2022年1月29日土曜日

佐藤熊治郎『現代教育思潮批判』目黒書店 大正15年10月 紹介

佐藤熊治郎『現代教育思潮批判』目黒書店 大正1510月 紹介

 

 

筆者は文部省の小学校令施行規則を抜け出すことができなかった。筆者は欧州に留学してその成果を報告する意味で西洋の教育観や教授法を本書でも紹介している部分もあるが、文部省の小学校令施行規則は一つの史観しか許さないから、生徒中心学習ではそれが忽(ゆるがせ)にされることを筆者は恐れ、自学主義を批判したのではないか。文部省史観を否定できなければ、当然の帰結であるが。

 

小学校令施行規則145

 

第五条 国史は国体の大要を知らしめ兼ねて国民たるの志操を養うを以て要旨とす。

尋常小学校に於いては建国の体制、皇統の無窮、歴代天皇の盛業、忠良賢哲の事蹟、国民の武勇、文化の由来、外国との関係等の大要を授け以て国初より現時に至るまでの事歴を知らしむべし。

高等小学校に於いては前項の旨趣を拡めて稍々詳らかに我国発達の蹟を知らしむべし。

国史を授くるには成るべく図画地図標本等を示して児童をして当時の実情を想像し易からしめ特に修身の教授事項と連絡せしめんことを要す。

 

本書で西洋の進歩的な文化教育学120が紹介されているが、文化学院を思い起こす。文化学院もこの大正のころの開学ではなかったか。進歩的と聞いているが。Wikiによれば大正101921年創立、2018年閉校とある。与謝野寛や与謝野晶子が教師をしていたようだ。

 

本書でも紹介されているとおり、教師中心の授業展開と生徒中心の学習との違いに関する問題提起は大正のこの当時からあった。その結果は如何。私の同僚の某高校英語教師が戦後まもなくアメリカの高校を訪れ、その授業に招かれた時、生徒の質問攻めに会い、生徒の質問の多さに驚愕し、日本では考えられないことだという話を聞いたことがあるが、教師中心の授業で生徒は受動的に教師の話に耳を傾ける教育と、生徒に主体的に自分の頭で考えさせる教育との違いは、やはり今でも大きいのではないか。

  以上 

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