大御心に感謝し奉る 2学習の生活態度訓練
運転施設 全校訓話、無言学習
備考 8日
生活題目 青少年学徒に下し賜りたる勅語
生活素材 一、勅語
素材精神 1御勅語の精神を身に受け入れる確把と生活の更新
運転施設 勅語奉読式、訓話、生活実践
備考 22日
生活題目 海軍記念日
生活素材 一、楠公祭 二、海軍記念日 三、東郷祭
素材精神 1海軍記念日を中心として日本の武士道精神を涵養する
運転施設 挙式、訓話
備考 25日、27日、30日
367 三、五月の生活行実践
(一)節句中心の生活訓練(筆者の敵意に満ちた反共・反自由主義の精神が露骨に現れている文章である)
万山千岳皆緑に包まれ、希望の流れの絶えざる村里の空に、風をはらんで踊りに踊る鯉のぼりの姿こそ、偽らざる生きるものの真の活動である。自分が受け持つ子の一人一人をつぶさに見つめてやるがよい。五月の若緑を内にしていない子等を、思い切って緑の草原にまた樹下にそして小川に放つがよい。
男の節句だ。男の心を大和の男子にするために良いはなむけの歌を一首次に挙げる。
男の節句
庭の橘 軒端の菖蒲
木々の初夏 若葉の香り
五月五日は 男の節句
勇ましいのは 鯉の吹き流し
鯉の吹き流し
風が吹いてきたよ 天へ上るなら
吹かれて登れ 空を吹き抜く
風の子は男 空も青々
からりと晴れて
鯉の吹き流し 天へ上れ
(少年倶楽部)
感想 男尊女卑の思想が見え見えである。
368 武道大会、小運動会、強行遠足等、心身の鍛錬を目標とする行事を生活の中に織り込んで欲しい。これらの心身の鍛錬(の目的)は、いずれも大君の御ために役立ちうる鋼の身をつくることであり、気節を尊び、廉恥を重んじる日本武士道精神の体得でなければならない。日本武士道の華は「主が辱められれば、臣は身をもってこれに当たる」という気魄である。(忠臣蔵の精神)武道大会やその他の五月五日の端午会を期して行われるべき尚武の遊戯(の教育)は、その技術の面白さよりも、精神の高尚や態度訓練の重視という観点で(教育が)進められねばならない。
369 尚武運動でなり切ることのできない子供は、笑い、歯を出し、ふざけ、間が抜け、わき見をし、声を出すなどの「気違いじみた表現」をともすればしがちだ。こうした子どもらには「おまえ達は知らず知らずの間に敵に味方しているのであるぞ」と諭してやるがよい。日本の防空演習で燈火を管制しない奴は敵のスパイだと私は言いたい。無言でしかも真実の敵だ。日本の自由主義や赤の思想はこうしたところにも潜んでいる。真の赤は怖くない。警察や検事の目が光っているからである。目に見えない赤は怖い。教育において心がけるべきことは、このような赤を根こそぎに追放・撃滅することである。(これは下級教師に対する遠回しの強制だね)
(二) 学制頒布中心の生活訓練(1872年9月4日、明治5年8月2日、学制公布)
感想 非文が目立つ。それは本文が感情的で主観的だからだろう。
「おこたらず学びおほせて いにしへの
人にはぢざる 人とならなむ」
(この歌は明治天皇の作らしい。)明治大帝の大御心のありがたさに感涙させることこそ「全部の生命」である。(意味不明)(その)ありがたさが真に分かった時、「我が身はこれ陛下のもの(であり)、神から受け継いだ知の実を、徳の花を、無上に育てん」という発奮が湧出してくる。それには理念を与えるための講話も必要である。
370 学校は知識を授ける所ではない。しかし知識を授ける所である。(論理矛盾)今の教育は知育過重ではない。これが大国民の卵かと思われるほど知識がない。知育は箱詰めの知識ではなく、思索を精にする活知識である。これが現代日本教育で要求される知育である。
教育コースは多元ではいけない。一元的でなければならない。修身、読方、算術総てに通じる求道過程が樹立され、それが道として会得されなければならない。教科・教材の綜合・統合も結構であるが、それを子供へ移す方法の道の研究が足りない。これが一元的になっていないと、学習態度の訓練は成功しない。学制頒布の記念日を卜して、この方面の教師による研究と子供の躾の糸口に注意が払われれば幸いである。
また今の日本の教室はあまりに空元気に走り、思索を精にすることが足りない。ある日本教室での理数科の学習に際して、ハイハイと他児を威圧する態度において自由主義を極度に発揮していた。理数科の場合は特に思索を精にして、科学的生命の把握に努めなければならない。思索を精にしてその後で活動に移すのである。そうでないと本物のものができない。
371 日本人の性質(からして)、学問の研究方法では思索的方法が最も適している。徒に西洋流の社会性だとか活動性だとかにとらわれてはならない。
(三)青少年学徒に下し賜りたる勅語の聖旨奉体訓練
(1)日本人の生きる使命に目覚めて
如何に生きるべきかは、如何に死すべきかを考えることである。これは誰もが知っていて、自己の栄位と富貴を願っている。
「国本に培い国力を養い、以て国家隆昌の気運を永世に維持せん…」この大任を自覚させるための生活訓練が焦眉の急務である。子供に「何のために毎日勉強するのか」と尋ねたとき、全ての学童が前述の御聖旨の言葉を答えることができるように、生命訓練をしておかなければならない。
(2)「気節を尚び廉恥を重んずる」という気風が地に落ちている。
372 鰻や蛇やミミズのように世の中をうねりくねってうまく過ごして行く人間を作ってはならない。環境に如何に順応すべきかを考えるデューイの実用主義教育では、「気節を尚び、廉恥を重んずる」気風など薬にしたくないだろう。日本の教育や生活訓練の核心は、子供の上にも、方法の上にも、生活理念(目標)の上にもなく、教師の気風如何に帰一する。「気風を尚び、廉恥を重んずる」教師は誰かと問うたとき、それを指示する(それに答える)ことが難しいのが、日本教育界の過去と現在の現実である。
教育界の職員組織が悪い。第一に、師範教育の欠点である。師範教育が軟弱である。陸軍士官学校のような師道士官学校を設け、徹底した青年教育士官を養成しないと、日本の教育界で「気節を尚び廉恥を重んずる」気風は生まれないだろう。
今一つは、職員組織が同志の血盟組織になっていないことである。辞令一本で鰻や蛇、ミミズのような教師がやってくるが、これではいけない。各学校はその学校独自の教育信条を掲げ、その信条の旗の下に馳せ参じる者の中から、同志としての決意を披歴させ、血判を押させた上で、その学校の職員とする。そうでなければ教育の強力営為は夢である。如何に校長や一、二の教員が張り切っても、なまくらな自由主義的破壊性の教員が投ずる一挙一動が罪するところ甚大である。僧侶の修道生活、修養団への入団、右翼や左翼の何々団への入団にはそれぞれ規定があり、その規程を死守する前提で加盟できる組織になっている。そのために同志の結束は強固である。教育界もこの点を考えるべきである。
373 (3)「思索を精にし」の生活訓練
このことについては学制頒布のところで述べたが、これは現代日本教育の一大覚惺点であるので、繰り返して述べる。今日の学校教育で思索を精にする場や時があるのか。今日の学校生活は、登校後直ちに運動、ラジオのガヤガヤした騒音による体操、教室への行進、教室へ入ってやれやれと思いきや、師の、子の上滑りな空莫な活動、回答、西洋式な談話を尚ぶ食事、おざなり式のガタガタ掃除…もう登校から下校迄寸分の余地もなく活動(真の?)で埋め尽くされている。子供の生活も教師のそれもそうである。
374 各学校は道場を設けなければならない。一日一回聖なる場に座らせて、思索にふけらせる。この態度心境は学習でも作業中でも活用され、生活の全面で思索が精にされ、識見が長じ、執るところ中を失わず、向かうところ正を誤まらないのである。
(四)「海軍記念日」を中心とした忠道の生活訓練
(1)楠公祭 「七度人間に生まれて国賊を滅ぼさん」と、弟正季と共に「国賊」討伐を敢行し、日本一の大忠臣であるという美名を後世久遠に輝かした大楠公の生活精神を、昭和の子供に植え込むことは最も緊要なことである。大楠公が逆賊討伐の直前に、僧侶からその道(方法)を聞き(聞いて悟った心境、つまり)、智で行かず、技で行かず、肚で行ったその心境(とは)、「切り結ぶ剣の下は地獄なり、入ってみよう、極楽もあり」(という心境であった。)なり切ることがどれほど必要であるかを悟らせ、生活のすべてにおいてなり切らせるのがよい。返事のはっきりできない子、舌を出す子、先生のそばへ来てもじもじしている子供、お辞儀を恥ずかしがる子供などは皆、なり切ることが不足しているのである。(度胸を据えて命を捨てろということらしい。)
375 (2)海軍記念日、東郷祭 沈黙・至誠の聖将東郷元帥こそ、青少年学徒に下し賜りたる勅語の御趣旨を最上に体現した英雄としてあげることが正しい。
「おろかなる 心をつくす 誠おば
みそなわしてよ 天つちの神」
*「みそなわす」は見るの尊敬語。
この至誠を受け持ちの子等のよい鏡として生活訓練にあたるがよい。
対馬海峡に現れた38隻の敵艦を如何に処理すべきか。「皇国の興廃、この一戦にあり。各員一層奮励努力せよ」という歴史的大信号を発した沈黙と思索の極致を十分味わせ、子等への良薬としたい。
この機に体位向上をはかり、武士道的方面の陶冶に心することも必要な施設である。忠魂碑参拝リレー、一夜鍛錬会、武道教育等を、本行事を中心として行えば、良い教材となる。
3 六月の生活行
376 一、六月の指導精神
感想 自然の真実なあり方を通して自分らしさを知ることが社会の発展に貢献することになるということらしい。これを日本国の独自性に発展させるための論拠とするらしい。
1 真実なるもの、自然に学べ
自然は真実である。麦、梨、稲などは時期を知っていて、時期になれば生長する。自然の真実を学ぶことは、人の真実を生む。偽装してはいけない。
2 花は紅、柳は緑
児童各自がもつ真実を最大量に具現する必要がある。
377 自分らしさを見つめ、それを育む。児童は自己の原形(オリジナル)を見つめ、それを育てる。教師は児童それぞれの原形を見つけてやる。
オリジナルのあるものは栄え、ない者は滅びる。社会はオリジナルの明らかなものを要求していて、そういう人によって社会は向上進展する。
378 二、六月の生活行機構
生活是と生活行相は前に同じ。
生活題目 緑化週間
生活素材 更衣
素材精神 1資源愛護、消費節約の訓練
運転施設 服装検閲
備考 1日
生活素材 緑化デー
素材精神 1親自然、自然に学ぶ訓練
運転施設 植樹、訓話
備考 上旬
生活素材 齲歯予防デー
素材精神 1齲歯予防を中心とした体位向上の訓練
運転施設 齲歯治療、歯磨体操
備考 4日
生活題目 時の記念日
生活素材 時の記念日
素材精神 1時間観念の養成、資源愛護 2時間厳守、時を生かす訓練
運転施設 早起き会、能率増進生活
備考 10日
生活素材 農繁休業
素材精神 1集団勤労奉仕の訓練 2時を生かす、能率増進の訓練
運転施設 集団勤労作業、家庭作業
備考 中下旬
生活題目 入梅
生活素材 入梅
素材精神 1梅雨の持つ生命の把握――自然の力、衛生の心得
運転施設 講話、梅雨研究
備考 11日、12日
生活素材 螟(めい)虫(ずいむし、稲などの茎を食う害虫)駆除
素材精神 1国家の害虫を駆除する心構え
運転施設 螟(めい)虫駆除
備考 中旬
生活素材 田植
素材精神 1生命の糧へ捧げる無上の奉仕と感謝
運転施設 田植
備考 下旬
生活題目 衛生週間
生活素材 夏至
素材精神 1科学的精神の涵養
運転施設 理科的継続作業
備考 22日
生活素材 大掃除
素材精神 1衛生思想の涵養 2校舎内外、道路、神社の清掃
運転施設 大掃除
備考 下旬
379 三、六月の生活行実践
(一)緑化週間を中心とした親自然の生活訓練
(1)更衣 6月になって気温が目立って上がる訳ではないが、6月1日を期して服装を整備することは大事なことである。
新しいものを買うことはいけない。帽子の日覆いや女子の帽子も、昨年のもので結構である。今の小学生には新しいものを誇りとする傾向がある。一高生はテカテカ帽と高下駄を誇りとするが、その古いものを愛して誇る精神を植え付けたい。自分の日覆いは入学以来のものであるという誇りを持たせるのがよい。新しいものを追う子供は「歴史性」を無視する子供であり、感心しない。
更衣を機会にどうすれば最も合理的で親自然の生活ができるのかを考えさせ、服装の近代的創案を研究させ、その展覧をすることは有意義である。発案の態度を涵養することは、現下日本の科学や芸術を通じて必要である。
(2)緑化デー 6月の親自然のよい具現は緑化である。緑の希望を持たせるものも緑化であり、清浄な空気を与えるのも緑化である。校庭の隅々を利用して緑化に努めるがよい。学校園に植樹してよい成果を与えるものは、南天、お茶、菊などである。農村では子供から集めるがよい。梅の木もよい記念樹となる。
380 緑を新しくつくるとともに、現存の緑を愛する生活訓練も必要である。神社仏閣や公園の清掃をして緑の美を一層増し、人の心を純化することは必要なことである。
(3)齲歯予防デー 日本の小学生の90何%が齲歯に侵されている。猫や犬には齲歯がない。齲歯は高等病の一つに違いない。文明病の一つに違いない。人間の生活をもっと獣の生活に近くする必要があるのではないか。歯科校医の治療も結構だが、それ以前に防止しておくべき手段はないか。根源を断った術を施さねばならない。
(二)時の記念日
「時はかる器は前にありながら
たゆみがちなり 人の心は」
381 (この)明治大帝の御聖旨に感涙しない者はいない。日本は今(支那)事変の最中にある。経済資源がないことを悲しむな。日本には経済資源や人的資源以上に貴い時間資源がある。(他国も同じでは)時間資源は過去・現在・未来を通じて無尽蔵である。時は金なり。まことに金言である。
「瞬間の浄化」(一瞬でも無駄にしないということか)ができる子は偉い。私たちは一息ごとに墓場に近づく。大事業家や天才は最もよく時を生かすことのできる人である。
働くことだけが時を生かすことではない。人間の一生の軽重はむしろ如何に休むかによって決定される。(意外)近代小学校の欠陥は如何に休むかという指導訓練をしていないか、それが生ぬるいかである。時を生かすことの必要性は知っていても、如何にそれを実行するかが大事である。教師がまず真剣に取り組むことである。一億一心の体当たりが必要である。(意味不明)
382 (2)農繁休業 自分の家の百姓仕事が忙しいからではなく、陛下へのお仕事をさせていただくと考えて農作業を手伝うべきである。国土の一部をお貸し願い、勤労の態度を練る。このような心的態度を児童に持たせてやることだ。徒に農繁休業をさせるのではなく、学校の農業と関連づけ、知と行とを一元化して行わせる。実際に農事に従事して生まれた問題は学校で研究させるのがよい。
生徒を集団にして今日は甲の家、明日は乙の家と、順次自治的に作業させることが望ましい。
(三)入梅中心の生活訓練
(1)入梅 6月11日や12日ごろになると、不思議と雨が降り出す。自然の神秘さや規則正しさに驚嘆する。自然の持つ偉大な力に頭を下げ、これをどう人間生活に利用するかを誰しも考える。雨のしずくに自然の生を見て、「花は紅、柳は緑」のオリジナルを、高次に発揚する感を高める。
日本人の生命の糧である米の元は入梅にある。梅雨期間中の降雨量の測定や、温度・湿度も測定させ、梅雨を科学的に研究し、その有難さを信頼させる。
383 (2)螟(めい)虫駆除 螟虫は国家の害虫である。陛下の国土を荒らす不届きな者である。国を思って螟虫駆除を切に望む。
子どもたちは自家の近くに行くと、慣れているせいか、父母が近くにいるせいか、とかく空威張りする。師の命を聞かないで、どんどん我が儘をやる子が多少いる。そういう子は思い切り懲らしめてやるがいい。時にはその家に行って父母の面前で懲らしめてやるのがいい。
金銭づくの螟虫駆除はいけない。何本取ればどれだけ賞を与えるとか、金銭の奴隷になるような生活訓練をしてはいけない。
(2)田植 学校での田植は郷土の範とならねばならない。第一に子供の心境態度が出来ているかを検するのがよい。作業服を身に着け、道具を正して神前に集まって心境を練り、その後で技術を授けるのがよい。わさわさしていては何もできない。それでは日本の田植を冒涜することはなはだしい。行としての田植は無言である。一本でも育てようとする親心、苗が縦横全体を通じてどう位置しているか、田植が終わった後で全体を見つめさせる訓練が必要である。各々の苗が互いに他を侵すことなく、十分に発育できる位置にあるかどうか、ごちゃごちゃしていて育つ見込みのない苗は、今のうちに取り除いたほうが親切である。
仕事が終わった後で全体を見て、部分と全体との関連を見させることは、どういう生活訓練でも必要である。
(四)衛生週間中心の生活訓練
(1)夏至 日の出、日没、昼夜の時間等を前後の日に渡って調査測定させる。夏至のもつ自然界の生命がよくわかる。
(2)大掃除 6月は梅雨の月で、伝染病の温床月である。学校内外の掃除はもちろん、神社仏閣、道場などの大掃除にも勇姿を現すのがよい。
梅の実を生で食べてはならないが、梅がもつ軍事上の生命、子供の生命を守る梅肉エキスなどについてよく話してやりたい。
385 4 七月の生活行
一、七月の指導精神
1 心頭滅却すれば火もまた涼し
暑いと根気がなくなり、作業活動が鈍る。意気地のない子供たちは悲鳴を上げ、教師でさえ弱音を吐く。これでは火花の散る勉強はできない。時間が経過すればやれやれとする。仕事をするのではなく仕事にさせられる。こんな時は道場で30分間凝念(精神の集中)をさせるのがよい。暑いという知的概念を取り去るのだ。定座し、数息観30までを5、6回やる。不動の修行だ。自分の肉体を火の中に入れ、暑いという観念を取り去る。そうすると暑さは汗となって体に涼味を覚える。心頭滅却すれば、火もまた涼しである。
386 2 仕事が忙しいのか、心が忙しいのか
7月は学期末の月である。取り残された行事が一度にやってくる。学習予定板を見ただけで悲鳴を上げる児童・教師が相当いる。不平を言う。仕事が忙しいと考えるのは怠惰の者の考え方である。仕事が忙しいのではなく、心が忙しいのである。仕事を自ら創造して行く態度が欲しい。そこには苦痛に仕える喜悦がある。数々の仕事を一つ一つ手際よく処理して行くことは痛快である。
仕事が多い時は自らの心を単純化し、組織立てるのだ。忙しい時にだけ真の実力が生み出される。仕事全体の見通しをつけ、計画を立て、それを一つ一つやってゆくのだ。
387 3 隻(せき)手の声*を聞け
*「隻手の声を聞く」とは禅宗における公案(課題)の一つで、両手ではなく隻手(片手)で打つ音を心耳で聞くことである。絶対の境地をいう。
「真の百姓には稲の育つ声が聞こえる」という。これは昔から言われている真理である。暑さをこらえている花壇の花の声、農園の茄子(なす)が雑草を取ってくれという声など、隻手の声が聞こえる者は修養が出来ている人である。これから出発した自然愛でなければ真実ではない。
4 泥中の蓮花
「何々すべからず」という理念的・形式的訓練は時代遅れだ。実際に泥中の蓮の花を見つめさせよ。自然と我と我が身を浮世から浄化すべく発奮する根源において諸事が行われる。日本人の生活訓練ではこのような根源の訓練が必要だ。
388 二、七月の生活行機構
生活是と生活行相は前に同じ。
生活題目 暑さ
生活素材 一、衣服
素材精神 1資源愛護・消費節約の精神の涵養 2保健衛生と作法の訓練
運転施設 服装検閲、訓話
備考 上旬
生活素材 二、水
素材精神 1水への感謝・利用更生の精神涵養
運転施設 訓話
備考 上旬
生活素材 三、伝染病
素材精神 1暑中保健衛生訓練と体位向上
運転施設 衛生講話、大消毒
備考 上旬
生活題目 興亜記念日
生活素材 一、七夕祭
素材精神 1情意的精神の啓培と技術の訓練
運転施設 七夕祭
備考 7日
生活素材 二、支那事変記念日
素材精神 1八紘一宇、新東亜建設の大使命に向かって邁進
運転施設 挙式、銃後施設経営
備考 7日
生活素材 三、国旗記念日
素材精神 1愛国至情の発露
運転施設 国旗祭、訓話
備考 11日
生活題目 盂蘭盆
生活素材 一、盂蘭盆
素材精神 1敬神崇祖の日本孝道の実践
運転施設 訓話、墓参
備考 13日、14日、15日
生活素材 二、二宮尊徳翁誕生日
素材精神 1報徳精神の涵養とその実践の指導
運転施設 報徳訓話、報徳献金
備考 20日
生活題目 学期末
生活素材 一、学期末考査
素材精神 1八紘一宇の聖業達成の使命に生きる実力・認識向上の訓練
運転施設 訓話、考査
備考 中旬
生活素材 二、総合学習
素材精神 1全科・全教科の、部分を全体に関連させ、中心を生かし結ぶ学習
運転施設 日々学習
備考 下旬
生活素材 三、成績物整理
素材精神 1物品尊重の精神の涵養 2銃後強化・持続の訓練
運転施設 学芸会、出動軍人慰問
備考 下旬
389 三、七月の生活行実践
(一)暑さへの生活訓練
(1)衣服
感想 修身と国史は真夏でも正装で授業を受けさせるとは驚きである。
暑さから夏の衣服の研究に入る。夏の環境に最も適している衣服は何か、現在着ている衣服で改良すべき点はどこかなどを研究させ、「革新日本」の衣服を考案させる。それと同時に暑くてともすれば乱れがちな衣服作法を指導しなければならない。ランニングシャツ一枚で登校したり、教えを受ける場合に肌を脱いだりするようなことがあってはならない。といって平生通りに上着をいつもつけておれとは言わない。始終の「お願いします」「ありがとうございました」の礼は、必ず上着をつけるか、正しい服装でさせるべきである。修身や国史の授業では、正規の服装で授業を進めなければならない。「衣服調いて礼節を知る」と言いたい。
(2)水 一滴の水も粗末にしてはならない。学校園で水を欲しているダリヤの「隻手の声」を聞け。大陸にいる同胞が水のために如何に難渋しているかを見よ。入浴の湯をうめた残りの水を日照りの庭に捨てて師僧から水を生かすことを指導された故事を今の世に生かさねばならない。
390 水によって海国日本の気性を養うことは必要だが、水に呑まれ(溺死)ないように周到な用意を怠ってはならない。陛下の大御宝(子供の命)を海の藻草と化すことは教師のこの上ない罪悪であると知れ。広い砂浜に放たれる時、児童の心も教師の心も放たれる。世の親の心を思えば、寸時も手綱を緩めてはならない。世の教師よ、今少し責任を持てと言いたい。海水浴の帰途、師の目を離れたとき、事故が起こることにも心しなければならない。毎日のことだが、「車や魔物に気をつけてさっさと一旦家に帰れよ」という指導意識を常に心して欲しい。
(3)伝染病 伝染病にかからない健康訓練が第一であるが、万一かかったら、泰然として病魔を征服する生活訓練をさせる。人間は病気をすることによって人格が向上する。病気は人生修業の好機会である。人間は何らかのどん底に落とされた時に真の自己を発見し、真の人生行を闊歩することができる。病気にならないような訓練をする以上に真剣な生活訓練が一層必要である。
391 (二)興亜への生活訓練
(1)七夕祭 七夕祭は技芸の上達と宗教的情操の涵養とを目標とした行事教育であったが、ここで革新的な意味づけをしておく。まず出征軍人への図画、綴り方、手芸などの作品を、真心を込めて生み出すことに七夕祭の意味を見出す。第二は、その作品が無事に、自分が思う皇軍の手中に届くように、武運長久を祈らせるという宗教的情操を培うことである。七夕の精神を現代に生かすことを忘れてはならない。
(2)支那事変記念日 7月7日の支那事変記念日は興亜記念日に進展し、興亜の日として行われる。
〇思想戦への構え 興亜記念日を挙行し、日本の推進理想(日満支一帯の新東亜建設、援蒋行為の排斥・弾圧、共産思想の排撃等)を語り、更に皇国思想が、共産主義や民主主義や全体主義に比べてどんなに優れているか、そして他の主義がどの点で誤りであるか、をよく指摘してやるがよい。頭から日本思想が良いとか、他の思想がいけないとか言うが、幼少な児童はそれでもいいが、高等科、青年学校の生徒の場合は、他の思想の悪い点を指摘し、こうでなければならないと理解させなければならない。確乎不動の指導精神を持たせなければならない。この指導精神を持っていないと、時には赤の誘惑に乗ることがある。事変が長引く場合や、戦後における思想戦への構えを、今日においてなしておくべきである。
392 〇経済戦への構え 子供の経済学や大人の経済学がまだできていない。教師は日本経済学の本質を究め、その実践方法を樹立し、経済戦への構えをしなければならない。
日本経済の現状から考えて、資源愛護運動、廃品回収運動、貯蓄奨励運動、金献納運動、公定価格制、税制改革運動等の必要なことが実践されつつある。これらをどんな精神で実践させるべきか、行精神の確立を必要とする。
393 資源愛護運動 一枚の紙、一本の釘にも仏性があることを信じさせることが第一である。次に資源愛護の実践結果がどのように国家のために益するかを実例でもって話すがよい。国民精神総動員中央連盟が支那事変勃発一周年日の昭和13年7月7日を期して実施した一戸一品献納運動の結果、77万7959円の巨額を傷兵保護院に献納した。
廃品回収運動 これは子供が国家に奉納する税だと心得て実施させるのが良い。廃品回収運動は(盗みを働いて)廃品を作ることではない。
東朝一女性の声「子どもらは学校から帰ると、空き地の缶詰の空き缶、なべ、バケツの古、空き瓶等を集めて来る。そうしたものが見つからなくなると、一途な子供の蒐集本能は、他家のものにまで発展してゆくのだ。アルミのコップ、洗面器、釘、水道の蛇口までいつの間にか持って行かれる。国家非常の折、これらの廃物を利用することは大切だが、幼い子供にたとえどんな物でも他の家のものを黙って持ってくることのいけないことをはっきりのみこませなければならない。」
教育は悪人を作ることではない。どんな良いことでもやり方によっては悪人を知らず知らず作っていることがある。結果だけを見て喜ぶ教師は浅はかである。物に支配される考えを取り去れ。どのようにその廃品を見つけたのか、その心境態度の真摯さを見届ける千里眼を作れ。
394 貯蓄奨励運動 自分が大きくなって困るから貯金するのではない。大国民になった際に日本の経済生活が立派にやって行ける基地を作るために、また陛下の資源を無駄に使用せず、立派にお守りするために貯蓄するのであることを忘れてはならない。
金献納運動 昭和維新は生命奉還と経済奉還とから始まる。金献納運動は双手を挙げて賛成する。陛下へお返しできることの無上の名誉と心得て一二を争うがよい。(愚民政策)
公定価格制 この制度は安心立命の世の中をもたらす。商人の子に商業道徳を話してやるがよい。斤量の不足、悪質な販売、公定価格違反、闇取引などを日本の商店街から駆逐しなければならない。
〇武力戦への心構え
359 防空演習…避難訓練、防火訓練、防毒救護訓練、燈火管制訓練、警報伝達訓練等を実施するのがよい。
警報伝達訓練 自分の一語の正否が多数の同胞の生命を支配するということを自覚して、はっきり落ち着いて伝達を誤まりなくするように訓練づけること。
避難訓練は自然に学べといいたい。ドジョウやはやのようになれ。動物は足音が耳に入ると、すぐにまた列を乱さず、おのおのの方向に姿をくらます。人間は過去においてイカやタコの煙幕を学び、ウサギの偽装を学んだ。
防火防毒訓練 真剣にやらねばならない。バケツがくるのも知らないでぽかんとしている子、バケツを落として笑う子、そんな不真面目な子は味方の中の敵である。
燈火管制 我が家の防空は我の手によって、幼い小学生は動員されて我が家の管制に当たるがよい。外に出て、光が漏れていないか、我が家の守りは良いか。
(3)国旗誕生記念日
396 「思へただ空に一つの日の本に
またたぐひなき生まれてし身を」
(この)御花園天皇御製を拝誦し、日の丸の尊厳性を今更のように感ずる。
支那大陸に次々と陥落を知らせる日の御旗が立てられてゆく様を見る時、興亜の足跡が歴然と輝き渡るのを覚える。
国旗降下、国旗掲揚は、不動の姿勢で荘厳裡になさるべきである。
軍隊から学校へ、学校から部落へ、国旗精神は進展する。我が心に打ち建てる国旗の翻り。
(三)盂蘭盆中心の孝道生活訓練
(1)盂蘭盆 盂蘭盆は烏藍婆拏(な)とも記し、略して盆とも言う。梵音のウルランバナUllambanaの音訳で、義訳すれば倒懸*である。倒懸とは行くところに行ったところ、倒に懸るほどの苦しみを受けている亡者のために、三宝(仏、法、僧)に供養してその苦を免れさせるための祭儀である。それから転じて祖先の聖なる尊い霊を祭る祖先崇拝の行事に国民化されてきた。
*倒懸(とうけん)とは手足を縛って逆さにつるすこと。非常な苦しみ。危急の時。
397 我が家の祖先がどんな人だったか。祖先を追憶し、その霊を慰め、功績をたたえることは子のよい務めである。お精霊様がいらっしゃる道路掃除、墓地清掃は良い実践の道である。世知辛い時世では特にその必要性を感じる。
(2)二宮翁誕生記念日
盂蘭盆の精神を最もよく具現する尊徳翁の生活を修身や行事読物によって語り、児童の幼心に尊徳翁の銅像を建立させるのが良い。
(四)学期末の生活訓練
これは12月の生活行実践のところで述べる。
5 八月の生活行
398 一、八月の指導精神
1 心身鍛錬期間の実(の)顕揚
伝統にくすぶっていた「夏休み」という名称が、新東亜建設の事実の中で「揚棄」され、ここに「身体鍛錬期間」の生誕を見るに至った。夏休み30日乃至40日、「のらりくらりの夏休みかな。」人間がうじ虫かミミズの生活をしていた。人生50年、誠に勿体ない。今日心身鍛錬期間の新しい誕生を見たのは、日本国家の発展にとってこの上ない進展である。新装の八月生活行では「一日戦死」の意気で当たらねばならない。名が変じても実が伴わなければ、陛下に対して申し訳ない。子供の自覚も必要だが、先ず原動力であるべき師の心構えが第一に緊要である。生かすも殺すも教師その人の心境態度如何にある。
二、八月の生活行機構並びに実践
次に実際に(私が)行じたままの記録を掲げて参考にしたい。(一部掲載)
399 夏期心身鍛錬期間中の施設一覧
号 教育行 主任 係職員 係児童 日数
一 ラジオ体操 親川 男女全職員 全児 27
団体行進
二 武道(高男) 酒井 親川、田島、三好、狩野 高一男、高二男 7
三 武道(五、六男) 矢後 土方、本間、井田、山崎 五男、六男 7
四 農業実習 田島 鈴木正 高一男、高二男 3
五 生活行 土方 田島、鈴木正を除く全職員 高女 1(宿泊)
六 校庭除草 霜島 吉田、井田、三好、山崎 尋一、二、三、四 2
七 家事実習 清宮 鈴木ナ、金坂、鈴木ス 五女、六女、高女 2
八 校舎清掃 鈴木ス 鈴木ナ、吉田、金坂、清宮 同上 同上
九 神社道路の清掃作業 山崎 清宮、鈴木ナ、吉田、金坂、鈴木ス 同上 3
十 全校召集 本間 男女全職員 全児 2
十一 草刈 鈴木正 土方、親川、酒井 高男女 家庭作業
十二 合同運動 親川 三好、酒井、本間、土方、矢後、鈴木ナ 六男女、高男女 1
十三 虚弱児生活鍛錬 親川 金坂、吉田、井田 五年以上の虚弱児 2
400 武道教育同行案 導師(矢後、本間、土方、山崎、井田)
日時 昭和14年1939年8月4,5,8,9,10,11,12日。毎日午前8時半~9時半
学年 尋常科第五、六学年、男
目的 礼に始まり礼に終わる武道精神を涵養し、暑熱に耐える心身の錬成をなし、特に強固な気力を陶冶し、心境態度を鍛錬する。
401
月日 |
順 |
行名 |
行法 |
行精神 |
備考 |
八 月 四 日 第 一 日 |
一 |
集合敬礼 |
|
規律正しく |
|
二 |
宮城遥拝 |
最敬礼 |
厳粛に |
||
三 |
黙祷 |
戦没及び皇軍将士に対し |
敬虔 |
||
四 |
一斉誦和 |
御製又は詩等 |
元気に |
尋六は柔道 教材より |
|
五 |
練習(剣道教材) 礼の仕方 |
徒手、提刀、帯刀の場の礼 |
敬虔な心境態度 |
||
六 |
提刀又帯刀 |
右(左)に提刀 帯刀 |
敵に対し命がけ |
||
七 |
抜刀、納刀 |
帯刀→抜刀→納刀 |
|
||
八 |
中段の構え |
中段に構え 構えを解く |
心身刀一体 |
||
九 |
体の運用 |
何歩攻め 何歩退け 右(左)に一歩開け |
腹から気合 |
||
十 |
刀の上下動作 |
其の場 前進 後退 膝の屈伸の上下動作 |
|
||
八 月 五 日 第 二 日 |
一 二 三 四 五 六 七 |
一二三四前に同じ 正面撃 右籠手撃 右胴撃 左右面撃 突 二段撃 相対動作 |
単独 連続 右足前 左足前 左面及各連続撃 右面及各連続撃 左右面連続撃 特に左手のしぼりに注意 突 面撃 突 右籠手撃 教師―児童 |
心身一体気合を込めて 一呼吸にて 敏捷に |
高次のものは 望まず |
八 月 八 日 第 三 日 |
一 二 三 |
一二三四同前 二段撃 連続撃 撃込及切返 |
右籠手―面撃 面―右胴撃 其場連続正面撃 前進、後退 面―左面右面左右左中段(前) 面― (後) 中段―面 |
同上 強固なる気力 |
同上 鍛錬的に |
八 月 九 日 第 四 日 |
一 二 三 四 |
同前 (柔道教材) 礼 姿勢 進退動作 体捌(ハツ、さばく) |
中指先膝蓋骨の上一呼吸 自然本体 左(右)自然体 前進―後退 側進(右、左)斜前(後)進 右捌前(後)方 左捌前(後)方 後捌 右(左)前体を後に開け 右(左)に前方 同 右(左)に後方 同 |
敬虔な心持落着 敏捷 落着 同上 同上 |
|
八 月 十 日 第 五 日 |
一 二 三 四 五 六 |
同前 前方突 正面打 側面打 後方突 後方打 斜上打 |
右手―左足前 左手―右足前 右(左)正面打―同側足前出 右(左)側面打―同側足前出 右(左)後方突―同側足後出 右(左)後方打―同上 右(左)斜上打―同側足側方出 |
腹に力を込め攻撃精神を横溢 |
左側動作を特に多く |
八 月 十 一 日 第 六 日 |
一 二 三 四 五 |
同前 前突 横打 摺上 打下 切下 |
前方突を避けて攻撃 (前方突) 側面打を避けて 同上 摺上 同上 同上 正面打 同上 同上 木刀にて正面に切下る 同上 同上 |
敏捷 沈着 命を投げ出して敵に当たる |
高次のものは望まず |
八 月 十 二 日 第 七 日 |
一 二 三 四 五 六 七 |
同前 復習 (剣道教材) 撃突動作 二段撃 相対動作 連続打 (柔道教材) 打、突動作 相対動作 練習反省 |
一動作毎に適確に 一呼吸で 教師対児童 気力を十分に 受―真剣に突、打 取―沈着勇敢に攻撃を捌いて対処 |
心身剣の一動作 |
六年同前剣道 五年後半同前 諸動作鍛錬的に 気合を充分に |
404 備考
一、始業終業の挨拶は特に厳正にして礼を失わないこと
二、浅く基本的なものを一通り指導し、後日反復練習して徹底を期す
三、主として校庭で行い、服装は運動服とし、手拭で鉢巻をする
四、習練の始めに準備運動を、終わりに整理運動を適宜行う。
五、木刀の使用については後始末等厳にして之を尊重愛護する風習を養う
・提刀とは「さげがたな」「さげとう」と読み、刀を腰から外して手に持つこと。立礼する時の姿勢で、弦(峰)を下にして、親指を鍔(つば)にかけないで、腕を伸ばして刀を持つこと。
・帯刀とは刀を腰に差すこと。
生活行教育同行案 導師(全職員同行)
日時 昭和14年7月24日午後5時から7月25日午前6時まで
学年 高等科第一、二学年女生 48名
目的 立つ、坐る、歩く、話す、食す、寝る、起きる等ありふれた生活を一切無言で肚で行じさせ、そのものになり切らせ、以て皇運扶翼、億兆一心、没我顕真の日本生活規格を確把せしめ、新東亜建設、八紘一宇の聖業に参ぜしむ。
403
時 |
順 |
行名 |
行法 |
行精神 |
備考 |
|
5.00 | 5.30 |
一 |
始 業 式 |
1集合静座 2一同敬礼 3国歌合唱 4校長訓辞 5敬礼 |
1打鍾を合図に作法室へ組別に集合 3オルガン(鈴木ナ) タクト(本間) |
一切を天地神明にお任せ致します、如何なることでも無言で理屈なしにやり通す。 |
一組清宮(親川) 二組鈴ナ(矢後) 三組鈴ス(三好) 四組金坂(井田) 五組吉田(狩野) |
5.40 | 6.30 |
二 |
凝念 |
1入室 2座礼 3二礼二拍子一拝 4神勅奉読 5誓願、誓願歌 6真座、提唱 7座礼、退室 |
1打鼓を合図に一組から 2打鍾を合図に座礼 3先導師にならって 4真聴* 5誓願終わりて間髪を入れず 6数息観30まで数回 |
中心帰一、億兆一心、没我顕真の日本精神様相を十二分に発揮する。苦しければ苦しいほどやる。 |
打鼓、鐘 本間 神勅 霜島 誓願 土方 提唱 校長 導師 酒井 |
6.40 | 7.10 |
三 |
食事行 |
1膳立 2点茶 3前食感謝 4食事 5御製朗詠 |
1打鼓を合図に道場へ 2順次静かに肚でつぐ 3合掌 4無言、よく噛んで 5真聴 |
天地自然一切の神、一切の人々に感謝心を以てありがたく道を成就するための良薬と心得て |
膳立 主任 山崎 弁当 各自持参 |
20 |
四 |
休 |
|
1運動場へ出て涼む |
|
|
7.30 | 8.20 |
五 |
修養講話 |
1入室 2真座、敬礼 3修養講話 4敬礼、退室 |
1一組から並んで入室 3真学真聴 |
教を有難く聞き受ける行 何ものかをつかむ |
打鼓 本間 講師 校長 |
15 |
六 |
休 |
|
1両便、2室掃除 |
|
掃除 一組 |
8.35 | 9.00 |
七 |
就寝 |
1床の準備 2就寝の感謝 3就寝 |
1児童女職員道場、男職員作法室 2校長謹唱 3消灯後一切無言 |
一日を反省し大安心を以て寝につく。明日の気力を養う。 |
打鼓 本間 不寝番 女教員交代 |
4.30 |
八 |
起床 |
1床かたづけ 2洗面、両便 |
1打鍾合図に起床 2歯磨洗面(打鼓外へ) |
「いざ汝」*の意気込をもって |
打鍾 本間 |
5.00 |
九 |
清掃行 |
1道場運動場の清掃 |
1御影から下に向かって除草をも行う |
掃除をさせていただく陛下の御土を清掃 |
一、二、三組掃く 四、五組除草 |
5.00 | 5.30 |
一〇 |
終業式 |
1集合 2神棚、奉安殿礼拝 3体操 4終行の辞 5解散 |
1打鼓により朝礼壇前へ 2校長先導 3体操(ラジオ二回) |
朝の礼拝を兼ねて一夜の守りを神明に謝す。 |
体操 親川 ラジオ 鈴木ス |
*ネットで検索したところ、「いざ汝、己の力でビジネスを動かさん。」株式会社pequod, https://wantedly.com
407 準備
児童 寝具(毛布又は敷布団)、洗面器、歯磨用具、竹箒、弁当、手拭
職員 弁当、布団、歯磨用具、手拭
その他 蚊取り線香
校地清掃勤労教育同行案 導師(霜島、山崎、三好、吉田、井田)
感想 このころは水道がなく、井戸から水を汲んで、バケツで同じ水を共用して手を洗っていたようだ。掃除でも何でもかんでも天皇のために結び付ける。この学校には分校があり、この清掃作業では分校の1年から4年までの児童も合わせて実施していたようだ。本とは本校、分とは分校の意味。
学年 本校 尋四、三、二、一 分校 尋四、三、二、一
日時 8月28日、29日 午前8時から9時まで
目的 一、作業目標に向かって全体総力を以て、陛下の御為に捧げまつる心境態度の錬成をなす
二、個人的生活になじみが多かった生活を是正し、学校生活の集団的訓練をなす
三、酷暑を征服し、没我を以て仕事を敢行する作業態度と作業技術を習得させる
順 |
行名 |
行法 |
時間 |
行精神 |
備考 |
|||
一 |
作業提示 |
一、各作業分団毎に朝礼台前に整列 二、導師(霜島)壇上に立ち、他の導師は各受持分団前に立ち、一同敬礼 三、導師は今日の行事の目的精神作業方法及態度につき訓話 |
5分 |
一、何の為にどんな心境態度で仕事をせねばならぬかをはっきり自覚して 二、自分たちの仕事の分野方法をしっかり知って |
服装、用具をしっかり準備して整列する 整列各分団四列縦隊 分団長、副分団長は先頭に出る |
|||
二 |
誓願 |
一、一同奉安殿前に整列 二、一同敬礼 三、誓願 1四年級長「天皇陛下の御為に今日の仕事を一生懸命にさせていただくことを誓います」 2一同「一生懸命にさせていただくことを誓います」 |
5分 |
一、天皇陛下の御為にこの仕事をさせていただく光栄に対し、全身全霊没我の心境態度を樹立する |
奉安殿 |
〇四級長 |
四男 四女 三男 三女 二男 二女 一男 一女 分三四 分一二 |
整列隊形 |
三 |
作務 |
一、太鼓の合図で各導師は分担区域に児童を引率す 二、導師は作業法につき簡単明瞭に指示す 三、作務 1草むしり 2ガラス、瀬戸物、釘その他を拾う 3草は一定の場所にまとめておく 4ガラス等危険物はバケツの中に 5隅から手順よく仕事をしてゆく 四、太鼓の合図で作業を止め整理にかかる |
35分 |
一、暑さは私たちの有難い試練と思え 二、流汗只管(ひたすら)戦地の勇士と共に行ずる心境 三、大君に捧げまつる没我と全和のまこと 四、絶対無言 五、能率は手順よくすることにあり |
作務の合図は太鼓で行う 第一鼓 作業始 第二鼓 作業終 第三鼓 奉安殿前整列 |
|||
四 |
整理 |
一、むしった草は堆肥小屋へ 二、危険物は使丁室前の箱の中へ 以上各分団の係が行う。 三、洗手―バケツを洗い、その中で交互に静かに順次洗う 四、用具は係が洗って元の位置に返しておく |
10分 |
一、物を生かし利用する。廃物も次の再生を考えて始末する |
洗手場所 一、二年道場裏井戸 三、四年校舎裏井戸 |
|||
五 |
反省 |
一、太鼓の合図で奉安殿前に整列 二、一同最敬礼 三、導師、反省講評 四、終業の感謝 「天皇陛下の御為に立派に今日の仕事をさせていただきましたことを感謝いたします」 五、綴方及生活日誌へ反省記録(課題) 六、一同敬礼 解散 |
5分 |
一、結果よりも作業態度にあり 二、始めの誓願に背かなかったかどうか 三、今日の心境態度で次の自分の仕事にかかれ |
綴方 文題 「草むしり」 「学校の庭をきれいにしたこと」 (家庭課題) 9月1日提出 |
準備
一、分団組分け (一)四男(二)四女、(三)三年(四)二年(五)一年(六)分三四(七)分一二
担当 三好 霜島
井田 吉田 山崎
二、各分団用具 バケツ二個、箒五本(家庭より)、鍬一本
410 三、服装 運動服、運動靴、帽子、手拭
四、作業分担は別紙による
家事実習教育同行案 導師(清宮須賀子、他女職員全部)
日時 昭和14年8月2日、3日
学年 高女(一、二年)、六女、五女
目的
1学校の正課に取り込むことのできない平生の家庭実務の修練に力を注ぎ、家庭実習のよい教育時機とする
2勤労愛好精神と経済観念の養成と併せて、物資節約、廃品利用、更正工夫等の創作心を養う
順 |
行名 |
行法 |
行精神 |
備考 |
8月2日 ・ 3日 |
一、カーテン調整 二、同洗濯 三、同修繕 四、オルガン覆修繕 五、戸棚整理 イ、寝具手入 ロ、襖の修繕 ハ、鼠穴手入 六、ござの手入(8月3日だけ) |
一、裁縫科と連絡 裁ち方繕い方仕上げまで (分業) 二、家事科洗濯と連絡 一人一枚宛洗濯 三、裁縫科と連絡 洗濯したものを吝目補綴(意味不明)をなす 四、廃品更正工夫 古ミシン覆と合わせ、更正工夫をさせる 五、家事科と連絡 イ、日光消毒 ロ、裏側の張替え ハ、板でふさぐ 六、傷んでいる個所を切り捨て繕う |
没我顕真的態度 吾と仕事と一体になって平生の仕事を最も効果的に促進せねばやまないという態度 |
一、高女(二時間) 二、高女、六女、五女(同) 三、六女、五女、高女(同) 五、六女、五女(同) 六、六女、五女(同) |
準備
一、カーテン調整 三、カーテン修繕 五、戸棚整理
1用布(40米) 1裁縫用具 1紙、糊、ハサミ、板、くぎ類
2裁縫用具 2つくろい布
二、カーテン洗濯 四、オルガン覆い 六、ござの手入れ
1石鹸 1古ミシン覆い 1ハサミ、糸、針
2たらい
校舎内清掃同行教育案 導師(清宮、鈴木ナ、吉田、金坂、鈴木ス)
学年 尋五女、六女、高女
日 8月30日、31日
目的 日常において作業実施不可能なため、心身鍛錬期間を利用し、衛生、保健、経済の諸点に留意させ、自律精神及奉仕的精神の養成に努めさせ、ひいては家庭における掃除の一助となるよう指導し、行わせる
411
日 |
順 |
行名 |
行法 |
行精神 |
備考 |
三十日 |
一 |
掃除割当 身支度 |
一、宿直室、作法室についての各自の仕事分担を明瞭にする 二、働きやすい服装となる 日常の掃除と同じ |
作業しやすい 能率増進 |
|
二 |
畳上げ乾燥 |
一、宿直室、作法室の畳を上げ、間違わないように番号をつける 二、校庭に運び出し、乾燥させる 三、畳を傷めないように打ち、塵を除く |
緻密な注意 |
畳の番号控えを作る 高女、六女全員 |
|
三 |
床の清掃及畳の敷き込み準備 |
一、塵が飛ばない、湿った新聞紙を撒く 二、床の間の前から順次後に向け掃く 三、床に新聞紙を敷く 四、ナフタリンを撒く |
清潔のため 皆さんの代わりに学校に宿り、学校を守って下さる先生方に気持ちよく休んでいただける様 |
五女全員 宿直室のみ畳の清拭 |
|
四 |
畳の敷込 |
番号に注意して元通りに正しく敷き込む |
落ち着いて無言で機敏に |
全員及小使 |
|
三十一日 |
五 |
畳の清掃 |
一、乾いた布で大体の塵を除く 二、汚点のある場所はそれ相当の処理をする 三、固く絞った布で清拭する |
没我顕真 新学期気持ちよく過ごせるように |
全員 |
六 |
後始末 |
一、箒の洗濯 二、雑巾の洗濯 |
掃除できた 感謝の気持 |
|
準備
一、掃除用具 二、新聞紙(児童から) 三、ナフタリン
神社清掃同行案 導師(清宮、鈴木ナ、金坂、吉田)
日時 昭和14年8月1日及び26日午前8時から9時まで1時間
学年 尋常科第五、六女、高等科第一、二女、全員約120名
目的 一、敬神崇祖の念を喚起し、信仰心を養う
二、皇軍並びに郷土出征軍人の武運長久を祈願し、且つ感謝の意を表す
順序 |
行名 |
行法 |
行精神 |
備考 |
||
一 |
目的 説明 |
拝殿の前に整列し、本日の作業目的は何であるかを話す |
規律正しく |
神社名 |
導師 |
区域 児童 |
二 |
拝礼 |
一、二礼二拍子一拝(先導師…先生) 二、御祈り、黙祷…一分間 支那方面に対し 三、祈願黙祷終わり |
出征軍人に感謝の意 「マゴコロ」 |
白 旗 八 幡 |
吉 田 先 生 |
平 初山 押沼 |
三 |
作業 説明 |
次の通り |
無言の行 |
|||
四 |
草むしり |
一、五名位ずつ分団して一区域を決め、草むしりを開始 二、根からこぎ、途中から切らないようにする |
一、無言の行にて 二、勤労を悦び、信仰の心持にてする |
菅 生 社 |
鈴 木 ナ 先 生 |
稗原 蔵敷 長澤 犬蔵 |
五 |
掃く |
一、草むしりが終わって拝殿から順に下に庭を掃く 二、草、ごみ、棒切れ、紙屑などを一か所に集めて後処置す 適当の所に捨てる 三、手を洗う |
一、真言真歩にて 二、沈着(埃が立たないように) 三、清浄の心 |
長 尾 社 |
清 宮 先 生 |
長尾 神木 |
六 |
拭く |
一、掃除が終わってから拝殿の拭き掃除。本校掃除規程による 二、掃除の検閲 |
一、無言の行 二、清浄の心 三、有難い心 |
神 明 社 |
金 坂 先 生 |
上作延 |
七 |
反省 |
一、全く掃除が終わって一同拝殿の前に整列(服装検閲) 二、本日の作業について思うままを言わせる |
一、感謝 二、勤労の努力 |
一、人員は導師が適当に分団し、組み分けをする 二、組長又は分団長を置く 三、作業開始前に仕度をさせ検閲 四、欠席児童の調査 理由を明瞭にする 五、導師、児童一体の作業 |
||
八 |
拝礼 |
一同敬礼(始めの時と同じ)後解散 |
マゴコロ |
|||
九 |
学習への連関 |
一、図画、綴り方作品をありのままに書かせて九月に持参 二、日誌へ記入 |
綴り方、図画、日誌等、技能を上達させようとする心構え |
準備
一、草削り又は小刀 二、竹箒 三、雑巾 四、バケツ 五、タスキ、手拭 六、モンペイ姿 以上は各自持参のこと
道路清掃教育同行案 導師(山崎、清宮、金坂、鈴木ナ、鈴木ス)
日時 昭和14年7月25日午前8時より9時まで1時間
学年 尋常五、六女 高等科第一、二女 全員約120名
目的 一、道路を清掃し、公益精神を養う
二、衛生思想と道路美の観念を持たせる
三、郷土の道路愛を啓培し、且つ浄化作業により勤労精神を養う
順序 |
行名 |
行法 |
行精神 |
備考 |
|||
一 |
目的 説明 |
本日の目的作業は何かを話す |
規律正しく注意して聞く |
区別 |
導師 |
担当区域児童 |
清掃区域堺 |
二 |
作業 説明 |
次の項目により、よくわかるように話す |
同前 |
||||
三 |
誓願 |
本日この作業をさせて戴くことは私たちの良薬と心得て有難く致します。(この時は手を合わせて誓願を聞く) |
感謝の意 没我顕真の心境態度 |
一区 |
鈴木ナ先生 |
稗原 蔵敷 犬蔵 |
自=初山集会所 至= 蔵敷集会所 |
四 |
作業 開始 |
支度をさせ服装検閲 |
「いざな」*の心構 |
||||
五 |
草刈り |
高女が道路の左右側の長い雑草を刈り取る。(所々貯めて置き、後一か所に集める) |
無言の行 |
||||
六 |
凹埋め |
道路の所々の凹などへ小石を持って行ってその上に道炉端の土を持って行き冠せて平らにして足で固める |
真言真歩 確実にする精神 |
二区 |
清宮先生 |
初山 長澤 平 押沼 |
自= 初山集会所 至= 本校 |
七 |
廃物 拾い |
紙屑、糸切、縄切、針、ガラス片、茶碗片等を拾い集めて一か所に置く。後入れ物を持って行き集めて学校に持参。若しくは適宜の処置をせられたし |
一、貯蓄思想 二、戦事後援 三、物を生かす |
||||
八 |
掃く |
塵埃が立たないように静かに左右両側から真ん中に掃く 道行く人に迷惑がかからないようにする 掃き貯めた草や廃物は前と同じ |
いつも無言の行 礼儀を重んず 真言真歩 |
三区 |
金坂先生 |
神木 長尾 |
自= 本校 至= 神木集会所 |
九 |
反省 |
本日の作業について自分の感想を自由に発表させる 廃物は何にするかを考えさせる |
感謝 教育的 |
||||
一〇 |
学習への連絡 |
一、綴り方製作 二、日誌記入 以上は九月二学期に提出すること |
心構え 物をよく見る注意力 |
四区 |
鈴木ス先生 |
上 作 延 |
自= 神木集会所 至= 三田弘氏門前 |
一一 |
終わり |
一、一同一か所に集合 二、服装整頓 三、人員検査 四、敬礼、解散 |
感謝 真心からの楽しみの作業であったこと |
準備 一、鎌(高女)、 二、小鍬(二女) 三、竹箒(各自持参) 四、竹屑籠三ケ 五、タスキ 六、手拭 七、マスク
*「いざな」について、前出「『我皇軍扶翼の御ために立たん。いざな』の意気込みこそ、日本小学生のあるべき登校の門出の姿である。」028とある。
418 心身鍛錬期間における全校児童召集教育同行案
日時 8月7日(第一回目召集)、8月24日(第二回目召集) 共に午前7時30分から
目的 一、日誌の検閲指導
二、生活反省及び今からの指導(教授・訓練・養護)
三、時局への精進
行名 |
行法 |
行精神 |
備考 |
朝礼 |
一、整列(朝礼の形) 二、大神宮礼拝(導師校長) 三、国旗掲揚(本間) 四、奉安殿礼拝 五、万歳三唱(校長) 六、靖国神社並びに出動軍人に感謝の黙祷 七、ラジオ体操(親川) |
皇国土の一点に価値定位する 大神宮へこぞって帰一し奉る 皇国の弥栄に参ずる 陛下の赤子として 非常の時期に当たり、よく万難を排する堅い決心を誓う |
毎朝の行に同じ |
訓話 |
一、道場で校長が時局に関する訓話 二、学級で受け持ちが訓話し日誌を検閲するなど |
「ナリキル」ことの修練 生活反省 覚悟 |
高学年 教室訓話が終わり道場訓話 低学年 道場訓話が終わって教室訓話 |
掃除 |
毎週の大掃除行と同じ |
無言で |
検閲をする |
419 草刈勤労作業教育同行案 導師(鈴木正規)
日時 自昭和14年7月20日 至10月下旬
学年 青年学校男女全員 高等科一、二年男女全員
目的 一、老若男女全国民打って一丸となり国難に当たる愛国心の養培となす
二、青少年男女の無生産的消費エネルギーを勤労化させることにより、生産拡充及び人格陶冶の自覚的修養目標となす
順序 |
行名 |
行法 |
行精神 |
||
一 |
意志活動の喚起 |
7月7日午後1時於道場 青女、高一、二男女出席 指導者 市農会岩崎氏 7月12日午後9時於道場 青男、青団出席 指導者 鈴木正規 7月17日於道場 小学校作業法指導 |
報恩 森羅万象の恩徳 皇室、国家の恩 先輩、諸人の恩 出征将士の恩 打破!自分一人の力で生きているという考え方 感謝!日本国勢の根源 |
生の根源 社会性の根源 |
|
二 |
労作日程 |
青男 4時起床 自7月20日 至7月31日 自9月上旬 至9月下旬 青女 自7月20日 至7月31日 高等科男女 自7月20日 至7月31日 |
干草量 4貫匁 4貫匁 2貫匁 男2貫匁 女2貫匁 |
知行一致の修養法 実行力(心身)の鍛錬 責任感の養培 独立・自律活動の修練 |
|
三 |
荷造納入 |
一、各部落自治団が出荷する 二、荷造方法 堅く束ねる 一束重量 高女 1貫匁 高男青女 2貫匁 青男 4貫匁 三、出荷日 部落別に決定 戸主側及び学校自治団が協定した日 四、台帳作成 部落自治団別に班長又は団長が作成する。 班員の氏名を事前に記入する。 供出量欄は納入の際に記入する。 |
部落自治団機構の修練 自治精神の修得 一、出荷期日に遅れぬこと 独自・相互扶助…社会精神の自覚 二、不正をしない 公徳心の養成 三、責任を果たした喜びの体験 犠牲的精神の体得 |
||
準備 各団別に台帳の作成
心とからだをきたへる私たちの夏の生活(尋一、二、三、四)用
〇この夏の心がまえ〇
一、心をひきしめてくらすこと――戦地の兵隊さんのことを思って
二、暑さにまけず心とからだをきたへる――夏休ではありません
三、よく働く――お国のため、お家のためにつくす心で
四、ぜいたくを言はない――むだをなくしてお国につくす
五、神様、仏様をうやまふこと――きれいな心、明るい心で
〇学校のしごと〇
日 |
時 |
しごと |
みなり |
持ってくるもの |
先生 |
|
7/21 | 8/12 8/24 | 8/31 日曜雨天は休み |
午前7時20分から |
一、部落別に集まる 二、国旗が上がる 三、宮城を拝む 四、ラジオ体操 五、みんなであるく 六、時々先生のお話がある |
体操ができる軽いみなり |
手拭かハンケチ |
当番の先生 |
|
8/28 |
午前8時から |
ラジオ体操のあと |
一、本校の運動場、花壇、奉安所のまわり等の草むしり、ごみ拾い |
運動服、シャツ 仕事がしやすい身なり |
手拭、ハンケチ、帽子 |
霜島、山崎、三好、吉田、井田の各先生 |
8/29 |
前と同じ |
前と同じ |
一、学校(本校)の裏、出張所の花壇の草むしり、ごみ拾い |
前と同じ |
前と同じ |
前と同じ |
8/7 8/24 |
午前7時 |
半から |
一、学校へ集まる日 |
前と同じ |
前と同じ |
受け持ちの先生 |
〇おうちのしごと〇
一、毎朝きっと宮城をおがむこと 二、一日と十五日には神様仏様を拝む 三、お盆(8月14、15、16日)には墓参りや仏様をおがむこと 四、毎日夏季学習帳をする 五、ラジオ体操に行きなさい 六、お家のおてつだいをすること
〇9月1日に持ってくるもの〇
1夏季学習帳 2綴り方(ラジオ体操、草むしり) 3生活日記
夏季心身鍛錬生活予定表 (尋五男、尋六男)用
日 |
時刻 |
仕事 |
服装 |
持物 |
指導先生 |
7/21 | 8/12 8/25 | 8/31 |
自 7:30 至 8:00 |
ラジオ体操 |
体操パンツ ユニホーム 体操靴 |
手拭 |
狩野先生、鈴木正先生 酒井先生、山口先生 田島先生、霜島先生 土方先生、親川先生 井田先生、矢後先生 本間先生 |
8/4,5,8 9,10,11 12 |
自 8:00 至 9:00 |
武道 |
同前 |
手拭 帯 |
矢後先生、本間先生 山崎先生、土方先生 |
8/7, 8/24 |
自 7:30 至 10:00 |
全校の召集日 |
いつもの服装 |
学習帳、マスク、手拭、ゾーキン |
受け持ちの先生 全部の先生 |
8/24 |
自 8:00 |
合同運動 |
ラジオ体操と同じ |
手拭 |
受け持ちの先生 |
424 お家での心得ごと
一、歯磨洗面後、東天に向かって合掌せよ
二、ラジオ体操には必ず出席のこと
三、時を見はからいお勉強を忘れず、励め
四、両親様の言いつけには「ハイ」と返事して気持ちよくせよ
五、身体衛生に気をつけて寝冷えや食べ過ぎなどするな
六、水泳ぎは心してやれ。溺れて死ぬことあるべからず
九月一日に持ってくるもの
一、学習日誌 二、行動一覧表 三、課題作品
夏期心身鍛錬生活予定表 (五、六女)用
日 |
時刻 |
仕事 |
服装 |
持物 |
指導の先生 |
7/24 |
午前7:30 |
合同運動 |
体操服 |
鉢巻、運動靴 |
親川先生外諸先生 |
8/1 |
同上 |
神社清掃 |
モンペ、タスキ、手拭 |
雑巾、バケツ、竹箒、草削り |
白幡―鈴木ナ 菅生―吉田 長尾―清宮 神明社―金坂 |
8/2 |
同上 |
家事実習 |
同上 |
裁縫用具、白い木綿の糸、たらい九つ |
清宮、鈴木ナ、鈴木ス、金坂 |
8/3 |
同上 |
同上 |
同上 |
同上 |
同上 |
8/7 |
同上 |
召集日 |
平常に同じ |
学習帳、成績物、掃除用具 |
各受持の先生 |
8/24 |
同上 |
同上 |
同上 |
同上 |
同上 |
8/25 |
同上 |
道路清掃 |
タスキ、モンペ、マスク、手拭 |
竹箒、小鍬又は鎌、竹屑籠 |
鈴木ナ、吉田、清宮、鈴木ス |
8/26 |
同上 |
神社清掃 |
8月1日に同じ |
8月1日に同じ |
8月1日に同じ |
8/30 |
同上 |
校舎清掃 |
タスキ、モンペ、マスク、手拭 |
新聞紙二枚を各自持参 |
鈴木ス、清宮、鈴木ナ、吉田、金坂 |
8/31 |
同上 |
同上 |
同上 |
同上 |
同上 |
お家の心得
一、勉強は朝の涼しいうちに 二、食べ過ぎ飲みすぎせぬやう 三、長く炎天におらぬこと
四、泳ぎは大人と一緒に 五、夜更かしするな 六、寝るときは腹巻をして 七、身体は清潔に
八、心持ひきしめて暑さに負けず 九、家事の手伝いは「ハイ」と答えて気持ちよく
9月1日に持ってくる物
一、学習帳 二、作業の感想を記した綴方、図画の成績品 三、通信箋 四、掃除用具一切
夏季心身鍛錬期間生活予定表 (昭和14年度 高一、二男)用
日 |
時刻 |
仕事 |
服装 |
持物 |
指導の先生 |
7/21 | 7/29 除 日曜 |
毎日ラジオ体操後 午前8:00-10:00 |
剣道、柔道 |
運動時の服装 シャツ、パンツ、靴 |
手拭、帯 |
親川、酒井 |
7/24 |
8:00-9:30 |
合同運動 |
運動時の服装 |
手拭、鉢巻 |
親川、土方、酒井、本間、矢後、鈴木ナ、三好 |
7/31 |
|
農業実習 |
|
|
田島、鈴木正規 |
8/7 |
7:30-10:00 |
召集日 朝会、訓話、日誌検閲、大掃除 |
学校に来る時の服装 |
夏季学習帳 宿題成績品 掃除用具 掃除服装 |
|
8/7 |
10:00- |
農業実習 |
|
弁当 |
田島、鈴木正規 |
7/21 | 8/12 除 日曜 |
7:30-8:00 |
全校生徒 ラジオ体操 (第一回の終わり) |
軽い服装 |
各区毎に 遅れぬよう 欠席せぬよう |
|
8/24 |
7:30- |
召集日(第二回) 農業実習 |
8/7に同じ |
8/7に同じ 農二米の竹竿1本 藁縄1尋* |
田島、鈴木 |
8/25 | 8/31 除 日曜 |
7:30-8:00 |
全校生徒 ラジオ体操 (第二回目) |
軽い服装 |
各区毎に 遅れぬよう 欠席せぬよう |
|
7/21 | 7/30 |
家庭実習 |
草刈 |
乾草2貫匁 |
|
鈴木正規 |
*尋(ひろ)とは両手を左右に広げた長さ。
戦地で働いている兵隊さんのことを思って、この夏は心と身体を鍛錬致しましょう。小学校の皆さんの務めを真面目になすことが国に尽くす真心であり、兵隊さんへの感謝の現われです。
国を思ふ道に二つはなかりけり
いくさの庭に立つもたたぬも
〇親、兄弟に心配をかけぬやう
◎よい行い―自分で考えてやってみませう。
◎丈夫な体
早寝、早起、規律正しく、運動。食べ物、飲物
◎勉強
429 高一、二女夏季心身鍛錬期間生活予定表
月日 |
時刻 |
仕事 |
服装 |
持物 |
指導先生 |
その他 |
7/21 | 8/12 8/25 | 8/31 |
午前 7:30-8:00 |
ラジオ体操 団体行進 |
体操のできる身軽な服装 (簡単服*又は運動服) |
鉢巻、手拭 |
毎日5人位で指導して下さいます |
日曜日と雨天はなし |
7/24 |
ラジオ体操終了後1時間半 |
排球(バレー) ドッチボール |
ラジオ体操時に同じ |
鉢巻、手拭 |
親川先生…高二 土方先生… 高一 |
|
7/24 | 7/25 |
午後5:00 | 午前6:00 |
生活行 |
和服 |
布団、洗面器、歯磨具、手拭、夕食、竹箒 |
全部の先生方 |
作法室で一泊 |
8/1 |
ラジオ体操後1時間(9時まで) |
神社清掃 |
身軽な服装 (モンペ姿) |
竹箒、雑巾、草取り器 |
吉田(平、初山、押沼) 八幡社 鈴木ナ(稗、蔵、長、犬) 菅生社 清宮(長尾、神木) 長尾社 金坂(上作延)神明社 |
|
8/2 8/3 |
ラジオ体操後2時間(10時まで) |
家事実習 |
掃除の服装 |
新聞紙1枚 |
女先生全部 |
|
8/7 8/24 |
午前 7:30-9:30 |
朝礼、訓話、学習帳調べ、大掃除 |
簡単服 |
掃除用具 |
全部の先生方 |
全校召集日 |
8/25 |
ラジオ体操後1時間(9時まで) |
道路清掃 |
掃除の服装 |
竹箒、鎌 |
鈴木ナ(稗、蔵、犬) 清宮(初、長、平、押) 金坂(神、長尾) 鈴木ス(上作延) |
|
8/26 |
ラジオ体操後1時間(9時まで) |
神社清掃 |
8/1に同じ |
8/1に同じ |
8/1に同じ |
|
8/30 8/31 |
ラジオ体操後2時間(10時まで) |
校舎清掃 |
掃除の服装 |
裁縫用具 |
女先生全部 |
|
*簡単服 単純なワンピース。夏の婦人用家庭着。あっぱっぱ
家庭作業名 |
やる時 |
大切な注意 |
学校園の水かけ |
朝(雨天と日曜を除く) |
一組(稗原、蔵敷、長澤)7/21-7/29 二組(初山、犬蔵)7/30-8/7 三組(神木、上作延)8/8-8/15 四組(平、押沼)8/16-8/23 五組(長尾)8/24-8/31 |
草刈 |
適当な時を決める |
乾草1貫匁をつくり、部落の出荷所へ 日時は部落の役員に聞いて |
夏季学習帳 |
適当な時を決める |
毎日やる予定を決めてかかる 決めただけは必ずその日にやり通す |
生活日誌 |
夜(一日の行を終えて) |
必ず日誌をつけること 内容のあるもの。9月に持って来ること |
432 6 九月の生活行
一、九月の指導精神
1 一日戦死の思想托鉢行
九月は苦の月である。九月の始業式は、震災記念日から、二百十日(9月1日のころ)から始まる。神が成長すべき日の本の子等に良き日のいわれを歴史づけてくれたとして(我々は)喜ぶ。一日(間)戦死の行をさせるがよい。修道の僧侶が経済的托鉢に行くのと同様に、子等には思想的托鉢を生活させるがよい。
433 2 土と兵隊の大和情調
一日戦死という緊張した生活の中でも、自然を読み、花を歌い、川を画くという余裕も欲しい。人間的情緒が欲しい。
戦中で生死を一秒一分の時に争う中でも、俳句を詠み、和歌を生み出すという大和情調は昔日の情景ではなく、巨砲が轟きプロペラの響きがすさまじい近代戦での方がより多く生まれている。土と兵隊、花と兵隊は、有名な戦線現地報告の芸術である。読売新聞紙上で一般読者から募る俳句、和歌の応募者で栄位を占める人々の戸籍を見よ。中支、北支、南支の戦野からの大和情調を見よ。
血腥い戦線の風を純化する大和心の詩情を幼心に培うことは、九月の観月会を中心とするよい指導精神である。
3 一刀必殺の剣法
九月、十月は運動月であり、運動会が行われ、体位向上やスポーツ精神涵養の好機である。
434 九月の指導精神は日本スポーツ精神である。「一刀必殺の剣法」即一本勝負こそ、日本の運動を支配するすべての根源的指導精神である。「今負けてもこの次がある」とか「今年は負けても来年がある」などの虚剣による西洋流のスポーツを指導してはならぬ。日本のスポーツは武力戦と一致する。単なる娯楽や道楽ではない。運動における正義・規律は、従来の西洋式教育でやかましく唱えられた指導精神であったが、今日の日本で必要とする指導精神は、正義・規律を自然に生み出す「一刀必殺」の剣法である。これは練習だからこそ必要である。(西洋の正義や規律を認めているのでは)
435 二、九月の生活行機構
生活是 |
生活行相 |
生活題目 |
生活素材 |
素材精神 |
運転施設 |
備考 |
八 紘 一 宇 |
中心帰一 全体と部分との本質を凝視して、一切の対立分離を神、君、師、親、長上に生かし結ぶ |
震 災 記 念 日 |
始業式 震災記念日 二百十日 |
1震災記念日、始業式を中心として一日戦死の実践意志を強固にし思想托鉢の生活をなさしむ |
始業式 役員任命 訓話 生活行 |
1日 (2日) |
億兆一心 中心・全体とに照らして、一切の存在事実(コト)を(マコト)の意義価値に生かし結ぶ |
乃 木 祭 |
二百二十日 重陽菊の節句* 乃木祭 十五夜 |
1誠忠の乃木夫妻を敬仰し、それへ精進せしむる 2戦中閑あり。花と兵隊を生み出す大和情調の洗練 |
乃木祭 試鍛会 観月会 |
9日 13日 15日 |
|
滅私奉公 中心と全体のために、私を滅した本来の真面目を発揮して持ち場を固める部分の没我顕真活動 |
彼 岸 |
満州事変記念日 秋季皇霊祭 |
1御国の人柱となって大陸に倒れた英霊に感謝 2諸物を成仏させる行生活・鍛錬 |
訓話 墓地清掃 慰霊祭 |
18日 23日 |
|
運 動 会 |
運動練習 予行演習 運動会 |
1一刀必殺の日本剣法の極意を体得させる国民体位向上運動 |
日々練習 予行演習 運動会 |
下旬 |
*重陽(ちょうよう)旧暦9月9日に行われる重九節、易経で9は陽の数。
436 三、九月の生活行実践
(一)震災記念日中心の生活訓練
(1)関東大震災 物的損害価格は約50億円、罹災者総数340万4898人、内死者9万1344人、行方不明者1万3275人、重軽傷者5万2074人。関東大震火災は天の国が日本に下した宣戦布告であるが、吾等の先輩は天の爆撃を物ともせず、敢然として起ちあがった。
9月1日は爆撃下の日本の態度を決する日である。徒に訓話の抽象に走ってはならない。児童の各個を一日(間)戦死の状態に置くことである。それには座らせて思う存分思索にふけらせ、思索の托鉢をさせるのがよい。折から鳴り響く午前11時58分45秒のサイレン!心構えは良いか。思索と行とから生まれた覚悟、決心は本物である。頭から注ぎ込んだものは油が切れると走らない。機械を作るのではない、思想の泉を作るのである。どこを切ってみても赤い血がピクピクと脈打つ思想の泉を!
437 (2)始業式 型破りの始業式がよい、お座なりの始業式はいけない。慢性胃腸病のような人間を作ってしまうからだ。日本の教育には創造と大胆さが足りない。(今まで日本の教育を褒めていたのではなかったか。)子供が真に帰依師の念願を持っているか、教師は真に子等を導く師としての覚悟をもっているか、請負師のようでないか。神前で我と我が身を思う存分思索し、その場に於いて第二学期のプラン、心がまえを浄書して神に捧げるがよい。これは師児同行の生活でなければならない。
(3)二百十日 風を怒り、風を喜ぶ人間になれ。「晴れてよし、曇りてもよし、富士の山」我が境のために制せられず、境を制するという心構え。風が吹いてもそれを我に与える良い試練として勇み行く男の子、女の子の集い。ここに見る景色は東洋の日本の姿である。
(二)乃木祭中心の生活訓練
泣き虫の無人(名人か)であった乃木希典に「暑いときは寒いと思え、寒い時は暑いと思え」と言わせた大原動力は何だったのか。乃木希典は蓮根が何より嫌いだったが、お母さんは三度三度蓮根ばかり与えた。また少年時代に学を志していた時、乃木希典は休日のある日我が家に帰ってきた。しかし父は希典に腰もかけさせず、19里の山道に追い返した。愛とは子供をなめることではない、子供の自由を通させることではない。そのことを誰もが(最近ようやく)知り始めてきた。しかし我が子を千仭(せんじん、ちひろ、非常に深い・高い)の谷底に落とす大乗的な真の愛を実践する母や教師は少ないのではないか。愛の血潮で以て振るう鉄拳は苦情を買わないどころか、感謝で報われる。そしてその子は成長して、
「うつし世を 神さりましし 大君の
みあとしたひて われはゆくなり」
「出でまして かへります日の なしときく
今日の御幸に 逢ふぞかなしき」
という境地に類する域に向かう。我々は偉大な乃木大将から学ぶ必要がある。それと同時に何が大将をそうさせたのかという教育法も学ばなければならない。
試胆会、剛健遠足、武道大会なども、この日を記念するよき行である。
439 (2)十五夜 重陽菊の節句とともに、十五夜は子供の詩情を養うための良い機会である。国民精神総動員運動や一日戦死運動などは、どれもこれも戦場の生臭い風を帯びた緊張感を伴い、現代と将来の日本になくてはならぬ国策であるが、この緊張体系の中で生まれる文化の花を我々は喜んで迎える。『土と兵隊』*はなぜ生まれたのか。文学や芸術による国民精神緊張化の影響力は大きい。百の説法よりも一つの詩や散文が大きな感激を与える。日本は武の国であると同時に文の国である。(文学を戦争に利用)
*『土と兵隊』は1939年昭和14年、同名の火野葦平の小説(1938年昭和13年)を、笠原良三と陶山鉄が脚色し田坂具隆が監督した国策映画である。昭和12年11月の杭州湾上陸作戦における戦闘と行軍の様や、戦場における兵隊の心情や苦悩を描く。主人公は作者で分隊長の火野伍長。歌にもなった。
部下(13名)が捕虜36人を殺し、また火野が生き残りの捕虜に「殺してくれ」と言われたので鉄砲で撃ったら、上司の小隊長から「無駄な弾を使うな」と叱られて、煩悶したというのだが、本当だろうか。
火野葦平1907-1960 本名は玉井勝則。戦前1931年労働運動に関わったが、逮捕(1932年)後転向した。戦後公職追放された1948-50が、小説家として復帰したが、突然自殺した。中村哲は妹の子。
古書を紐解くがよい。
「月ひとに見る月なれどこの月の
こよいの月に似る月ぞなき」(村上天皇)
「秋はただこよい一度の名なりけり
おなじ雲井に月はすめども」(西行法師)
440 「夕月や池をめぐりて夜もすがら」(芭蕉)
「名月をとってくれろとなく子かな」(一茶)
秋の虫が涼しげに歌う小山、すすきがゆれわめく小川のほとり、金波(日光や月光が水面に映り、金色に輝く波)・銀波(月光などが映って銀色に光る波)のさざめき、帆船のともしびが消えつ燃えつする海辺などを一夕の生活舞台として、十五夜の月の美や秋の神秘さを心ゆくばかり味わせるがよい。
(三)彼岸中心の生活訓練
(1)満州事変記念日は時局認識を徹底させるのによい日である。事象の記憶を強いるお座なりの知的訓練や、観念的な「しっかりやりましょう」式の訓練ではいけない。我を事変の中に置き、そこから湧き出る全校の叫びでなければならない。教師の時局認識が不徹底だという声をよく聞くが、それもある面確かに頷ける。
(2)秋季皇霊祭 戦没勇士に涙の慈雨を注げ。枕を高くして寝られる吾の幸せを思え。墓地清掃に捧げる誠心の一丸をいつもいつも忘れてはならない。四季折々に咲き競う花の美を、高学年女子児童が交代で捧げることは、よい乙女の行である。我が墓地を愛する者は我が祖先を愛する者である。路傍の草をむしり、塚に清水を注ぎかける乙女は、戦地で屍を片付け、傷を負った勇士を看護する白衣の天使と何が変わろう。
(四)運動会中心の生活訓練 運動会は「一刀必殺」の日本剣法を体得させる機会である。徒に時間ばかり長くかけ、非能率的な行ではいけない。只一時でもその中に「一刀必殺」の心意気があればよい。
運動種目の選定でも「一刀必殺」に適うものを選ぶがよい。大衆を教育する種目は必要だが、観覧本位ではいけない。一つ一つの種目が日本的精神に照らして恥じないものである必要がある。
運動会が師児同行であることは当然である。白姿勇ましく「さあお前達の身体と心を御国に役立つように鍛えてやろう。後について来い」という意気を寸暇も忘れてはならない。
442 運動会では高学年児童が役員として動作する場合が多く、生活を生活するよい機会である。いつも全体を振り返ってみる態度、志、観、考、行、証*という日本的生活態度が必要である。知的偏重や技術一点張りの教育では、このような態度の陶冶は閑却されてもよかったが、今後の教育では特に必要である。
*行証(ぎょうしょう) 仏語。修業と悟り307
7 十月の生活行
一、十月の指導精神
1 太鼓が鳴るのか、バチが鳴るのか
秋祭りの太鼓の音が聞こえてくるが、太鼓が鳴るのか、それともバチが鳴るのか。今の教育で不足しているのは哲学させることであるが、それが皆無である。「青少年学徒に下し賜りたる勅語」では「思索を精にし」と仰せられている。太鼓が鳴るのでも、バチが鳴るのでもない。太鼓とバチが同時に鳴るのである。太鼓の生命とバチの生命とが邦一点で融化するときに音を発するのである。これが哲学することである。この哲学する態度が、あらゆる事象を哲学してその生命を把握する因になるのだろうと思う。
2 「みのる程頭の低き稲穂かな」
春の陽を浴びて二葉する稲の苗、秋の涼風を聞いて実る稲の穂、先ず自然のもつ生命力の偉大さに感嘆せずにいられない。四十、五十になっても実らない人間の多いこと。螟虫駆除の不足か、病害か、つくづく人生のはかなさを思う。私はいつも秋の実りを心から讃えることを、我が心を励ます糧としている。自然から学ぶべきである。自然を見て考える力を鍛えるべきである。
444 「実るほど頭の低き稲穂かな」稲の生命を見る力と考える力があったならば、戊申の詔書(日露戦争後の1908年10月14日)は、聖慮を煩わせずに済んだだろうに。
3 毒茸の色に迷う人心
茸の香りやその紅色、毒々しい色の毒茸が子供の目につく。毒のあるものは外観が美しく、人心を誘う。毒を見分ける識別力を子どもに与えてやらなければならない。戦時や戦後に日の本の土に生え繁るであろう赤の毒茸を、民主の毒茸を充分警戒しなければならない。第一に我が国土にこのような毒茸が生える余地がないようにお互いが努めることである。特に教育者の我々が、一死報国を以て頑張らなければならない。そして万が一生えたら、根こそぎもぎ取ってしまうことだ。
この毒茸を見分ける識別力が(我々に)ないために、教育勅語を下し賜った明治大帝の御聖慮のほどが今更ながら思いやられ、昭和の聖代に一本の赤茸をも生えさせないように、日夜神明に誓ってこの道の戦い=思想戦に突進しつつあるのだ。我が家の、我が校の、我が村の思想の毒茸を取れ、と私は声を大にして再三叫ぶのである。
445 二、十月の生活行機構
生活是 |
生活行相 |
生活題目 |
生活素材 |
素材精神 |
運転施設 |
備考 |
|
八 紘 一 宇 |
中心帰一 全体と部分との本質を凝視して、一切の対立分離を神、君、師、親、長上に生かし結ぶ |
秋 祭 |
更衣 |
1資源愛護、消費節約の精神涵養 2革新日本の衣服作法訓練 3保健衛生訓練 |
服装検閲 訓話 |
1日 |
|
秋祭 |
1五穀豊穣に対する神明への感謝とお祭り 2思索、哲学することの訓練 |
神社清掃 神社参拝 神前生活行 |
上旬 |
||||
戊 申 詔 書 |
視力保護デー |
1銃後国民の体位向上を図る |
視力検査 保護講話 |
10日 |
|||
億兆一心 中心・全体とに照らして、一切の存在事実(コト)を(マコト)の意義価値に生かし結ぶ |
|||||||
戊申詔書下 賜記念日 |
1勤倹産を治め、華を去り、実に就き、自彊息まざるの精神涵養* |
詔書 奉読式 |
13日 |
|
|||
神 嘗 祭 |
神嘗祭 |
1神徳、君徳、社会の徳、自然の徳に対する感謝感激 |
氏神参拝 訓話 |
17日 |
|
||
報徳祭 |
1報徳精神への培い、至誠、勤労、分度推譲* |
報徳祭 報徳献金 |
20日 |
||||
滅私奉公 中心と全体のために、私を滅した本来の真面目を発揮して持ち場を固める部分の没我顕真活動 |
|||||||
教 育 勅 語 |
靖国神社祭 |
1戦没将兵に対する感謝感激 2靖国の子に対する思いやり |
遥拝 遺児を 思う日 |
23日 |
|
||
松陰祭 |
1尊皇の国士松陰先生の人格追慕と発奮 |
訓話 一夜会 |
27日 |
|
|||
教育勅語下 賜記念日 |
1明治大帝への聖恩に感謝 2聖典具現への生活陶冶 |
勅語奉読式 生活充実 |
30日 |
|
*自彊 自ら努め行うこと。
*息む 「力む」でなく、「休む」のようだ。449
*分度 分限度合。測り分けること。二宮尊徳が創始した仕法(仕方)上の用語で、家や藩の長年月に渡る平均収入を測り、例えば、百石の収入なら五十石を支出の限度として定めること。
*推譲 他人を推薦して自らは譲ること。
446 三、十月の生活行実践
(一)秋祭中心の生活訓練
(1)更衣 涼しさと共に更衣の必要を感ずるが、急に厚着させたり、秋祭り用の衣服を新調したりしてはならない。日本経済の現状を語ってやるがよい。(戦争軍備一色)小学校も校服の制定の必要があると考える。金の最もかからない、しかも最も丈夫なものを制定することだ。全国の女教員あたりから募集して国家の服装を整備することが、目下の緊要事である。我が服装を鏡にうつす女教員方の大奮起を望んでやまない。
(2)秋祭 故郷のなつかしさを感じさせるものは、秋祭りの太鼓であり、笛であり、栗であり、柿であり…である。我の温情を醸すものは秋祭りである。この日は学校も授業を短縮してやるがよい。秋祭りのもつ大なる意義の前には、箱詰めの教育は役立たない。
神社参拝、清掃、神前生活行など、秋祭りを中心として子供を動員して実践するがよい。子供の舞を奉納する生活祭がどこかの村祭に生まれてもよいのではないか。
447 (二)戊申詔書中心の生活訓練
(1)視力保護デー 近視予防法案が議会に提出されるほど近視は日本国に多い。
厚生省、文部省、視力保健連盟による
視力を護れ
次の注意を守って近視を防ぎましょう
1 強い体は近視を防ぐ
(1)食物は何でもよく噛んで充分食べること。
(2)戸外に出て大いに日光に親しむこと。
(3)毎日規則正しく運動すること。
2 眼にも休養、続けて読むな
(1)眼にも適当な休養の時間を与えること。
(2)勉強や読書を永く続けないこと。
(3)細かい作業や勉強の間には、眼の疲れない遊戯や仕事をすること。
448 3 姿勢正しく、机で勉強
(1)勉強するには机に向かって、上半身をずっと起こして真直ぐにすること。
(2)眼と机との距離は30糎(㎝)以上とること。
(3)寝転んだり、寝床や乗り物の中で本を読まないこと。
4 昼も夜も眼に良い明り
(1)充分明るい処で勉強すること。夕方や天気の悪い日などには、暗くなっているのに気づかぬことがあるから、特に注意せねばならぬ。
(2)直射日光やギラギラするむき出しの電球は眼が疲れるから避けること。
(3)明かりは左上から取るのがよい。
5 読みよい見よい書物を選べ
(1)本や雑誌は大きい文字のものを選んで読むこと。
(2)見にくい色刷りや印刷の不鮮明なものは読まぬこと。
(3)文字は軟らかい鉛筆で、大きく濃く書くこと。
6 時々受けよ視力の検査
(1)半年に一度は視力の検査を受けること。
449 (2)視力が1.0であることを知ったら、専門の医師に相談すること。
(3)近視の人は正しい眼鏡を常に用いなければならない。
以上に掲げた上司の親心を十分に体して具体的な実践方法を確立し、国家の要求する健康日本を生み出さねばならない。
(2)戊申詔書下賜記念日 詔書の中で我々国民が最も注意して日夜奉体すべき個所は次の通りであると拝察する。
「宜く上下(が)心を一にし、忠実(に)業に服し、勤倹産を治め、惟(ただ)信惟義、醇厚俗を成し、華を去り実に就き、荒怠(を)相誡(いまし)め、自彊(自ら努め行う)息(やす)まざるべし(努力して怠らない)」
9万3千余の尊い人命と15億余円の軍備とを費やした明治37年38年の戦役に大勝すると、国民は戦勝の夢から未だ醒めず、奢侈軽佻(しゃしけいちょう)に向かう趣であったが、これに反して国内事情は真に庶政更張を必要とする時だった。即ち戦後の疲弊した兵力・国力の上に、新領土の樺太と南満の新権利の経営を進めなければならない時であった。この事実・教訓を心して、(現在の)支那事変後の処理をどうすべきかを、今から教育しておかなければならない。前者の轍を踏まないように、青年教師団の大活躍を望んで止まない。
450 (三)神嘗祭中心の生活訓練
(1)神嘗祭
「神垣に使いをたてて豊年の初穂を捧げつるかな」(明治天皇御製)
10月16日は(天皇が)勅使を豊受(とようけ)宮(外宮)へ(たて)、10月17日の神嘗祭の当日は、(天皇が)皇大神宮(内宮)に奉られ、豊年の秋を迎え給うたお喜びの御礼を申し上げられる日である。
米の飯を食べていて米の飯の味を知らない者があまりに多くはないか。神嘗祭とは旗日で休むものだと考えている浅はかな者があまりに多いように思われてならない。いくら口でしゃべってもわからない世の中だ。田打ち、苗代作り、螟虫駆除、田植、除草などの一切を一通りやらせてみるがよい。殊に都会に於いて必要である。金さえ出せば、米を運んでもらって米を食べられる、こんな考え方をしている者の頭を叩き直すのが神嘗祭である。近年農村で田を借りて耕作実習をさせている進歩的学校があるのを見てうれしく感じている。農業実習は農村学校よりも都市学校で必要である。
451 次に私は神嘗祭当日における挙式(結婚式か)を主張したい。なぜならばこの祭りによって日本精神を体得させることができるからである。
(2)報徳祭
「この秋は雨かあらしか知らねども
おのがつとめの草をとるかな」
「天地の神と皇との めぐみにて
世をやすらふる 徳に報へや」
神嘗精神の具現者・尊徳翁の偉大な人格を敬仰させ、己がこれに近づこうと努めることこそ、本行事の生命である。己を取り巻くすべてに感謝を捧げ、(与えられた)環境の中で最善の生活をすることは、日本人の生活として最も貴いことである。我が受け持ちの子が環境において最善の誠を尽くしているか、不平や不満なく無言で生活を行じつつあるか。自らが自らの(与えられた)境を開拓しつつある者は、偉大な人格者である。
報徳作業、報徳献金、報徳研究会等適宜実施するがよい。
452 (四)教育勅語中心の生活訓練
(1)靖国神社祭 教育勅語の精神を身を以て実践した故人に対し尊敬の念を払わなければならない。(教育勅語が靖国神社と同一のものとしてとらえている。)靖国神社祭が国家の祭日となる日を待ちたい。(靖国神社)遥拝は厳粛裡に行われなければならない。その心情を十分に熱せさせてから行わなければ、形式に流れて面白くない結果を生む。戦没者の写真を学校に掲げて、日常の良い範とすることは良い施設である。靖国の日に遺児を集めて学校全体が慰め思いやる会を開くことは、良い億兆一心の行である。銃後強化事業もこのような内面的・心情的方面にまで発展しなければならない。
(2)松陰祭 尊皇の国士・吉田松陰を学ぶべきなのは、児童よりもむしろ教師である。松陰の熱情や教育法を今の教師が学んでよい。
453 「かくすれば かくなるものと知りながら
やむにやまれぬ 大和魂」
この日本的熱情、愛国の父魂を忘れてはならない。
「かくすれば かくなるものと知りながら
なさぬが今の 世の人々」
これが真実でなければよいと思う。教育は信仰だ。宗派を持たない教師は滅びる。(この信仰的態度が筆者の真意)
(3)教育勅語下賜記念日 教育勅語が国民の聖典であることは論を待たない。色々国民の書が出版され、多くの人々によって読まれているが、教育勅語そのものの身にしみての研究は、学者のする仕事としてあまり研究されていない。従来の教育勅語の研究は多く羅列的・西洋的研究であったように管見する。したがってその実践においても統一のない弱力なものとならざるを得なかったと思う。私が最も賛意を表している川崎市向丘生活行学校長碓井正平氏の実践案を次に掲げ、明日への実践手引としたい。(参照 教育勅語に垂示さるる指導精神、並、斯(この)道の尊厳性)
454 教育勅語に垂示さるる指導精神模式図(第二段)
天壌無窮
スメラミコト
皇運扶翼
尽忠報国
義勇奉公
国憲国法遵守
公益世務
忠孝一本
義は君臣、情は父子
奉公の道
克(よ)く忠、克く孝
中心帰一
滅私純真
誠‐真実心
体・目的・魂
ミコト
個人
爾(吾)
全和
家の中心父母
父母(孝)
爾(吾)
子
兄弟「友」
夫婦「和」
知能啓発
修学習業
徳器成就
博愛
朋友「信」
全象
恭倹
質実剛健(詔書)
大和の道
(用・手段・方法)
全和産霊
億兆一心
斯道の尊敬性(歴史性と世界性)
国体の精華 教育の淵源
今(時)
茲(所)
歴史的大道
皇祖皇宗の遺訓
臣民祖先の遺風
遠宏国肇
皇道
克忠克孝
億兆一心
世世済美
通古今
貫東西
絶対安心の道
金剛無量壽*の世界
上下四維左右へ永劫行詰らず弥栄ゆる道
(第一段と第二段)
*量り知れない寿命。仏。
備考
一 和の道は全和において奉公の道に帰一し、奉公の道は本来無一物吾なしの没我において和の道を全和ならしむる。
二 この縦の「中心帰一の道」が「全体の和」と一元化せずに離れれば、国民戦線的統制(ファッショ)となり、「和の道」だけで「中心帰一」がない時は、人民戦線的自由主義・個人主義となる。
三 この二つを一元的に徹底させるところに日本精神がある。
8 十一月の生活行
一、十一月の指導精神
1 黄菊白菊の美
455 十月と十一月は思索の月、読書三昧にふける月である。内なる己の姿を表すのによい月である。我の個は何か、私は何によって生きているのかを見出させるがよい。個性の自己観察である。私は黄菊として咲き誇っているのか、白菊として咲き誇っているのかという個性の線の太さが大切である。
日本の国は太い個性を持つ人々によって創造発展する。自ら創造し、自らを先覚と自認して進展する人々となるか、人に追随して時代遅れの人間となるか。自らを先覚として創造発展してゆく人々が多い時だけ、日本国家の弥栄がある。
456 庭先に咲き競う菊の花をつくづく見つめさせるがよい。それぞれが内なる生命に溢れて庭の面を美園にする。その精を己の心に移して、己はどうかと内省させるがよい。
「紅く咲いて大いなる菊の威勢かな」(霜山)
算術の太郎、読方の花子、裁縫のミエ子、掃除の五郎…(とそれぞれの得意分野があるように)自己の生命をしっかりつかんでいる者には不平不満がない。力のない者や個の強さがない者だけが不平不満を言う。個が強い者や線が明瞭な者は互いに他の個を尊敬し、各々が他によってますます生長発展する。
大きな菊の美は一日にして咲かない。寒霜の地下での忍苦と操守が今日の美をなしたことを思わなければならない。忍苦を愛せ!操守を愛せ!
2 水と波の思索
十一月に池の面に立って静かにふけてゆく秋の生命を思う。水の面に涼風が吹いて小波が立ち騒ぐかと思う間もなくまた元の静寂にかえる。水と波の思索にふける。水と波とは同一の物から成立している。科学的にはH2Oである。
心の中の眼を開かせるがよい。水は統一のある円満な姿を表し、波は分裂的な怒りの姿である。水は鏡であり、波は剣である。子供が喧嘩したときは静まった水の面を見つめさせるがよい。子供が死んでいるときは、立ち騒ぐ波を見つめさせて心に鞭打たせるがよい。
3 大死人の如く休め
読書や思索にふけったあとは適当な休息を取らねばならない。最大の休憩を与えてくれる休み方は大死人のようになることである。どこもかも活動を休止する時に、最も能率的な休みがある。大死人のように休んだ後には、いつでも全力で働けるエネルギーを蓄積することできる。私は現代の小学校で不足している栄養は、休むことと思索だと思う。
感想 ここで述べていることは今までの皇国思想一辺倒とは異なって、まともなことを述べているように思われる。
458 二、十一月の生活行機構
生活是 |
生活行相 |
生活題目 |
生活素材 |
素材精神 |
運転施設 |
備考 |
|
八 紘 一 宇 |
中心帰一 全体と部分との本質を凝視して、一切の対立分離を神、君、師、親、長上に生かし結ぶ |
明 治 節 |
読書週間 |
1正しい読書法を修練し、知能啓発に資する 2書物愛護の思想の涵養 |
読書講話 読書 |
上旬 |
|
明治節 |
1世界の大英主明治天皇の御遺徳を敬仰し、御代を追憶し、感奮興起、益々報効の誠を尽くし、皇献を翼賛し奉り、国運の進展を期す |
明治節 体育会 菊花会 |
3日 |
||||
億兆一心 中心・全体とに照らして、一切の存在事実(コト)を(マコト)の意義価値に生かし結ぶ |
国民精神作興詔書 |
国民精神作興詔書下賜記念日 |
1大正天皇の御高徳に対する感激 2詔書精神体得と実践指導 |
詔書奉読式 訓話 |
10日 |
||
世界大戦平和克復記念日 |
1真の平和と武装的平和 2世界現状の大観――革新国と現状維持国 |
訓話 |
11日 |
|
|||
七五三祝 |
1出成生長を喜び願う弥栄、日本国家の思想体得 |
神社清掃 神社参拝 |
15日 |
||||
滅私奉公 中心と全体のために、私を滅した本来の真面目を発揮して持ち場を固める部分の没我顕真活動 |
|||||||
新嘗祭 |
1神恩、天恩に対する感謝 2五穀豊穣、国土安穏を祈念し給う大御心への感謝 |
氏神参拝 挙式 |
23日 |
三、十一月の生活行実践
(一)明治節中心の生活訓練
(1)読書週間
459 秋は読書と思索の月である。
〇正しい書物はどんな規格に合致するものか。(書物選定ですでに注文をつけている)
〇正しい読書法はどうあるべきか。
書物は多く読ませ、多く深く考える習慣をつけてやる必要がある。書物に読まれてはならない。小説を読んで泣いてはならない。書物を読むのである。
小学校には是非小図書館の設備が欲しい。私はこういう夢を見ている。工場や漁村地帯に小学生が必要な書物を設備し、彼らが学校から帰った時、無料で見させてやる。そこの主人が自分の勉強の傍ら、子供の質問に答えてやる。「町の家」とでも名付けようか。これによって書を読む室がない労働街の子等が救われ、どんなに日本の科学力に新鮮な気力を与えることか。
460 (2)明治節
明治節は明治大帝の遺徳を仰ぎ、明治の昭代を追憶する国家日である。昭和2年1927年3月3日、勅令第25号による明治節制定の詔書を恭しく拝読させる。
「朕カ皇祖考*明治天皇盛徳大業夙ニ曠古*ノ隆運ヲ啓カセタマヘリ、茲ニ十一月三日ヲ明治節ト定メ臣民ト共ニ永ク天皇ノ遺徳ヲ仰キ昭代ヲ追憶スル所アラントス」
*Wikiによれば、「皇祖考」とは「亡き祖父」の意味。
*「曠古」(こうこ)とは、古(いにしえ)を空しくする、つまり空前。
国家日の生活訓練をさせるがよい。早朝に起床し、心身を清め、家の内外を清掃し、天地神明を拝する生活行を各自の家庭でさせる。
式話では明治天皇の御偉業を仰ぎ、明治の昭代を追憶することはもちろん、明治の時代を生んだ日本国の忍苦や操守を語るがよい。式場に咲き誇る菊の花に似た日本国の姿を見つめさせるがよい。
「思ふことつらぬかずしてやまぬこそ
大和をのこの こころなりけり」
菊花大会を催すがよい。前もって高学年児童に菊を栽培させておいて、この日に鉢植の菊を持参させ、大会を催す。さらにその発展として陸軍病院慰問の切花とする。過去の作業教育は単なる生産や作業そのものを目的としていたが、新しい日本の教育はさらにその高標として、奉仕や感謝を目標として営為されている。
(二)国民精神作興詔書中心の生活訓練
461 (1)国民精神作興詔書下賜記念日(1923年11月10日)
日本の大実業家渋沢栄一はこう言った。「総じて世の中の事は心のままにならぬことが多い。忍耐を専一として弛(撓)まず、折れず、間断(かんだん)なく進む時は、意志次第に鞏固になりて、心を擾(みだ)さるる如きことなきに至るものである。」
国民精神作興詔書を今の世に戴いて、各々が自粛しなければならない。殊に戦後においてはこの詔書を必要とするだろう。戦後でなくとも軍需景気に酔った今の工場地で必要である。
(2)世界大戦平和克復記念日
真の平和は何か。武装平和とは何か。世界各国の真の姿を説き明かしてやるがよい。現状維持国と革新国(革新国とは武装増強国のことか)、持てる国と、持たざる国との対立。このような世界の大観的説明を与え、いつも世界から割り出して自己の仕事をしてゆく習慣をつけさせてやるがよい。自分だけを中心として割り出した仕事は自由主義、赤の思想に陥りやすい。(その根拠は?)世界は絶えず進む。進歩は必ず対立を予想する。しかし日本の哲学は正合反(正反合では?)の止揚によるものでなく、あらゆる対立を中心に綜合する哲学である。従ってどれもこれも皆がそれぞれの位置で生きている哲学である。(意味不明)
(三)七五三の祝中心の生活訓練
462 西洋はどこまでも対立の国であり、子供が生まれることは、自分たちの生活を脅かす競争相手が一人増えたことであり、彼らにとっては恐れと感じる。(その根拠は?)日本とは全く反対の立場にある。
子供の出生、七五三の成長は、この上ない喜びである。自分の学校の七歳になっている一年生の女の子を全校生徒の前でお祝い申し上げるがよい。家族学校である日本の行の一つである。他人事のように思ってはならない。億兆一心もここから始まる。
(四)新嘗祭中心の生活訓練
463 新嘗祭は米を中心とする生活訓練である。食事行やその他の米についての生活訓練は前述したので、ここでは弁当の革新について述べたい。
白米食が人間の体に良くないことは以前から証明され、試験済みである。ところがその白米を止めて、七分搗(づき)とか、麥飯とかに改めない。先覚者は十何年も前から白米の不良を説いている。米偏に白は粕(かす)であるが、糠(ぬか)は米偏に健康の康である。漢字は事実事象の本質生命を直覚して生まれたものである。
私は十一月の指導精神で、現状維持の子供をつくるな、いつも人より一歩前進した革新的・創造的人間をつくれと言った。白米食をやめて玄米食に返れ、革新者になれ。厚生省は昭和14年8月1日から混砂米*の販売を禁止した。いつか近い将来に白米はなくなるだろう。その時まで待って全部が革新された時点からついてゆくような時代の直観力のない落伍者をつくってはならない。我々の各々が一人でも多く一日でも早く先覚者になった時、それだけ日本国は先覚者になっているのである。新東亜建設とか興亜の体位向上とかは、この辺から始まっていることを認識しなければならない。
464 新嘗祭を機会に、児童の弁当の大革新を要望する。女教員殊に家事科担任師の革新的意気を望んで止まない。次に有本博士が調査した「栄養と米の搗き工合」を掲げて参考に資したい。(単位や割合が書いてない。)
種類 |
粗蛋白質 |
粗脂肪 |
含水炭素 |
粗繊維 |
灰分 |
ビタミンB1 |
玄米 |
80.6 |
3.02 |
70.52 |
1.64 |
1.24 |
10 |
胚芽米 |
7.99 |
1.60 |
73.62 |
0.94 |
0.83 |
4 |
七分搗米 |
7.54 |
1.00 |
75.36 |
0.55 |
0.39 |
3 |
無砂搗白米 |
6.72 |
0.66 |
76.90 |
0.35 |
0.34 |
2 |
混砂搗白米 |
6.08 |
0.31 |
77.99 |
0.37 |
0.22 |
0 |
*混砂米 幕末に開発された精米法で、砂(房州砂や火山灰・石灰石などの搗粉(つきこ))を混ぜて米を精米するとより白くなる。しかし「江戸煩い」というこれまでになかった病気が蔓延して社会問題となった。
9 十二月の生活行
一、十二月の指導精神
1 太さと深さの訓練
465 「上陸以来十余日、早くも陥る広東に、仰ぐ誉れの日の御旗、勝鬨(かちどき)あぐる歓呼の声、異国までも響くらん」
長唄『あがる勝鬨』の祝賀電波!今更ながら皇軍の神速果敢をつくづく思う。太さと深さの軍事教育をうらやましく思う。国民教育の細さと浅さとを考えずにおれない。
師走の声を聞いて静かに省みる。共同、責任、奉仕、…、何々週間、何々デー。このようなものは小刻みで社会的に浅い訓練ではなかったか。国是=教育是=生活是が、等号で結びつけられていたか。「よい日本人たれ」「よい村人たれ」と訓練づけて来なかったか。八紘一宇の聖業を成就する「世界の掃除訓練」「世界の学習訓練」「世界の指導訓練」が行われたか。猫の目のように変わる訓練目標、中心を失ったバラバラな寄木細工――これらの線を国策の太い線に融合させ、深みのある生活の連続的訓練に還元することは、年末における本月の訓練経営の第一目標である。
466 2 全体主義訓練の師道
全体主義や統制主義が流行していて、この主義は結構であるが、この主義で訓練する前に日本全体主義のあるべき真実相を認知していないと危険であり、小学校教育を破壊する。
(イ)権力であるな、愛であれ!(義は君臣、情は父子)
児童を真に敬仰させ心服させるのは教権や職権ではなく、愛の源泉である。権力や地位による全体主義はファッショである。日本における大君の広大無量な御慈愛が臣民を感泣(きゅう)させる。これが全体主義訓育の師道の一である。
467 (ロ)理論であるな、実行であれ!(行に統一される原理)
ここでいう実行は結束主義や行動主義を意味しない。児童を真に実行の原動力にするものは適当な理論ではない。教師の全人格から表現される貴い脚下(足元)の行動である。全体主義は上に立つ者の人格を全幅的に信頼し心服しているところにのみあり得る。この全体主義社会には下剋上もないし、羊のような人間の敗北者もいない。
二、十二月の生活行機構
生活是 |
生活行相 |
生活題目 |
生活素材 |
素材精神 |
運転施設 |
備考 |
|
八 紘 一 宇 |
中心帰一 全体と部分との本質を凝視して、一切の対立分離を神、君、師、親、長上に生かし結ぶ |
寒 さ |
一、衣服 |
1資源愛護、消費節約の精神涵養 2革新日本の衣服作法訓練 3保健衛生の訓練 |
服装検閲 訓話 |
上旬 |
|
二、火 |
1資源愛護、利用更生の精神涵養 2和協一心、挙国一致の集団訓練 |
訓話 避難 防火訓練 |
上旬 (防火デーを中に) |
||||
三、凍傷感冒 |
1寒中保健衛生訓練と体位向上 |
衛生講話 乾布摩擦 |
上旬 |
||||
億兆一心 中心・全体とに照らして、一切の存在事実(コト)を(マコト)の意義価値に生かし結ぶ |
|||||||
義士の討入 |
1終始一貫した中心への誠心、臣節と堅忍持久精神の涵養 |
義士会 強行軍 |
14日 |
||||
年 末 |
一、学期末考査 |
1八紘一宇の聖業達成の使命に生きる実力認識向上の訓練 |
訓話 考査 |
上旬 |
|
||
二、綜合学習 |
1全科全教材の部分を全体に関連させ、中心に生かし結ぶ学習 |
日々学習 |
中下旬 |
|
|||
三、成績物整理 |
1物品尊重精神の涵養 2銃後強化持続の訓練 |
学習会 出動軍人慰問 |
中下旬 |
||||
滅私奉公 中心と全体のために、私を滅した本来の真面目を発揮して持ち場を固める部分の没我顕真活動 |
|||||||
四、歳末大売り出し |
1物価統制、経済戦の認識 |
経済講話 |
中旬 |
||||
五、歳末同情週間 |
1挙国一致銃後後援の強化持続 |
餅つき 出動軍人慰問 |
下旬 |
||||
六、煤払い |
1報恩感謝の精神育成 2心の煤を払って還元 |
煤払い 学校、神社 |
下旬 |
|
|||
七、終業年越 |
1実体主義生活観に基づく年末反省 2感謝祈念に還元の喜び |
年末反省会 終業式 |
下旬 |
三、十二月の生活行実践
469 前掲の生活行機構は、十二月の生活環境や学習教材を綜合してそれを日本国是に生かし結んだものである。この行い方として中心帰一、億兆一心、滅私奉公の日本全体主義指導精神を取っている。生活是と生活行相は各月とも不変でなければならない。
(一)寒さへの訓練
(1)衣服 寒さという生活の切実性から訓練に入る。衣服の原料は何か、それはどこから来るのか、その価格はいかほどかなどを問題として、戦時下の歳末年始に衣服を新調せず、現在の日本の衣服を愛用し、資源の愛護をすべきことなどを訓練する。さらに今後日本で常用すべき新日本の服制や衣服の作法について国策的な見地から意味づけ、襟巻や手袋、オーバーなどは厳禁しなければならない。なお衣服について、それは個人の所有ではなく、「ありがたき陛下の一資材である」との信仰を植え付け、そこから出発する資源愛護や消費節約でありたい。
(2)火 欧州大戦も御飯も一本のマッチから始まる。自然力を利用更生する科学的な知識の練磨が必要である。マッチも家も学校も全てが陛下の財産であるから、全生命をもってそれを守り奉らねばならない。
避難訓練や防火訓練を適時に実施して集団訓練し、不時の難に備えることが大切である。児童に各自の家の火の用心を寝る前にさせる習慣をつけさせることが望ましい。このころ行われやすい火遊びも、高等科部落自治役員の手で始末したい。
(3)凍傷、感冒 これを衣服に関連して取り扱う。凍傷の予防法として摩擦訓練をし、感冒予防法として乾布摩擦を継続的に行わせる。感冒にかかりやすい人は、どうしたら強い身体になれるかや、どんな困苦欠乏にも耐えられる体の練磨などを考えて見るがよい。
(二)義士精神の体得
「万山重からず君恩重し、一髪軽からず我が命軽し」
471 義士の終始一貫した君への誠心と臣節、それを達成すべくあらゆる忍苦と戦って勝った義士の生活と精神を体得させ、昭和義士の出現を願う。しかし現代は自己の名誉や利害損得によって臣節を変えることがあまりに多い。義士の話は、この浮草的生活を改め、忠君愛国の精神をつくるためのよい教材である。国史教科書や単行本等で義士精神の具体的精神に接させ、さらにそれを具現させることが大切だ。
次に義士会の参考プロを掲げる。
(イ)児童研究発表 (ロ)教師講話 (ハ)琵琶、浪曲、講話、劇等 (二)試胆会(暗室、便所、お墓等を利用)
当日は「日の丸弁当」持参で強行軍を行い、「踏まれては伸びる麥」「抑えれば抑えるほど高くほとばしる噴水」という忍苦を生活させ、国策の堅忍持久の精神に適合させることもよい。
(三)年末、学期末の訓練
(1)学期末考査 自由主義や個人主義の思想に基づき、得点の多少を目標として一、二を争わせず、八紘一宇の聖業達成に役立つ実力の試練を神います御前でなす。この全体主義的考え方の所では、不正も醜い闘争もない。
472 考査が続くと仕事に追われて悲鳴を上げる児童が出てくる。「仕事せわしきか、心せわしきか」道場に定座させ、心身の統制訓練をなす機会でもある。
(2)綜合学習 これは学期末の復習時間の学習に最も適した学習法である。私は綜合学習について先に『学校行事の綜合的生活経営』(東洋閣)を世に問うたが、今回国民教育審議会でそれを裏書きする案を決定され、うれしい限りだ。
学習訓練について、各教科の単純強力な型や道を訓練づけることと、事実事象の観方、考え方、処理の仕方などの全体観的綜合的躾という二つが大きな問題である。
教師は革新の層に沿って文部省の一歩先を闊歩すべきである。
473 (3)成績整理 成績物に対する尊重の念を高める必要がある。図画や書方に児童の全生命が打ち込まれている。「昨日の発句は今日の辞世」を信念にしていた俳聖の性格を児童に持たせたい。児童のノートや作品は彼らの歴史を示す。教師は子供の歴史をつくってやるべきである。図画、書方、手工などの作品を尋一から整理して歴史帳を作成してやりたい。そして彼らが成年の暁、嫁ぐとき、国家の干城として出立つ時に良い記念の土産としてやりたい。
また学期末に一学期間の成績物を展飾し、級友同志が鑑賞し批正し合って努力の後を偲ぶことも意義深い。そしてこの作品を出征軍人に送ることは、またとない生活的銃後強化事業でもある。
(4)歳末大売り出し 歳末謝恩大売り出しや歳の市が方々で行われるが、その中での物価統制について講話し、経済戦に児童を参加させるべきである。
474 (5)歳末同情週間
感想 思いやれといってもそれは気持ちだけのお慰みで終わる。
「味方の陣営に異状あり、これを如何せん」として父兄が応召し、温かい正月を迎えられない級友や、経済統制のために父親が失業した幾人かの級友のために、農業科で汗を流して得られた米を餅にして、正月を楽しく、ありがたく迎えさせてやりたい。
出征家庭での障子張り、煤払い、洗濯等にも助力させる。部落自治団を中心として勤労作務をさせる。この作務は総て教練式にやりたい。
「国を護った傷兵(を)護れ」尊い白衣の勇士にやさしい慰問の心を捧げることを忘れてはならない。
(6)煤払い 型にはまった煤払いではなく、革新的な意味を持った煤払いをさせよ。一か年お世話になった教室や学校への報恩・感謝としての煤払い、陛下の教室や学校に仕え奉る信念に基づいた煤払いでなければならない。無言で持ち場持ち場を守り、整然と遂行するこの生活行の中に、人格の全部が融化している。汚れた一年間の心の煤が払われてゆく。
学校の煤払いだけでなく、部落の氏神様の煤払いもぜひともやりたい。正月を迎えるのに境内一つ掃いていない神社がよく見受けられる。部落の人々の心が汚く、学校教育の郷土化が浅いと思われて悲しい。
掃除の方法や計画は児童に自治的に決めさせるがよい。
475 (7)終業、年越 一年を終えるに当たり、全体主義生活に基く生活の反省をさせる。「この学級で本年学級の進歩向上に最も努力したのは誰々だったか」「全体の統制を損なう行為をした者は誰々だったか」「自分はこの学級のためにどんな貢献をしたか」などの項目について反省させる。
以上の反省と教師の所見とによって本年中の成果を神に告げ、汚れを払い、感激に満ちて還元の喜びを迎え、螺旋的な日本弥栄の正月に浸らせる。
10 一月の生活行
476 一、 一月の指導精神
1 世界遍照の太陽魂
「元日や 一系の天子 富士の山」(鳴雪)
「心から 大きく見ゆる 初日かな」(一茶)
日本の元日は初日と富士と皇室とから明け始める。一億同胞の持つべき心は、世界偏照の大慈大悲の太陽心であり、巍然(ぎぜん、高く聳え立つ)と聳える富士の大国民錬成とである。
「世界を遍照する子供になれ」「内々の小競り合いはやめよ」「世界を指導する大国民になるのだ」この生活の最高目標をしっかり心に刻みつけ、第一歩の闊歩をなす。
2 節物(季節の物)にこもる日本精神
世界遍照の門出に送る幾多の節物には、日本精神の内容を含むものが極めて多い。子供にその心を把握させ、心の糧を与えることが、一月の大切な指導精神である。
二、一月の生活行機構
生活是 |
生活行相 |
生活題目 |
生活素材 |
素材精神 |
運転施設 |
備考 |
|
八 紘 一 宇 |
中心帰一 全体と部分との本質を凝視して、一切の対立分離を神、君、師、親、長上に生かし結ぶ |
正月 |
四方拝 |
1敬虔なる霊的気分に浸らせ、 2我が国体の世界に冠たることを把握 |
初詣 挙式 |
1日 |
|
書初 |
1技術向上の訓練。神に生命願かけて修練 |
書初 |
2日 |
||||
元始祭 |
1日本国のありがたさに感謝 |
家庭通報 |
3日 |
||||
億兆一心 中心・全体とに照らして、一切の存在事実(コト)を(マコト)の意義価値に生かし結ぶ |
政治始 |
1各自が職務に邁進する日 |
家庭通報 |
4日 |
|||
新年宴会 |
1精神による新年宴会 |
家庭通報 |
5日 |
||||
消防出初式 |
1日本警防団の組織活動 |
家庭通報 |
6日 |
||||
七種粥 |
1健康を思う意味を認知 |
家庭通報 |
7日 |
||||
始業式 |
第三学期 始業式 |
1八紘一宇の生活是の強調究明 2革新の意義に沿って邁進 |
挙式 訓話 |
8日 |
|||
新年兵入営 |
1国民代表を送る感謝心 2勇躍大君に参る生命奉還 |
入営歓送 |
10日 |
||||
滅私奉公 中心と全体のために、私を滅した本来の真面目を発揮して持ち場を固める部分の没我顕真活動 |
|||||||
鏡開き |
1日本故事にひそむ精神究明 |
講話 |
11日 |
||||
吉書揚げ* |
1技術修練の神事認識 2新吉書揚の制定 |
吉書揚 訓話 |
14日 |
*精選版日本国語大辞典 「吉書揚」 正月の15日、宮中の例に倣い、どんどの火中に書初めを投じて、その灰燼が高く昇るのを、筆蹟が上達する吉祥(めでたいしるし)として祝った民間の行事。
三、一月の生活行実践
(一)正月中心の生活訓練
478 (1)四方拝 (元旦には)生きていることの喜びや有難さ(を感じる。)明治神宮や皇大神宮を始め、各地の氏神や仏閣へ初参りの行をするがよい。それが自分でできない子には教師が伴ってやるがよい。一生一度初参りの気分を味わせてやりたい。寒さもなんのその、社頭へ社頭へ、一歩一歩、新土を踏みしめる砂利の玉音が杉の木立に響き、自ずと襟を正させる。折から響く軍楽隊のラッパ、整調の歩き、老も若きも日本の新年弥栄を寿ぐ喜びを感じると共に世界遍照の覚悟に燃える。
「一年の計は元旦にあり」このことについて太陽が高く昇った時に説明しても分からない。行を通して自然に沸き出る心の様を見つめさせるがよい。早朝神苑に詣でて額づくとき、皇国に生まれた身の幸福を感じない者はいない。そして我必ずや皇国のおために御柱となって戦おうという心の叫びをみるだろう。
479 初詣りから帰り、学校からいただいた刷り物によって、正月の事物に対する言われやそれに含まれる日本精神をつかませるがよい。
正月の節物に含まれる日本精神
1 松 松は常緑で、よく操(みさお)の色を保ち、長寿隆盛を意味する。一説に、左の男松は伊弉諾尊、右の女松は伊弉冊尊、竹は国常立尊*を象るという。
*国常立尊(くにのとこたちのみこと) 国土神の最初の神。「国底立尊」ともいう。
2 梅 梅は世の難儀に打ち勝って咲く。我が身と我が家の弥栄もかくあれかしという意味。
3 竹 すくすくと木高く伸びよ。松とともに色を変えない。
4 注連縄(しめなわ) 天の岩屋の故事による。内外浄穢(わい)の区別の標。
5 裏白 「しだ」とも言う。潔白を表す。
6 ゆずりは(譲葉) 親は子に、子は孫に、代々譲る連綿の家系。
7 だいだい 代々繁昌
8 昆布 よろこんぶ
480 9 鯛 めでたい
10 海老 長命。腰が曲がってもピンピン。
11 熨斗(のし、熨斗鮑(あわび)) 楽のし。楽しい。
12 穂俵 豊年満作
*穂俵(ほだわら、ほんだわら)海藻。乾したものを米俵の形に折り束ね、正月の蓬莱の飾りに用いる。
13 屠蘇 邪気を払い、長寿。支那物語が発端。
14 かずのこ 子孫繫昌
15 雑煮 長寿繁栄を祝う
16 鏡餅 神の御姿、八咫鏡に模す。餅は望月の望。(円やか、もち=満に通じる)
17 大根 毒を消し、穢れを去る。
18 煮豆 健康
19 芋 子をよく生じ、葉はよく露を受ける。
20 ごまめ 御壮健 (ごまめは片口鰯(いわし)を真水で洗って干したもの。)
21 鰯(いわし)と鯛(たい) 鯛は君父、鰯は臣下。君臣・父子の合体。
22 酒 栄のつづまったもの
23 大箸 折れないように大きな箸を使う。
481 24 ひらきごぼう ごぼうは地中深く根を張り、家の基を固くするため。
25 飾炭 澄みや住みの意味。住居は万代に動かず、黒ずんで栄えよ。
26 串柿 嘉来、赫(かが)やくがカキにつまった。
27 かちくり 勝来
(2)書初 (1月2日は)書の技術を、願かけて初めて修める日である。神に合掌した後で、その仕事を精魂込めてやることは、日本にだけ見られる美しい風習である。一枚の書初めにも全我を没入し、神人一体の境地に立たねばならない。
(3)元始祭 皇祖大御神がお手ずから三種の神宝を授けられ、わが天壌無窮の宝祚(天皇の位)を祝福し給うた日本帝国の本始=国が元(はじ)まり・始まる大本を祝い、歳の首(はじ)めに当たり、神々を祭る報恩反始(祖先を顧みること)の誠を致される御儀である。家庭講座によってその旨を伝え、日本国のありがたさを感得せしめるがよい。
(4)政治始 これはマツリゴトハジメである。毎年1月4日、年頭に当たり、万機の政を聞し召される御儀式である。政祭一致の我が国の政治道を説き、各自の職務に励むよう訓練づける必要がある。
482 (5)新年宴会 これは新年に群臣百僚を宮中に召され、御酒餞を賜る会である。陛下の大御心のありがたさと、君臣一体の日本国体を知らせるがよい。これに倣って民間でも新年宴会が行われていたが、ここ二三年事変のために廃止された向きが多い。しかし我々はこの意義ある国家的行を一時の刺激によって全然止めようとは思わない。このような時勢に於いては億兆一心の意味で一層必要であると私は思う。ただその方法においては物質よりも精神による新年の結合である必要がある。
(6)消防出初式 消防が警防団に組織された今日、その勢ぞろいは一層の意義を持つ。
(7)七草粥 万病除けの七草
「せりなずな御形(ごぎょう、母子草)はこべら仏の座すずなすずしろこれぞ七草」
七草粥は健康日本を築く食糧問題の一資料としてよい方向を指示してくれる。
483 (二)始業式中心の生活訓練
(1)第三学期始業式 八紘一宇、世界遍照の生活道をより高く掲げ、有終の済(成)を美さしむることが緊要である。役員任命でも適材適所主義によって国民徴用令(昭和14年公布)の精神においてその任につかしめるがよい。
(2)初年兵入営 我らの代表を歓呼の声で送れ。生命奉還のために出でゆく我らの兄を真心から送れ。各学校は学校音楽団を組織して華々しく送迎すべきである。小学校における唱歌はその内容として音楽団の内容を指導するように組織されるべきである。
さらに愛国少年団、愛国少女団を結成し、幼い銃後の戦士として任ぜしめるがよい。国防婦人会や愛国婦人会で用いる肩賞をかけて堂々と小旗を振り振り進む少女の姿を見て(兵隊は)心も血も躍るのである。
(3)吉書掲(揚)げ (燃える書初めが)高く天に舞うのを見て技芸の上達を喜ぶ吉書掲げ、神に捧げたものを焼き捨てる風習は、日本古来の浄めの思想である。しかもそれに書の上達を願う。日本の芸術は誓いに始まり祈りに終わる。そしてそれは平常の求道過程の総てに通じる道である。
484 資源愛護を強調する近時の吉書揚げにおいては、児童の全作品を焼き浄める必要はない。代表的なものを焼き浄め、他は国家のために献ずる。これは新しい意味の吉書揚げであると気づかねばならない。行事教育は絶えない創造発展である。徒に故事を羅列してそれを現代に還元するのを以て事足れりとはしない。要は行事本来のもつ使命をよりよく現代に生かし表すことである。
11 二月の生活行
一、二月の指導精神
485 1 魔滅の修練=心の化物退治
児童は自分の心を省みて見るがよい。心に鬼はおらぬか、心の化物はいないか。昔の人は化物はいると言った。今の人はそれは迷信だと言っている。しかし私は化物はいると言いたい。
自分は算術ができない、もう到底だめだ。こんなことを思っている間に真にできなくなってしまう。即ち自分を真の自分にしないで偽の自分を表している。これは化物の一つである。よく悪戯をする子供がいる。先生の言うこと、父母の言うことを素直に聞くことができず、いつも理屈をこねて、ブツブツ言う化物。名前を呼ばれてもハイとはっきり言うことが出来ず、いつももじもじしている化物。これらは皆自分が自分をそうさせているのである。いわば自分の心に宿る化物の仕業である。このお化けを退治するのが二月の大切な仕事である。
2 資源愛護
486 近代戦は経済戦に基く。どんなに力んでみても腹がすいていたのでは戦争ができない。経済戦は国民全員がこれに当たるべきことは論ずるまでもない。小学生の資源愛護は学用品から始まる。学用品がどの程度に価値あるものか、私どもの生命を繋ぐ米粒と比較した統計(消費節約の目標)があるのでそれを次に掲げたい。
白米一升の米粒7万1400粒
白米一升の時価は34銭、1銭につき2100粒、1厘につき200粒
ペン先 1個 2銭 1個 4200粒
裁縫箆(へら) 1個 6銭 1個 1万2600粒
学習帳 1冊 5銭 1冊 1万 500粒
鉛筆 1本 2銭 1本 4200粒
筆 1本
15銭 1本 3万1500粒
画用紙 上等八つ切り 8銭 1枚 1680粒
10枚
改良半紙 20枚 8銭 1枚 840粒
色紙 8枚 1銭 1枚 260粒
ザラ半紙 20枚 4銭 1枚 420粒
1帖
靴下 1足 30銭 1足 6万3000粒
古新聞 175枚 30銭 1枚 360粒
1貫匁
3 梅の性根
春に先駆けて咲く梅の香り、寒い木枯らしにも負けずに己の命を守り操を変えない梅は、ちょうど菅公の心にも似て、美しく思われる。梅は花の君子であると言いたい。社殿の梅、公園の梅、寺院の梅を子どもに見せ、その見方や考え方を修練してやるがよい。春に先駆けて散り行く爆弾三勇士の生命もこの梅に宿るとみられ、因縁深さを感じる。
気品が高く、操守の梅は、青少年学徒に下し賜りたる勅語の御聖旨にも適ってうれしい。
488 二、二月の生活行機構
生活是 |
生活行相 |
生活題目 |
生活素材 |
素材精神 |
運転施設 |
備考 |
|
八 紘 一 宇 |
中心帰一 全体と部分との本質を凝視して、一切の対立分離を神、君、師、親、長上に生かし結ぶ |
節 分 |
節分 |
1心の鬼を払う、赤の鬼を払う、大陸の鬼を払う修練 |
講話 豆まき |
3日 |
|
立春 |
1季節的変化に対する観念の陶冶 |
講話 理科観察 |
4日 |
||||
針供養 |
1物への感謝 2物資節約愛護の実践 |
講話 供養 |
8日 |
||||
億兆一心 中心・全体とに照らして、一切の存在事実(コト)を(マコト)の意義価値に生かし結ぶ |
紀 元 節 |
紀元節 建国祭 |
1我が国体の深遠にして優秀なるを知らせ、愛国精神の高調をはかる |
挙式 行進 |
11日 |
||
神宮祈年祭 |
1穀物豊穣、国土安穏を祈年し給う陛下の大御心に感謝 |
神社清掃 神社参拝 |
17日 |
||||
天 神 祭 |
爆弾三勇士忌 |
1中心帰一思想の養成 2護国英霊への黙祷 |
訓話 黙祷 |
22日 |
|||
滅私奉公 中心と全体のために、私を滅した本来の真面目を発揮して持ち場を固める部分の没我顕真活動 |
|||||||
天神祭 |
1操守の菅公敬仰 2学問への精進 |
訓話 菅公を 偲ぶ会 |
25日 |
三、 二月の生活行実践
(一)節分中心の生活訓練
(1)節分 節分の日には昔から追儺(ツイナ、おにやらい)、おにやらいの行事が行われている。これは悪疫を退治するために行われたものであるが、その行事が今日もそのまま行われている。
追儺 朝廷の年中行事。大晦日の夜に悪鬼を追い払うための儀式。疫病その他の災難を追放しようとするもの。
悪疫を払い避けることは体位向上の点からみて極めて必要なことである。さらに今日では我々お互いの心中にいる賊を滅し、赤の賊を平らげ、大陸に住む賊を滅するという意味を持ってこれを実行する必要がある。『山中の賊を破るは易く、心中の賊を破るは難し』
道場に定座させ、どういう鬼を払うべきか、各自に見出させ、それを豆によって払い去るがよい。
思想の鬼を追い払うことを忘れないこと。
感想 体位向上と身体の健康にことさらいつも注意しているが、これは兵隊を意識しているのではないか。
490 (2)立春 立春は節分と関係づけて取り扱う。昼夜の長さや温度の変化などを児童に測定させ、立春の季節的意味を知らせ、さらに暦の中の立春の位置を自覚させる。
(二)針供養中心の生活訓練
(1)針供養 昔から12月8日(事納め)と2月8日(事始め)に、女子はこの日一日は針仕事を休み、使えなくなった折針や錆び針を集め、日ごろの労苦を感謝して供養を行い、淡島神社に御納する。淡島神社は紀伊の国海草郡加田村にあり、もとは同地の淡島にあったものをここに移したものである。御祭神の婆利才女は針仕事が非常に巧みで、後世針の供養と針仕事の上達とを祈願する対象となった。
「万物総て仏性あり」と釈迦は言う。一本の針、一本の鉛筆、一枚の紙にもすべて仏性があるから我らは資源愛護の情を起こす。針供養と共に、鉛筆供養、理科の実験で尊い命を投げ出してくれた植物や動物への供養も同時に行うことが望ましい。子供の力によって供養塔を建立し、子供らが交代で線香やお花、水をやっている学校を参観してうれしく思ったことがある。(筆者は視学をやっていたのか)
491 またこの日を利用して、廃物更生展覧会を開催したり、学用品査閲などを行うことも意義深い。
(三)紀元節中心の生活訓練
(1)紀元節、建国祭 皇紀2600年(昭和15年1940年11月11日~15日)(が来年に迫っているが、)深遠で優秀な日本国に生まれた幸をつくづくと感じる。建国祭が(明治6年に)制定されてから国民全般の奉祝運動が展開されるようになったことは誠に喜ばしい。
子供には国家日の生活をさせる。建国祭の行列にも参加させるがよい。このような場における国民性の陶冶は非常に役に立つ。
各家庭でお赤飯を炊くように家庭通報で知らせるべきである。我が子の誕生日にはお赤飯を用意するが、国家の建国当日はそうしない家をよく見かける。物事を自分から割り出して処理する習慣がなかなか抜けきらない。
492 (2)神宮祈年祭 これは畏くも臣民が常食とする米の豊穣を御心配されて陛下が伊勢の皇大神宮に豊年を御祈り遊ばされ給う祭りである。祈年祭、神嘗祭、新嘗祭の位置関係をよくわきまえさせねばならない。陛下の大御心に感謝申し上げるべきはもちろんのこと、さらに我ら臣民も氏神に対して祈年祭を執行せねばならない。今日この氏神での祈年祭に小学校の児童も参列し、ともどもに祈年の誠を捧げていることは喜ばしいが、事前にその意義を十分に念を入れて説明しておかないと、ぼんやりとその場を過ごしてしまう。不忠はこんなところにもあることを心せねばならない。全校児童が参列できない場合は学校の神棚に対して行うがよい。これもない場合は伊勢をはるかに拝してさせるがよい。
(四)天神祭中心の生活訓練
(1)爆弾三勇士忌 1932年昭和7年の満州事変(上海事変)における、江下、北川、作江の三勇士の霊に黙祷を捧げ、今日生きている者の覚悟を新たにする。私は日本精神は生命奉還であるとしばしば述べた。この生命奉還は単に戦地においてだけでなく、各職業の場で実践できることである。一日戦死、生命奉還など、このような英霊と言葉とを持つ私共日本人の幸福は他国に見られない。
493 私どもは授業中に爆弾三勇士を生み出さねばならない。或る問題を提出する。そこに真の爆弾三勇士がいるか。学習中の答え方の態度、処理の仕方の態度、立ち方・坐り方の態度のそれぞれにおいて三勇士の所作を模範として訓練づける必要がある。教室という戦場で爆弾三勇士を作りつつあることを忘れることは罪悪である。
(2)菅公祭 梅を愛し、梅の人格を後世長く残した菅公の御霊を心からお祭り申し上げる。
「東風吹かば香おこせよ梅の花
あるじなしとて春な忘れそ」
菅公の梅は寒い冬の操守を忘れず、咲くべき春の初めに香ばしく咲き誇ったのである。
494 天神様に子どもを引率して今を盛りと咲く梅の花をよくよく見させ、考えさせるがよい。梅の木の下で行をやるのである。我が心に操守ありや、正義感ありやと自分に聞いてみるがよい。主人公はいるか、留守ではないか。黙っている人間、口先だけでうまく世を渡る人間があまりに多くないか。梅の木の純で朴訥な気節を重んずるものが、もっと大勢出てこなければならない。
従来の訓育に誤りがあったと思う。(1)徒に多くの訓練目標を羅列的に掲げたり、(2)何々をしてはいけないとか、(3)何々週間といったような方式の訓練経営があまりに多くなかったか。(筆者もそう言ってきたのではないのか)これらの訓練はいずれも人の行の根柢になるべき心情の培いを忘れていたように私は思う。心の琴線に触れて出て来る行動でないと真のものが生まれて来ない。何を訓練すべきか、それは知識でも、方法でも、技術でもない。心境態度を練ることである。心境態度を練るのに最も良いの(教材)は自然である。自然のもつ生命を見て、考え、することが出来れば、半分以上は成功したと言える。
12 三月の生活行
一、三月の指導精神
感想 本書が刊行された1939年昭和14年当時の日本の教育は子供に考えさせないことを求めていたようだ。武道が学校教育に導入されたのはつい最近の昭和14年のことであった。その武道はあれこれ考えずに気合を入れることが目的なのだそうだ。
1 生活への気合
495 昭和14年4月から武道が小学校の準正科の教科目として取り入れられ、今各小学校で実施されつつある。武道が小学校の教科の中に取り入れられたことは、日本教育における一大革新である。武道によって第二国民(子ども)が陶冶される心情価値は極めて大きい。私は武道の生活への活用を叫びたい。生活の中で武道を学ぶことは、生活に気合を入れることである。除草が今少しで終わろうとするのに嫌気がさしてきたとき、息を深く吸い込んで(それが)肚に落ち着くとすぐに「エイッ」と気合をかけさせるがよい。そして後に残る仕事は蒋介石の首であるぞ、これを征服せずして何ぞ、という意気で仕事に進撃する。紀平博士*は日本精神は「何くそ」の一言につきると言われた。「エイッ」の気合と「何くそ」とは同一であると私は考える。
*紀平正美(きひらただよし、1874年明治7年4月30日―1949年昭和24年9月20日)のようだ。
東京帝大文科大学哲学科を明治33年1900年に卒業。ヘーゲル哲学と仏教との結合を試み、「無門関解釈」「行の哲学」などを著した。昭和7年1932年~昭和18年1943年まで国民精神文化研究所事業部長として戦時下の日本主義を鼓吹した。戦後公職追放。著書はその他に「自我論」「認識論」「哲学概論」「三顧転入の論理」「日本精神」「人と文化」(20世紀日本人名事典)
496 授業中に児童が気抜けした時、則ちスキが生じたとき、大喝一声して心から気合をかけ、仕事を継続するがよい。これは今後の日本の学校教育の学習過程中の教育方法的原理であると予見する。女子の高学年あたりではほとんど口を開かない。思い切って自分を投げ出してしまうように訓練づける必要がある。
気合修練の方法として教師の前に一人一人呼び出して気合をかけさせることなどは良い方法だと思う。特に校長の面前で行う気合の行は能率的である。この気合が生活の中で活用された時、真に没我の行がなされるのである。小学校に武道が取り入れられたのはおそらくこういう意義や目的からであると私は思う。学科は生活への綜合的関連性を持つ。
497 2 おらが国さ=国と共に歩む
日本の国は今非常時だと誰もが口にするが、日本の国を背負っている者が誰かについて考えない。それは内閣の諸公か、政治家か、戦地で働く将兵であると考えている。日本の国に住んでいながら、米の飯を食べさせていただく寄生虫か何かのように自分を位置づけ、この問いは直接自己の利害に関係する問題ではないとして、一向に耳を傾けない。或る工業都市の工場の入社試験で、「コロンス島*とはどこか」という問題を出したところ、女学校卒業の応募者の中に一人の正解者もいなかったそうだ。
日本の国が今どうなっているか、今どんな問題で悩んでいるか、それをどう解決しなければならないか、それらの問題を自分の問題として考えてゆく子供をつくらねばならない。私の学校という小さい社会から出発して行くがよい。「日本の国が」ではなく「お前の日本国が」である。他人事のように思ってはならない。「おらが国さ」の心がまえと心境態度を子どもに熨斗(のし)づけて進級・卒業させてやりたい。
*コロンス島(鼓浪嶼)「コロンス」という発音は原地語の「閩(びん)南語」に基く。厦門(アモイ)の西の海に浮かぶ岩でできた小島。世界文化遺産。18世紀(トラベルjp、19世紀の間違いではないか)に各国の領事館(万国共同租界)が置かれていた。
3 ありがとう御ざいました
私は日本の仕事は「誓いに始まり、祈りに行われ、感謝に終わる」と言った。授業、運動、作業を通して感謝心を養うように努めねばならない。
「先生長い間ありがとうございました」と叫ぶ子を持つ師は「神様長い間無事に過ごさせて戴いてありがとうございました」と思わず合掌するに違いない。
「なすことのなくて気安し眠る山」
499 二、三月の生活行機構
生活是 |
生活行相 |
生活題目 |
生活素材 |
素材精神 |
運転施設 |
備考 |
八 紘 一 宇 |
中心帰一 全体と部分との本質を凝視して、一切の対立分離を神、君、師、親、長上に生かし結ぶ |
ひ な ま つ り |
満州国成立 記念日 |
1満洲帝国成立祝福 2日満支ブロック形成 |
挙式 訓話 成績交換 |
1日 |
ひなまつり |
1日本女性の純美なる情操陶冶 |
ひなまつり 学芸祭 |
3日 |
|||
地久節* |
1陛下の万寿を慶祝し奉り御坤(こん)徳*を敬仰せしむ |
挙式 訓話 |
6日 |
|||
億兆一心 中心・全体とに照らして、一切の存在事実(コト)を(マコト)の意義価値に生かし結ぶ |
陸 軍 記 念 日 |
陸軍記念日* |
1祖先の忠勇へ感謝 2中心帰一思想の信念化 |
挙式 訓話 閲兵分列 |
10日 |
|
国民融和日* |
1国民融和思想の涵養 |
講話 |
14日 |
|||
春季皇霊祭 |
1神ながら大道たる報恩反始*精神の涵養、孝道実践 |
墓地清掃 墓参 |
21日 |
|||
滅私奉公 中心と全体のために、私を滅した本来の真面目を発揮して持ち場を固める部分の没我顕真活動 |
卒 業 式 |
卒業式 |
1神、君、師、親への感謝 2明日へのよき巣立ち |
挙式 |
下旬 |
|
卒業奉告 |
1感謝奉告と明日への門出に当たっての誓願奉告 |
奉告祭 奉告 参宮旅行* |
下旬 |
|||
国際連盟脱退 |
1新東亜建設、八紘一宇の日本国理想の確認 |
詔書奉読式 訓話 |
27日 |
*地久節 皇后誕生日。老子の「天長地久」から。
*坤徳(こんとく) 皇后の徳。
*陸軍記念日 1905年3月10日の奉天での勝利を記念する日
*国民融和日 1930年決定。五か条の御誓文が示された3月14日を記念する。
*報本反始 「本に報い、始めに返る」と読む。「本」は天地、「始」は祖先。「反始」は祖先の恩に報いること。礼記より。
*参宮旅行 伊勢神宮に参拝すること。
三、三月の生活行実践
(一)ひなまつり中心の生活訓練
500 (1)満州国成立記念日 盟邦満州国との交際は、ひなまつりにおける温情を以てなされねばならぬ。児童に日本から見た満州国の地位を話し、満洲の地理・歴史を語るのもよいが、もう友好の実践期に入っていることに気づかねばならぬ。小学生を動員した日満一徳一心の教育は、先ず第一に小学生の文書交換から始まる。図画、手工、書方などの成績品を中心に行う。第二に移民教育を十分に行うことである。武力と経済での戦いに勝っても、満洲の野に草を一面にはやしておいたのでは申し訳ない。今後は勤労報国隊などをどしどし派遣することである。小学校高等科における英語は廃止して、満州語や支那語を付設すべきである。
(2)ひなまつり 女子をひなにさせる日である。日本のひなはどんな資格をもつのが理想かという規格を与えてやるがよい。それには3月6日の地久節を綜合して扱うがよい。皇后陛下の御人格そのものが、日本女性の規格である。皇后陛下を御手本として日々の修養に励ますことが大切である。
日本女性を代表するような劇を演出させるのもよい。劇は学校内の観衆だけでなく、校外からも呼び入れて、よい婦道教育の機会とすることが望ましい。
501 (二)陸軍記念日中心の生活訓練
(1)陸軍記念日 懐古教育に終わってはならない。子供を満洲の広野に立たせるのがよい。気をつけの我慢ができるか、整頓が立派にできるか、分列行進が勇ましくできるか、途中でへこたれてしまう子供はいないか、気合をかけさせるがよい。最後まで頑張らせる修練だ。強行遠足やマラソン等もよい施設である。
畏くも明治大帝は明治38年3月13日、大山総司令官に対して次の勅語をお下しになられた。
「朕深く爾将卒の能く堅忍持久絶大の勲功を奏したるを嘉す。尚益々奮励せよ。」
502 「堅忍持久」というお言葉を傾聴しなければならない。今後の行事は説話よりも行一点ばりで進むがよいとさえ私は考えている。行は決して堅苦しいものではない。行は最も自然な道である。人間が不自然な動物になり切っているから苦しく感じるのである。
(2)国民融和日 新東亜建設の戦いでは多くの人種との交際の必要が生じてくる。満洲人、漢人をはじめ、ドイツ人、イタリア人など我等の新しい友人との交際道を学んでおくことが必要である。満洲、支那をすぐお隣の県や町村と考えさせることが必要である。
なお朝鮮半島人との融和は今日未だ真の域に達したとは言えない。お互いに布を取り去り、裸になって、対するがよい。まず自らが裸になることだ。内に先入観があるといけない。己が空ならば、相手の姿をそのままに受け入れることができる。疑心は暗鬼を生む。(甘い。殴っておいてそれを謝らないでは問題は解決しない。)
(三)春季皇霊祭中心の生活訓練
彼岸桜がポツポツ咲き、春の温かみを呼ぶ。健やかに進級・卒業できる子等は幸せだ。この喜びを共にできない亡友、亡師に対して慰霊祭を挙行する。神式、仏式どちらでもよい。(キリスト教はだめか)その学区の状況に応じて実施する。次に参考プログラムを掲げておく。
503 (1)一同入場 (2)敬礼
(3)降神 (4)献餞
(5)慰霊の辞 (6)玉串拝礼
(7)昇神 (8)撤餞
(9)敬礼 (10)一同退場
「まざまざといますが如し魂祭」(季吟)
靖国の子等を集めて、亡き父、亡き兄の霊を弔うことを忘れてはならない。
(四)卒業式中心の生活訓練
(1)卒業式、卒業奉告祭 人生の第一課を終えて、社会に巣立ちゆく教え子たちに一生のはなむけを贈ってやるがよい。或る修養団*の理事さんはその子の手首に糸をつけてやり、社会に出て苦しかった時や悲しかった時、うれしかったときに、いつもその手首の糸の輪を見なさいとはなむけした。或る家の貧しい女の市電車掌さんは、朝夕女学校に通う友から受ける罵りをその腕輪によって耐え忍んだという。私は巣立つ子等に座右銘を書いて与え、その子の一生のはなむけとしている。座右銘はその子の性質や趣味等を一生支配するであろう金言を選び、墨書して与える。
*修養団 1906年2月11日に蓮沼門三が創設した社会教育団体。大正デモクラシーに逆行する日本精神を普及した。住友金属や日立が協賛した。今でも活動していて、企業の新人研修に使われている。千駄ヶ谷にSYDビルがある。
自分の力で卒業や進級ができたような顔をしている子供がいる。日本人の成長は「誓い祈り感謝する」ことである。卒業の奉告を氏神、皇大神宮、明治神宮等に必ずさせるがよい。その際神官から祓い浄めていただき、神礼を拝受し、それを恭しく家庭の大神宮様に奉納しておき、男は徴兵検査に合格し第一線に立つとき、女は他家に嫁する時のよい守り神として持参するがよい。
504 (2)国際連盟脱退 社会の波は荒い。第二第三の国際連盟脱退が目前に迫っている。試練の嵐は怒り猛っている。
「ものまなぶ窓をはなれていまよりは
国のつとめにたたむとすらむ」(明治天皇御製)
愛しき子等よ、最後に今一度ありがたく謹誦しよう。
「今はとて学の道におこたるな
ゆるしの文をえたるわらはべ」(明治天皇御製)
以上
参考文献
碓井正平「教育勅語に垂示さるる指導精神、並、斯(この)道の尊厳性」454
土方恵治『学校行事の綜合的生活経営』(東洋閣)472
修養団503
紀平正美495
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