映画『黒川の女たち』松原文枝監督 20250910 前橋シネマハウス
感想
ソ連兵だけでなく開拓団の団長から女性に対する被害があったことをないものとして秘密にし、女性の苦しみを不問にして闇に葬ることに抗い、それを明るみにして女性の復権を果たすという意味では評価できる。しかしそれは日本国内だけの話ではないか。
「加害性」についても考えなければならないと言葉では述べつつ、その実態が描写されていないのは残念だ。例えば平頂山事件の被害者の子孫は、過去のまた今の日本をどう考えているかも扱ってもよかったのではないか。せっかく満洲の現地まで出向いているのだから、当時土地や家を奪われた現地の人たちの子孫は、日本のことをどう考えているのだろうか。そこを描写してもらいたかった。平頂山(撫順)は満洲の黒川開拓団があった場所とかなり近いところにある。軍人でもない日本人開拓団の男が日本の軍服を着ているだけで現地の人達に恐れられたというが、その根拠があったはずである。
想像するに彼らは現在の日本の歴史修正主義者について面白くないと考えているはずだ。現在の習近平政権もことあるごとに歴史観について日本に注文をつけているではないか。
黒川村開拓団遺族会会長・藤井宏之氏が女性復権の立場を明確にした描写は評価する。「公表すべきでない」と主張していた黒川村開拓団遺族会の前会長・藤井恒氏はそれに対して今どう考えているのだろうか。
追加
映画では中国の「黒河」は撫順に近そうに見えたのですが、AIで調べると、「黒河」はロシア国境の黒竜江沿いで遠いですね。
ところが後でNHKで調べてみると、黒川村開拓団があった場所は、中国の「黒河」ではなく、「陶頼昭」とあり、そこは長春とハルビンとの中間にあるから、やはり映画にあった通り、撫順とは黒竜江沿岸の「黒河」ほど遠くはないですね。
蛇足 いかに映画の長所がリアルなことだとはいえ、人の臨終の間際まで撮影して放映するとは、品がないというか、配慮が足りないと思いました。皆さんはどうお考えですか。
0 件のコメント:
コメントを投稿