笠原十九司『憲法九条論争 幣原喜重郎発案の証明』平凡社新書 20230414
感想 2025年6月19日(木)
宮内庁は天皇の言葉を公表していないらしい。その理由は何か。余りにも人間的な言葉なので、その神格性が汚されることを心配しているのだろうか。それは宮内庁の越権行為である。天皇の言葉は民衆のためのものである。公表してもらいたいものだ。二重権力状況というべきか。以下その部分を抜粋する。
091 「大日本帝国憲法にもとづいた幣原内閣は、天皇を戦争犯罪人として東京裁判にかけるべきだとする連合国もあったことを考えると、国際的には公にできない「裏の政府」と言えた。宮内庁が天皇への内奏、上奏の内容にかかわる記録は公開していないので、天皇が幣原内閣の政治にどのような影響を与えたのか、その実態はわからない。(高橋紘・鈴木邦彦『天皇家の密使たち―占領と皇室』文春文庫1989、p.265)
例えば、さきのGHQの公職追放令をめぐって幣原内閣は次のような「表の政治」と「裏の政治」の様相を見せた。天皇は、公職追放令に対して藤田尚徳侍従長に、「随分と厳しい残酷なものだね、これを、この通り実行したら、いままで国のために忠実に働いてきた官吏その他も、生活できなくなるのではないか。藤田に聞くが、これは私にも退位せよというナゾではないだろうか。」「マッカーサー元帥が、どう考えているか、幣原総理大臣に聞かせてみようか」と、天皇は思いつめた表情で尋ねたという。」(藤田尚徳『侍従長の回想』講談社学術文庫2015、p.218)
092 「二重政府構造は流動的であり、その分析は複雑である。さらに記録資料が多く公開されていないために、分析は容易ではない。」
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