2020年12月6日日曜日

パンと戦争 横光利一 1944年4月号 「文藝春秋」にみる昭和史 第一巻 1988 感想・要旨

パンと戦争 横光利一 1944年4月号 「文藝春秋」にみる昭和史 第一巻 1988

 

 

感想

 

横光利一1898.3.17—1947.12.30は、世間=世界を知らないナイーブな田舎者か。そのナイーブな日本人が、戦争期に右翼顔負けの狂信的な純国粋主義者に成長したようだ。新感覚派かどうか知らないが、意味の通じない日本語を時折織り交ぜる。

 

 

要旨

 

編集部注

 

大東亜宣言を華々しく打ち上げたものの、戦争の前途に光明がなくなっていた。米軍はマーシャル諸島(パプアニューギニアの北東)に侵入し、絶対国防圏*の崩壊が始まった。決戦非常措置*が取られ、国民生活はさらに厳しくなった。代用食が日常化され、米の配給は二合三勺の名目だが、とうもろこしや高粱が米の代わりに配給された。そういう世情を、「日本回帰の旅愁作家」(横光利一)はどう考えていたのか。

 

*絶対国防圏 劣勢になった日本が、本土防衛上確保し、また戦争継続のために必要不可欠な領土・地点を定め防衛を命じた地点・地域。「今度採るべき戦争指導の大綱」1943.9.30に基き、千島、小笠原、内南洋*(中西部)、西部ニューギニア、スンダ、ビルマを指す。*内南洋とは、マリアナ諸島、カロリン諸島、ゲールビング湾(現・チェンデラワシ湾)以西のニューギニア以西。

*決戦非常措置 1944年2月25日、「決戦非常措置要綱」を閣議決定。学徒動員、女子挺身隊の強化、地方への疎開の推進、旅行の制限、高級享楽の停止(待合、カフェー、遊廓、劇場などの休業)、官庁の休日削減など。また、電力開発などの公共事業の停止、設備修繕も最小限に止められた。

 

本文

 

563 「もう戦争が起らなければ、人間は救われなくなった」と、東北地方の某老人が言って死んだ。平和との戦いで戦死した名誉の死であった。誰しも平和を望むにちがいない場合に、人間を最も救うものが戦争だと、観念したところに、尋常でないこの老人の「誠実さ」を感じた。(戦争することが誠実なのか、これは戦前の人間に特有な物の考え方である。)

 

戦争がどうして始まったかは分かるが、どうして終わったかはいつの戦争でも分からない、とヴァレリーが書いていたが、それはヨーロッパの場合に当てはまることであって、東洋の戦争とは質の違いがある。(こう言うのだが、その説明がない。)

 

 「人はパンだけで生きることはできない」という意味は、人は満腹すると、その団体の頭(ボス)を欲するものだ、というのが西洋での解釈だが、日本では、この心配は要らない。それだけで私らはありがたい。西洋における頭(ボス)の動揺という心配は、パンの要求以上に永久の苦痛である。(何を言っているのかさっぱり分からない。西洋では指導者に不安を感じるが、日本では指導者が立派だから何ら心配はないということか。)

564 実際、日本ではパンの心配は要らない。頭(ボス)の心配も要らない。(いずれも事実は真逆ではないのか。狂信的指導者を信仰すれば、心配は要らないとしても。)

 

 今は、三膳の御飯を二膳にする「気力」があれば、産力(産業力)の伸縮性は自由になる。(何を言っているのか。産業が発展するとでもいうのか。)三膳を一膳にせよとまで言う必要はない。(それでは二膳を維持できるというのか。)

 

 ある地方に公用で出かけたとき、貧しい昼飯しか出してもらえなかったが、それはその地方に豊かな食料がなかったからではなく、あったのだが、出すと裕福だと思われ、後でたかられるのを恐れて出さなかったのだ。(それは貧困の隠蔽ではないか。本当になかったのでは。)それは誰かの命令でそうしたのではない。

出張した客(自分)が、昼の弁当も食べられないという、その地方の「謙虚さ」に遭遇しても、公務に満足すべきだ。(何を言おうとしているのか、意味不明。地方の貧困の現実を内心では知っていて、それを問題視しない、武士は食わねど高楊枝か。)

 

 (次が全く意味不明。)

 

武器が続く限り戦争をする国、パンの続く限り戦争をする国、儲けのある限り戦争をする国、これらおのおのの国は、それぞれ根底に仮設を持っていて、その仮設を証明するために幾何学(の問題)をし(解い)てゆく。そういう各国の(仮設の)相違について研究すべきだったが、その研究が不十分だった。それは私ら(作家)の怠慢だった。(戦争の原因に関して無智だったということか。)

 

大東亜宣言は、我が(日本の)理念がこれらの(西洋の)仮設と異なるわけを明らかにした点で、「美しかった」が、頭(指導者)とパンについて絶対に心配のない日本では、他国よりなすべきことが多くあるに違いない。それを捜すのが作家の勤めだ。(何を言いたいのか、意味不明。美しい日本主義を今後も追求して行くという決意か。)

 

1944年4月号

 

以上 2020126()

 

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