映画『ハルビン』20250708 高崎イオンシネマ
伊藤博文の印象 私の伊藤博文像は『伊藤博文演説集』に基づくもので――それも大分以前に読んだので記憶が定かでないが――、如才ない、多弁の男かと思っていたが、本映画での伊藤博文像は、権力者然としていて、言葉少なく、冷酷な印象だった。
韓国ではジャンヌダルクのような女性像が、尹錫悦非常戒厳軍の鉄砲の砲身を掴んで抗議するなど、記憶に新しいが、本映画でもそういう女性が登場する。馬に乗り、普段は寡黙だが、必要な時には大声で発言して、かっこいい。実話ではないのだろうが、否、そういう人も実際今も昔もいたのかもしれない。
また「1909年10月26日、ハルビン駅で、安重根が伊藤博文を暗殺した」と、教科書では教えられているが、映画では安重根の単独犯ではなく、義兵集団によるものとして描かれている。史実はどうだったのだろうか、おそらく集団によるものと考えるのが合理的かもしれない。
ところで映画館(イオンシネマ高崎)の音声が大きすぎて、耳を手で塞いでいた。映画館は大音量をサービスと考えているのかもしれないが、心臓に悪い。頻脈が起りはしないかとひやひやしながら見ていた。
史実に関して 映画で伊藤博文がハルビンでのロシアの某代表との会見の際に、「ロシアも、もともと中国の土地(ハルビン)を占領しているではないか」と指摘していて、映画製作者もロシアに対する批判的視点を持っているのだなと感じたのだが、家に帰ってWikiで調べてみると、「満洲」領有権の複雑な動きが分かった。
まずロシアが東進し、満州に手をつけた。
1689、ネルチンスク国境画定条約 黒竜江(アムール川)・外興安嶺(スタノヴォイ山脈)を中露の国境とした。
1858、璦琿(アイグン)条約・天津条約 ロシアは満洲北部(それまで清国領とされていたアムール川左岸)を占領し、沿海州(外満洲、ウスリー川以東)を「共同管理地」とした。
1860、北京条約 「共同管理地」=沿海州や、旅順・大連をロシア領に。英仏も絡む。
1895、三国干渉の余波で、ロシアが満洲横断鉄道(東清(中東)鉄道)の建設権を獲得した。
1900、義和団事件 ロシアが実質的に満洲を占領。
1905、日露戦争 旅順・大連は日本領に。北満洲がロシア領に、南満州(の鉄道沿線)が日本領に。
1905、乙巳保護条約 日本が韓国の外交権を剥奪。
1909、伊藤博文暗殺
1910、韓国併合
1918-1922, 1925、日本はソ連成立の時の対ソ連戦争で、東シベリア一帯を一時支配した。
1931、満州事変で日本は満州を実質占領した。